メンバー加入編がしばらくと続きますが、今まで通り気長に付き合ってやってください。
今回は前回のシリアスに比べて、ギャグを多めにしました。というか自然にギャグが多くなりました。
とりあえず、どうぞ!
気付けば既に翌日になっていた。
昨日は穂乃果達にクレープ奢ってやったのに、さらにそこからゲーセンに遊びに行く事になってクレーンゲームの金も俺が全額出した。ライブのあとなのによくそんなにはしゃいだわねあの子達。
クレープならどうって事はなかったのだが、クレーンゲームはそうもいかない。景品が取れるまでにやたらと金がかかるのだ。しかもそれを3人分ときた。あいつら俺を破産させるつもりだったの?思い出したくないほどに金を使ったので金額は言いたくない。
……まあ、無事にリクエストにあった景品は全て取れたからあいつらも喜んでたし、そこは…まあ、いいだろう。元はと言えば俺が奢るって言ったんだしな。男に二言はないって言うし。しかし、本当に大変なのは家に帰ったあとだった。
一応無事にライブは終わって、ゲーセンで景品取ってやったって唯に報告したら『あーずるいっ!私も欲ーしーいー!』とか急にぐずり出したのだ。何でも穂乃果達に取ってやった景品は茶色いツンツンとした髪型の可愛らしいオオカミのぬいぐるみだったんだが……。
どうやら唯もそれを前から欲しかったみたいで、学校帰りに何度か寄って挑戦するもあえなく失敗という結果が続いていたらしい。そんな時に俺が3つも取って穂乃果達にあげた(取らされた)のがどうにもお気に召さなかったみたいなのだ。
珍しく駄々をこねる妹を冷めた目で見るも、涙目になってまで床を転げまわる姿を見てしまっては世界一のお兄ちゃんを目指している身として放置しておく訳にもいかなかった。だから今度同じぬいぐるみを取ってきてやるという条件でその場を収めさせてもらった。
まさか唯があんなに駄々をこねるとは俺も思わなかったよ。そんなに人気なのかあのぬいぐるみ?まあ、取ってきてやると言った瞬間の唯のパァッとした明るい笑顔は物凄く可愛いと思いました!やっぱ持つべきものは妹なんだよなぁ……。
妹がいれば、いや唯がいれば世界は平和になるな。確実に戦争がなくなってみんながみんな笑顔の妹唯ハッピーライフを送れるわけだ。これは一家に1人唯がいる。よし、さっそく唯に多重影分身の術を教えないと。……チャクラなんてなかった。
っと、ゲフンゲフン、話が逸れたな。最初から逸れてたけど。俺が何故今こんなにも1人で考え事をしているかと言うと、
その理由は目の前の状況にある。
「ふぅぁぁぁ~……ふぇぇ~……」
モッサモッサと草を食っている謎の動物に見惚れていることりがいるのだ。
「ことりちゃん最近毎日来るよねぇ。飽きないのかなぁ」
「急にハマったみたいです」
そう、ことりは最近毎日ここに来てはこの、えっと、何だっけ……パカパカ?カルパス?アルパカ?だっけか?なんかそんな感じの動物に夢中になっているのだ。休み時間に来てはこうして見惚れに来る。俺はそんな見惚れていることりのふにゃっとした顔に見惚れている。まさにwin-winだ。違うか。違うな。
「ねぇチラシ配りに行くよぉ」
「あとちょっとぉ~」
「もぉ……」
頑なに動かないなことりのやつ。分かった。ことりが動かないなら俺も動かん。梃子でも動かんぞ。いつか絶対にことりのふにゃ顔をカメラで撮ってやるんだ。そして額縁にして部屋で永久に飾っておこう。誰にも俺の部屋には上がらせん。
「5人にして部として認めてもらわなくては、ちゃんとした部活はできないのですよ?」
「そうだよねぇ~」
「はぁ……拓哉君も何か言ってあげてください。拓哉君ならことりも動くかもしれませんし」
そこで俺に振ってくる?振っちゃう?梃子でも動かないって言ったよね?……いや言ってないわ全部俺の心の中だったわ。ここで断ったら俺が被害が飛び火してくるし、仕方ないか。
「なぁことり、可愛いってのは分かるが、そろそろ俺達もやらないといけない事があるのは分かるだろ?だからさ、拓哉さんももうそろそろ動いた方がいいかなーって思う訳ですよ。ね?」
「うーん……」
そこまで言うとことりが少し唸り出した。お、これは効いてるか?穂乃果も海未も期待の顔をしている。へっ、俺の手にかかればこんなもんよ!誰でも説得して動かしちゃうもんねー!
「じゃあたっくんも一緒に見よっ♪」
「オーケー分かった。一緒に見ようというか一生見よう」
むしろここに一緒に住もう。この小屋でことりを幸せにしてみせるよ俺!一緒に草食べて頑張っていこうね!
「拓哉……君……?」
「……ハッ!?」
あ、あぶねぇ……!思わずことりの術中にハマってしまうとこだったわ……。い、いや、ハマってないよ?ちょっとそういうフリをしただけだから。ウソジャナイヨ?
「結局振り出しに戻っちゃったね」
「拓哉君も役に立たないで終わりましたしね」
「ちょっと?あなた達も結果出せてないのに俺だけこの言われようっておかしくない?」
男だから容赦なく言っていいってか。ふざけんな!男にだって人権はあるわ!……いや、この幼馴染の中で俺には人権すらなかったわ。ちくしょう目から青春の汗が滲み出てきやがるぜ……。
「うーん、それにしても……可愛い……かなぁ?」
言いながら穂乃果も海未も奥の方にいる茶色い何パカだっけ、まぁいいや。そんな動物の方を見ていた。すると、
ンィィィーッ!
「わぁ!?」
思いっきり怒られてやんの。そりゃ動物なんだし怒る事くらいはあるよな~。
「えぇ~、可愛いと思うけどなぁ。首の辺りとかフサフサしてるしぃ♪お目目もクリクリしてるしぃ♪」
お前の方が可愛いよ、と言いかけて止める。他のお2人さんが怖いからです、はい。でも2人も可愛いよ。やだ、俺ってば女たらしみたい!……天変地異が起きてもねえよ。
「ふはぁ……幸せ~……♪」
くっそがぁ……、めちゃくちゃ写真撮りてぇ……!俺もことりにあんなに触られてぇ……じゃないや何言ってんだ俺バカか。いや触られたいけど。昨日のほっぺスリスリは俺が効果抜群で麻痺したから無効なのよさ。
「ことりちゃんダメだよ!」
「危ないですよ!」
「大丈夫だよぅ―――うひゃぁっ!?」
「ことりちゃん!!」
テメェ今ことりのほっぺ舐めやがったなァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!
くっそぉ!!俺でもまだ舐めた事ないってのに!!動物だからって何でもしていいと思ったら大間違いだぞこのやろうどんな味でしたか!?
「ぁぁ……!どうすれば……!はっ、こうなったらここはひとつ弓で!!」
「ダメだよ!!」「狩猟じゃねえよ!」
パニックになったらホントに何しでかすか分からないなこいつは……。さすがの俺でもすぐ冷静になってツッコミにまわったわ。
ンォォォォォォ!!!
「きゃあ!?」
「うわぁ!?変な事言うから怒っちゃったじゃん!!」
「そ、そんな事言われましても……!」
ことりは舐められた所を拭いてるし、穂乃果も海未もパニック状態になっている。今冷静でいるのは俺だけな訳だ。だったらとる行動はひとつ。
「はぁ、ったくしゃあねえなーお前らは」
「たくちゃん?」
「犬が言う事を聞くように、笛を鳴らせば牛や羊が集まってくるのと同じように、こいつらもちゃんと人間の言葉を理解できるんだよ。だから怒ったんだ。だったらあとは簡単、怒りを鎮めてやればいい」
そう、さっきから茶色いこいつは穂乃果や海未の失礼な発言で怒っていた。つまりはそういう事なのだろう。多少理解できるのなら、落ち着かせる事だってできるはずだ。
「そんな事たくちゃんにできるの?」
「まあ見てな。俺がこの……えー、何だ。逆パカ?カルパッチョ?か何だか知らねえが落ち着かせてやるよ」
「アルパカですよ……」
そうそうアルパカね。何ださっきので合ってたのか。まあいい、とりあえずこの茶色いアルパカをどうにかしないとな。
「ほーれほれ、まあまあ落ち着けよアルパカちゅわ―――、」
カーッペッ!!
ベチャッ!
「あ、服に付いた」
「た、確かアルパカは身を守るために強烈な匂いを放つ唾を吐くと聞いた事があります……」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ブチンッ。
「こんのクソパカがァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」
「ほ、穂乃果っ!!拓哉君を止めるのです!今の拓哉君は何をしでかすか分かりませんよ!もしかしたらさっきの私よりもヒドイ事を考えるかもしれません!!」
「う、うん!!た、たくちゃん!落ち着いて!!」
2人が俺の体にしがみついてくるがそんなのは知らん。今はこいつをどう料理してくれようか……。
「ええいじゃかぁしィィィいいいッッッ!!俺の制服にくっせぇ唾吐きやがったこいつを許してたまるかァ!!ミンチにしてハンバーグにして食ってやらァァァあああああッッッ!!ガルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッッッ!!!!」
「まずいよ海未ちゃん!!たくちゃんが制御不能になっちゃってるよ!!というかしがみついてるせいで凄く臭いよっ!!」
「私だって臭いです!!ですがこのまま拓哉君を放置すると確実にアルパカを料理してしまうに違いありません!!何か他に手を考えなければ…………はっ!そうです。ことり!この前私にお願いをしてきた時と同じように、拓哉君にもそれをやってください!もしかしたら止まるかもしれません!!」
「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかかーーーーーーッッッ!!!」
「うわぁ何か日本語ですらなくなってきたよ!?」
「ことり早くお願いします!!」
「う、うん!……たっくん!!……お、落ち着いて……おねがぁいっ!!」
「やぁアルパカくん、今日も綺麗だね。惚れ惚れするよ」
「い、一瞬で元に戻った……」
あ?何?俺は今ことりに浄化されてとても良い気分なんだ。今なら何でも許しちゃうっ。制服めっさ臭いけどもう許しちゃう!でもせめて着替えたいっ!
俺が制服どうしようかと考えていると、制服の俺達とは違う恰好をした女の子がアルパカの方へと歩いて行った。
「よ~しよし、大丈夫大丈夫」
というより、知っている女の子だった。
「ことりちゃんも、舐められた所大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ。嫌われちゃったかなぁ」
ことりを嫌うとはこのアルパカの目は節穴かな?どっからどう見ても天使だろ!まじえんじぇーだろ!!
「あ、平気です。楽しくて遊んでただけだと思うから……あ、お水変えなきゃ……」
え、ことりはそうだとしても俺のは違うよね?確実に警戒されたから唾吐かれたたんだよね?好感度マイナスにまでなってるよね?凄く臭いよね?何で海未もことりも穂乃果も俺からちょっと離れてんの?俺が1番臭いと思ってるんだよ?泣くよ?
「アルパカ使いだね~」
何を思ったのか、穂乃果は女の子の方へ近寄りそんな事を言いだした。というかあいつ絶対俺から離れるためだろ。口がヒクヒクしてんぞ。プリチーな唇しやがって変態か。俺は。
「わ、私、飼育員なので……」
「ふーん……ん?……おお!!ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃん!!ねえたっくん、花陽ちゃんだよ!」
「知ってるっての……。逆になんですぐ気付かなかったんだよお前は……」
アルパカと同じで目は節穴なの?すぐ人の顔忘れちゃう人なの?良い病院を紹介しようか。
「よぉ、小泉。きの―――、」
「あ、たくちゃん臭いからそこから近づかないでね」
「お、おう……」
何この言われよう。さすがに比企谷くんでもそこまで言われる事はないと思うぞ。実際今の俺超臭いし。半径2メートル以内には人いないし。ATフィールド発生させてないのに人を寄せ付けないとか俺めちゃ強い。めちゃ泣ける。
「駆け付けてくれた1年生の!」
「あの時は本当に助かりましたね」
言っとくけど俺の時間稼ぎのおかげでもあるからね?そこ忘れないでね?あと誰か慰めて。俺1人ぼっちで泣きそう。あと臭い。
「は、はい……」
「ねえ、あなた!」
俺が1人で泣きそうになっていると、穂乃果が何かを企んでいるような顔で小泉の肩に手を置いていた。あいつのあの顔は悪い顔の時だな。悪巧みして、それがあとで海未にバレて怒られるんだよ俺も一緒に。……え、俺も一緒に?大体飛び火して巻き添えくらうんですよねー!あと臭い。
「は、はい!?」
「アイドルやりませんか?」
「穂乃果ちゃん、いきなりすぎだよ……」
ホントいきなりだな。いきなりすぎて俺なら『君だけのアイドルになっちゃうぞ☆』とか言って相手を引かせたあとTwitterに晒されるまである。何それネット超怖い。あと臭い。
「君は光っている。大丈夫っ、悪いようにはしないから!」
「それ完全に悪いようにする人が言うセリフじゃねえか……」
「何か凄い悪人に見えますね……」
見えるじゃなくてもう悪人だよあれ。悪人の顔してるもん。悪魔超人の顔してるもん。……や、嘘、普通の顔してる。キュートな顔してる。だからそんな悪人の顔してこっち見ないで。あと臭い。
「ぶ~……絶対たくちゃん失礼な事考えてたでしょ……でも少しくらい強引に頑張らないとぉ!」
だから何で分かんだよ。普通に怖いわ。あとくさ……あ、しつこい?ごめんね。もうやめるから。でもホント臭いの。結局言っちゃったよ。
「あ、あの……西木野さんが……」
「えと、ごめん、もう一回いい?」
どうやら穂乃果は小泉の声が聞こえづらかったようだ。かくいう俺も聞こえなかった。だって小泉から1番離れてるの俺だし。穂乃果で聞こえないのに俺が聞こえる訳ないだろいい加減にしろ!難聴系主人公じゃないんだよ俺は!小鷹はさっさと友達少ないとか言うのやめろ!
「に、西木野さんが……いいと思います。……凄く、歌、上手なんです……」
「そうだよねー!私も大好きなんだぁあの子の歌声!」
確かに、西木野のあの歌声は素人から聴いても十分に上手いと言える。その上手さに加え綺麗な歌声、そしてあの作曲レベルときたもんだ。あんなに優れた人材はこの音ノ木坂には他にいないだろう。……というか、小泉のやつ、何か様子がおかしいのは気のせいか……?
「だったらスカウトに行けばいいじゃないですか」
「行ったよぉ、でも絶対やだって!ねえたくちゃん」
「ん?ああ、断固拒否だったな」
そう、この前の通り、西木野にはきっぱり断られている。西木野のあの歌声があればもっとμ'sに華が咲いて振り付けにも色々バリエーションが増えると思うんだが。これが中々に難しい。
「え?あ、すみません……私、余計な事言っちゃいましたよね……」
「ううん!ありがとっ!」
そう言って穂乃果はいつもの、誰もが見惚れてしまうような、誰をも陰から輝かせそうな笑顔を小泉に向けていた。小泉もその笑顔をずっと見ていた。俺の勘が正しければ、小泉は何かを悩んでいるようにも見える。
それを穂乃果のあの笑顔が助けてやってくれればいいと思う。誰かから助けてもらうのは別に悪い事ではない。そんなのは生きている全ての人間に言える事である。誰かに助けられ、誰かを助け、そうやって人は支え合って生きている。
だからといって1人でも生きていける人間もいる。これまでも1人で頑張ってきた者がいるのも確かだ。けれど、それだって絶対にどこかで助けがいる。どんな者にでも、誰かの支えや助けがいるのだ。
さすれば、あと必要なのは助けられる者の意志だ。自分の意志でこれからの出来事が変わる。誰かの手を握って引っ張ってもらうのか、それとも背中を押してもらって走るのか、それとも、1人で決心して走り出すのか。
それは当人にしか分からない問題である。あくまで当人以外でしかない部外者である俺がどうこうしようってのが無理な話なのだ。……まあ、それでも勝手に余計なお世話する時の方が多いんだけどね俺は。
結局何が言いたいのかと言うと、最後に決めるのは本人だということだ。あの穂乃果の笑顔で、小泉の抱えている悩みに少しでも良い変化が表れてくれれば、小泉が誰かに相談するなり、1人で決断して突き進むなりすれば、自ずと未来が変わってくる。
だが、これはあくまで俺の推測でしかない。もしかしたらこれは俺の思い込みで小泉には何の悩みもないのかもしれない。
――――と、昨日の俺ならそれで終わっていただろう。
だが違う。
今回は嫌な予感や前兆を感じた訳ではない。確かな証拠がある。
2回目に小泉と会った時、彼女は何かを確実に悩んでいた。悲しい顔をしていた。俺は彼女に言ったのだ。
誰にも言えないなら俺に相談しろと、いっぱい考えて、それでも苦しくなったら、耐えられなかったら、俺の所に来いと。
小泉はそれに了承したのだ。
それは即ち、悩みがあるということ。この前の事だったが、さっきの小泉の顔を見るにまだ解決していないのだろう。どんな悩みかは知らない。けれどまだ解決していないという事は、彼女にとってそれはとても大きな事なのかもしれない。
俺の所に来いと言ったが、小泉はまだ俺の所には来ていない。それは何故か。まだ考えてるから?迷っているから?結論が出ないから?その全てかもしれない。
だが、彼女は確かに言った。『はい』と。なら俺は彼女が来るまで待たなくてはならない。
彼女の言葉を無視して俺が勝手に相談にのろうとしたら、それは彼女の言葉を信用していないという事になる。そんなの彼女に対して失礼ではないだろうか。だから、俺は待つ。小泉を。小泉自身が自分で解決できるならそうなってくれれば良いと思いながら。
「かーよちーん!!早くしないと体育遅れちゃうよー!!」
1人で思考の渦にハマっていると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。小泉の友達である星空だった。次が体育だから小泉も体操着だったのか。そりゃそうか、何もないのに体操着なんて着てたら何があったのだろうと問い詰められる未来しか見えないからな。
……俺も制服から着替えたらダメですかね。
「あ……し、失礼します……」
言うと、そそくさと小泉は星空の方へと駆けて行く。
駆けている途中に俺と目が合ったのは、まあ理由も分からなくはない。今でも葛藤しているのだろう。俺に相談すべきかそうでないかを。それは小泉、お前が決める事なんだ。決心が出来たら俺の所に来ればいい。
「あ、岡崎先輩もいたんだ!にゃっほほーい!」
あの、凛さん?普通にそこからでも俺の事すぐに分かりますよね?見えますよね?いい加減ミスディレクション勝手に発動すんのやめてくんないかな……。人に認識されなくなるのも悲しくなってくるよ拓哉さん。
一応軽く手を振って応答してやる。
それから小泉と星空は俺達に一礼してから走っていった。
「もう時間もないですし、私達も早く戻りましょう」
「そうだね」
「うん……」
見送るやいなや、海未からの発言を皮切りに教室へ戻ろうという案が出る。
しかし、これには賛成出来なかった者がいた。
まあ大体分かるよね。
俺だよ。
「いや、教室に戻る前にさ、俺のこの制服をどうにかしたいんだが……」
俺が言葉を発した瞬間、3人がササッと俺から離れた。おい、さっきも十分に離れてたのに余計離れるとかどうなんですかね。そんなに臭い?……あ、十分臭いわ。
「拓哉君、アルパカの唾の匂いは強烈で洗っても中々匂いが取れないと聞きます」
「あ、ああ……だからどうにかしたいん―――、」
「それにそんな強い匂いのまま授業に出られたら私達が耐えられないよ。特にたくちゃんの前の席の私が!」
「いや、だからね?そのためにもこの制服をどうしようかって話を―――、」
「拓哉君」
「お、おう……?」
何だよ改まって……。何か助け舟でも出してくれるのか。それなら拓哉さん物凄く嬉しいなって。いやホントお願い1番匂いの被害者俺なんだから辛いのよ。香水でもふったらとか一瞬思ったけど、まず香水持ってないしもしかしたら香水の匂いと唾の匂いが絶望なハーモニーを奏でて俺が死ぬかもしれない。
「臭いのでそれで授業に出ないでください!そして私達に近づかないでください!」
う、うせやろ……。
いとも簡単に見捨てられたんだけど。あのことりですらずっと俺に目を合わせないでアルパカの方を見てるよ。……おいちょっと待て、アルパカのせいでこんな事になってんのにこんな状況でもことりさんはアルパカダイスキーを発動していらっしゃるのでしょうか?
ちくしょう、結局俺には味方なんてどこにもいなかったんや!せやかて工藤!……いや今冗談言ってらんないって。マジでどうしよ。今日は体育もないから俺は体操着を持って来ていない。
でもこの制服(学ラン)を脱いで授業に出ると私服になるから確実に先生からチョークの法則アタックを喰らう羽目になる。それだけは回避せねば。それにこの状態で学校内を歩いてみろ。
たちまち他の女子生徒に「あの男子くっさ」とか「1人だけの男子生徒だから大目に見てたけどくっさ」やら「加齢臭くっさ」など「雰囲気くっさ」とか影で言われるに違いない。……おい、雰囲気は関係ないだろ。
仕方ない……。
かくなる上は、手段は1つ。
「保健室に体操着を借りに行く!!」
「まあ妥当でしょうね」
「それが1番に出てくるよね」
「かぁわいい~……♪」
昨日の感動的なシーンは何だったんだ……。
あと臭い。
いかがでしたでしょうか?
シリアスの後には、楽しいコメディが待っている!
気楽に楽しんでいただければと思った所存です。
ご感想は年中無休24時間体制で受け付けておりますゆえ!!
明日は穂乃果の誕編を投稿します!