今回も1話完結です。
いつも本気ですが、いつもより本気は次回から。
10000字超え安定です。
「助けて……!じゃなくて……大変ですう!」
そう言って息切れしながらも確かな言葉を放つ花陽。助けてじゃなかったのね。何だ良かった、じゃねえよ紛らわしいわ。いや花陽だから許すけど。これが穂乃果か凛なら頭に軽くチョップするレベル。
で、俺が1番気になってるのは花陽の言ってる件だ。まあここにいる全員は当然気になってるんだろうが、普通に考えてあの花陽がこんなにも慌てて且つ珍しく声が大きいのだ。只事ではない事だけは確かだと言える。
「花陽、大変な事って何なんだ?」
俺が聞くと花陽は俯いてから、少しずつ息を整えて、やっとの思いで言い放った。
「ら、ら……、『ラブライブ』です!『ラブライブ』が開催される事になりました!!」
「なっ―――!マジかそれ!?」
驚いた。普通に驚いた。まさかこのタイミングで『ラブライブ』が開催される事になるなんて。これは穂乃果もさぞ驚いてるに違いない。
「『ラブライブ』!?……って何?」
思わずずっこけそうになるのを必死で抑える。おいおいマジかよ。さすがの拓哉さんもこれには苦笑いを通り越してハリセンで叩きたいレベルだぞ。……いや、逆に穂乃果だからそれもあり得るか。
「おい穂乃バカ。それを本気で言っているなら手刀かビンタかどちらか好きな方を選べ」
「穂乃バカって言わないでよ!あとどっちも嫌だ!」
何とワガママな。ハリセンないだけまだマシだと思ってほしいくらいなのに。何なら首の後ろから「手刀ッ!」って言って気絶させるまである。……どこの花京院さんだよ。
仕方ない、ここは花陽のあのモードを使うしかないか。
「……花陽、お前の出番だ。穂乃果の他に一応みんなにも『ラブライブ』の事を説明してやってくれ」
「ラジャーですっ!!」
俺が言うと花陽はいつもの大人しくて控えめな態度は打って変わってとてつもない声の張りと素早さに変わりパソコンを起動した。いつもこんな感じならいいのに。いや、あの奥手な感じの花陽も可愛いけどさ。
「スクールアイドルの甲子園、それが『ラブライブ』です。エントリーしたグループの中からこのスクールアイドルランキング上位20位までがライブに出場。ナンバーワンを決める大会ですっ!噂には聞いていましたけど、ついに始まるなんてえ……!」
「はい、説明ご苦労さん花陽」
俺は家で何度か『ラブライブ』の事を調べてたからある程度は知っていた。だけどまさか今日『ラブライブ』開催と発表されるとは思っていなかった。花陽は登録してたからすぐに分かったらしい。俺も登録しておいた方がいいかな……。
「へえ~」
「スクールアイドルは全国的にも人気ですし」
「盛り上がる事間違いなしにゃー!」
スクールアイドル自体は世間でも既に有名である。でも、こうやって本格的にスクールアイドルのトップを決める大会というのは実は初めてなのだ。つまり第1回目の大会。
「今のアイドルランキング上位20組となると、1位のA-RISEは当然出場として……2位3位は……!ま、まさに夢のイベント……チケット発売日はいつでしょうか~。初日特典はぁ……!」
「って花陽ちゃん見に行くつもり?」
「あ、穂乃果それを聞いちゃ―――、」
「当たり前です!これはアイドル史に残る一大イベントですよ!見逃せません……!!」
あちゃー、やっぱりこうなったか。このモードの花陽は本当にキャラが違う。あれだ、分かりやすく言うと俺みたいにアニメの事となるといきなり饒舌になるタイプ。そういう奴に深く聞き過ぎるとロクな事にならない。ソースは俺。
「アイドルの事だと、キャラ変わるわよねえ」
「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」
「あれは花陽の『アイドル特化型モード』だ」
「……『アイドル特化型モード』?」
真姫の怪しげな目線をさらりとかわしながら俺は華麗に説明してやる。
「『アイドル特化型モード』とは、花陽専用のモードだ。いつも大人しめな花陽があのモードになると急に熱くなって熱弁する事を言う」
「そのまますぎるんですけど……」
やだ何この子冷たい。せっかく熱血アニメ風に説明してやったのに冷めた目で見てくるんだけど。拓哉さんのダイヤメンタルをいとも簡単に割るなんて只者じゃないな。
「何だあ、私てっきり出場目指して頑張ろうって言うのかと思った~」
「うぅええぇぇ!そ、そんな、私達が出場だなんて恐れ多いですう……!」
「キャラ変わりすぎい……」
ホントよく変わるね。これは『アイドル特化型モード』をもう少し強化する必要があ―――あ、はい、もうやめます。お願いだからその睨みつけるやめて真姫さん。ポケモンじゃないから何も下がらないよ。強いて言うならダイヤメンタルがガリガリ削られてるよ。
「凛はこっちのかよちんも好きにゃー!」
あなた花陽なら何でも好きなのね。いや知ってたけど。ところ構わず百合の花は咲かせないでね。油断しちゃうと拓哉さんあら^~ってなっちゃうから。
「でも、スクールアイドルやってるんだもん。目指してみるのも悪くないかも!」
「ていうか目指さなきゃダメでしょ!」
「そうだな、今の穂乃果達の目標は何よりも学校の存続だ。目立つ必要がある。使える手段は使っていかないとダメなんだ。それにこの『ラブライブ』だ。穂乃果達にはもってこいじゃねえか」
「たくちゃんよく言った!褒めてしんぜよう!」
おい、何で上から目線で言った。おこだよ。
「そうは言っても、現実は厳しいわよ」
「ですね……」
真姫や海未が言っているのはきっと順位の事だろう。出場できるのは上位20組。そこにμ'sが入るのが前提条件なのだ。しかし、μ'sのランキングはこの前見た時は大会に出られるような順位ではなかった。
「確か、先週見た時はとてもそんな大会に出られるような順位では……」
しかし、それは先週の話である。
「……っ!穂乃果ことり!」
「?―――わっ!すごーい!!」
「順位が上がってるぅ!」
「嘘っ!?」
「どれどれ~!!」
それぞれがパソコンの画面に吸い付くように見ているのを、俺だけが少し後ろからそれを見ていた。
「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!」
「ほんとだー!コメントもいっぱいきてる!」
穂乃果がコメントを順に読んでいる中、真姫がこちらに振り向いていかにもジト目で見てきていた。何でや。
「……だから『ラブライブ』に出ようなんて事言ったのね」
「ん、ああ、これでも俺はお前達の手伝いなんだ。調べ物したり色々とチェックはしてるさ。可能じゃない事なんて言わない」
そう、俺は今日の毎朝ランキングチェックをしている。だから分かっていたのだ。……さすがに『ラブライブ』開催は登録してないから分からなかったけど。
「まあ、お前達も徐々に人気になってるって証拠だ」
「……そのせいね」
「何がにゃ?」
「最近―――、」
「あー待て。とりあえず全員着替えて屋上だ。話はそれからでもできるだろ」
見るものは見た。ならあとはストレッチでもしてる時に話せばいい。
「出待ち!?」
「うっそ!?私そんなの全然ないぃ……」
「そういう事もあります!アイドルというのは残酷な格差社会でもありますから」
これは驚いた。まさか出待ちまで発生しているとは。まあ真姫のあの容姿に美声ならなくはないか。いや、全員同じくらい容姿も声もいいんだけどね。何だろ、お嬢様特有のオーラ的な?
すると、屋上のドアが勢いよく開けられ、そこから出てきたのはピンクのカーディガンを着たにこさんだった。……あ、そういやにこさんいないの忘れてた。
「みんな!聞きなさい、重大ニュースよ!」
おっほう、これは何だかデジャブのようなものを感じるんだぜ!今の内にフォローを考えておくんだぜ!
「ふっふっふ……聞いて驚くんじゃないわよ。今年の夏、ついに開かれる事になったのよ。スクールアイドルの祭典!」
「『ラブライブ』ですか?」
「……知ってんの……」
おぉっと大天使コトリエルの強烈な言霊がにこさんに大ダメージを与えたーーッ!岡崎拓哉、まだ全然フォローを考えていなかったためフォローを放棄したあ!!……僕は悪くない。
ところ変わってここは生徒会室の前。
練習はどうしたかって言うと、あれだ。やっぱ『ラブライブ』に出るんなら先に許可取っといた方がいいんじゃね?それな。じゃあ一旦練習中止にして生徒会室に行こうぜヒャッハー的な流れになったのだ。嘘だ。ヒャッハーとか誰一人言ってない。
「どう考えても、答えは見えているわよ」
「学校の許可ぁ?認められないわぁ」
「だよねえ……」
おい凛、さすがにそれは似てないと思うぞ。というかそんなの本人に見られたら全力で謝って逃げるだろお前。そして俺が代わりに謝って尻拭いさせられるまである。何それ悲しい。
「でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うんだけど……」
「そんなの、あの生徒会長には関係ないでしょ。私らの事目の敵にしてるんだから」
「そうだな。にこさんの言う通り、このまま直に言っても許される事はまずないと言ってもいい。何かと目くじら立てられてるし」
東條は穂乃果達の活動にこっそり協力してくれてはいるが、肝心の生徒会長に関してはこれっぽっちも協力の気配がない。特別穂乃果達を敵視しているようにも見える。
「もう、許可なんて取らずに勝手にエントリーしてもいいんじゃない?」
「それはダメだ。エントリーの条件には学校からの許可を得る事は必要なんだ。そうだろ、花陽」
「は、はい」
アイドルとは言ってもスクールアイドル。ちゃんと学校の許可がいるのは当たり前という事だ。その大会のせいで成績に関わるような事があれば問題だしな。
「じゃあ直接理事長に頼んでみるとか」
「え、そんな事できるの?」
「まあ、それが禁止とは規則には書かれてないし、それも手ではあるな」
生徒会に許可申請すると、確実に生徒会長は許可を下ろさないだろう。ならいっそ陽菜さんのとこに直談判しに行くか?
「でしょ?何とかなるわよ。親族もいる事だし……」
そのまま真姫はある少女へと視線を流した。ああ、真姫さん、アンタの考えは時々黒いかと思いますですよ拓哉さん。
結局、俺達は生徒会室をスルーして、理事長室へとやってきた。
「さらに入りにくい緊張感が……!」
「そうか?」
「たくちゃんは1回入ったからそう感じるんでしょ!」
おお、それもそうだな。普通の生徒は普通理事長室に入るなんて事普通はないか。何回普通って言うんだよ。
「そんな事言ってる場合……?」
「とりあえず今は陽……理事長に言って許可貰えるかどうかを聞くのが先決だ。俺達だけでいくから、真姫達はそこで待っててくれ」
俺の言葉を合図に穂乃果がドアをノックしようとした瞬間、ガチャッと音がして、そこからチラリと紫の髪色が出てきた。
「あっ、お揃いでどうしたん?」
「東條?という事は……」
「うわっ、生徒会長……」
予想通り、副会長である東條がいるという事は、生徒会長である絢瀬さんもいるという事になる。というか、タイミング悪いなオイ……。
「タイミング悪っ……」
おうにこさん、俺と一緒の事思ってたのね。まあここにいる全員同じ事思ってそうだけど、そこは口にしちゃダメだと拓哉さん思うなー。もし聞こえたら海未にも負けない生徒会長の絶対零度の視線をいただく事になるぞ。大体俺がな。
「何の用ですか?」
俺達の聞き慣れてしまった生徒会長の冷たい声が静寂の廊下に響いた。俺が返す前に生徒会長に反応したのは真姫だった。
「理事長にお話しがあってきました」
「各部の理事長への申請は生徒会を通す決まりよ」
真姫が威勢良く返すが、それも生徒会長には通用しなかった。目を見ても何ら変わりない表情であり、射抜くような鋭い目。こちらの言い分なんて何も聞かないような雰囲気すら感じさせる。
「申請とは言ってないわ。ただ話があるの!」
「真姫ちゃん、上級生だよ……」
「そうね。上級生にはちゃんと敬語を使ってほしいものね」
おぉふ……穂乃果がそれを言っちゃうと俺も生徒会長に何も言えなくなるんですけど……。言い返せなくなるような状況作らないでくんない?まあ真姫が悪いんだけどね。俺もあんまり言えないけどそこは狙ってる節があるし。
すると、東條の後ろでコンコンッと自分がここにいますけど的なアピールをしてくる者が1人。
「どうしたの?」
音ノ木坂学院理事長、南陽菜さんだった。
真姫達1年生だけを外に残し、にこさんを後ろに待機させ、俺達2年をメインに理事長に案を申す事にした。
「へぇ~、『ラブライブ』ねえ」
「はい、ネットで全国的に集計される事になっています」
「もし出場できれば、学校の名前をみんなに知ってもらえる事になると思うの!」
「それに、それで人気が出れば世間にもアピールでき―――、」
「私は反対です」
最後まで言わせろやァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!
「理事長は学校のために学校生活を犠牲にするような事はすべきではない仰いました。であれば―――、」
「そうねえ、でもいいんじゃないかしら?エントリーするくらいなら」
「お、マジですか!?」
これはラッキーだ。いや元々理事長に直接聞きに来たのだが、直々に許可を貰えるというのは心強い。何たって理事長だ。絶対みたいなもんだ。今日の校長絶好調!つってな!……校長じゃなかったわ。
「な……ちょっと待って下さい!どうして彼女達の肩を持つんです!?」
「別にそんなつもりはないけど」
「だったら、生徒会も学校を存続させるために活動させてください!」
何だ……?学校を守りたいと思う気持ちは分かる。でも何であんなに必死なんだ?穂乃果達も必死なのは必死だが、それとはまた違う、何か違和感のようなものを感じるほどの必死さがあるような……。
「ん~、それはダメ」
「意味が分かりません……!!」
「そう?簡単な事よ?」
理事長はもうその違和感の正体に気付いているようだけど、それで生徒会長の提案を一切認めないのか?
「……失礼しました」
「エリチっ」
悔しそうに、それでも出来るだけその感情を出さないようにしながら生徒会長は部屋を退室していった。何がアンタをそこまで焦りを感じさせるんだ。くそっ、変な違和感や引っかかりを感じるな。
「ふんっ、ざまあみろってのよ」
にこさん、ここを理事長室って事をお忘れないようにね。下手な発言は体に毒ですよ。特に成績とかに。
「ただし、条件があります」
振り返れば、理事長が今までとは違う真剣な表情で口を開いた。
「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で、1人でも赤点を取るような事があったら、『ラブライブ』へのエントリーを認めませんよ。いいですね?」
なるほど、それは正論だ。いくらスクールアイドルと言っても生徒は生徒だ。成績の問題もある。もしスクールアイドルをやってたせいで成績が落ちたなんて事があったら学校の存続以上にスクールアイドル自体に問題があると世間は思ってしまう。理事長がそれを条件に言ったのはそのための対策だろう。
まあ、普段からちゃんと勉強して授業を聞いてれば赤点を取るなんて事は絶対しな―――、
「………………………あぁ」
「………………………はは」
「………………………うぅ」
「ああ……こいつらならそうなってもおかしくなかったな……」
ダメかもしれない。
――――――――――――――――――
「大変申し訳ありません!」
「ません!」
部室で謝罪をしたのは穂乃果と凛の2人。バカコンビだ。辛辣?知らん、バカなのが悪い。
「小学生の頃から知ってはいましたが、穂乃果……」
「俺のいない中学でも成績悪かったんだな。知ってたけど」
「数学だけだよ!ほら、小学校の頃から算数苦手だったでしょ!?」
今は算数じゃなくて数学な。努力をしろよ。俺は授業はあまり聞いてないが、家できちんと復習してるから成績はそんなに悪くない。むしろ上の下くらいだ。意外だと思った奴は出てこい。今すぐ獣の槍でぶっ刺してやる。
「7×4?」
「……2……6……?」
「海未……ことり……どうにかならなかったのかこいつは……」
「できたらこうはなっていません……」
ですよね~……。いや、ホント重症レベルなんだけど。末期にも程がある。むしろもう手遅れまである。
「凛ちゃんは?」
「凛は英語!英語だけは肌に合わなくて~……」
「た、確かに英語は難しいもんね……」
「そうだよ!大体凛達は日本人なのにどうして外国の言葉を勉強しなくちゃいけないの!?」
「屁理屈はいいの!!」
「真姫ちゃん怖いにゃ~……」
で、出たー!英語苦手な奴が絶対に言う日本人なのに何で英語勉強しなくちゃいけないんだとか屁理屈言う奴ー!
こういう奴にはこれで素早く論破してやろう。世界共通語だからと。それに付け加えて成績に関わるからと言ってあげれば相手は期限が悪くなると同時に渋々勉強するから。やだっ!これは友達関係にもヒビが入りそう!!
「これでテストが悪くてエントリー出来なかったら、恥ずかしすぎるわよ!」
「そ、そうだよねえ……」
あれだけ言っておいて、はい点数悪かったからエントリーできませんでした!てへぺろ☆なんて事になってみろ。普通に終わるぞ。
「やっと生徒会長を突破したっていうのに……」
「まったくその通りよ!赤点なんか絶対取っちゃダメよ!」
「にこさーん、教科書逆に見てまーす」
「うぅ……」
これで3バカトリオ確定だな。幸先悪いとはよく言ったもんだぜまったく。
「とりあえずこのまま唸ってても埒が明かねえ。穂乃果は海未とことりが、凛を真姫と花陽。にこさんは―――、」
「それはウチが担当するわ」
「希……」
「東條か」
何なら少しだけでも分かりそうなとこを俺がにこさんに教えてやろうかと思ったが、同級生である東條が教えてくれるならありがたい。俺だって伊達に唯に勉強教えてないんだからね!唯可愛すぎて一生教えるまである。何それ嫌われそう泣く。
「でも、いいのか?」
「うん、同級生の方が都合がええやろうし」
「に、にこは別にだいじょ―――、」
「にこっちはふざける場合があるからウチがわしわしでお仕置き役としてもいいやろうしね!」
言うなり東條はにこさんの慎ましすぎる胸を鷲掴みにした。あの、いくらまな板と変わらなくても一応女の子なので男の子に刺激強いの見せるのはどうかと思います!!けしからん、もっとやれ。
「よし、じゃあ今日からさっそく取り掛かろう。善は急げだ」
こうして、3バカトリオの成績回復勉強会が行われたのだった。
―――――――――――――――――
「たくちゃん……ことりちゃん……」
「何だ」
「お休み……」
「よし、日頃授業中寝てる穂乃果の映像を桐穂おばさんに見せよう」
「ちょっといつの間にデータ取ってたの!?」
実は東條からデータを穂乃果がだらけようとした時のために貰っておいたのだ。ほれ、おかげで睡眠モードだった穂乃果が一瞬で目が覚めた。脅しってすげえや!
「晒されたくなければ素直に勉強する事だな」
「うう……たくちゃんのいけず……」
「何とでも言うがいい。こちとら『ラブライブ』のエントリーがかかってんだ。教える側のこっちも本気出さなきゃ意味がねえんだよ」
こんな序盤で弱音を吐いてもらっちゃ困る。まだまだ勉強は始まったばかりなんだ。赤点回避しないと俺達の目的は果たせないも同然なんだぞ。それを分かってるのかこの小娘は。
「拓哉君、ことり、あとはお願いします。私はそろそろ弓道部の方へ行かなければならないので」
「ああ、そうだな。ひと通りやらせたら今日は解散にするから、海未も弓道部が終わったら適当に帰ってくれていいから」
「はい、分かりました。では、よろしくお願いします」
そう言って海未は去ろうとするが、ドアの手前で止まり、部室内を見回した。
「……これで身に付いているのでしょうか……」
「言うな……」
俺の応答に海未はさりげなく溜息だけ吐き、部屋を後にした。俺も室内を見回すが、東條にわしわしされそうなにこさん。花陽と真姫の注意を逸らそうとするが花陽だけしか騙せてない凛。挙句の果てに寝ようとする穂乃果。……ホント大丈夫かこれ。
――――――――――――――――――
翌日の事だった。
「何やってんだお前ら……」
部室にいないからまさかと思って屋上に来てみたら、穂乃果、凛、にこさんの3バカトリオがピクピクと体を震わせながら倒れていた。傍には東條。うん、これで何となく察しがついたよ。出来ればその場で目に焼き付けておきたかったな。
「ちょっと、ショックが強すぎたかな……」
「そりゃ痙攣してるくらいだしショックもつよ―――東條?」
何だ?どこ見て言って―――海未?そういや今日授業中も何か思い悩んだ顔してたけど、何かあったのか?……いや、決して下心あって見てた訳じゃないから。幼馴染が悩んでる顔してたら気になるのは普通でしょ?ね?
「ああ、ごめんな。この子達連れて部室に戻ろか」
「……ああ」
……東條も何か知ってるっぽいな。何かあったというなら、昨日か?
「今日のノルマはこれね!」
バンッ!と机に置かれたのは分厚い本。俺でもこれはさすがにキツイんですが東條さん……。何か厳しくなってませんかね?それほどこいつらがヤバイのかって言うとヤバイけどさ。
「「「鬼ぃ……」」」
「あれぇ?まだわしわしが足りてない子がおる……?」
「「「まっさかぁ!」」」
お前らホント分かりやすいな。わしわしされろや。俺も眼福で満足したいんや。ごめん、嘘。真面目にやる。
「ことり、拓哉君、穂乃果の勉強をお願いします……」
「え?うん……」
俺が何かを言う前に、海未さっさと部屋から出て行ってしまった。東條の表情を見ると、やはり何か知ってんのか。生徒会長絡みか?
「海未先輩、どうしたんですか?」
「さぁ……」
「ごめんな、ウチも少しだけ出てくるわ」
「東條先輩も?」
「東條」
背を向けた東條に声をかけると、少しだけ体をピクッと震わせてからこちらを向いた。ここで探りを入れておいた方がいいか。
「どうしたん?岡崎君」
「昨日からの海未の様子、そしてそれを気に掛けるアンタの態度。何か知ってるんじゃないのか?」
「…………」
それを聞いても何も言わない東條。沈黙は肯定と取らせてもらう。それでも何も言わないなら、海未に聞い―――、
「まだ、言えないんよ」
「まだ……?」
「うん、大丈夫。でもすぐに、分かると思うから、ほんの少しだけ待っててくれへんかな」
それは、東條にしては珍しい、お願いだった。懇願にも似た何か。それを東條の雰囲気から感じられた。
「分かった……。信じるよ」
「……ありがとうな」
俺に少しだけ微笑みかけ、東條は部屋をあとにした。そのドアを数秒眺めていると真姫が話しかけてきた。
「拓哉さんは何か分かったんですか?」
「詳しくは分からない。でも今俺が引っかかってる違和感と何か関係ある気がする。でも、今は東條を信じるしかない。海未も元に戻ってもらわねえとだしな」
「やっぱり、拓哉さんはある程度分かってるのね」
「何がどうなってどう絡んでいるのかは分からないよ。でもそれが何か分かって、それが問題であるならば、俺はその原因を解決するために動くだけだ」
応えると、真姫がそう……とだけ言って何かに納得したように目を俯かせた。
「さて、俺達は勉強を続けるぞ。何としても赤点回避して、学校を救うための手段を手に入れるんだ」
――――――――――――――――――
あれから何分経っただろうか。結構集中していたと思う。黙々とシャーペンの音と教える声だけが響いていた空間に、突如としてドアが勢いよく開かれた。
「穂乃果!」
「……う、海未ちゃん……」
「今日から穂乃果の家に泊まりこみます!!」
「え、えええええ!?」
お、おいおい……、さすがに信じるとは言ったけど態度変わりすぎてやしないですかね海未さんや。泊まり込みとか本気ですやん。
「勉強です!」
「うぅ……鬼ぃ……。たくちゃん助けて……」
「すまん、俺にはこうなった海未をどうにもできん」
「う、嘘ぉ……!」
いや、だって泊まり込みとか俺泊まれねえし、実際どうしようもできないし、あとは海未とことりに任せるしかない。穂乃果、頑張れ。死なないようにな。
というより、東條は海未に何を言ったんだ……?
―――――――――――――――――――――
試験が終わり、返却された日だった。
「もうちょっといい点だったら良かったんだけど……」
そう言って穂乃果から出されたテスト容姿には、53点と書かれていた。凛とにこさんは赤点回避していた。そして穂乃果も。
という事はつまり、
「よおし!今日から練習だあ!!」
穂乃果が1番に部室から出てきた。俺はちゃんと外でみんなの着替えをまってたからね。
「ら、ラブライブ……!」
「まだ目指せるって決まっただけよ!」
「そ、そうだけど……」
「それだけでも前進だ。十分だよ」
「は、はい!」
これで堂々と『ラブライブ』を目指せる。そう、まだ引っかかりと違和感はあるが、また1歩進めた事は大きい。これで穂乃果達の意欲も十分に上がってるはずだ。
「ランランラーン♪……あれ?」
「どうした?」
赤点回避の報告のため、理事長室を訪れた。しかし、
「中から生徒会長の声がして……」
「生徒会長の……?」
穂乃果がこっそりドアを開け、俺もそれに続いて中を覗くと、次の瞬間、一瞬心臓が止まりかける程の衝撃の言葉が聞こえてしまった。
「そんな!?説明してください!!」
「ごめんなさい。でもこれは決定事項なの。音ノ木坂学院は、来年より生徒募集を止め、廃校とします」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?
負の連鎖というものは、いつだって唐突に訪れる。
さて、いよいよ次回から本格的に絵里希加入編始動です。
頑張るですよー!!
いつもご感想評価ありがとうございます!
絵里誕編ヤバイ、ネタが……。