ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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まだ平和……


26.いつもと変わらない日常

 

 

 

 

 アラームが鳴った瞬間にそれを止める。

 

 

 

 

 

 

 昨日早めに寝たおかげか、今日は目覚めがよくすぐに起きる事ができた。

 体を起こし外を見ると、鳥の鳴き声が心地良く耳に入り、雨が降るというような雲が一切ない、つまりは快晴だった。今日やるイベントは室内で行われるから直接的な関係はないが、こう晴れてるのを見るとやはり悪い気はしない。

 

 

 

「……眩しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は、新入生歓迎会の日、当日。

 

 

 

 

 

 

 ―――――――そして、μ’sのファーストライブの日。

 

 

 

 

 

 

「うし、行くか!」

 

 

 

 

 

 気持ちは万全である。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、今日新入生歓迎会の日だよね?」

 食パンをかじりながら唯が問うてきた。

 

「ああ、そうだよ」

「そっかぁ、いいな~。私も見に行きたいんだけどな~」

「お前は中3だから無理なの分かってるだろ?」

 何この子、飛び級をご所望なのかな?そんなの無理に決まってんでしょ!三千院ナギくらいにならないと無理だぞ。そのためにはまず借金地獄に陥っている少年を雇わなければならないのが絶対だ。そいつ絶対強いから。

 

 

「分かってるよぉ。でも穂乃果さん達のファーストライブやるんでしょ?私も見たかったなぁって」

「そゆことね」

 今回は中学生などが来れるオープンキャンパスではなく、新1年生のための新入生歓迎会だ。親はもちろん他校や中学生は見れないのである。親が来るってなったら絶対海未が逃走中ばりに逃げ出すな。

 

 

「あ、じゃあせめて穂乃果さん達に頑張ってって伝えといてよ!」

「おお、そのくらいお安い御用だ。任せろ、一字一句間違えず伝えてやる。とりあえずファイトだよっって伝えればいいんだな」

「意味合いは同じだけど一字一句合ってすらないよ……」

 相変わらず優しいな我が妹は。だがツッコミがまだ甘い。そこはもっと熱く、一文字も合ってないでしょうがぁ!くらい言わないとだな。もっと熱くなれよぉ!

 

「ま、概ねは伝えとく。あいつらも唯に応援されたって分かると喜ぶだろうしな」

「そうなの?」

「ああ、凄く喜ぶぞ」

 そう、何故か穂乃果達は唯にとてつもなく甘いのだ。あの海未までもが唯を甘やかすレベル。何故俺も一緒に甘やかしてくれないのか甚だ疑問である。とにかく、穂乃果達は唯に甘い。まるで唯に気に入られたいかのように。まぁ唯はこんなにも可愛いからな。気に入られたいのも分かる。

 

「ふーん、よく分かんないけどよろしくね!」

 ほうれ見ろ。こんないかにもにぱーってな感じで笑顔を向けられたら誰だって甘くなってしまう。砂糖にハチミツを加えて、その上に更にメープルシロップとキャラメルソース、チョコレートソースを混ぜたような感じになる。…甘すぎて胸焼けしそう。

 

 

 

 

 

「さて、んじゃそろそろ俺は行くわ」

「うん、お兄ちゃんも頑張ってきてね!」

「…俺は頑張る立場でもないんだけどな。まぁ、それなりにやってくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、たくちゃん!おはよぉ!」

「珍しいな。すぐに出てくる事はあったけど俺が来る前に外にいるなんて」

「なんせ今日が本番だからね!気合いも入るよ!」

 なんと、俺が穂乃果の家の前に来ると既に穂乃果が待っていたのだ。楽しみにしすぎだろ。遠足前夜の子供か。

 

 

「気合い入るのは一向に構わんが、空回りだけはすんなよ」

「元気ないよりかはいいでしょ!」

「あーはいはい、さっさと行くぞ。早く行けるに越した事はないからなー」

「うわーん!待ってよたくちゃーん!!」

 あ、こいつ。大きい声出すんじゃありません!穂乃果の声を聞きつけた大輔さんが来たらどうするんだよ。学校じゃなくて病院行くはめになるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おはよう穂乃果ちゃん、たっくん!」

「おっはようことりちゃん!海未ちゃん!」

「おーす、今日も可愛いなことりは」

 朝から天使の顔を拝めるとか最高かよ。僕は今日からことりん教に入信します。

 

 

「おはようございます、穂乃果」

「おはよう海未ちゃん!今日は早いでしょう!?」

「ええ、いつもこのくらいの早さならいいんですけど」

「うっ、それを言われると……」

 全くだな。いつも迎えに行ってやってる俺に報酬くれてもいいくらいだぜ。…やだ、俺ってば通い妻……?女じゃねえよ。

 

 

 

「……その、拓哉君も…おはよう…ございます……」

「…あ、ああ、おはよう」

 せっかく忘れかけてたのにそんな顔されたら嫌でも思いだしちまうだろやめろ。やめてっ、顔赤らめるのだけはやめてっ!色々と勘違いしちゃうから!こんなに顔赤らめて、もしかしたらこの子俺の事好きなんじゃね?と思っていざ聞いてみるとドン引きされて振られるとこまで想定しちゃうから。…想定出来ちゃうのかよ。

 

 

「どうしたの、たくちゃん?」

 おぉう!?いつの間にそんな近くまで来てたんだよ。近い近い、離れろ。良い匂いするけど。

 

「いや、なんでもねぇよ」

「むぅ~、ホントかな~?何か海未ちゃんもいつもとちょっと違うような……」

 何なのこいつ。なんでこういう時だけ変に鋭いんだよ。嘘発見機でも体の内部に仕込んでんの?サイボーグなの?ターミネーターなの?溶鉱炉の中に親指立てながら沈んでいくの?アイルビーバックなの?

 

 

「わ、私はいつも通りです!」

「そうだぞ穂乃果。海未は今日のライブでちょっと緊張してるだけで、それ以外はいつもと変わらんぞ」

 速攻海未のフォローをしておいた。だから顔赤くしながら言っても逆効果ですよ海未さん。穂乃果が余計怪しんだらどうすんだよ。……あれ、そういや怪しまれて何か俺にデメリットってあったっけ?

 

 海未は冷え性の俺を気遣ってあの提案をした。ならあの提案をした海未は優しさに誇りを持つこそすれ、怪しまれないようにしないといけない訳ではないはずだ。……そうか!理由は何であれ、俺が女の子と手を繋いだのは事実。穂乃果達にセクハラとして通報されないように黙っていてくれてるのか!

 

 何か心に微かな傷が出来たのは気のせいかもしれないが、ここは海未に感謝しておこう。というかさっきからことりさんがずっと笑顔で見つめてくるんですけど。何だろう、笑顔なのに何故か物凄い圧を感じる。まさかこれは覇気…!?奴め、悪魔の実の能力者か!

 

 

「…ほれ、行くぞ。ずっとここにいても学校に着かねえままだ」

 ここはもう何かしらの追及がくる前に現状打破した方がいいだろう。という事で話を切り替えさせてもらいます!

 

「あ、また置いてくつもりー!?」

 だまらっしゃい、ホントなら俺だけ走って逃げたい気持ちを必死に押し殺してるんだからな。

 

 

 

 

「そんな事より、お前らは今日のライブの事を考えてろよ」

「もう考えまくってるよ!何ならそれしか考えてなくて授業が頭に入らないまである!」

「……おい、それは誰のマネをしてんのかな?」

「誰ってたくちゃんに決まってあだっ!」

「似てないし俺のマネすんな」

 

 すぐに俺のマネって分かってしまった俺もアレだけど。お前がやるとマジでそうにしか聞こえなくなってしまう。特に授業が頭に入らないとことか。あれ、それっていつもの事だよね?いつも聞いてないのに余計聞かなくなるとどうなんの?悟りの境地でも開くの?

 

 

 

 

 

「あっ、そういや唯からお前らに伝言があったわ」

 あぶないあぶない、まだ1時間も経ってないのに忘れるところだった。俺に若年性アルツハイマーは早いわさすがに。

 

 

「え、唯ちゃんから伝言?なになに!?」

「私も気になる~!」

「それは聞き捨てなりませんね……!」

 おい、お前らのその食い付き方おかしいだろ。どんだけ唯大好きなんだよ。岡崎唯ガチ勢にでも入ってんのか。俺がガチ勢第一号なんだからお前らはもっと俺に敬意を払うべきだぞ。

 

 

「たった一言だけど、頑張って、だってよ」

 うん、なんか嘘教えると後が怖そうだったから素直にちゃんと伝えたよ。拓哉さんホント偉い。こいつらの事だから嘘教えるとすぐバレそうだしね!

 

 

 

 

 

「うん……うん、よし、私燃えてきたよぉ!!」

 俺の応援より気合い入ってる感じがするのは気のせいだよね?気のせいじゃなかったら結構へこむよ?燃えてきたって何、どこかのギルドに所属でもしてんの。ドラゴンスレイヤーなの?ルーシィ可愛いよね。

 

 

「私もぉ~!」

 ああんもう可愛いっ!俺もぉ~!……おふ、吐き気が……。

 

 

「今なら地面を割れそうな気がします」

 ちょっと待てお前だけはちょっと待て。キャラ崩壊もいいとこだぞ。応援貰ってそんなに強くなれたら誰も苦労しねぇぞ。地球割りでもすんのか。アラレちゃん目指してんのか。そこは普通に私も頑張れそうです、とか無難な感じでいいんだよ?

 

 

 唯の言葉には何か魔法でもかかってるのかもしれない。あの海未でさえこんな事を言いだす始末。さすが唯、俺の妹に不可能という文字はないな!今度唯と外を出歩く時は男子の視線に注意しなければならない。ずっと俺が威嚇しとけば唯も安全だろう。

 

 

 

「よぉし、なら学校近くまで競争だぁ!」

「やだよ」

 え、何で急にこんな事言いだしてんのこの子。テンション上がり過ぎだろ。ことりはともかく海未も何クラウチングスタートしようとしてんの?君達唯の言葉に舞い上がりすぎじゃないですかね……。

 

「何で!?」

「何でもなにも、何で今日ライブ本番なのに朝から疲れる事しなくちゃならないんだよ」

「ノリだよ!」

「そんなノリはいらん。口にでも付けて開かなくなるようにでもしとけ」

「それは糊だよ!」

 

 お、今のはナイスツッコミだったぞ。ただし漢字で書けと言ったら無理そうではある。さっきから海未さんがクラウチングスタートのまま動かないんですが。大丈夫ですかこの人。人の話聞こえてますか。

 

 

「ならたくちゃんは走らなくていいよ!ジュース奢ってもらうだけだしね!ってな訳で、ヨーイドン!」

「…………え。ちょ、ま」

 俺が声を掛ける前に穂乃果は駆け出して行った。ことりも穂乃果に着いて行っている。海未は綺麗にクラウチングスタートを決めていた。

 

 

 

 

 

 

 いやいやいやいやいやいや、ジュース奢らないといけないとか聞いてませんよ!?つか拒否権はないの?って言ってももう俺以外ここには誰もいない。……まさか海未め、こうなる事を知ってずっと黙ってやがったな。ことりもことりで笑顔で黙ってたし可愛かったし。

 

 

 

 

 

 

「……しゃあねぇ」

 このまま1人でゆっくり登校して学校に行くのも悪くはないが、何だかあいつらに負けるのは癪だ。というか男なのに女の子に負けたくないというプライドが沸々と湧き上がってくる。

 

 

 ……穂乃果達は、と……曲がり角を曲がった所か。距離でいうとざっと50メートル離れているくらいである。

 なら。

 

 

 

 

 

 

「いける」

 

 

 

 少しスゥっと息を吸い、ゆっくりと吐くと同時に、全速力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果的に言うと、俺の圧勝だった。

 

 

 

 

「なんで……なんでなんでなんでなんでなんでぇ~!!」

「はっはっはっ!!確かにお前らは練習で体力は付いてるが、俺の方がステータスも遥かに上だった。ただそれだけの事さ!」

 俺が息切れせずに立っているのと対照的に、穂乃果達はへたり込んで見事にぜえぜえ言っている。海未もさすがに全速力で長距離は疲れたようだった。

 

「拓哉君……よくあの距離から追い越せましたね……」

「まぁ50メートルくらいなら何とかなるだろ。それに俺は男だし元々の身体能力が違うしな」

 穂乃果とことりはともかく、海未は弓道やら家での習い事で武道を嗜んでいる事もあり、やはり2人に比べて体力はあった。俺に距離を離される穂乃果とことりと違って、海未はギリギリまで俺に着いて来ようとしていた。

 

 しかし俺がまたスピードを上げた事によって結局海未も俺から大分離されたという訳だ。いやぁ、振り切りながら海未の方を見た時の海未の驚愕した顔と必死さからの絶望した顔は堪らなかった。普段お仕置きされてばっかだから良い気分だったわ!…大体俺の自業自得なんだけどね。

 

 

 

「という訳で俺が1位だからビリの奴にジュース奢ってもらうぞ。ビリはっと……あ」

 海未が困ったような顔で、穂乃果が安堵した顔で、そして、ことりは少し涙目になっていた。

 

 

「私ビリじゃなくて良かったー!奢りはことりちゃんだね!」

 おいぃ、ちょっと黙ろうか穂乃果ちゃん?ことりちゃんが女の子座りで涙目になってるんだぞ。それも学校近くの人通りができる中で。しかも俺以外が今疲れて座っている状況。つまり、色々と視線が痛いです。

 

 

「たっくん……ジュース……いる……?」

「いらん」

「ええ!?何で!?たくちゃん勝ったんだよ!?」

 うるさい黙れぇ!ここで本当に俺が奢らせてみろ。今の視線が攻撃的な視線に早変わりするぞ。それだけはどうしても避けなければならない。

 

「まぁ、正しい判断ですね」

「ルールなんだよ!?守らないといけないって言うのがいつもの海未ちゃんでしょ!?」

「ええいうるさい!勝った俺が言うんだからいいんだ!勝者こそが絶対だ。敗者は口を開くんじゃねえ!何ならことりに奢ってもらうより俺がジュース奢ってやるまである」

 いやもう卑怯でしょ。あんな顔されたら罪悪感で死にそうになるわ。ことりに払わせる金はねぇってな。穂乃果ならばっちり奢ってもらうっすウッス。

 

 

 

 

 

 

 結局、俺はそこらの自販機で穂乃果達全員にジュースを奢ってやる羽目になった。

 

 

 

 

「まさか私と海未ちゃんにまで奢ってくれるなんてね」

「一体どういう風の吹き回しなのでしょうか」

「ちょっと?俺の信頼度低すぎない?……まぁあれだ、今日がライブ本番だし、ちょっとした景気付けみたいなもんだ」

 俺がことりだけに優しいとかいう偏見は置いといて、まぁ間違ってはいないが。せっかくの本番ライブに変な疲れは残させたくはない。というのが俺の本音だったりする。

 

 

 

「うへ~、なら毎日ライブやったら毎日たくちゃんにジュース奢ってもらえるんだぁ」

「おいやめろ、俺の財布が軽くなるだろ」

 こいつ悪魔なの?いや、悪魔じゃなくておバカだった。

 

「穂乃果、あまり現実的ではない事を言うものではありませんよ」

 そうだそうだ、もっと言ってやれ。小一時間説教してやれ。

 

「毎日ライブなんて体が持ちませんし、それだけの曲が私達にはまだありません」

「それもそうだねー」

 あぁ、そっちね……。誰も俺の財布の心配はしないのね?どこかいいバイトでも探そうかな……。

 

 

 

 

 

「それに毎日ライブなんて考えるより、今日のライブのリハとかどうするかとかも考えないとだぞ」

「そうですね」

「おぉ、リハって聞くと何だかプロって感じがするね!」

「うん、プロじゃないけどね。思いっきり素人だけどね」

 ちょっとそれっぽい事を自分で言ったり聞いたりすると何かそれっぽい!と思ってしまうのは何でだろうか。俺が前に出て攻撃するから後衛は遠距離攻撃、ヒーラーは回復を頼む。とかオンラインゲームで言うと俺ってガチ勢っぽい……とか思っちゃうのと同じかもしれない。…違うか。違うな。

 

 

 

「昨日もしたんだけど、衣装にもつれがないかとかもう一回チェックしとくね」

「昨日したんならもう大丈夫だろ?」

「そうなんだけど、でもたくちゃん衣装袋持ったまま走ったから……」

「……そうだな」

 実はと言うと、ことり達に会った時にことりから衣装袋を預かっておいた。その矢先に穂乃果が競争とかしだしたから俺は衣装袋を持ったまま走った訳だ。だ、大丈夫だよね?

 

 

「もう、乱暴にしちゃダメだよたくちゃ~ん」

「穂乃果その辺でやめておくのです。拓哉君の顔が阿修羅になってます」

 今の俺は顔が3つに手が複数あるのか。好都合だ。穂乃果がどこに逃げてもとっ捕まえてお仕置きしないとな。ふしゅぅ~……。

 

 

 

「いいんだよたっくん。元はと言えば私がたっくんに持たせちゃったからこうなったんだし、悪いのは私だよ」

 て、天使や……。これはもう磨こうとしても絶対に磨けない程に輝きを放っている天使や。穂乃果もことりのこういうとこを是非見習ってほしいものだ。そうすれば穂乃果も少しはことりみたいになれ…………ないな。うん、無理だわ。

 

 

「だから、ね?ほら、行こ」

「あ、ああ」

 ことりの為すがままに手を引かれる俺はもう阿修羅からおかめ納豆くらいになってるかもしれない。柔らかいなぁことりの手……。

 

 

 そうしてことりを筆頭に、俺達は校内へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあこの問題をーそうだな、高坂、やってみろ」

「…………えっ!?」

 

 

 

 

 授業中。

 我らが担任の山田先生が授業をしているのにも関わらず、穂乃果はまったく話を聞いていなかった。ホントに頭に入ってないよこの子。ことりも思わず苦笑いしてるよ。

 

 

 

「高坂……お前話を聞いてなかったな……?」

「あ、あはは……すいません!」

 いくら初ライブが近いからといって授業を聞かなくてもいい訳がない。これは穂乃果の自業自得である。よって俺は無介入を貫かせてもらおう。

 

「ったく、なんかもういつもの事だから説教する気も失せてきたぞ……」

 どんだけ苦労かけてんだよ穂乃果のやつ。先生、諦めないで!そこで諦めて怒らなかったら先生としての立場的にも問題が浮かび上がりますよ!

 

 

 

「仕方ない、じゃあ岡崎、お前が解いてみろ」

 え、ここで俺にくんの?嘘でしょ。ここは代わりに海未辺りにやらせるのが普通なんじゃないの?…まぁ当てられたのなら仕方ない。やってやろう。

 俺の前でポカンと見てろ穂乃果。ちゃんと話を聞いてる俺と聞いてないお前の違いを見せてやろう。

 

 

 

 

 

「さっぱり分かりません!!」

「歯ぁ喰いしばれ」

「何で!?」

 穂乃果と扱い違いすぎません!?男子だからって容赦なさすぎでしょ!起訴も辞さない。

 

「たくちゃんもダメじゃん!」

「うるせぇ!お前だけには言われたかねえわ!」

 クラスの奴らもクスクス笑うんじゃないよまったく。海未はジト目で見てくるし……穂乃果を見なさいよアンタ。

 

「はぁ……一応言い訳を聞いてやる。言ってみろ」

「いや、違うんですよ先生。俺はちゃんと話を聞いてたんですよ?ちゃんと話を聞いてた上で、俺には数学は無理だって事を思い知らされましたね」

「何を堂々と言ってるんだお前は」

 いやぁ、苦手な教科はちゃんと聞いても分からないって事を今日学べたね。これだけでも今日の授業での収穫は十分だ。よって数学は諦めるのが正解だという事が分かった。なんで数学なのにxとかyとか使うんだよ。英語に帰れ。

 

 

 

「先生、人にはそれぞれ得手不得手があります。なら俺はあえて不得手を捨て得手を極めようと思うんですよ。中途半端に何かをやろうとするよりいっそ一つだけを限界まで鍛えた方がかっこよくないですか?」

「不得手を克服するために授業をやってるんだろうが」

「あ、はい……」

 完全論破で着席するしか俺に残された選択はなかったよ……。おいこら目の前のサイドテール、表情は見えないけど体プルプル震えてる時点で分かってんだからな。笑うならいっその事大笑いしやがれ。そして先生に怒られろ。

 

 

 

「高坂と岡崎は色々と問題があるな……」

「ちょっと先生!それは聞き捨てなりませんよ!俺はこいつと違って数学以外はそれなりに出来ますよ!」

「そうだな、数学以外はそれなりに出来てるな。なのに数学は致命的だな」

 ぐ……お……それを言われると辛い。数学以外は出来るのだ。特に現国などの文系は得意分野。他の教科もまあまあ出来る。だが、数学は無理。もう数字見るだけで嫌になる。でも赤点レベルではないだけまだマシだろう。

 

 

「赤点じゃなければ数学なんて気にしないのが俺の信条なんで」

「そんなくだらん信条は今すぐ捨てろ」

 ヒドイ言われようだった。この人ヒドクない?生徒を教育する気あんの?あまりにも毒が強いんですけど。そこら辺の猛毒持ってるヘビより毒強いんですけど。

 

「穂乃果もなんか言ってやれ。先生に言われて悔しくないのか」

「えー、もう分かんないからいいよー……」

 こいつ、先生を目の前にして思いっきりぐでーっとしてやがる。なるほど、言っても分からないような人に理解してもらおうと思ってるのが悪いのか。なら俺も諦めてぐで~っとしようと思います!

 

 

「ぐで~」

「ぐで~」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつら私を舐めてるようだな……」

「先生、授業を進めましょう。私があとでやっておきますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、これ死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアスになる前はいつもと変わらない日常があるんです。
上げて落とす。
まさに嵐の前の静けさ。



テンポ遅いと思われる方もいるのでしょうけど、1期3話は穂乃果達にとって最初の試練でもあります。
なのでじっくりと進めていくという形になりますが、そこはご了承願います。
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