何やかんやあって結局穂乃果の家にやってきた。
「そうなの! あのライブ中継の評判がやっぱり凄かったらしくて、あちこちで取り上げられてるよ。ほら」
「ほんとだー!」
「秋葉の街どころか、色んなところでこの映像が流れてるのか。そりゃ有名にもなるわな」
ご丁寧に雪穂が見せてくれたPCの画面を見ると、再生数がさっき見たときよりも増えており、しかもそれが色んなサイトでも流れているという。
下手するとプロのアイドルより注目集めてるんじゃないかスクールアイドル。
「大変だったんだよ~。戻ってくるまでずっとお姉ちゃんを訪ねて店にやってくる人達いたんだから……。まあ、おかげでお店の売り上げ上がったってお父さんもお母さんも喜んでたけど」
「なるほど、だからさっきあんなテンション上がってたのか桐穂さん。大輔さんとか無言でまんじゅうくれたし」
何かマフィアの取引なんじゃないかと思うくらいの雰囲気で箱渡されたときはさすがに焦った。
大輔さん実は
「ほんと!? お小遣いの交渉してくる! 私のおかげで売り上げが上がったんでしょ!? もう少しアップしてもらわなきゃ……!」
「確かに穂乃果の業績は大きいよな。俺ももう一箱まんじゅう貰えないか交渉してみるか」
「穂乃果も拓哉君もそんなこと言ってる場合ですか……」
いやだって穂むまん美味いんだもん。うちの家族全員大好きだから一箱だけだとそのうち誰かが勝手に全部食べて犯人捜し始めるほどだから。そこから無益な戦争開始からの無慈悲な親父狩りが始まるレベル。親父が集中狙いされる的な意味で。
「そうよ。拓哉はともかく、人気アイドルなんだから行動に注意しなさい」
「そんな~」
「A-RISEを見れば分かるでしょ。人気アイドルというのは常にプライドを持ち、優雅に慌てることなく……」
言葉は最後まで続かず急に黙るにこ。
しかし顔はどんどんとニヤケ顔に変わっている。あ、こいつ今妄想してんな。お得意の自分の世界入っちゃってんな。
「ぬぃっこぬぃっこぬぃ~」
「何してるん……」
「気にするな。にこの得意技、固有結界だ。ただし自分しか入れない」
「それただの妄想やん」
確かに。響きはまさに体は剣でできてそうなのににこだとただの妄想に聞こえる。
理想を抱いて溺死というか理想を現実にしちゃったけどなこの子。ラブライブ優勝したからこの子。
「はっ!? と、とにかく! どこに目があるか分からないから、外に出るときは格好も歩き方も注意すること!」
「え~!」
「そこまで気を遣うのは……」
「私もちょっとぉ」
「めんどくさいよ~」
「意識ってのが足りてないわねアンタら!!」
「有名になったスクールアイドルってのも大変だな」
俺だったら有名になるの絶対やだわ。
ちやほやされるのは悪くないかもだけど、平穏を愛している俺にとってはいつだって楽に過ごしたい。外で気を遣うのは御免被る。若干俺も身バレしてるけど。
「何言ってんの。拓哉もちゃんと変装とかしなさいよ」
「……ぱーどぅん?」
「何でもう一回言わなきゃいけないのよ聞こえてたでしょ今!」
「いや俺まで気をつけなきゃいけない意味が分からんから聞き返しただけだわ! 俺はアイドルじゃねえしただの手伝い、お前らはアイドル。つまり俺は無関係! はい証明完了!!」
「アンタだって空港でちょっと有名になってるの知ってるでしょうが! 私達ほどでないにしろ、μ'sの手伝いならそこら辺もちゃんと踏まえて行動しなさい!」
「嫌だー! 俺はこれからも普通に過ごしていきたいんだー! 名前も知らない人達に追いかけ回される人生なんて普通じゃない!! ……そうだ、寄ってくるヤツらを全員片っ端からぶん殴れば……?」
「違う意味で普通に過ごせませんし名前も知らない青い公務員に追いかけ回される未来しか見えないのですが」
くそう、にこの言うことも一応、一応ではあるが一理ある。
俺も講堂でのライブ中継のせいで割と顔が割れてるし、実際空港でも何故かサインを求められるほど知られていた。
今までどおり外に出て必ず声をかけられないなんていう保証はどこにもない。けど今までどおり普通に過ごしたい。サングラスでも買うか?
べ、別に自意識過剰とかじゃないんだからね!
ところで海未にそう言われると何だか癪だな。
何なら俺は基本的に海未からぶん殴られてる気がするんだけどその辺はどうなるんだろうか。と思ったけど俺がいつもぶん殴られるようなことしてるから咎める理由なかった。むしろ俺が咎められる側だったわ。
「もう、それよりも前に考えなきゃいけないことがあるでしょ?」
「考えなきゃいけないこと?」
「分からない?」
「こんなに人気が出てファンに注目されているのよ」
「だな」
「そうやね。これは間違いなく……」
俺も何となくだが絵里と真姫の考えてることが分かる。
海外でのライブ中継が話題となってる今、μ'sの注目度はラブライブ優勝した時よりも上回っているのは明白だろう。
そう、簡単に言ってしまえばμ'sのファンは前よりも断然に増えた。
つまり、それだけ期待されているということだ。何がとは言うまでもなく分かる。
これだけの注目度、話題性、ファンの急増化という3拍子が揃ってしまえば、普通のスクールアイドルなら真っ先に考えること。
それは―――。
―――――――――――――――――――――
「次のライブ!?」
翌日。
春休みに入っているということもあり、ただでさえ少ない生徒数の音ノ木坂学院ではさらに人の気配が少なくなっている。
そんな中、中庭で鬼ごっこ……というよりガチの追いかけっこが繰り広げられていた。
「ないないないないない。絶対なーーーーーい!!」
「そこを何とかー!!」
「何で俺まで追いかけられてんの!? 俺自体は特に追われる理由ないよね!?」
μ'sがライブをするとき、必ず機材や演出について手伝ってくれる3人のうちの1人、ヒデコが全力で穂乃果と拓哉を追いかけ回していた。
「拓哉君は何となく厄介そうだから!!」
「おいィ!! そんな理由で追われる俺の身にもなれこのやろー!」
「追われてるのにたくちゃんと一緒だから何だか楽しくなってきちゃった……!」
「そんなこと言ってる暇あるならもっとスピード出せ! あいついつも重い機材とか運んだり体力いる仕事してるからスタミナはバカみたいにあんぞ!!」
実際拓哉と穂乃果もそれなりに全力で走っているが、ヒデコとの距離は一向に離れない。
これじゃジリ貧だと思った拓哉は即座に穂乃果に提案する。
「仕方ない。穂乃果、いったん二手に分かれるぞ。ヒデコ1人ならどちらかが免れるはずだ。狙われた方はとにかく全力で逃げ切ること。最終待ち合わせ場所は部室だ。いいな!」
「オッケーたくちゃん。じゃあ私は右に行くよ。またあとで!」
意思確認して二手に分かれる。
これでどちらかが逃げれて片方は追われる身となるが、そこは体力勝負にかけるしかない。
そして。
狙われたのは。
「やっぱり私のほうに来たー!?」
「よし、計算通り」
拓哉の思惑通り、ヒデコは穂乃果の方へと走っている。
ヒデコの願いが次のライブをしてほしいというのなら、当然狙われるのは穂乃果と踏んだ結果、見事に上手くいった。
「フミコ、ミカ、穂乃果は右の棟に行ったから挟むよ!」
「お、おっかねえ……」
よく見ればヒデコの耳にはワイヤレスイヤホンマイクがあった。
あれでフミコとミカと密かに連絡を取り合っているのだろう。これで3対1。穂乃果の勝ち目はなくなったと言っていいかもしれない。
ともあれこれで自分が追いかけられる心配はなくなったのでゆっくりと部室を目指す。
(次のライブ、か)
昨日、穂乃果の家でもその話題になった。
みんな悩みに悩んでいたが、その日は結局何も答えが出ないまま解散になってしまったのだ。
その翌日にヒデコに次のライブを頼まれてしまうと、やはりファンの人達も次のライブを待っているということになる。
(課題は、まだ減っちゃいないってことか)
さて、いかがでしたでしょうか?
映画を見た当時はこのシーンでどういう結論を出すのかそわそわした記憶があります。
あとイスに縛られて口をガムテープで塞がれる穂乃果を見て興奮したのも覚えてます。
ヒフミ容赦ねえな。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!
去年の今頃はハワイにいたことを思い出してまた行きたいと思ってる自分。
湿度が凄い日本と違ってカラッとしたハワイの暑さは何だかいいなと思ってます。