UTX学院。
秋葉原にあるビルを全て学校化し、普通の学校よりも設備やシステムが進化しており、生徒数も多い人気のある学院の一つ。
そしてそこにはスクールアイドルの頂点に君臨したことのあるA-RISEというグループが存在する。
岡崎拓哉と高坂穂乃果はそのグループのリーダーを務める綺羅ツバサに会うため、UTX学院へとやってきた。
「一緒にライブを?」
「私達μ'sはやっぱりここで終わりにしようと思います。まだそのことを、メンバー以外の人には伝えられてはいないんですけど……」
以前第二回ラブライブの予選前、偶然UTX学院前でツバサと出会い、その中に案内されたルームに拓哉達は座っている。
相変わらず本当に学校なのかと疑うほどの上品な部屋を見渡している拓哉をよそに、穂乃果は話を進めた。
「でも、最後にみんなで集まってスクールアイドルの素晴らしさを伝えたいんです!」
「なるほど。私達スクールアイドルが心から素晴らしいと思えるライブをやれば、たとえ私達がいなくなってもドーム大会へ必ず繋がっていく、というわけね」
「はい!」
「だからアンタ達A-RISEに力を貸してほしいんだ。第一回ラブライブ優勝者のA-RISEと第二回ラブライブ優勝者のμ'sが協力すれば、それだけで他のスクールアイドルにだって良い影響を与えられるかもしれない」
一度はスクールアイドルの頂点に立ったグループの2組が率先してこの企画を盛り上げていけば、必ず上手くいくと信じている。
初の試みで、それもさっき決めたばかりの突発的な案だが、それでもやる価値は絶対にあるはずだ。
「あなた達らしいアイデアね。面白いわ。みんながハッピーになれるっていうのも悪くない。私達も今はまだスクールアイドル。もちろん、協力するわ」
「ありがとうございます!!」
「でも、お願いがあるの」
「?」
「みんなで一つの歌を歌いたい」
「みんなで、一つの歌……?」
「そう。誰の歌でもない。スクールアイドルみんなの歌。せっかくみんなでライブをするなら、それに相応しい曲というのがあるはず。そんな曲を、大会優勝者であるあなた達に作ってほしい。どうかしら? それが私達が参加する唯一の条件。まあ私達も助力はするけど」
正直、そんなものでいいのか、という気持ちが真っ先にきた。
条件と言うからもっと厳しいものと思っていたが、はっきり言ってこちらとしては破格レベルに良い条件なのではないかと拓哉は思う。
元より自分達の曲を歌うつもりではなかった穂乃果達だ。
スクールアイドルのための歌を全スクールアイドルが歌う。当たり前の条件であり、異論などどこにもなかった。
「穂乃果」
「……うんっ。やりたいです! それ、凄くいいです! 私もそうしたいです!」
「ふふ、でも時間はないわよ? 何とかできるの?」
「それを何とかさせるのが俺の役目だ。ツバサの条件は必ず達成してみせる」
「大丈夫です!」
満足そうに言いながら穂乃果は湯気の出ている紅茶を一気に飲み干す。
猫舌ほどではないがさすがに熱いので拓哉はちびちびと飲んでいく。明らかに飲み干すスピードが違うせいで拓哉をよそに穂乃果はさっさと立ち上がり告げた。
「ごちそうさまでした! さっそくみんなにも伝えてきます! たくちゃん先行ってるよ!」
「なっ、ちょ待てよあっづぁ! この紅茶熱すぎだろもぉー! ごっそさん!」
「ねえ拓哉君」
「あん!?」
穂乃果が去った後すぐに紅茶を何とか飲み干し、同じくさっさと立ち上がる拓哉をツバサが呼び止める。
「以前より清々しい顔になってるみたいだけど、何か吹っ切れたのかしら?」
変化球に見えて実にストレートな質問だった。
だからこそ、岡崎拓哉も逃れることはできなかったし、言い逃れる気も更々なかったと言うべきか。
少年は、元から答えを用意していたかのような口ぶりで言ったのだ。
「ああ、色々とな」
否定はなかった。
少年の去った後を目で追いながら、どこぞのリーダーは紅茶を啜る。
「……熱い」
少年への思いは、多分憧れだったんだと思う。
自分にはないカリスマ性、誰かを導く才能、他者に無償の手を差し伸べる平凡さ、大切な何かを諦めるという言葉を知らない勇気。
どれもが、あの少年は持っていた。
綺羅ツバサの思いは、どちらかというと勘違いなのかもしれない。好きというよりかは、憧れの方が強かったのだ。
A-RISEのリーダーを務め、その実力を発揮して世間に知らしめた。
自分以上の人はいないんだと。だからこそ、突如として現れた少年が輝いて見えた。
μ'sのリーダー高坂穂乃果のようにスクールアイドルをやっているわけじゃない。
ただの手伝いでしかない、本来であればモブのような存在のはずなのに。それ以上の光を少年は持っていた。
故に、惹かれていたんだと思う。
いいや、必要以上の興味があったと言うべきかもしれない。
確かに彼は一人の男として優良物件かもしれないが、それを狙っているのはいつも周りにいる女の子達ばかりだ。
そしてさっきの少年の言葉。あれで何となくだが分かってしまった。何ならもう確定と言っても過言ではないほどに。
「……みんながハッピーになれますように」
スクールアイドルとは他に、少女は優しい祈りを込めた。
―――――――――――――――――――――
「凄いです! メールを送ったら既に何件か返信が!」
「ほんと!?」
音ノ木坂学院の部室へ戻ると部活用のPCを確認していた花陽が嬉しそうに言った。
全国のスクールアイドルに一緒にライブをやらないかという趣旨のメールを送ったところ、もう了承のメールが何件か来ているらしい。
「思ったより早いな返信」
「けど、中には話を聞いてからにしたいっていうグループもいるみたいで……」
「確かに、いきなり出てほしいって言われても戸惑うかもしれないわねえ」
「それが普通の反応だよなあ」
「電話できちんと説明したほうがいいかもしれません」
普通、いきなり一緒にライブをしないかと言われてすぐに返答できないのが当たり前なのだ。
話を聞いて詳細が分かったら参加するという流れが普通であって、すぐに参加表明すると言ったグループはよほどのお人好しか、興味を持ってくれているのかもしれない。
「のんびり構えてていいの!? 時間はそんなに残されていないのよ?」
「それは……」
時間がないのも事実。
作詞もしなければならない。作曲もしなければならない。振り付けも考えなくてはならない。参加人数によって衣装も作らなくてはならない。
やることは山ほどある。けれどハッキリ言って時間はそんなにない。
残された時間の中で最善を尽くすのも楽ではないのだ。
「じゃあどうするの?」
「会いに行こうよ!」
「そうそう、会いに行くのが一番……って、ええ!?」
「穂乃果それ採用」
「ちょ、拓哉までっ、本気なの!?」
「うん! 行ける範囲は限られるだろうけど、直接会って直接話したほうが気持ちもきっと通じるよ!」
「そんなに遠くへは行かなくていい。本当に行ける範囲のギリギリでいいんだ。穂乃果の言ったように、直接話したほうが相手にも気持ちは伝わる。それに何より、ラブライブ優勝者であるお前らが直接会いに行くってのが一番効果ある」
わざわざ自分達のところにラブライブ優勝者が来て説得をしに来る。
聞くだけではピンとこないが、実際は一番効果のある説得だと思っている。
言い方は悪いかもしれないが、本人が行けば相手の逃げ道がなくなるという点も考慮すると、この方法はやる価値ありといったところだろう。
「でもどうやって……?」
「うーん、問題はそこだよなあ。金もかかるとこはかかるだろうし」
電車で行くといっても、当然電車代は必要になってくる。
一校のスクールアイドルに行くだけならそんなにかからないが、複数の学校へ向かおうものなら電車代もかかり高校生にとっては痛いかもしれない。
どうしたものかと拓哉が考えていると、サイドテールの少女が手を上げながら、
「簡単だよ! 真姫ちゃん!」
そこまで聞いた瞬間から、拓哉には嫌な予感がプンプンとしていた。
電車代という金銭問題があって、病院社長直々の娘である真姫お嬢様の名前が出てきた時点で答えは確定しているようのものだった。
「電車賃、貸して!!」
「「「「「「「なるほど!!」」」」」」」
「何でこっち見るのよー!!」
「恥ずかしくねえのかテメェら」
惚れた女の子達のがめつさに思わず額に手をやる苦労少年であった。
さて、いかがでしたでしょうか?
ツバサの岡崎への感情は愛情というより憧れのが大きかった模様。
だがそこはさすがのリーダーを務めるだけあって、大人な精神を見せてくれました。
穂乃果達はがめつさという遠慮のない手を使うようですが(笑)
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった
蓮零さん
notedさん
t.kuranさん
計3名の方からいただきました。
目に見えた評価で私のモチベは上がっていく……本当にありがとうございました!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!
来週は諸事情があって投稿できるか未定であります……。