ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

173 / 199
161.世間との違い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ある程度予想はしてたけど、まさかそれを上回るほどとはな……」

 

「何か、凄いね……」

 

 

 

 

 

 いつまでも路地裏にいるのも気が引けるので、俺達はできるだけ目立たないように橋のとある店の近くに移動していた。

 ここなら人もまだあんまりいないし近くまで来ないと気付かれないだろう。時間の問題かもしれないが。

 

 

「にゃー! こんなところにもポスターがあるにゃー!」

 

「こっちにも応援チラシが出てるよ!」

 

「どこにでもあるなオイ」

 

 せっかく移動してきたのに、移動先の店にポスター貼られてるとかどんなトラップだよ。

 というか応援チラシって何。いつのまにこんな公に応援されてるんだμ'sって。昨日の今日でここまで知名度が上がるものなのか。

 

 

「これは……」

 

「……ん? 待て。ここにポスターや応援チラシがあるってことは……ここにいたらむしろバレ―――、」

 

「あの!」

 

「もしかしてμ'sですか!?」

 

「あ、ああ……!」

 

 時すでにお寿司。いや遅し。

 さっそくファンらしき女子高生二人がやってきた。そうだよなーこんな堂々とチラシとかあったら普通に気付くよなー。

 

 

「μ's!?」

 

「ほんとだ!」

 

「凄い! 本物!?」

 

「大ファンですー!」

 

「あっという間に人が集まってきた!?」

 

「まるで急に湧いて出てくるモンスターみたいだな」

 

 いや、いくら何でも急に集まりすぎてないか?

 たった数分でここまで人だかりができるなんてあり得ないはず……。

 

 気付けば前も後ろも囲まれていて逃げられない状況になっている。いやまあ別に逃げる必要もそんなにないんだけど、これだけ人が集まれば他の人の迷惑になるかもしれないという危惧もあるわけでして。

 

 

「あ~、あはは、どうも~……」

 

 珍しく穂乃果が気圧されたような声で挨拶しているのを一瞥しながらファンの集団を見ると、ざっと見ただけで数十人はキャッキャしながらスマホを触っている。

 なるほど、そういうことか。

 

 

「どうしてこんなに人が……」

 

「おそらくSNSだ」

 

「それって……」

 

「見てみろよ。結構な数の人がスマホを弄ってる。多分このままだとμ'sがここにいるってもっと拡散されて人が集まってくるぞ。どうするよリーダー」

 

「どうするって言われても……」

 

 こうしている間にもどんどん人は集まってきている。

 逃げようとしてもこの人だかりをどう潜り抜けるかを考えないといけない。

 

 プロのアーティストや芸能人の熱狂的なファンならまず当人の言葉を無視してでも近くに詰め寄ってくるだろうが、それをしてこないだけまだマシと言えるだろう。

 実際空港の人達は素直に言うことを聞いてくれた。

 

 ……ということは。

 

 

「(穂乃果)」

 

「(急に小声でどしたのたくちゃん。今どうするか考えてるんだけど)」

 

「(聞いた俺が言うのもなんだけど、ここはストレートにどいてくれって言ったほうがいいんじゃないかと思ってな)」

 

「(どうして?)」

 

「(空港にいたファンの人達は俺達の言うことをちゃんと聞いてくれただろ。幸いここの人達も詰め寄って来るような輩じゃないことは確かだ。だからちゃんと言えば素直に分かってくれると思うんだよ。あくまで推測だけど)」

 

 これで言うこと聞いてくれなかったら詰みである。

 見る限りここにいるファンの人達はみんな女の子だ。つまり、穂乃果達だけならまだしも、俺がこの禁断の花園を強行突破しようものなら俺が禁断の牢屋へぶち込まれることになる。それだけは避けたい。

 

 いっそ川へ飛び降りることも考えたが、この時期だとまださすがに寒いからやめたい。

 

 

「(うん、分かった。私もファンの人達を信じるよ。それでいこう)」

 

 頷いた穂乃果が一歩前へ出る。

 そうすることでファンの人達の顔が余計に明るくなる。リーダーの穂乃果だから、何を言うのか期待しているのかもしれない。

 

 だがしかし、分かってない。分かってないぞファン達よ。

 君達は知らないかもしれんが幼馴染の俺はよーく知っている。穂乃果は俗に言うバカだ。難しい言葉を知らないアホの子なのだ。

 

 語彙力という単語が分からなくて言葉の力とか言っちゃう子なのだ。そんな子が遠回しなことを言うはずもないだろう。

 率直に言えば、良くも悪くも穂乃果はいつだってストレートなのである。

 

 

 

 

「みなさん! そこを通りたいので道を開けてくれないでしょうか!!」

 

 うん、気持ちがいいほどにどストレートで拓哉さんも聞いてて清々しいぜ。

 けど、穂乃果のこういうド直球さが必要なときは結構多く、こういうときもまた役に立つのである。

 

 言うや否や、ファンのみんなは一瞬ポカンとした表情になったがすぐに戻り、穂乃果の言うとおり道を開けてくれた。

 開けられた空間を歩く俺達。それを見ながらファンはまたキャッキャ言っている。俺だけ場違い感が凄いんだけどどうしよ。俺もファン側に行っちゃおうかしら。

 

 さあ、問題はここからだ。ファンの方へと振り返る。

 囲いから抜けられたのはいいが、大量のファンを前にして穂乃果が何を言うのか。ここだけは俺も分からない。

 

 9人が並び、穂乃果がまた一歩前へ出る。

 俺は8人の後ろに隠れ……待機している。いや違うんですよ。別にメンバーじゃないから横に並ぶのは違うかなって思っただけなんです。変に思われて叩かれるのが嫌だからとかじゃないですはい。

 

 

「えっと、いつも応援してくれてありがとうございます!」

 

 穂乃果の第一声が耳に入ってくる。

 

 

「それでは今日はこのあたりで!!」

 

 そして第二声も耳に……あれ?

 あいつらどこいった?

 

 

「何してんの早く来なさい拓哉!」

 

「え、ええ!? あまりにも予想外の展開すぎて俺の理解力がないのかお前らの行動の早さが凄いのか分かんないんだけど!?」

 

 既に穂乃果達は俺の後方へ走っていて、見事に俺は置き去りにされていた。

 ファンはまたも呆気に取られたような顔をしているし、俺も実際そうだった。

 

 もう少し何か良いこと言うのかなって思ったらすぐにお別れの挨拶して勝手に走ってったぞあのリーダー。

 ファンを前にしてあんな態度とっていいのかと僕は思います!!

 

 けどあれだけの人を前にしたらどう切り抜けばいいのかなんて俺も分からないし、案外正解かもしれない。

 俺を置き去りにしなけりゃもっと正解だったかもしれない。

 

 

「ちゃんとアイコンタクトで確認したわよ! ちゃんと私達を見てたの!?」

 

「ふんっ、俺を甘く見るなよにこ。俺はいつだってお前らを見ているぜ!! アイコンタクトに関してはお前らの後ろにいたから分かるはずねえだろちくしょうめ!!」

 

「結局見てないじゃないのよバカ! アンタはずっと私達を見ていればいいのよ! μ'sの手伝いなんでしょ!!」

 

「うっせえちゃんと見てるわ! お前ら以外のスクールアイドルに興味はねえ! というか穂乃果走るならどこに行くかくらい決めてんだろうな!?」

 

「どこ行こっか!?」

 

「まずはお前を天国に送ってやる」

 

「冷静に見放された!?」

 

「あそこの路地裏に入るわよ!」

 

 絵里の指示が入ったことにより、ダッシュ中の喧嘩は中止になった。

 そこで後ろを振り返ると、誰も追いかけてきていないらしい。穂乃果のあんな挨拶でも分かってくれるファンでよかった。

 

 しかし、距離が離れたことによって違うファンがいたらまた騒ぎになってしまう。

 それだけは避けなければならない。日も暮れてきたしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参ったわね」

 

「何でこいつはここで落ち込むように座ってんの。俺がジュース買ってるあいだに何があったの」

 

 絵里が言った路地裏に入り、少し離れた自販機で飲み物を買って戻ってきたら海未が座り込んでいた。

 人通りが少ないここなら気付かれる心配はないが、何をしてるんだろうこの小娘は。

 

 

「海未ちゃん……」

 

「無理です! こんなの無理です~!」

 

「ああ、そゆことね」

 

 海未の声音で大体理解した。

 声音で理解できる俺も中々凄いな。伊達に幼馴染やってない感ある。

 

 

「帰ってきてから街を歩いていても気付かれるくらいの注目度。海外でのライブが秋葉中で流れていて、挙句の果てにポスターやチラシまで街中で貼られたりしてる。これじゃ指名手配と変わらないわ」

 

「やっぱり夢なんじゃない?」

 

「気持ちも分からんでもないが現実逃避はその辺にしとけ」

 

 秋葉はスクールアイドルで一番有名な場所と言ってもいい聖地だ。

 そんなところにラブライブ優勝者であり、先日海外でライブしたμ'sがいたらそりゃ気付かれるってもんだよな。

 

 

「凄い再生数になってる!!」

 

「じゃあ私達、本当に有名人に?」

 

「そんなぁ!? 無理です、恥ずかしい……! 拓哉ぐぅん……」

 

「あーはいはい、そうだよなあ。海未は注目されると恥ずかしいもんな~よしよ~し」

 

 仕方なく海未と一緒の態勢になって座り宥める。

 君ラブライブ本選のときもう恥ずかしくない的なこと言ってなかったっけ。あれか、歌う時と普通に人前で注目されるのは違う感じなのかね。うん、このグズりよう見れば分かるわ。

 

 

「あっ、でもさ、それって海外ライブが大成功だったってことだよね!」

 

「まあ、そうなるか。うん、大成功だと思うぞ」

 

「ドームも夢じゃないよね! これでドーム大会も実現したら、ラブライブはずっとずーっと続いていくんだね!」

 

「確かにこの功績は大きいからな。うまくいけばこれからも続くはずだ」

 

「よかったー!!」

 

 あの、その前に海未宥めるの手伝ってくれませんかね。

 この子俺の袖握ったまま離さないんですけど。ちょっと離そうとしたら余計ガッシリ掴んできたんですけど。握力やばくないですか。リンゴ潰せるんじゃね。

 

 

「まだ早いわ」

 

「何が……って、何してんだお前ら」

 

 絵里の声で振り返ると、絵里、にこ、希の3年組が並んで赤ぶちのサングラスを掛けていた。

 おいお前ら、いつの間にお揃いのサングラス買ってたんだ。というかそのテンションは何だ。メンインブラックか何かかオイ。

 

 

「それより、バレずにここを離脱するのが先よ」

 

「いつもの似非関西弁はどうした巫女娘」

 

 めっちゃノリノリじゃん。

 いつもは冷やかすのにめっちゃノリノリじゃん。まとめ役の絵里までそんな真面目にやってたらもうどうしようもないぞ。海未もダメになってるし。

 

 

「そうよ。だって今の私達は、スターなんですもの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、誰かあの3年トリオ止めろ。俺は海未で手一杯だから。離してくれないからこの子」

 

「私達はスタァァァああああああああああああああああああああひゃっほォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうッ!!」

 

「そのツインテールの口を閉じさせろォ!! 自分が理想的なアイドルになってるせいで自己泥酔してやがる! 夢叶って嬉しいのは分かるけど今はその喜びがウザい!! 果てしなくウザい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世間的には注目されてるけど、それでもμ'sの雰囲気は変わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


本編では描かれていない部分を自分なりに捕捉しましたが、この作品の彼女達のキャラは濃いので強引にしてみました(笑)
世間では知名度が上がったり注目されていたりワーキャーされていますが、自分達の雰囲気は変わらない。それがμ'sです。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!





感想数が900件突破しました。ありがとうございます。
このまま最終回いくまでに1000件到達したいところ……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。