ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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183.スクールアイドル

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人で同時に駆け出す。

 

 

 しかし拓哉は穂乃果の少し後ろを着いて行くようにスピードを合わせている。

 罰ゲームなどお構いなしに、穂乃果は楽しそうに跳ねたりクルクル回りながら進んでいた。

 

 穂乃果の手から離れたアネモネの花びらが宙を高く舞っていく。

 まるでこれからの未来へ羽ばたいていくように思えた。不確かでしかない未来。希望だけではないかもしれないけれど、そこには不安よりも期待が多いだろう。

 

 穂乃果達となら何も怖くない。

 どんな壁だって乗り越えられる。

 今までがそうだったように。

 

 

(穂乃果やみんながいたから俺は迷わず前へ進めた。それはきっとこれからも。μ'sの言葉や行動にはそれだけの勇気を貰えたし、何より心を動かされた。だから本気で支えようと思えたんだ)

 

 前を駆けていく少女を見る。

 自信に満ち溢れているわけではないが、何かを期待させてくれる高揚感といつも通りでいられる安心感を感じた。

 

 頭が良いわけでもない。ずば抜けた才能があるわけでもない。

 それなのに、穂乃果の言葉にはいつだってみんな心を動かされてきたのだ。

 

 おそらく他の誰かが言った言葉じゃ響かなくても、穂乃果が言ってしまえば響いてしまう、一種の魔法のようなカリスマ性。

 自信がない者の背中を押し、勇気をくれる太陽にも似た笑顔の持ち主でもある。

 

 別に上から目線ということでもないが、岡崎拓哉は高坂穂乃果という少女を高く評価していた。

 いつもはお互いふざけ合ったりボケにツッコミのような関係性だ。

 

 しかしいざという時は必ず誰かのために、自分のためになりふり構わず壁を乗り越える答えを導きだせるのだ。

 似ているようで似つかない。且つ、似つかないようで似ている2人と言っても過言ではないだろう。

 

 岡崎拓哉と高坂穂乃果。

 人の心を動かせるほどの才を持った2人は、程なくして終盤を迎える。

 

 

「穂乃果! 拓哉!」

 

 突然絵里から声がかかった。

 足を止め呼ばれた方へ目を向けると、そこには拓哉でさえ信じられないような光景が広がっていた。

 

 

「なっ……」

 

 2日間だけ貸し切り状態になった秋葉原の歩行者天国。

 いつもは車が道路を埋め尽くしている中、今日だけはそんなこともない道路は静けさを保ったままである。

 

 むしろ道路を埋め尽くしていたのは、人であった。

 歩行者天国。通常車道とされている部分を曜日や期間により車両通行止めを行い歩行者に開放することとされている。

 

 今回はイベントという形で開放されているが、そのせいもあってか人しかいないこの状況がある種の異常さを表しているかのようにも見える。

 

 

「見ての通りよ」

 

 人という人が道路を埋め尽くしている集団の先頭にいるA-RISEがそれぞれ口を開く。

 

 

「あなた達の言葉を聞いて」

 

「これだけの人数が集まった」

 

「こんなに……」

 

 全国のスクールアイドルから参加のメールが届いていたのは知っていた。

 手伝いということもあって雑務もしていた拓哉はその参加人数も把握していたはずだった。

 

 なのに、今目の前に広がっている光景は想像を遥かに超えている。

 いいや、まず把握していた人数を大幅に上回っているのだ。想定外もいいとこだった。

 

 人数にしておよそ約1500人。

 中には高坂雪穂、絢瀬亜里沙、岡崎唯など、まだスクールアイドルとしては活動していない者もいれば、ヒデコ、フミコ、ミカなどいつも手伝いをしてくれていた者もいた。

 

 スクールアイドル。

 すなわち女子高生の特権をフルに活用されたイベントがこれだ。

 

 

「何で、こんなにも人が……」

 

 それにしてもだ。

 この人数は予想外すぎる。

 

 人数をちゃんと確認していたはずで見落としもしていないという確信があった。

 なのにこれだけのスクールアイドルが集まっていて、しかも全員にちゃんと衣装が配られている。

 

 

「いいや、まさか……ツバサ、お前が昨日聞いてきたことって」

 

「そうよ」

 

 全てを聞く前に返答があった。

 

 

「昨日拓哉君に衣装データを借りたのはこのためだったの。私達の学校でならもっとたくさんの人材がいるし、それだけ衣装も多く作れるってこと」

 

「けど、これだけの人数はどうしたんだよ?」

 

「元はμ'sとA-RISEが始めたイベントでしょ? そしたらうちのとこにも参加メールがたくさん届いてたの。だからちょっと驚かせようと秘密にしておいたのよ。どう、驚いた?」

 

 そのまさかであった。

 しかしこれで合点がいく。UTXにも全国のスクールアイドルから参加メールが届いていたのなら拓哉が人数確認を誤っていたのも仕方ないし、昨日衣装データを突然借りたいと言ってきたことも納得がいく。

 

 

「……ああ、驚いた。改めて思い知らされたよ。さすがA-RISEだ」

 

 μ'sの人気もさることながら、A-RISEだって未だに衰えない人気を誇っている。

 それがここにきてまたしても証明された。

 

 スクールアイドル界において絶大な人気を誇る2大グループがイベントを開いたのなら、これに参加しないスクールアイドルはいないと言わんばかりの集まりと言えるだろう。

 

 そして、1500人がセンターに道を譲るように分かれていく。

 

 

「さあ、時は来たわ」

 

「大会と違って、今はライバル同士でもない」

 

「我々は一つ!」

 

 余計な人物など誰1人としていなかった。

 まるで世界の中心はここだと言っているかのような熱さを声に出して全員が言い放つ。

 

 

 

 

 

『私達は、スクールアイドル!!』

 

 

 

 

 

 1500人から放たれる声には確かな力があった。

 どこかの登場人物Aや通行人Bなどではない。一人一人が、明確な主人公としてそこに立っていた。

 

 モブなんてものは存在しない。

 主要人物しかいないこの場には、岡崎拓哉でさえ自分の存在がちっぽけだと思ってしまうほどだった。

 

 

(すげえ。みんながみんな主人公の顔してやがる。これじゃ失敗の二文字なんて到底出てきやしないな……)

 

 手伝いでしかない自分が一瞬で霞んでしまうような顔立ちをみんながしていた。

 そして、()()()()()()()()が前へ出た。

 

 

「みんな、今日は集まってくれてありがとう! いよいよ本番です。今の私達なら、きっとどこまでだって行ける! どんな夢だって叶えられる!」

 

 その場にいる全ての者の心を動かす言葉が紡がれていく。

 あまりに純真無垢であって清純で純粋なドストレートな言葉は、スクールアイドルをしている者達の純心へすんなりと入っていった。

 

 空にいる太陽へ手を掲げる。

 さあ、準備は整った。

 

 

 

「伝えよう。スクールアイドルの素晴らしさを!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Music:スクールアイドル/SUNNY DAY SONG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何だよ、これ……)

 

 

 

 

 まさに壮観であった。

 約1500人のスクールアイドルが似た衣装を着て、歩行者天国で同じ曲を同じ振り付けで踊っている。

 

 言うだけではシンプルに聞こえるかもしれないが、実際に見てみると心が躍るような光景でしかなかった。

 他の観客と一緒に歩道で見ている拓哉がただ見ているしかできないほどに、このイベントは成功と言っても過言ではないだろう。

 

 テレビの中継はちゃんとされているだろうか。ちゃんとリポートしてくれているだろうか。プロに任せている部分では何か不備があったりしないだろうかなど、自分達が何もできない箇所にある懸念も不安も何もなかった。

 

 これだけの人数が集まりこれだけのパフォーマンスがされていれば、心配なんて気持ちはもはや野暮にすらなってしまう。

 今はただこの生の光景をできるだけ記憶に留めておく努力が必要とされた。

 

 大規模な集団の中心にいるのは言わずもがなμ'sとA-RISEであった。

 スクールアイドルのためのイベントとはいえ作詞作曲に振り付け、イベントの発起人でありスクールアイドルのトップを飾るグループとしてこういうポジショニングになったのだ。

 

 率直に言って、映えていた。

 周囲のスクールアイドルの踊りがμ'sやA-RISEの存在を際立たせている。そして逆にμ'sやA-RISEの存在が、周囲のスクールアイドルの存在を確立させていた。

 

 そんな誰もが楽しんでいる時間も、もう終わりを迎えようとしている。

 

 

(これが、スクールアイドル)

 

 μ'sやA-RISEだけじゃない。

 スクールアイドルにはこれからまだまだ先がある。

 

 同等かそれ以上の存在だって出てくるかもしれない。そんな期待が充分にできそうなイベントだった。

 これだけのクオリティーとライブができるのなら、秋葉ドームでラブライブも開催できるだろうと思う。

 

 例え、これからのμ'sがいなくなっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は夕方を差していた。

 

 

 陽も沈みかかっており、イベントも終わって遠くから集まってくれたスクールアイドル達も帰り色々と撤収して完全終了しようとしている最中だ。

 そんな中、ようやく撤収作業もほとんど済んで比較的学校も近いスクールアイドル達が集まって最後の挨拶でもしようかとしている時、誰かが案を出した。

 

 せっかくだし写真を撮ろうと。

 

 

「おーし、んじゃ撮るぞー」

 

 というわけで最近写真撮影を趣味にし始めた素人少年の出番であった。

 およそ30人となったスクールアイドル達から返事を聞いてカメラを構える。

 

 

「2人共重いよ~」

 

「ちょっとにこ押さないでよ~」

 

「気にしない気にしなーい!」

 

「みんなふざけないの~」

 

「おい、撮られる気あんのかお前ら。そんなショットもオフショ的なノリで撮っちゃうからな拓哉さんは」

 

 主にμ'sがふざけちゃっていた。

 ラブライブ優勝グループがこんなもんだから他のスクールアイドルは何も言えなかったりする。

 

 

「はいはい、気を取り直していくわよー」

 

 そこにA-RISEの頼れるリーダーツバサの一言で再び全員がカメラの方へ向く。

 

 

「準備はいい? 拓哉君」

 

「いつでも」

 

「それじゃみんな、練習したアレいくわよ!」

 

(ん? 練習したアレ? 何のことだ?)

 

 僅かに拓哉が疑問に思っていてもお構いなし。

 そのままカメラの前にいるスクールアイドルが合図を言った。

 

 

「せーのっ!」

 

「「「「「「「「「ラブライブ!!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 何ともスクールアイドルらしい写真の合図であった。

 

 

 

 

 

 

 

 撮れた写真を確認してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こりゃ一生もんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いかがでしたでしょうか?


スクールアイドルのためのイベント、これにて終了。
そして次回、約4年という長きにわたって書き続けてきたこの作品もいよいよ最終回です。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!

では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった


オータムリーフさん


1名の方からいただきました。
最初期から読んでいただいてたようで光栄です!本当にありがとうございました!
まだ高評価入れてない方がいたら是非ともよろしくお願いします。今後のモチベになります!




とうとう来週に最終回。二次創作といえどここまで書き続けてきたので何とも感慨深いですね。
どうか、最後のその時まで。
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