「あ、おかえりお兄ちゃ―――ってどうしたの? 帰宅早々疲れた顔してるけど」
「実際問題疲れたからこんな顔してるんだ我が妹よ……」
ようやっと我が家まで帰ってこれた。
バス停付近までμ'sのファンがいたせいで結構手こずらされた。
さすがにバス内にまで入ってくる人はいなかったけど、帰国してすぐ囲まれるのはどうしても疲れてしまう。俺なんて飛行機であんま寝れなかったから余計だ。
今すぐにでも自分の部屋のベッドに飛びこんで爆睡したいレベル。
「荷物どうする? 運ぼっか?」
「や、いいよ、自分で運ぶから。土産とか買ってるし結構重いからな」
「お土産あるの!?」
「当たり前だろ。せっかくの海外なんだ。知り合い……と言っても桜井しかいないけど……家族や世界一可愛い妹に土産を買わないなんて愚行はあり得ませんことよ」
「そっか、ありがと。とりあえずリビングで休憩したら?」
綺麗に流されたでござる。
この妹、俺が海外行ってるあいだにどんな修行を積んでスルースキルを身に付けたんだ。お兄ちゃんちょっと悲しいぞ。
「今日はもう家にいるの?」
「そうしたいのは山々なんだけどな。このあと穂乃果達と待ち合わせしてるんだよ。少し休憩したらまた出かける」
「珍しいね。お兄ちゃんのことだからてっきりすぐ部屋に行って寝るとか言いそうだったのに」
妹に俺の考えてたこと全部もろバレしてるんですけど。やだ、これって以心伝心?
唯から渡されたお茶を飲みつつ、ほっと息をつく。うん、落ち着く。
「待ち合わせってどこでしてるの?」
「秋葉原。ちょっと確認しておきたいこともあるけど、何か少し大変な状況になってるかもしれないしな」
「それってもしかして、海外ライブでのこと?」
「……知ってんの?」
「まあ、こっちでも結構話題になってるし、μ'sのことは雪穂と亜里沙と一緒に何かあったら逐一報告しあってるからね」
姉妹にμ'sメンバーがいれば何があるかやあったかを知るくらいはすぐにできるのは当然か。
それよりも、こっちでも話題になってるのは少し気になるな。空港でも映像が流れてたくらいだし、もしかしたら本場だと余計話題に上がってる可能性も考えられる。
「これは早めに行ったほうがいいか……?」
「何が?」
「さっき待ち合わせしてるって言ったろ。穂乃果はまあ、置いとくとして、他のメンバーなら待ち合わせ時刻より早く来るはずだ。そうなれば一人待ってるところにファンが殺到しちまえばちょっとした混乱を招くことになるかもしれない」
「スクールアイドルなのにそこまでなるもんなの?」
「ところがどっこいなっちまうんだよ。実際空港でちょっとしたサイン会開けるレベルの人が待ち伏せしてたからな。自惚れや自意識過剰じゃなく、本当の意味で今のμ'sは人気になってるんだ。さすがにここまでとは俺も思ってなかったけど」
予想を遥かに上回っていた。
海外に行く前は誰も寄ってこないで平和に送り出されていたのに、この数日でこれだけ状況が変わるなんて誰が想像していただろうか。ちなみに俺は微塵も思ってなかったです。
時間にはまだ余裕あるが、早めに行って先に待っておいたほうがいいだろう。
「じゃあそろそろ行くよ。先に俺がいたほうが分かりやすいかもしれないし」
「大丈夫なの? お兄ちゃんもそれなりに注目されてるとかない?」
「空港じゃ俺にまでサイン求めてくる子とかいたけど、まあそれでも一部だけだろ。2回目の講堂ライブ見てる人じゃないとさすがにそこまではいかないと思う」
「むしろ海外ライブ見て今までのライブ映像見返してる人とかいたら分かっちゃうんじゃ……」
「……ほ、ほら、でもライブ見てる人が好きなのはμ'sなわけだし、手伝いの俺に興味持つ人はいないんじゃないかと思うんですよね!」
そうそう、空港の人達のは俺もいたからついでにみたいな感じなんだよきっと。
熱血な女の子は特別だけど。あの子だけは他の子と一緒にしちゃいけない。
「お兄ちゃんがそこまで言うならいいけど、くれぐれも気を付けてね?」
「ただ秋葉原行くだけなのに戦場へ赴くみたいな雰囲気醸し出すのやめてくれませんかね」
国民的大スターなわけでもないんだからそこまで心配はしなくても……いや、万が一でも可能性はあるな……。
秋葉原なんてスクールアイドルの聖地と言っても過言じゃない。そんな場所にμ'sが集まったとなると、うん、ここから先は考えるのをやめよう。カーズになるのだ俺。
「それじゃちょっと行ってくる。土産はキャリーケースの中に入れてあるから好きなの選んでくれていいから」
「うん、ありがとうお兄ちゃん。ちなみにオススメとかある?」
「もちろん、お前のために選んだ可愛くて高級なバッグ買っておいたぜ」
「え、高級って……」
「ふはははははははは値段は聞くな行ってきまーす!!」
「まさかそれだけのために高い物買っ―――」
唯の制止の声も聞かずに家を飛び出る。
たまに唯は俺が高い物を買うと怒るからあまり無駄遣いはできないのだ。だからマンガやゲーム以外に使う金がないため結構貯金が貯まってたりする。
だからこういう時こそふんだんに使ってやったわ。帰ってからが怖いけど、まあ唯のために買ったんだからそんなに怒られないだろ。
怒られたらあれだ。全力で土下座する。空港でも穂乃果達にやったし、今の俺はどこでも土下座できるスキル覚えたから。……言ってて悲しい。
早く行って待ってよう。
―――――――――――――――――――――
「……あれ」
「あ、拓哉も来たのね。これで全員揃ったわけね」
「何でもういるんだよみんな。時間はまだ20分くらいあるのに」
現地に来てみれば既にμ'sメンバーが全員揃っていた。
あの穂乃果でさえもういるのにはさすがに驚いたぞ。時間には間に合ってるのに謎の敗北感を感じる。
「おそらく拓哉君と同じ考えかと思いますが、もし誰かが先に来ていてファンに見つかったらどうなってしまうかと考えると、先に合流しておいたほうがいいと思ったんです」
「それで全員早く来たってか」
「偶然みんな同じ考えしてたってことだね!」
ドヤ顔で言うな。そして俺より先に来たことに対して変に勝気な顔してんじゃねえ。無駄に可愛いんだよこのやろう。
「はあ……とは言っても注目浴びてんのはお前らなのに、誰かが先に来たり合流したところで余計目立つだけだろ。俺は手伝いだから先に来ても大丈夫だと思ったのにお前らが火に油注いでどうする」
「そのときはそのとき!!」
「歯ァ喰いしばれ」
「公共の場で女の子に拳向けるのはよくないと思いますたくちゃん!!」
やめろ大声出すなバレるから。
そして俺が捕まるから。ツッコミで逮捕はシャレにならんぞおい。
「まあいいか。今のところ人は集まってないみたいだけど、外の方はどうなってる? 一直線で来たから俺あんま分からないんだけど」
「どんだけ急いで来たのよ……。そこ出て見てみなさい。嫌でも分かるわ」
ちなみに待ち合わせの場所は路地裏にしておいた。
少しでもリスクは少ないほうがいいという俺の意見にみんな同意してくれたわけである。
そして真姫に言われたとおり、路地裏から喧騒のある街に出た。
相変わらず人の多さは変わらないこの街で辺りを見るとそこには……。
「なん……だと……!?」
見渡す限り、μ'sの雰囲気が醸し出されていた。
ビルには一面μ'sのポスターが貼られており、目視できる範囲の店にはμ'sのグッズが大量に売られていた。
これには俺も思わずBLEACH言語が飛び出してしまうほどだ。
いやどんだけ持ち上げられてんだμ's。社会現象を起こしたアニメでも中々こうはならんぞ。
ラブライブ自体がもう社会的にも注目されてるってことか?
そりゃ海外でライブしてほしいと依頼されるぐらいだからありえるのか。
かといってこうもポスターが貼り出されていると穂乃果達の素性が完全に割れてしまう。
有名になるってこういうことをいうのか?
「ねえ、たっくん」
「どうした、ことり」
「もしかしなくてもなんだけど……」
「?」
何故だか申し訳なさそうな表情をしていることり。
何だ、この路地裏臭いのか。路地裏で待ち合わせしようと言った俺が悪いのか。ことりのためなら焼き土下座までならするぞ。
「これからのこと考えると、まず秋葉原で待ち合わせしようっていうのが間違いだったんじゃないかなって……」
「ほんとまじすんませんでした」
全面的に俺が悪かったようです。
さて、いかがでしたでしょうか?
有名になったμ's+おまけ、波乱はまだ少し続きます。
一人称だとギャグが書きたくて筆が止まらない。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!
サンシャインの映画のPVが少し公開されてましたね。