ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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どうも、お久しぶりですたーぼです。


書き溜めていた『悲劇と喜劇の物語』のデータが全て消えここ数ヵ月心がポッキーになっていたのですが、何とか頑丈なトッポに治りましたのでとりあえずこちらをちまちま再開していきたいと思います。

久々の投稿ですが、やはりこの作品といえばのコメディー出しまくりですのでよろしければ気楽にどうぞ。




AFTER STORY
AFTER1.挨拶は挨拶でも内容によっては死を覚悟するものである(前編)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 挨拶。

 

 

 

 

 それは新たに顔を合わせた際や別れ際に行われる、礼儀として行われる定型的な言葉や動作のことを指す。また、式典などで儀礼的に述べる言葉をいうこともある。そして、日常生活には欠かせない人と人とが気持ちよく生活できる言葉でもある。

 

 要するに、『おはよう』や『こんにちは』、『さようなら』など、日本で育った者なら必ず一度は言ったことのある馴染み深い習慣だったりする。

 

 

 しかしこの日本、生粋の日本人でさえよく日本語が難しいと思うほど同じ単語でも意味が複数あったり、言い方によっては相手の感情を逆撫でしてしまう。だから日本人は自分の言葉遣いに繊細な扱いが要求されるのだ。

 

 

 それは、特別重圧が圧し掛かりそうな大事な場面では、特に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 でもってここは高坂穂乃果の家、『穂むら』という店の中にある一室。

 そこに岡崎拓哉を含む“元”μ'sの面々がいた。

 

 秋葉ドームでファイナルライブを無事に終えたμ'sは宣言通り解散。

 スクールアイドル界に数々の伝説と奇跡を残し、スクールアイドルの歴史に間違いなく名を刻んだグループとなった。

 

 そしてそれが終われば彼女達はただの女子高生、音ノ木坂学院を卒業した絵里、希、にこに至っては大学生となる。と言っても今はまだ春休みの途中であり、何だかんだで暇だから集まったわけではあるのだが……。

 

 

 不気味な微笑みを含ませている穂乃果達とは打って変わって、黒一点我らが頼れる主人公岡崎拓哉は顔色悪く嫌な汗を垂らしながら俯いていた。

 

 

「ほらたくちゃん。そろそろ覚悟決めなよ」

 

「……、」

 

 そう促してくるのは高坂穂乃果。

 元μ'sのリーダーで発起人。天性のカリスマ性を持ち、音ノ木坂学院を廃校寸前という窮地から救った張本人の一人。その行動力は他者を動かす原動力ともなる。そして、拓哉の彼女でもある。

 

 

「そうですよ拓哉君。せっかくの機会なんですし、男としてここははっきりさせておきましょう」

 

 凛とした声で言ったのは園田海未。

 文武両道、現代では珍しい大和撫子という言葉がもっとも似合う女子高生。極度の恥ずかしがり屋だったが今では克服し、ほぼ無敵女子となった。そして、拓哉の彼女である。

 

 

「たっくん、行こ?」

 

 甘く囁くように言ったのは南ことり。

 裁縫、衣装作りとなると右に出る者はいないほどの実力を持っている。穂乃果達幼馴染のやり取りをいつも笑顔で見守りつつ、いざという時は拓哉を殺人級の笑顔を使って吹っ飛ばす。当然、拓哉の彼女である。

 

 

「私もこういうのは早めのほうが良いと思ってるの。だから、拓哉、ね?」

 

 諭すように優しく言うのは絢瀬絵里。

 日本とロシアのクォーターであり、元μ'sのまとめ役を難なく務めた、いわば根っからの生徒会長気質。しかし少々世間知らずなとこがあり、ゲームセンターなどに行くと初めて見るものに興味津々となる少女でもある。拓哉の彼女。

 

 

「拓哉君、善は急げって言うやん?」

 

 似非関西弁でニヤけているのは東條希。

 過去に親の都合で転々と引っ越しをしていた少女。今は一人暮らしをしており、たまに不正確な関西弁とカード占いが趣味なスピリチュアルな部分もある。無論、拓哉の彼女だ。

 

 

「そうそう、何今更怖気づいてんのよ」

 

 強気に言ったのは矢澤にこ。

 スクールアイドルに強く憧れ、自身もそうなりたいと思い1年の頃からアイドル研究部に所属していた。部にたった1人残る形になっても諦めなかった精神と下の姉弟の世話を見れるほど面倒見がいい。やはり拓哉の彼女である。

 

 

「いい加減素直になったらどうなのよもう」

 

 呆れながらツンと言い放ったのは西木野真姫。

 世界に誇れる医療技術を持っている西木野総合病院の一人娘。当然お嬢様レベルの金持ちで性格もツンデレ多めなお姫様だ。しかもその名に恥じない学力とピアノの実力者でもあり、作曲に関してはピカイチ。そんなお嬢様も拓哉の彼女なのだ。

 

 

「拓哉くんが良ければ、私も嬉しいなって……」

 

 控えめに主張したのは小泉花陽。

 性格は他の者と比べると奥手ではあるが、アイドルの話になるとにこと同等かそれ以上の饒舌になる。大のお米好きで、お米があればそれだけで生きていけると断言するほどの愛好家。彼氏は拓哉。

 

 

「こういうのはパッパッといったほうがいいんだよたくや君!」

 

 元気に笑顔で口にしたのは星空凛。

 運動神経ならこの中でも断トツでトップを誇る活発代表。それと同時に成績も断トツでワーストを誇るバカ代表でもある。反面、メンバーの中でも随一の乙女力を持っていて女の子らしさで言えば凛を上回る者はいない。そんな乙女も拓哉の彼女だ。

 

 

 そして。

 

 

 そして。

 

 

 そして。

 

 

 彼女達にそう言われようと俯いたままでいるのは岡崎拓哉。

 音ノ木坂学院唯一の男子生徒であり、学校を廃校から救うためにその手伝いとして一躍を買ったヒーローの一人である。そしてこの世界で9人の女の子を彼女にしているというある意味罪深い選手権第一位の男でもあった。

 

 そんな世のモテない男子から間違いなくこう思われているであろうクソ野郎こと冷や汗だらだら少年は、少女達に迫られてようやく一言を発した。

 

 

「ちょっと仮病気味なんで家に帰ってもいいですかね」

 

 顔面に穂むまんが直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し前まで遡る。

 事の経緯はこうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファイナルライブも終え、絶賛春休みを満喫中の10人。全員が恋人ということもあり集まるときは自然とこの10人になることが多い。

 そして今日も普段と変わらず穂乃果の家に集まったのだが、今日は何だか彼女達の雰囲気がいつもと少しだけ違うような感じがした。

 

 何気なく繰り広げられる和気あいあいとした会話に女の子だらけの空間だからかほんのりと甘い香水の香りが漂う、いつも集まるときと変わらないはずなのに、どこがおかしいと感じたのか。

 

 きっかけは穂乃果の一言だった。

 

 

「そういえば私達の関係ってお父さん達にどう説明すればいいのかな?」

 

 当然、それを聞いて一番最初に反応を示したのは岡崎拓哉だ。

 マンガで例えるならあまりにも分かりやすく体をビクゥッ! と震わせていた。

 

 

「言われてみれば確かに難しいかもね」

 

「改めて私達の関係性を客観的に見てみると不思議というか、普通に考えるとあり得ないものだもの」

 

 ことりと絵里があからさまに打ち合わせでもしたかのようなセリフ染みた言葉を言う。

 それに続くように希が口を開き、

 

 

「そうやねえ。付き合ったのがまだこの前って言っても、ウチらはもうすぐ大学生やし、外堀を埋めるなら今の内かもしれんなあ」

 

「……あ、あの……ひ、姫様方……? い、いったいぜんたい……何を急に仰っていらっしゃるんでしょうか……?」

 

 冷や汗に困惑の表情を見せる拓哉に対し、9人の女神はそれを意に介さず話を進めていく。

 まるで、この一連の流れ全てを元から決めつけているようなとんとん拍子ですらあった。

 

 

「何をって、もちろん今後のことを決めてるんだよ?」

 

「いや、だから、そのですね? 何で急にこんな話になったのかっていう疑問もあるけど、それ以前に話の内容が俺にとって不穏というかこの先の人生において俺の安否が不明になるんですが……」

 

「それを乗り越えるのがたくちゃんの役目だよね。だって私達と付き合うって決めたのはたくちゃんなんだしっ」

 

「……、」

 

 ぐうの音も出ねえほどの正論であった。

 

 9人と付き合う覚悟は確かに決めた。誰にどう言われようが構わないと決めた。世間の声なんて知るかと吐き捨てた。

 だがしかし。だがしかしである。

 

 その場のノリというわけではないが、初告白で盛大に道を踏み外した自分を思い返すとよく分かる。

 自分の直近の未来を考えていなかったことに。

 

 

「ということでたくちゃん、まずは私のお父さんに挨拶をしよーう!」

 

「嫌だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

 そう、全員が初恋で恋人となるほど純情なのだ。

 つまりチャラいパリピのように付き合っては別れるみたいなのが当然になるような思考にはならない。

 

 ともすればごくごく自然に健全で純粋な男女達はこう解釈している。

 無垢な10人は全員もれなく結婚を前提として付き合っているのだ。

 

 付き合う男女がいるならば必ずやってくるのが親への挨拶である。

 世間の男性はそれだけで重圧に呑まれそうになるのだが、それさえ無事に終わってしまえば後は楽になったりするものだ。

 

 しかし、それは世間一般の普通だった場合の話。

 岡崎拓哉の場合、何度も言っているが9人の女の子と付き合うというあまりにも現実離れした行為を行っているため、そしてそれが成功してしまっているために、世の男性よりも8人分の重圧が加わってしまう。

 

 プレッシャーに弱いというわけではないが、さすがに9人の両親へ挨拶となるとどうしても心に余裕がなくなってしまうのも無理はないのだ。

 

 

 

 

 

 そんなわけで開幕のやり取りにまで時間は戻る。

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、仮病気味って明らかな嘘しかない日本語で逃げようとしてんじゃないわよ」

 

 にこから直球ドストレートほむまんを顔面直撃された拓哉は見事床に倒れ伏せていた。

 

 

「どっちみちいつかは言わなきゃいけないことなんだから、それを早く終わらせようってだけでしょ。おら、倒れてる場合か立てやヘタレ」

 

「にこっち言動と行動が矛盾してるようにしか見えんのやけど。拓哉君立ちたくても顔にほむまんめり込んでるせいで視界失ってるよ」

 

 どこかのネコとネズミが追いかけ合うアニメのような演出みたいに顔面にほむまんが埋まっている彼氏。

 完全に妖怪ほむメンたらし野郎の誕生であった。

 

 

「うん、良い感じに緊張もほぐれたみたいだし、本番行ってみようかたくちゃん!」

 

「全然ほぐれてないんだけど。ほぐれたの顔面の筋肉だけなんだけど」

 

 とは言ってもこれ以上は誰も待ってくれないらしい。

 時間が長引けば長引くほど余裕を失うのは自分だけらしい。いよいよ覚悟を決めるしかないか。

 

 

「あーもうくそっ! こうなったらやけだ。やれるとこまでやってやる! 言えばいいんだろ親御さんに!」

 

「そうそう、やっとやる気になってくれたにゃ!」

 

「骨だけは拾ってあげます」

 

「当たって砕けろだよたっくん♪」

 

「死にさえしなければうちの病院で治療してあげるわ」

 

「基本的に俺が死ぬ前提なのやめてくんない?」

 

 散々な言われようであった。

 これが両親に挨拶させようとした彼女達の言い草なのが何とも言えない。おそらく無事では済まなさそうなのが確定した。

 

 

「さあたくちゃん! いざ私達との幸せな将来のため、レッツトライだよっ!」

 

「嫌だよう、死にたくないよう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何ともまあ頼りのなさすぎる第一声であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッピーエンドを迎えた少年達の、その先のちょっとしたストーリーが今、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 さて、いかがでしたでしょうか。


 久々すぎる投稿で少し書き方を忘れているのはご愛敬。

 番外編というかAFTER STORYというか……みたいなもので、活動報告で読者の皆様からいただいた読んでみたい話のアイデアをさっそく使わせていただくことに。
 ですが初っ端なので短すぎず長すぎずを意識した結果、前編という形にさせていただきました。

 このお休みの間にラブライブも色々なことがありましたね。
 自分にとってはラブライブフェスでμ'sも出るということや9周年記念のPV付ニューシングルが制作決定となったことでしょうか。
 それでラブライブ熱が再燃した結果のこの投稿です。
 これまで通り毎週更新というわけにはいかないやもしれませんが、また更新し始めたのかと思った際にはぜひ読んでやってください。



 では、久々に新たに高評価(☆10)を入れて下さった、


 チェケたんさん

 黒~傍観者の傍観者~さん

 超ギーノ人2さん

 ミュンヒハウゼンさん

 ここじさん

 Вишневое деревоさん


 計6名の方々からいただきました。
 番外編も楽しみにしてくださっていたようで、本当にありがとうございました!!
 これからもご感想高評価お待ちしております!







 久々すぎて小説書くのこんな難しかったっけ……って約4年も書いていたのに思う始末。

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