でも絵里誕含めて週2回投稿したから許してつかぁさい!!
く、クオリティ向上のためだから……(震え声)
こんな変なテンションですが、本編は加入編クライマックス手前なので(笑)
「お兄ちゃん」
「何だ?唯」
風呂から上がって部屋に行こうとしてたところを唯に呼び止められた。
「あのね、お兄ちゃんいつも私に話してたでしょ。学校の生徒会長の絢瀬絵里さんって人がいつもちょっかいとかかけてくるって」
「あ、ああ、悪いな。俺もあんまり愚痴とかは言いたくねえんだけど、つい」
俺はたまに勉強を教えてやる代わりにこうして唯に学校での愚痴を聞いてもらっているのだ。いや、妹に何話してんだって思うのも分かるよ?でもね、拓哉さんも人間なのよ!そりゃ愚痴りたくなる日もあったっていいじゃない!!
「いいのっ、別に私はお兄ちゃんが少しでもそれでストレス発散できるなら全然いいんだけどね」
おい聞いたかよ今の。何てお兄ちゃん思いの良い妹なんだ。ぼくちん泣きそうだよ、胸がいっぱいだよ。唯を中学まで良い子に育てた母さんを褒めてやりたいね。
「でね、今日私雪穂と友達の家に行ったの」
「ああ、そういや最近よく遊びに行ってるよな」
最近の唯はよく雪穂と他の友達と遊んでいる。その友達の家によく遊びに行っているらしいのだ。遊んでるのが男じゃないならいくらでも遊びなさい。……でもやっぱり夜遅くに帰ってくるとかはなしで。
「うん、それで、誰と遊んでるかとかお兄ちゃんにも黙ってたんだけど……」
「いや、別に唯が誰と遊んでても俺は別に構わないんだけど。……男以外なら……」
一応最後は聞こえないように呟いておいた。というより、何この雰囲気、唯さんいつになく真剣ムードなんですけど。その友達と何かあったのか?ちょっといざこざが出来たとか、口喧嘩しちゃったとかなら相談にのれるはず、多分。自信はない。ないのかよ。
「私の友達の名前ね、絢瀬亜里沙っていうの」
「へえ、絢瀬亜里沙っていうのか。妙な偶然もあるんだな。偶然名字も似てるし―――って、え?」
今唯は何と言った?絢瀬亜里沙?……何か物凄く聞き覚えのある名前が聞こえたような……つうか今日会ったばかりなんですけど……。ま、まさか、
「多分お兄ちゃんの今思ってる事であってるよ。その亜里沙のお姉ちゃんが、絢瀬絵里さんなの」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………で、ですよね~。
うん、もう分かってたよ。絢瀬亜里沙って聞いた瞬間に察したよ。拓哉さん鋭いからね。
「えっと、とりあえず要約すると、俺は今まで唯に愚痴みたいなものを聞いてもらって、それを唯は生徒会長の事を知っていながらも俺に黙ってそれを聞いてたって事か……?」
「まあ、そうなるね」
……まじかァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!
つう事は何だ!?生徒会長との関係をなしにして見てみれば、俺は唯の大切な友達である亜里沙の姉の愚痴を話してたって事になるぞ……。これは唯のお兄ちゃんへの好感度最底辺までまっしぐらじゃねえか……!
「あ、でもそういう事じゃなくてねっ!今日、絵里さんが廃校阻止のためのレポートを聞いてほしいって言ってたから、それを聞きに行ってたの」
「…………レポート?」
一瞬で空気が変わった。俺の頭も一気に熱が冷めて冷静さを取り戻す。
「うん、音ノ木坂の歴史とか、昔の事ばっか言ってたよ。今の音ノ木坂の事は何も言ってなかった」
「やっぱそうか」
廃校を阻止しようと動いていた当初の俺達もそうだった。必死に探してアピールできそうなとこを探した。その結果が『歴史がある』。それだった。言ってしまえば、それしかなかった。それ以外にアピールできるとこなんてなかったのだ。
生徒会長も廃校になると分かってた時から色々と探したんだろう。でも結局見つけられなかった。だからそれをレポートするしかなかった。苦し紛れでも、何もしないよりかはマシだと思って。
それは別に悪い事ではない。何もしないよりかはマシ。その考えには俺も賛成だ。しかし、結果を考えてみればどうかと思う。歴史があるというだけで中学生は音ノ木坂に入ってくるのかと問われれば、俺は迷わずに無理と答えるだろう。
まずそれだけで生徒が入ってくるなら、最初からアピールなんかせずに生徒が来るのを待ってればいいだけなのだ。良さはあっても、中学生が入ってくる可能性は限りなく低いだろう。
「だから、私言ったの。μ'sの事もアピールしたらいいんじゃないかって。でも絵里さんは断った。ダンスが未熟だったから。感動できないから。そう言って断られたの……」
「……唯は、生徒会長がダンス上手いって事、知ってるのか?」
「知ってるよ、亜里沙から何度か聞いたから。でも私は納得できなかった。絵里さんの主観だけで、学校のために頑張ってる穂乃果ちゃん達や、μ'sを支えるように頑張ってるお兄ちゃんを無理矢理抑え込めるような事はしてほしくなかった。だから、私ね、絵里さんについ怒っちゃった」
「……は、い……?」
唯が、怒った……だと?あのいつも可愛くて愛しい俺の唯が怒っただと……!?
「絵里さんの主観や個人の感情論でμ'sを抑えたら、阻止できるのも阻止できないって。亜里沙は気にしなくていいって言ってくれたんだけど、やっぱりあとから先輩にあんな事言っちゃダメだよねって思って……」
「……そっか」
唯が怒ったっていうのも驚いたけど、そこまで穂乃果達の事を考えてくれてるなんてな。唯の言う事も分かる。何で生徒会長があんなに穂乃果達の活動に口出しをしてきたのかももう理由は分かった。
でも、
「そうだな、3歳年上の人にそんな事言っちゃダメだな」
「うぅ……そうだよね……」
明らかに落ち込んでいるのが目に見えて分かる。俺も唯の事は言えない。生徒会長に思いっきり歯向かってるんだからな。でも唯にはまだその事に対する罪悪感みたいなのがあるらしい。可愛い唯にはまだ似合わないってもんだ。
「でも、穂乃果達のために怒ってくれてありがとな。嬉しいよ」
「ふぁ……うん……えへへっ」
頭に手を置いて撫でる。それだけで唯は嬉しそうに顔をふにゃっと綻ばせる。やっぱ唯は可愛い笑顔でいてくれないとな。俺が家で唯一癒される要素なんだから。
「あとは俺達がどうにかするから、唯はいつも通り亜里沙って子と遊んでればいいさ」
「お兄ちゃんがそう言うなら分かったよ。わたくし岡崎唯は遊び盛りの女の子に戻りますっ。わひゃっ……」
「息抜きに遊ぶのもいいけどちゃんと受験勉強もしろよ」
最後にほんの少しだけ唯の頭を乱暴に撫でて階段を上る。唯の今の学力なら音ノ木坂も問題はないはずだけど、勉強しておいて損はないしな。そんな事を考えながら階段を上っていると、唯にまた声をかけられた。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「それでも、辛い事があったらまた私に言ってね。どんな事があっても、私だけは……お兄ちゃんを支えて、味方でいるから」
その言葉は、とても温かった。
「……ああ、ありがとな、唯」
「うんっ!!」
最高の笑顔を胸に刻みつけてから、再び自室に行くために階段を上る。
ホント、俺にはもったいないくらいの出来た妹だよ……。
――――――――――――――――――――――
「お願いします!」
穂乃果の声が廊下に響く。
「私にダンスを……?」
「はい!教えていただけないでしょうか!」
決めた通り、俺達は生徒会長にダンスを教えてもらえないかというお願いをしに来た真っ最中だった。
「私達、上手くなりたいんです!」
穂乃果の言葉を聞いて、生徒会長は一度後ろの海未の方へ一瞬だけ目線をやる。何でこんなお願いをしてきたのか察しがついたのだろう。
「……分かったわ」
一度目を瞑り、何秒か考えたあとの答えがそれだった。その時海未が生徒会長に何を言ったのか俺には分からない。でも生徒会長には何かしらの思いがあっての答えがこれなら、その意味も分かるかもしれない。
「本当ですか!?」
「あなた達の活動は理解できないけど、人気があるのは間違いないようだし、引き受けましょう」
穂乃果の顔が明るくなる。相変わらず毒を入れてくるあたり、そんなにも穂乃果達を認めたくないのか。
「でも、やるからには私が許せる水準まで頑張ってもらうわよ。いい?」
「……はい!ありがとうございます!!」
生徒会長が許せる水準。それはきっと穂乃果達が思ってる以上にキツイだろう。全然まだまだだと言うくらいの実力者の持ち主なのだ。当然俺にも生徒会長がどんなに上手いのか分からない。
でも、一度やると決めたら止まらない穂乃果の意志を、俺は信じてる。
―――――――――――――――――――――
「うわっとっと、どぅわわあ~っ!!いったーい!」
「凛ちゃん!」
屋上。
バランスを崩して尻をぶつけた凛の声が屋上の練習場で響いた。
「全然ダメじゃない!よくこれでここまで来られたわね!」
「すいません……」
いや、ホント何も言い返せないです。これに関しては生徒会長の正論だ。生徒会長の指示通りのメニューをやり始めてものの数分でこれだ。基礎の部分で躓いている。これじゃ何を言われても仕方がない。悲しいけど、これって現実なのよねん。
「昨日はバッチリだったのに~!!」
「基礎ができてないからムラがでるのよ。足開いて」
「こーお?んぎっ!?」
言われた通り足を開いた凛の背中を容赦なく生徒会長は押した。元々からだが柔らかい人なら大丈夫なのだが、あいにく凛はまだそんなに体が柔らかくなかった。故に凄く痛がっている。うん、ご愁傷さま。
「痛いにゃあ~……!!」
「これで?少なくとも足を開いた状態で、お腹が床に付くようにならないと」
「えぇー!?」
「柔軟性を上げる事は全てに繋がるわ。まずはこれを全員できるようにして。このままだと本番は、一か八かの勝負になるわよ!」
これも生徒会長の正論。今まで穂乃果達は一応基礎もやってはきたが、細かくはやっていなかった。ある程度をやっていれば大丈夫だろう、という気持ちでダンスとダッシュばかりに集中していた。
「嫌な予感的中……」
何、にこさんアンタ嫌な予感しかしてなかったのか。奇遇だな。言っておいて何だが俺も心のどこかで嫌な予感はしていた。
「……ふっ!」
「おぉ、ことりちゃん凄い!」
穂乃果の声に釣られそちらの方向へ目をやると、そこには足を開きながら見事にお腹を床に付かせていることりの姿があった。
「えへへっ!」
さすがことりだ。そのポーズのまま笑顔まで保っている。しかし……しかしっ!!今ことりの背後の方に回れば、スカートで練習していることりの!足を開いたままのことりの!!エデンが見られるっ!!
「岡崎先輩、気持ち悪い顔してます」
「ばっかお前、俺の顔は元からこんなだ。それを気持ち悪いとかお前、あれだぞ。うっかり死ぬぞ」
やっべ、思いっきり真姫に見られてた。もうすぐで社会的に抹殺されるとこだった。あぶないあぶない。
「関心してる場合じゃないわよ!みんなできるの!?ダンスで人を魅了したいんでしょ!このくらいできて当たり前!」
そこから、生徒会長のスパルタ練習が始まった。
片足でバランスを保つ練習では、
「あと10分!」
全員が厳しい声を出しながらもはいと返事をしていた。辛い練習なのは分かっている。これも彼女達が決めた事なのだと知っている。それでも心配してしまう。変に無理をさせてしまったら、どうなるのか分からないから。
筋トレでは、
「筋力トレーニングも、もう一回しっかりやり直した方がいいわ!」
またしても全員が辛そうな声で返事をする。いつもやっている筋トレとは少し違うやり方。それだけで何倍もの負荷がかかる。それはことりを見てれば分かる。さっきまで順調そうに見えたことりが筋トレになった瞬間、表情が厳しくなっていた。
「ラストもう1セット!」
いつも穂乃果達を仕切っている海未でさえも結構辛そうな顔をしていた。あの海未でもこれなのだ。元々体力に自信がない者がこれをやっていたら、必ずどこかでボロがでる。
そして、それはすぐにやってきた。
「花陽っ!!」
バランスを崩してこけそうになったところを何とか受け止める事ができた。やっぱ注意深く見ていてよかった……。変に倒れてケガをしたら元も子もないからな。
「かよちん!かよちん大丈夫!?」
「う、うん、拓哉先輩が助けてくれたから……。あ、ありがとうございます、拓哉先輩っ……」
「ああ、ケガさえしてなけりゃいいんだ。あまり無理はしたらダメだぞ」
はい……と力なく返事する花陽は、やはり疲れているようだった。一旦スポーツドリンクを渡そうかと考えた時だった。
「もういいわ。今日はここまで」
最悪のタイミングで、その言葉は放たれた。
「ちょ、何よそれ!」
「そんな言い方ないんじゃない!?」
「私は冷静に判断しただけよ。自分達の実力は少しは分かったでしょ。今度のオープンキャンパスには、学校の存続がかかっているの。もしできないって言うなら早めに言って」
にこさんと真姫の言葉はまったく届いていなかった。
紡がれるのは耳が痛い言葉ばかりの数々だった。生徒会長の言葉が全部胸へと突き刺さる。これが生徒会長の実力だと言わんばかりに、たったあれだけの練習で、生徒会長は小さい頃どれだけ厳しい練習をしてきたかもわかる。そのほんの一部がこれというだけに過ぎない。
「時間がもったいないから」
何を言われても仕方ない。それを全部受け止めなければならない。上手くなるために。むしろ、こちらのお願いを引き受けてくれた事自体にホントは感謝しなければならないのだ。
であれば。
「待って下さい!!」
穂乃果の声を皮切りに、他のみんなも整列していく。花陽を起こし、ことりの隣に立たせる。
「ありがとうございました!」
「……え」
「明日もよろしくお願いします!!」
「「「「「「お願いします!!」」」」」」
穂乃果達の挨拶に、生徒会長は驚いていた。理解できていないのかもしれない。なんであんなキツイ練習をしてまだそんな事が言えるのか。そう言っているかのように、それは生徒会長の顔に表れていた。
「…………っ」
そのまま何も言わずに、生徒会長は屋上をあとにした。
「たとえどんなに辛くても、教えてくれるのには変わりない。だから最後にはちゃんと挨拶を忘れずに。よく頑張ったな、みんな」
生徒会長にお願いをしに行く前、あらかじめ言っておいたのだ。何があっても挫けない事、最後にはちゃんとお礼の挨拶をする事。これだけは絶対に守ってくれと。それさえちゃんとしとけば、また生徒会長は見てくれるはずだと伝えたから。
「うん、私達からお願いしたんだもん。こっちから諦めるわけにはいかないもんね!」
「私はあんまり乗り気じゃなかったんだけど、まあ、ダンスは上手くなりたいしね……仕方なくよ仕方なく!」
「それでもだよ。ありがと、にこさん」
「……え、ええ」
分かる。穂乃果と言っていた、明日から何かが変わるかもしれない。それが確かな実感として表れているような気がする。実際今日は生徒会長が少しでも教えてくれた。それでもう証明はされていた。
でもまだ少しの実感しかない。
つまり、決定的に何かが変わるのは。
――――――明日か。
――――――――――――――――――――
「亜里沙」
「あっ、お姉ちゃん」
「貸して」
亜里沙の部屋に入り、亜里沙が聴いていたイヤホンの一つを貸してもらう。聴いていたのは、もちろんμ'sだった。
イヤホンをしながら集中して聴いている絵里を見て、亜里沙はまるで独り言を呟くように口を開いた。
「私ね、μ'sのライブ見てると、胸がカーッて熱くなるの。一生懸命で、目いっぱい楽しそうで……」
聴きながら、絵里は亜里沙の言葉の意味を理解しかねていた。何を言っているんだと。上手くなければ意味などないと。
「……全然なってないわ」
「お姉ちゃんに比べればそうだけど、でも凄く元気が貰えるんだぁ」
(元気……)
今まで上手さだけで見ていた自分とは何か違うのか。その疑問が頭の中で何度もグルグルと回っていた。上手さも大切は大切。それ以外に何が必要なのか。もしかしたらそれを分かっていなかったから、自分はあの時挫折をしたのか……?
答えなど絵里に知る由もなかった。知らなかったから、彼女達の事をずっと認められなくて、挫折を味わうと勝手に思って、今日彼女達の活動を実際に見て、やはり認められなくて、それでも彼女達は挫けなかった。
絢瀬絵里という少女の中に、微かに思っている本音を少しは理解しながらも、少女はそれに蓋をして、また生徒会長の皮を被った。
―――――――――――――――――――――
「おはよーう!」
「おーっす」
朝練の時は各自バラバラで集まるようにしている。穂乃果も寝坊はしなくなったのだが、何故かいつも迎えに来てって言われて迎えに行っている。従ってる俺優しすぎじゃね?
「おはようっ!」
「おはようございます」
「よし、頑張ろー!!」
「とりあえず、今いてるお前らだけでも昨日の柔軟を先にやっておいたらどうだ」
「うん、そうだね!」
昨日はあのままずっと練習していた。たまに柔軟を入れたり筋トレをしたり、決して無理はさせない程度でやらせておいたのだ。少しでも早く慣れさせるために。
すると、屋上のドアが開かれた。
「にゃんにゃにゃんにゃにゃーん!」
「ああっ、ちょっと!」
出てきたのは背中を押された生徒会長と、元気に生徒会長の背中を押す凛だった。あとに花陽達も来て全員が揃った。
「おはようございます!」
「まずは柔軟からですよねっ!」
穂乃果とことりが元気に問いかける。まるで昨日の辛さなどどこにもないかのように。
「辛くないの?」
率直な疑問が放たれる。
「昨日あんなにやって、今日また同じ事するのよ。第一、上手くなるかどうか分からないのに」
純粋な疑問だった。確かに、昨日柔軟と筋トレだけであんなにキツかったのだ。辛いのは当然、お願いを辞退してもおかしくはないと思っているんだろう。実力不足を完膚なきまでに分からされて尚、何故続けようとするのか。それを聞きたいのだろう。
そんなの、分かりきってる答えなのに。
「やりたいからです!」
「っ……!」
とても分かりやすくて、とてもシンプルな言葉だった。
「確かに、練習は凄くキツイです。体中痛いです!でも、廃校を阻止したいという気持ちは、生徒会長にも負けません!!だから今日も、よろしくお願いします!」
「「「「「「お願いします!!」」」」」」
言った。言ってみせた。負けないと。ハッキリと。穂乃果の気持ちを、みんなの気持ちを言ってみせた。素直な気持ちを、
「……っ!!」
「あ、生徒会長!」
それに何を感じたのかは分からない。けど、穂乃果の言葉に明確な反応を表した生徒会長は屋上を出て行ってしまった。
怒りを感じたのかもしれない。まだやるのかと呆れを感じたのかもしれない。こんな奴らの相手をしている暇はないと諦めを感じたのかもしれない。
「ど、どうしよう……」
「穂乃果達はこのまま柔軟とか、とにかく練習を続けてろ」
「でも、じゃあ、誰が生徒会長のとこに……」
でも、このまま終わらせていいわけがない。昨日や一昨日に感じた違和感。それがまだ残っている。
何かが変わるかもしれない。
これは時間が解決してくれるようなものじゃないと分かっている。
何かが変わるんじゃない。
「――――俺が行く」
何かを決定的に変えるなら、今しかない。
――――――――――――――――――――
屋上をあとにした少女は早歩きで廊下を歩いていた。
何故こんなにも早歩きなのか自分でも分からない。いや、分かってはいても分からないフリをしているのかもしれない。とにかく、先程μ'sのリーダーである少女の言葉を聞いてから胸がずっとざわついている。
まるで自分の心の中の本音が抉られたかのように、1番脆い部分をゆっくりと何者かが侵食して蝕まれるかのように。落ち着きを取り戻せないほどにまで『何か』が少女を焦らせていた。
そして最近言われた言葉を思い出していく。
『これがお姉ちゃんのやりたい事?』
『絵里さんの本当に思っている事。やりたい事を考えてみてください』
『やりたいからです!!』
そのどれもが、絵里の心を容赦なくかき乱す。その全てに共通しているワードがあった。
『やりたい事』
それが何なのか。
きっと少女は分かっているのだろう。それでいて尚、自分の気持ちを騙し続けている。とても冷たく、とても固く、溶けない氷の中心にその気持ちを閉じ込めている。
だから。
そんな少女の氷を溶かすために、親友である少女がやってくる。
「ウチな……」
「っ、希……」
今まで影からμ'sを支え、本音を閉ざしている親友を救うために、影で動いていた少女が、今、ここで、ようやく、本格的に、動き出す。
「エリチと友達になって生徒会やってきて、ずーっと思ってた事があるんや。エリチは、本当は何がしたいんやろって」
「え…………」
東條希はそのまま語る。
「ずっと一緒にいると、分かるんよ。エリチが頑張るのは、いつも誰かのためばっかりで、だから……いつも何かを我慢してるようで……全然自分の事は考えてなくて……!」
「……っ!!」
ここしかない。今ここで彼女を救わなければ今までの全てがダメになる。過程が潰されて、台無しになってしまう。だから、ここで一気に畳みかける必要がある。希を放っておいて行こうとする絵里を止めるために声を張る。
「学校を存続させようってのも、生徒会長としての義務感やろ!!だから理事長は、エリチの事、認めなかったんと違う!?」
何故自分の提案がことごとく断られたのか。何故生徒会が動くのを認められなかったのか。何故自分達生徒会ではなく、μ'sの活動は認められるのか。それがずっと引っかかっていた。
もしかしたらμ'sに理事長の娘がいるからだと思っていた事もあった。ただのえこひいきなのかと思っていた事もあった。
しかし蓋を開けてみれば実際は単純だった。
絢瀬絵里という少女は、学校を守らないとという生徒会長としての義務感だけで動いていた。だからそれを理事長に見破られ認めてもらう事ができなかった。
対してμ'sは、最初こそ学校を守りたいという意思でやっていたが、今では彼女達が純粋にやりたいという気持ちでやっている事を傍から見ても分かる。だから活動を認めてもらえていた。
そんな些細な違いに過ぎなかった。
だから、今こそ絵里の本当の気持ちを聞きださなければならない。聞いて、それを手助けしてやれるように支えたい。親友だからこそ、東條希は絵里に叫ぶ。
「エリチの……エリチの本当にやりたい事は!?」
希の叫びのあとに、2人の間には沈黙がうまれた。絵里は戸惑っていた。ここで言うべきか、否か。
しかし、言ってしまえば、何かが変わるというのか?言ったところで、何かを変えられるのか?そう簡単には人は変われないという事を知っていれば、そんなのは言ったとしても何も変えられないのではないか?無意味ではないのか?
静寂の中、まだ生徒が来る時間ではないため、2人以外の生徒は誰もいなかった。そして、開いてる窓から聞こえてくるのは、屋上で練習している彼女達の掛け声だった。
一旦柔軟が終わったのか、窓から聞こえる声はなくなり、再び静寂が訪れる。
その沈黙を破ったのは、絵里だった。
「何よ……何とかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!」
その言葉には、明確な否定の意が込められていた。
「私だって、好きな事だけやって、それだけで何とかなるんだったらそうしたいわよ!!」
一度言ってしまえば、あとはもう止まらない。止められなかった。次々と本音という言葉が乱暴に吐き出されていった。
「ぁ……」
そこで希は見た。見てしまった。絢瀬絵里の、今まで一度も誰にも見せた事がなかった、親友の、涙を。1番見たくなかった親友のその姿を、自分がさせてしまった。
「自分が不器用なのは分かってる……!でも!……今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う……?」
決定的だった。やっと彼女の本音を聞く事ができた。しかし、そこまでだった。彼女の声は涙で震えていた。涙で震えながら、何かを諦めたかのような笑みで言った。それは、希の心を抉るのには十分すぎるほどだった。
走り去って行く絵里を追いかけて行く事すら出来なかった。気付けば、希は俯きながら体を小刻みに震わせていた。
今までずっと影からでも支えてきたつもりだった。親友のためにμ'sにわざと力を貸し、色々と人気がでたり上達していくμ'sに目くじら立てるようにも仕向けた。全ては親友である絵里のために。
今まで小さく積み上げてきた過程は、自分自身がさせてしまった親友の泣き顔で簡単に、まるで今にも崩れそうだったジェンガをわざと誰かに思い切り崩されたかのように、いとも簡単に崩れていった。
助けたかった。自分の手で、大切な親友を、救いたかった。手を差し伸べてあげたかった。なのに、自分自身の手で、親友を泣かせてしまった。その真実が、親友を追いかけようとする足を動けなくしてしまっていた。
このまま終わらせる訳にはいかない。ここで終わってしまえば、もう、本当の意味で、親友を救う事ができないかもしれない。そう思っていても、頭の中で痛いほど理解していても、初めての親友を、大切な親友を失うかもしれないという恐怖が、まるでその地点から絶対に動かないように打ち付けられた釘のように、少女を硬直させていた。
もう、どうする事もできないのか。自分じゃ本当の気持ちを聞くだけで、そこから何もできなかった。泣かせてしまった。彼女を1番近くで見てきたのに、1番思っていたのに、今では1番遠くにいるような感覚。
それを考えた瞬間。
俯いていた少女から落ちたのは、涙だった。
そして。
その少女の涙に呼応するかのように。
背後から。
ゆっくりと。
足音が響いた。
―――――――――――――――――――――
別に盗み聞きをするつもりではなかった。
偶然だった。
追いかけていたら話し声が聞こえた。
だからそのまま止まって聞いていた。
そして、ある少女の本当の気持ちを知った。
2人の少女の口論が終わる頃、金髪の少女は泣いて走り去って行った。
そして、取り残された紫髪の少女は俯き、体を小刻みに震わしていた。
それをずっと見ていた誰かは歩き出す。
静寂が支配していた廊下に、足音という音が確かに生まれる。
「……ごめんな、みっともないとこ、見せちゃったんっ……」
俯いたまま、体を震わせながら、声も震わせながら、振り返らずに、けれど、まるで誰が来たのか分かっているかのような話し方で、少女は喋る。
「ウチじゃ……あかんかったみたい……。ずっと一緒におったウチが、エリチを救いたかったんやけどな……っ」
独り言のように話す少女。その声は笑っているかにも聞こえるが、ずっと震えていた。必死に泣くのを堪えているかのように。
ずっと救いたかったんだろう。一緒にいたからこそ手を差し伸べたかったんだろう。大切な友達だったから、側にいた自分が受け止めてあげたかったんだろう。
しかし、それを叶えられる事はなかった。現実は非情にも、少女に牙を向いた。
「ウチは……、無力だったんかな……エリチに何もしてあげられないんかな……」
歩いている誰かは答えない。ただ、静かに、けれど力強く拳を握っていた。そして、少女の口から聞こえたのは、嘆きにも似た頼み事だった。
「ウチじゃ……私じゃエリチを救えなかったっ……。お願いっ……もう、私じゃ何もしてあげる事はできない……。だから、君に頼むしかないの……。私の代わりに、エリチを助けてあげてっ……!!」
もう、限界だったのだろう。親友の苦しむ姿は見たくなかったのだろう。普段の似非関西弁じゃいられなくなる程、辛かったのだろう。
やがて、歩いていた誰かは、少女の近くまでやってきた。
力強く握っていた拳をその瞬間だけ開き、少女を通り過ぎる時に頭の上に手を置いた。
「お願い……っ!」
そして、涙を我慢できなくなって、振り絞るように出された少女のお願いに対し。
“少年”の出した答えは、とてもシンプルで、だけど、その言葉は誰にも負けない程の頼もしさがあった。
「了解」
2人の少女を救うべく。
満を持して。
―――――岡崎拓哉が動き出す。
さて、いかがでしたでしょうか。
泣いている少女がいたら、たとえ誰だろうと救おうとする。それが岡崎拓哉という奴です。
どこの上条さんだよって思った方は、絶対自分と趣味が合います(笑)
いよいよここまできました。
次回はとうとう……!!ってな感じです!
お楽しみに!!
いつもご感想評価ありがとうございます+ご感想評価お待ちしております。
とうとうご感想200件を突破しました!!
中々届く事のない200という数字に届いて、作者自身大分テンションが上がっております!
これもいつも読んで下さる読者の方々や、ご感想書いて下さる皆さまのおかげでございます。
これからももっとご感想をいただけるように気合いを入れて頑張っていきます!!