ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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166.二度目の再会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日付は変わり、その日は雨だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところでは、高坂穂乃果があの女性シンガーと邂逅していた。

 最後の答えを出すための再会を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこれは問題点こそ違うものの、異なる時間帯で少年はある種もう一つの答えを出すための再会を果たそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外で練習もできないという事で、その日はオフとなって誰も部室には来なかった。

 もちろん岡崎拓哉も例外ではなく、春休みとあって外が雨ならばわざわざ学校に行こうなどとは思わない。

 

 普通ならば、いいや岡崎拓哉を知っている人物なら100%の確信を持って外すら出ないと言うだろう。

 当人の拓哉だってそう思っている。雨の日の休みに外へ出ようなどとは絶対に思わない。

 

 なのに何故か。

 ただ、今日だけは何の気まぐれか自分でも分かっていないが、岡崎拓哉は傘をさしながら外出中であった。

 

 

(……、)

 

 昨夜のツバサ達との会話で何か思うとこがあったかと言われれば、特にはない。

 あの問題だけは、拓哉が何かを言うわけにはいかない。穂乃果が、μ'sが答えを出さなければ意味がないのだ。

 

 つまり、今日に関しては本当に何の意味も目的もなくただ雨の日の外をひたすら歩いているという状況だった。

 雨の日の散歩と言えば乙なものかもしれないが、拓哉を知る人物がそれを知れば脳に欠陥でもあるのではないかと心配するほどにこの光景は普通ではなかったりする。

 

 

(何でこんなところにいるんだ、俺)

 

 自分でも特に何か考えて歩いていたわけではなかったため、適当にふらついていたら人がいない道まで来ていた。

 何度か通ったことある道だから見覚え自体はある。

 

 視界の隅にはカフェがあり、外にもテーブルやイスが置かれているが、雨なので当然誰も外にはいない。

 

 

(特に寄るとこないし、帰るか)

 

 そもそも何しに外出したのかさえよく分かっていないから、帰るのもすぐに選択できた。

 これ以上歩いていても靴が濡れていくばかりである。拓哉自身濡れるのがあまり好きじゃない身としてはさっさと帰宅して自室でのんびりしたいところなのである。

 

 そうして家の方向へ足を伸ばそうとした瞬間。

 まるで昨夜を思い出すかのように背後から声がかかった。

 

 

「やっほ。久しぶり、かな?」

 

「……アンタは……あの時の……」

 

 振り返ると、そこには以前アメリカの路地で歌っていたという女性シンガーの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でここに? いつの間に戻ってきてたんだ?」

 

「ん~、ちょっと前からかな。あの子に出会って日本に少し帰ってきたくなっちゃったみたいな」

 

 あの子が穂乃果だということに辿り着くのに時間はかからなかった。

 雨の音をBGMにしながらベンチに座り、周囲に誰もいない状況で少年はポツリと呟く。

 

 

「それにしてもよく俺を見つけたよな。一度しか会ってないし傘もさして見えにくいと思ったんだけど」

 

「本当にたまたまだけどね。君って結構印象的だからすぐに分かったよ」

 

 自慢でも自虐でもないが、拓哉は自分をあまり印象的な見た目ではないと思っていたはずだが、ここにきて他者からの印象を言われてそんなに目立つ出で立ちをしていただろうかと思う。

 茶髪なんてそこら中にいるし、何なら量産型と言っていいほどの髪型とも思っている。

 

 

「まあ、さっきあの子とも会ったからってのもあるけど」

 

「……穂乃果に会ったのか?」

 

「うん」

 

 感動的ではないにしろ、穂乃果とこの女性は再会していたらしい。

 特に確信もないが、この女性と穂乃果の出会いは何かを意味しているのではないかとアメリカでの会話から拓哉はずっと思っていたのだ。

 

 何かの運命を感じるかのように。

 

 

「もう大丈夫だよ」

 

「え?」

 

「あの子の抱えていた悩みならもう、きっと大丈夫だと思う」

 

 まるで心を見透かされていたのではと疑うような言葉だった。

 偶然の出会いをして、偶然の再会をもした。

 

 そして、目の前のシンガーはその、たった二度の出会いで穂乃果に道を指し示したというのか。

 それほどの説得力と影響力があるのか。

 

 

「すげえな、アンタ」

 

「別に普通だよ。誰かが悩んでいたら少しでもその手助けになれればいいなって思うのは、人として普通じゃない?」

 

「……ははっ、どうしようもない善人だよ、アンタは」

 

 そのような考えを持つのは人として普通。

 まずそんな考えに至れるほどの人間はこの世界にどれくらいいるだろうか。

 

 誰かが悩んでいても見て見ぬ振りをしたり、相談を聞いても結局は適当に返したり、案外冷たい人間ばかりがいるこの世の中で、本当に全力でその人のために行動できる人は割と限られているものだ。

 

 善行を偽善と言われ、むしろ正しい行動が笑われるこの世界で、ここまでの善人は中々見ないと拓哉は思う。

 だからこそ、素直に素敵だと思った。

 

 

「というか君はあの子に何もアドバイスとかしなかったんだ?」

 

「まあな。俺はあくまであいつらと同じグループじゃなくて手伝いという枠の外の役割を果たしてるから、当人の存続の問題を俺がとやかく言う筋合いはないんだよ。あいつらが決めなくちゃ意味がないと思ったまでだ。アンタが解決への糸口を示してくれて感謝してる」

 

「ふうん。側で見てるからこその意見だね。良いと思う!」

 

 にっこり笑顔でこちらを見る女性シンガーに何故か穂乃果が重なるのは、多分2人の性格が似てるからなんだと思う拓哉であった。

 だから二度しか会っていなくともあまり緊張せずに会話できるのかもしれない。

 

 そんなことを思っていると、女性シンガーがまるで何かを閃いたかのように手をポンッとして意味深な笑みを浮かべた。

 

 

「そうだ! この際だから人生の先輩である私が色々と相談に乗ってあげる!」

 

「え、いやいいよ別に。特に何かあるってわけじゃ―――、」

 

「好きな女の子“達”とかいるの?」

 

「ぶふぇばぁッ!?」

 

 言い終わる前に世界が終わるほどの核爆弾発言が投下された。

 

 

「いきなり何聞いてきてんだ!! というか何!? 好きな女の子達って! 好きな女の子ならまだしも好きな女の子“達”って何なの!? 初めて聞いたんだけど!?」

 

「文字通りの意味だけど?」

 

「当たり前のような顔して言ってるけど普通じゃないからなそれ! ある意味酷いからなそれ!」

 

 周囲に誰もいないのを心の中で感謝しつつ、全力でツッコミにまわる。

 さっきまでの頼りになるお姉さんオーラはどこへやら、今ではすっかり面白がってにんまりしているあくどい女性が一人しかいない。

 

 

「ん~、じゃあ質問を変えるか~。好きな女の子はいる?」

 

「……い、いない」

 

「いるなこの反応」

 

「いねえわ! 生まれてから一度もいたことはない!」

 

 何故こんな強く言っているのか拓哉自身分からないが、実際いないから仕方ない。

 いいや、それは拓哉本人だからそう思っているだけかもしれないが。

 

 

「へえ~。じゃあさ、恋もしたことないってわけだ」

 

「悪いか。拓哉さんはそんなホイホイ遊ぶような軽い男じゃありませんのことよ」

 

「つまり、恋の定義とかどうしたら相手を好きになっているのかって気持ちすら分かっていない子供のままと……」

 

「……、」

 

 純粋健全男子の完全敗北ここに極まれりだった。

 何も言い返せない自分を殺したくなるほど恥ずかしいが、ここは無言を貫いて足掻くしかない敗北少年。

 

 ただし相手は年上の女性。

 もちろん敵うはずもなく。

 

 

「ぷぷぷーっ、それじゃいつまでたってもお子ちゃまなままだよ~?」 

 

「ぐぁぁぁあああああああああッ!! やめろォ! それは拓哉さんにとって効果は抜群4倍ダメージなんだぞもうやめてぇーッ!!」

 

「あっはっはっは! ごめんごめん! 意地悪はこれくらいにしとくから」

 

 真実は時に残酷なのである。

 岡崎拓哉のライフは既に0からマイナスへ行こうとしていた。無慈悲なオーバーキルである。

 

 相談に乗るとか言っておきながらダメージ与えてくるとかどういう了見だちくしょうな視線を送るが、それを気に留めない大人な女性シンガー。

 しかして彼女はスイッチを切り替えるように表情を変えた。

 

 

「じゃあ、言い方を変えようか」

 

「……?」

 

 何秒かの間があいた。

 聞こえるのは無数の雨粒が地面に打たれる音のみ。

 

 それを破ったのは女性シンガーだった。

 

 

「君にとって守りたい大切な人達はいる?」

 

「もちろん」

 

 今度は一瞬の間もない即答を少年がした。

 これは、これだけは絶対に揺るがない。

 

 呪いにも似た誓いを何度も思ってきた。

 μ'sの手伝いとして、一個人として彼女達を守っていくと決めた。

 

 たとえそれがどんなに困難であっても、いっときは崩壊にまでなりかけた時だって、最後にはそう誓ったのだ。

 彼女達の側を離れない。彼女達をずっと守りたい。大切な人だからと。

 

 

「すぐに答えたね」

 

「当たり前だ。μ'sは、あいつらは俺にとって守るべき存在なんだ。それほど大切で、大事で、心の底からそう思えたのは、多分これまで生きてきて初めてだと思う」

 

「……、」

 

「だから俺はこの気持ちを大事にしたい。あいつらを側で見守るのは俺の役目なんだよ」

 

「もし他の誰かがその役目を代わりにするって言ったら?」

 

「絶対にさせないさ。俺以外にさせるのは許さないし、俺自身がまずその役目を降りることはない」

 

 こんなにもスルスルと言葉が出てくるのは何故だろうか。

 目の前の彼女の問いがそうさせてくるのか、自分の中にある気持ちが沸々と込み上げてくるからだろうか。

 

 答えは分からないが、少年にも理解できない熱い思いがどんどんと胸へ上がってきている。

 

 

「……なるほどねえ」

 

 ここまで聞いて、女性シンガーは何か分かったように上を見て呟いた。

 

 

「つまり君はあの子達……えーと、μ'sだっけ? その子達をずっと守っていくのは自分だって思ってるし、その子達を他の誰にもとられたくない、これは自分の役目であってやりたいことなんだって強く思ってる。ってことでいいんだよね?」

 

「……まあ、そういうことになる、かな」

 

 言い方が少し気になるが、間違っていることはないので肯定しておく。

 それによって、岡崎拓哉のこれからが大きく変わっていくことになるのも知らないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず第一に、恋の定義なんてものはそもそも存在しない。

 数々の言葉がある。

 

 恋をするのに理由はない。

 何なら一目惚れなんて言葉もある。

 

 結局、理由なんて人それぞれだ。

 恋に気付く人もいれば気付かない人もいる。

 

 しかし、岡崎拓哉はこれまで恋愛をしたことがなく、誰かに恋をしたこともなかった。

 誰かを好きになるという気持ちなんて、アニメやマンガでしか見たことがない。客観的に感じるのと主観的に気付くのは全然違っているものだ。

 

 ならば当然、自分が無自覚に誰かを好きになっていたとしても、恋心を理解していない岡崎拓哉は気付くはずもないのである。

 

 

 しかし、これを気付かせる人物がいるとしたら?

 少年に恋をしている女の子ではなく、それを客観的に見れて、鈍感な少年へようやく恋心というものを理解させられる人物がいるとしたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 誰か一人ではない。

 

 

 

 

 

 

 彼女達を守りたいと思った。

 

 彼女達の側にいたいと思った。

 

 彼女達を心から大切だと思った。

 

 彼女達の笑顔をこれからも見ていたいと思った。

 

 彼女達といて時にドキドキした。

 

 

 

 

 

 ただ美少女揃いだからだけではない。

 一人一人をちゃんと見て、心からそう思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ならば。

 それはきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがね、恋なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一つの物語が、確実に動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


謎の女性シンガーとの再会前編でした。次回は後半です。
穂乃果とシンガーとの再会は映画本編通りと、プラスでちょっとした女子会トークがあったものと思ってください(笑)

さあ、これで本編の核となるもう一つの物語が動き出しましたね。
ようやく、ようやっとです。

あのクソ鈍感野郎へ確信させる時が来た!!


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!




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