ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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今回から本格的に絵里希加入編が始動しました!!


いきなりの10000字超えです!!



ではどうぞ!!


39.金色と亜麻色

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。でもこれは決定事項なの。音ノ木坂学院は、来年より生徒募集を止め、廃校とします」

 

 

 

 

 

 

 

 それはあまりにも理解するには時間が必要で、納得できない言葉でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とにかく今はテストが赤点ではなかったという報告をしに来たのに、いきなりそんな事を聞いてしまっては頭がパンクしそうになるほどには焦っていた。しかし、そんな俺達の誰よりも早く咄嗟に動き出したのが、やはり穂乃果だった。

 

 

「今の話、本当ですか!?」

「っ、あなた―――、」

「本当に廃校になっちゃうんですか!?」

 穂乃果のおかげでとりあえず冷静さを取り戻し、俺達も理事長室に入る。せっかく赤点回避のために頑張ったのにこんなのはないぞちくしょう。

 

「本当よ」

「お母さん!そんな事全然聞いてないよ!」

 いや、待て。陽菜さんに限って赤点回避という条件でここまでさせておいてはいやっぱり廃校ですなんて事は言わないはず……。だったら、何か他の理由があるのか?

 

「お願いです!もうちょっとだけ待って下さい!あと一週間、いや、あと2日で何とかしますからっ!!」

「落ち着け穂乃果。多分だけど、これは俺達の勘違いの可能性が高い。俺達の聞いてないどこかで、その理由があるはずだ」

 穂乃果の事を少し驚いた様子で見ていた陽菜さんは、俺の言葉で少し顔を綻ばせた。

 

「さすが拓哉君ね、察しが早いわ」

「まあ、最初は俺も驚きましたけど、考えてみると少し不自然でしたからね」

「ふふっ、そうね。あのね、廃校にするというのは、オープンキャンパスの結果が悪かったらという話なの」

「お、オープンキャンパス?」

「一般の人に見学に来てもらうって事?」

 あれ、これ穂乃果さんまさかオープンキャンパスの意味を分かってらっしゃらないようで?去年もやったんじゃないの?穂乃果なら普通に忘れてそうだけど。

 

 

「見学に来た中学生にアンケートをとって、結果が芳しくなかったら廃校にする。そう絢瀬さんに言っていたの」

「なぁんだ……」

「安心してる場合じゃないわよ。オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこで結果が悪かったら本当に本決まりって事よ」

 2週間後か。今やっている曲の完成度を高めるにはギリギリってところか。せめてあと1週間プラスされてたらいいんだが、さすがにそこまで都合よくはないか。

 

「うぅ……どうしよう……」

「どうするって、やるしかないだろ。元々そのつもりでやってきたんだ。思い出せよ、ファーストライブを。あれだってギリギリまで頑張ってたんだ。今回も変わらない。ただ廃校になるかならないかが決まるってだけだ」

「それが問題なのですが……」

 うん、そうだね。元気づけるつもりがツッコまれてしまった。それだけの余裕があれば大丈夫だろう。……ツッコんだの海未じゃん恥ずかしがったら余裕もくそもないじゃん。

 

 

「理事長、オープンキャンパスの時のイベント内容は、生徒会で提案させていただきます」

「……………」

 生徒会長のその目は、何を言われても曲げないという思いが込められているように見えた。……しかし、それ以外にも何かがある。俺にはそうにも見えた。

 

「止めても聞きそうにないわね……」

「失礼します」

 それだけを言って、生徒会長は出て行った。何か一波乱ありそうな気がしてならない。何か、本格的に、あの生徒会長と激突しそうな、そんな感じがした。

 

 

 

「何とかしなくっちゃ!」

「とりあえず、それだけの気持ちがあればどれだけ練習がキツかろうが耐えられそうだな。出るぞ。こっちもうかうかしてらんねえ。花陽達に知らせてとっとと練習だ」

「え、でも理事長に報告が……」

「しなくてももう陽菜さんの事だから分かってるだろ。わざわざ練習着で来たんだ。それだけで証明になる」

 ここにはもう知り合いしかいないから普通に陽菜さんと呼ばせてもらった。何も言われないって事は別にいいって事だろう。

 

「ええ、もう分かってるわ。全員クリアしたようね。いいわ、もう練習してきていいわよ」

「……はい!じゃあ花陽ちゃん達に説明してから練習を始めよう!」

 

 

 

 

 ほんと、次から次へと問題が出てくるな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなぁ……」

「じゃあ、凛達やっぱり下級生がいない高校生活ー!?」

「そうなるわね」

「ま、私はそっちの方が気楽でいいけど」

「何言ってんだ。そうならないために今までも活動してきたんだ。頑張らねえと今までがやり損になっちまうぞ」

 とりあえず、俺達は今廊下で花陽達に理事長室であった事を説明している。

 

 花陽と凛はこの状況に危機感を抱いてるのに真姫ときたらこの反応だ。後輩という素晴らしい存在の価値が分からないのかこのお嬢様は。というか俺達が何のためにこの活動を始めたのかを割と当初から知ってる真姫なら理解はできてるはずなんだけどな。

 

 

「とにかく、オープンキャンパスでライブをやろう!それで入学希望者を少しでも増やすしかないよ!」

「そうだな、結局穂乃果達にできる事は今まで通り練習して、少しでも完成度を高めて本番にぶつける事に変わりはない。なら、練習するぞ」

 士気を少しでも上げて練習に取り組ませようと思った矢先の事だった。

 

 

 

 

「あ、あの、先にアルパカの餌とお水の入れ替えしてきてもいいですか……?」

「え、ああ、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飼育員だもんね。餌とか水は大事だもんね。仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――何故だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故生徒会のメンバーまでもがμ'sの事を推してくるのかと、絢瀬絵里は思っていた。

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で何か提案はないかと問えば、堅苦しさより楽しさをアピールする。それも学校のためだし一理あると思ってはいたが、いざ話が進めば彼女達は今巷で大流行しているスクールアイドルの話になり、結局はμ'sに頼もうという話になる。

 

 

 

 ――――何故だ。

 

 

 

 アピールに良いものを知っているからという理由で外まで来てみればアルパカという動物を見せられたはいいが、何かの癇に障ったのか唾をかけられ追い打ちとばかりにそこへμ'sメンバーである1年が来て、他の生徒会メンバーはタイミングいいとばかりに頼み込もうとする。

 

 

 

 ――――何故だ。

 

 

 

 ――――何故だ。

 

 

 

 ――――何故なんだ?

 

 

 

 当初自分が思っていた事と違う展開が多すぎて絵里は困惑していた。どうしてμ'sの知名度や人気が上がってきている?あんな未完成すぎるダンスやブレのある歌声では何も響かない、見るに堪えない。

 

 

 

 

 

 

 だから。

 なのに。

 

 

 

 

 

 

 何故ああも徐々にメンバーが集まったりして人気も上がっているのかが理解できない。自分の過去の“出来事”を思い返しても蘇るのは負の感情でしかない。それを基に考えてμ'sの活動を認めない自分がいる。

 

 何があっても認める訳にはいかない。マイナスになってしまう可能性の方が多いんだから。それで学校が本当に廃校になってしまうのかもしれないんだから。それで、彼女達が挫折してしまうのかもしれないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(認める訳には……いかないの……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1、2、3、4、5、6、7、8……っ!」

 

 

 

 屋上に、海未の手拍子と穂乃果の掛け声が響いていた。

 

 

 

「……よしっ!おお!みんな完璧ぃ!!」

「うん、俺から見ててもタイミングも結構合ってたしいいんじゃないか。あとは今の動きを忘れないように繰り返し練習とより上手くなるために洗練させる事だな」

「これならオープンキャンパスに間に合いそうだね!」

「でも、本当にライブなんてできるの?生徒会長に止められるんじゃない?」

 軽く汗を拭いながらことりに続き真姫も喋り出す。客観的に見ても悪くない動きだった。確実に成長しているし、このままいけば間に合うだろう。

 

 

「それは大丈夫っ。部活紹介の時間は必ずあるはずだから!そこで歌を披露すれば―――、」

「まだです……」

「海未……?」

 暗い顔して、一体どうしたんだ?そのままは誰を見る事もなく、ただ前だけを見て言った。

 

「まだタイミングがズレています」

「海未ちゃん……。分かった、もう1回やろう!」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1、2、3、4、5、6、7、8……っ!」

「…………」

 さっきから海未の顔を何となしに見ているが、いつものように踊ってる最中に何かダメ出しを言うわけでもなく、ただじっとダンスを見ているだけで何も発さない。しかし、その顔は決して良い表情とは言えなかった。

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……、完璧ぃっ!!」

「そうね」

「やっとにこのレベルにみんな追いついたわねえ」

 確かに先程より踊りも合っていた。素人の俺でも今まで調べたりして色々なスクールアイドルを見て勉強してきた。だから大体の踊りのレベルも分かる。今の踊りでも注目を集めるには十分だとは思うが……。

 

 

「まだダメです」

「海未……」

「もうこれ以上は上手くなりようがないにゃ~……」

「ダメです。それでは全然……」

「何が気に入らないのよ!ハッキリ言って!」

 海未のたんとした表情が気に入らなかったのか真姫が食い下がるが、それも海未にはまったく効果がないようだった。

 

 

 

「……感動できないんです」

「えっ……」

「今のままでは……」

「海未ちゃん……」

 感動、できない、か……。ファーストライブの時から思っていたが、穂乃果達の歌や踊りは決して上手いと言えるほどではなかった。でも、何か魅せられるものがあった。確かにそう思っていた。

 

 だけど、それじゃダメだっていうのか?魅力とは違う、感動できるってのが、μ'sにはないのか?やはりこの前からの海未の変化の原因はこれにあったのか。聞くなら、今しかない、か。

 

 

 

「いい加減ここまでにしようぜ、海未」

「拓哉君……?」

「そろそろ何で急にそこまで拘るようになったのか、あの日何があったのか、説明してもらわないとこっちもずっとただ黙ってこいつらが従うのは見たくねえんだ」

「そう、ですね……。オープンキャンパスまでの日数も日数ですし、私から一つ提案もあるので、言っておいた方がいいですね」

 提案か。海未も言おうと思っていたのか。にしても少し遅かったような気もするが―――ん?ああ……これは少し時間置いた方がいいかな。

 

 

「悪いが待った、海未」

「は、はい……?」

「ちょいと雰囲気が暗くなってやがるこいつら。仕方ないから今日はこれで終わりにして、帰ったら携帯で連絡取り合って伝える事にしよう」

「そ、そうですね。すいません、私のせいで……」

 いや何でお前までシュンッてなるんだよやめろ。これ以上面倒くさくさせんな。最近落ち込むの多くない?大丈夫?情緒不安定なんですかコノヤロー。

 

 

 

「あー、とりあえずそういう事だ。各自家に帰ったら多人数通話アプリで連絡を取り合う事。こんな雰囲気じゃ帰りが空気が思いやられる。つーわけではい、今は解散だ」

「「「はーいっ」」」

 穂乃果やことりやにこは普通に返事を返すが、あとの1年生が力なく返事をした。凛までもか。こりゃ帰りで花陽にどうにかしてもらうしかないか。アイドルの事なら花陽はよく知ってるし、フォローをできるだろう。

 

 

 

「っと、穂乃果、ことり、海未、悪いけど少し先帰っててくれ。俺少し寄るとこあるから」

「え、でも、たくちゃん少し着いて行くくらいはいいよ?」

「いいっての。マンガ買いに行くだけだから。それよりお前らは少しでもこの暗い雰囲気を明るくしてろ。じゃなっ」

「あっ、たっくん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あばよ~とっつぁ―――みんな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うし、買うもん買ったし帰るか」

 

 

 俺は今本屋でマンガを買って外に出ていた。何か裏で行動しようとしていたとかそんな事は微塵にも思っていなかった。ただ純粋にマンガが欲しかっただけだ。深読みしてる奴がいたら指差してぷぎゃー!って言ってやる。

 

 いついかなる状況でもブレないのが拓哉さんの売りだから。そこ勘違いしてもらっちゃ困る。……ごめん、超ブレまくる。さっきもどっちのマンガを買おうかでブレブレだった。何なら両方買ったまである。

 

 

 

 ん?メールか。穂乃果からか、何かあったのか?あいつらが少しでも調子を取り戻せてたらいいが。

 

 

 

 

 

『みんな何とかいつもみたいに明るくなったよ!それと、用が済んだら私の家に集合ね!海未ちゃんとことりちゃんもいるから!』

 

 

 

 うん、とりあえずみんな明るくなって良かった。そして穂乃果の家に来いというのは強制らしい。俺の都合など無視なようだ。まあ家でマンガ読みながら通話しようと思ってただけだけど。……いや、ちゃんと聞くから。さすがにマンガ読んでても真面目に聞くから!

 

 

「んじゃま、穂乃果の家に行きますか……」

 いつもの本屋からいつもの帰路につく。そこで、視界の脇にふと違和感を覚える何かが行われていた。

 

 

 いや、行われていたというよりも、自販機で迷ってる?何か見た事あるというか完全に唯の通ってる中学校の制服を着た子が自販機前で手を左右に振りながら止まらないんだが。

 

 

 こ、これはさすがにほっとけないよなぁ。

 

 

 

「えっと、もしかして何か困ってるのか?金入れてボタン押したのに出てこないとか」

 高校生が中学生に声掛け事案で通報されないように一応恐る恐る声をかけた。結局声かけてんじゃねえか。でもほっとけねえもん仕方ないじゃん!俺の声に反応したのか、その少女はこちらを振り向いた。

 

 

「はい?」

「……お、ほお……」

 その少女を簡単に表すとするならば、まず金髪とはまた違う穏やかでいて、そして優しくもあるような亜麻色の髪をなめらかに揺らし、クリッとした可愛らしい青い目をパチクリとさせて、中学生なのにまだまだあどけなさが残っているような守ってあげたくなる感覚に襲われる。

 

 もっとシンプルに言えば、超可愛い。それ以外表しようがない。見たところ、顔は幼さがあるのに体つきは少し日本人離れしたように成長しているところは成長している。例えば胸とか。……いや初対面の子の体を何分析してんだ俺変態かよ紳士だよ変態紳士だった。

 

 

 

「え、いや、何か困ってるようだからさ、何かあったのかなって思っただけだよ」

 極力優しく言うがどうなるか分からない。これで不審がられて叫ばれたら終わりだ。具体的に言えば社会的に終わる。

 

「えっとぉ、何を買えば正解なのか分からないんです……」

 俺がこの先の人生を心配していると、亜麻色少女は割と普通に問いに答えてくれた。しかし少し落ち込んでるようにも見える。……何を買えばいいか分からないって、どこぞのお嬢様じゃないよな?

 

 

「正解っつうより、普通に自分が飲みたいのを選べばいいんじゃないか?」

「いえ、私の他に2人の友達の分も買うので、どれがいいのかなと思って……」

「あーそういう事か」

 普通ならここで「友達2人が何を欲しいって言ってた?」と聞けばいいと思うが、それは間違っている。この子が何を買えばいいか迷ってる時点でその友達2人はこの子に何を買うか全面的に任せたのだろう。何でもいい、と答えて。だから何を買えばいいか分からない、というわけだ。

 

「どれが本当の飲み物か分からなくて」

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?

 

 

「……んーと、どれが飲み物か分からないって、本当に言ってるのかな?」

「はいっ!先日買った飲み物がおでんだとかおしるこ?とかっていう食べ物に近い物を買ってしまって、姉に指摘されたんです……」

 いや、おしるこはまだしもおでんとかもう食べ物に近い物じゃなくて余裕で食べ物だからね。というかこの子ピンポイントで買うの間違ってるよ。何なの、ブルジョアジーなの。ハイブリットなの。

 

「えっと、まずおでんやおしるこはこの時期に飲むにはキツイ、かな。それと、この自販機なら何を買っても大丈夫だよ」

 軽く見回したが、この自販機にはおでんやおしるこはない。全部飲み物だから何を買ってもモーマンタイというやつだ。まあ中学生で安牌を狙うならコーヒーとかは避けた方がいいが、さすがにそれくらいは分かるだろ。

 

「そうなんですか!?……でも、全部飲み物だとしても、何を買えばいいんでしょうか!?」

 おぉふ、何だこの子結構グイグイ来るな。知らない人に着いていかないか拓哉さん心配になっちゃうよ。

 

「俺がここまで言うのも何だが、少し暑くなってきたこの時期なら、炭酸系がいいんじゃないか?」

「炭酸系……。分かりましたっ。ここは王道でコーラでいきたいと思いますっ」

「お、中々センスがいいねお嬢さん。暑い時期の冷たいコーラほど反則なものはないからな」

 これはもう本当に。部屋でアニメ見ながらポテチ食べながらコーラ飲むのホント最高なんだけど。このまま干物兄になりたい。……どこのうまるちゃんだよ。いや、でも待てよ。そうなると俺は唯に世話される事になるかもしれない。何それ最高じゃん。やっぱ持つべきものは世界一の妹なんだよ。

 

「ありがとうございます、お兄さんっ!」

「いや、構わねえよ。何だか見るに見過ごせなかっただけだ」

「それでもです!私、日本に来てまだそんなに経ってないので、本当に助かりました!」

「何か日本人にしては顔つきやら挙動がおかしいと思ってたら、外国から来たのか」

 どうりで髪色も特殊で挙動もおかしいわけだ。そりゃおでんとかおしるこ知らないのも頷ける。

 

 

「はい、でも私はクォーターなので。名前も日本名なんですよ!」

「へ、へえ、そうなのか」

 めっちゃグイグイくるやん。何やこの子。一応俺達見知らぬ仲なのに思いっきり自分の情報晒してんの分かってんのか。いや俺も漏らす気はないけど。

 

「お姉ちゃんもクォーターなんですよ!名前も日本名なんです!」

 おいいい!この子自分の姉の情報も晒しちゃってるよ!この超短時間でどんだけ俺の事信用してんの?ホントに不審者にホイホイ着いていかないでね。見かけたら本気で助けるけどさ。

 

 

「そういえばその制服って音ノ木坂学院の制服ですよね!?」

「……え?ああ、そうだけど、よく知ってるな」

 音ノ木坂では俺はたった1人の男子生徒な訳だが、まさかこんなまだ日本の事をよく分かっていない女の子に知られてるとは意外だった。

 

「はい!私も私の友達2人も音ノ木坂に入りたくて勉強してるから、調べたりしてるので分かりますよ!」

「へえ、音ノ木坂にまさかの入学希望者がねえ……って、え?マジでか?今音ノ木坂廃校になりかけてるの知らないのか?」

「?知ってますよ?」

「なら何でなんだ?」

 単純な疑問がそこにはあった。何故わざわざ廃校になりかけてる学校に入学希望するのか。以前唯にも同じ事を問いかけたが、その時は兄である俺を信じてるからってな感じで言われたが、この子は別だ。

 

 

「廃校になんかならないからですよ」

「……何でそんな事が言えるんだ?」

「……私のお姉ちゃんも、3年生で音ノ木坂学院の生徒なんです」

「そう、なのか」

 何故だろうか。自分の中で何だか違和感が広がっていくのが分かる。

 

 

「はい、そのお姉ちゃんが、学校を守ろうと頑張ってるんです。最近は何か思い詰めたような顔ばかりしてるんですけど……」

「学校を、守ろうと……?」

 日本人離れしたこの髪色、それは音ノ木坂にもいた。学校を守ろうと何かを頑張っている3年生、それは当然音ノ木坂にもいた。まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか……ッッッ!?

 

 

「あ、そういえば助けてもらったのに自己紹介がまだでした!私は絢瀬亜里沙(あやせありさ)です!そして、同じ学校なら知ってると思うので言っておいてもいいかな。私のお姉ちゃんの名前は、絢瀬絵里って言うんですよ!」

「…………そうか。生徒会長やってるからな。確かに知ってるよ。それと、俺は岡崎拓哉だよろしくな」

 やはりだった。生徒会長も日本人離れした金髪でスタイルもずば抜けていた。それが姉というなら納得もできる。どうも世間というのは案外狭いらしい。俺達の宿敵みたいな人の妹と仲良くなってもいいのだろうか……。

 

 

「よろしくです!やっぱり知ってたんですね!それと、学校を守るために頑張ってるお姉ちゃんもそうですけど、今音ノ木坂でスクールアイドルが活動してるんですよね!?」

「……え?あ、ああ、そうだな。音ノ木坂にもスクールアイドルはいるよ。ちゃんと活動もしてるし」

 驚いた。まさか生徒会長の妹がμ'sを知っているなんて。それも見れば分かるがこれが結構好感触な感じなんだが。

 

「私、そこのスクールアイドルのμ'sが凄く好きなんです!!」

「っ……。そうか……」

「うちのおばあさまが音ノ木坂の生徒で、だからそれを守るためにお姉ちゃんが必死に頑張ってて、それと同じくらいμ'sも頑張ってるんだって、私は分かってますから!」

 なるほど、生徒会長の祖母が音ノ木坂の生徒ね。だからか、あんなに必死にもがいてるように見えるのは。……それにしてもこの子、そんなにμ'sが好きなのか。まあこっちも学校を守るためにやってるし、頑張ってるって分かってくれる子がいるだけでも収穫だな。

 

 

「μ'sを見てると、胸がカァーッとなって、楽しそうで、目いっぱい楽しんでるのが分かるんです。それに、見てると凄く元気がもらえるんです!!……わひゃうっ」

「そっか。ありがとな、μ'sをそんなに好きでいてくれて。あいつらも凄く喜ぶよ」

 気付けば頭を撫でてしまっていた。何だろう、中学生で唯と同じってのもあってか凄くお兄ちゃんスキル発動してしまう。でも、μ'sの手伝いをしてる身分の俺としても、これだけあいつらの事を思ってくれているこの子には感謝がいっぱいだ。

 

 

「っと、悪いな、急に撫でちまったりして。君と同じ年くらいの妹がいてさ、だからかは分かんねえけど、親近感みたいなもんが沸いちまった」

「いえ……私もお兄ちゃんができたみたいで嬉しいですっ!」

 おいおい、何この可愛い生物。唯と同じくらい守ってあげたくなるんですけど。勝手に信用しすぎじゃないですかね。くそう、こうなったら俺がこれからも守っていくしかねえ!……お願い、通報だけはやめて!

 

「そんだけμ'sが好きならオープンキャンパス、来てくれるんだろ?ライブやるからさ、来てくれよな」

「はい!絶対に行きます!拓哉さん!」

「お、おう」

 いきなり下の名前で呼ぶとか度胸あるなこの子。俺が最初に亜里沙とか言ったら引かれると思って名前すら呼んでないってのに。

 

 

 

 

「ほら、そろそろ友達待たせてるんじゃないか?せっかくのコーラがぬるくならない内に持ってってやれよ、亜里沙」

「はっ!そうでしたっ!長々とすいません!じゃあ、私は行きます!」

「おう、じゃあな」

 そう言って俺も歩き出す。良かった、何気なく名前で呼んでも特に何も言われなかった。これで安心して帰れる。すると、何を思ったのか亜里沙が後ろからまた「拓哉さーん!」と俺を呼んできた。

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ?どうした?」

「あの、えっと、その……。また……会えますか……?」

 ……ったく、わざわざそんな事を聞くために戻って来たのか。男子を変な期待させるような発言は控えようね。俺の周りにはそういう勘違いさせるような発言が多い女の子ばかりで耐性はついてるからそんな心配はない。

 

 

 

 

「音ノ木坂が廃校にならなくて、亜里沙が音ノ木坂に入ってくれば絶対に会えるよ。それに、オープンキャンパスで会う事になるかもしれないしな」

「……そう、ですよね。私、絢瀬亜里沙、頑張りますっ!」

「おう、頑張れ頑張れ青春を生きる乙女よ」

「では、今度こそ失礼しました!」

 それだけ言うと、亜里沙は走り去って行く。それと同時に俺も帰路につこうとしたが、

 

 

「拓哉さん!!」

 おいおい、何回俺を振り返させるつもりだ。まるで別れるのが辛くて何度も振り返ってしまうほろ苦い青春劇の中の男役みたいじゃないか。違うか。違うな。

 

 

 

 

 

「何だー?」

「あの……“またね”!です!」

 ……ああ、そういう事ね。何だ、そういうとこも変にこだわるのかクォーターってのは。まあ、意図は分かった。だったら俺の返事もシンプルにいこうではないか。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、“またな”、亜里沙」

「……えへへっ……!」

 っ……あの笑顔は反則だろ……。くそ、クォーターってのはレベルが高いな。笑顔一つであんな魅力的だなんて。そう思ってる間に、今度の今度こそ、亜里沙は去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、俺も穂乃果の家に向かいますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめーん!待たせちゃった?唯、雪穂!」

「もう、遅いよ亜里沙ー!私凄く喉乾いたー!!」

「雪穂はちょっと我慢が足りないだけじゃないの?ありがとね、亜里沙」

 絢瀬亜里沙は、ベンチで待っていた友達2人にコーラを渡した。すると何かに気付いたのか、唯と雪穂が亜里沙に問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「亜里沙、何かあった?」

「えへへ~、分かる~?」

「いや、どう見ても顔が綻んでるけど……」

 今にもとろけ落ちそうなほど笑顔になっている亜里沙に、2人は疑問を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自販機で困ってたら助けてくれた人がいたんだけど、凄く良い人でね!」

「亜里沙が変な人に着いて行かないか心配だよ唯さんは……」

「唯、それは私も同感」

 そんな2人の呟きにも意を返さず、淡々と亜里沙は独り言のように喋っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またすぐにでも会えないかなぁ~って思っちゃった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





いかがでしたでしょうか。
今回は後半が久々のオリジナルが多かったですね。

亜里沙が可愛いだけじゃんと思った方。正解です。亜里沙は可愛いんです。


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