2日間幸せすぎて終わった後は虚無感と喪失感が凄かったです。見事に何もやる気が起こらなかったですよ。
でも……っ……やっぱり……ラブライブはっ……最高やなっ……!!
あ、本編入りまーーす。
その日、高坂穂乃果、園田海未、南ことりはいつも通り夕方になるまで公園で遊んでいた。
『ふぅ~、今日も楽しかったな~』
『ことり疲れちゃったよ~』
『そろそろ帰りましょうか』
夕日が沈み始めている時間、それはつまり小学生が家に帰らないといけない時間とも言える。
しかし穂乃果が、
『ねえねえ、帰る前にさ、あの木に登ってみようよ!』
穂乃果が公園の中心に生えているでかい木を指さしながらキラキラした目で言った。
いったい何を言っているんだ、と海未は内心で思う。
自分は小学生という小さいながらもさすがに木登りは危険だということは普通に分かる。だが、この時の海未はまだ自分の意見をはっきり言えずに引っ込み思案の部分の方が強かった。
が、故に。
『よし、行こう!!』
『穂乃果ちゃんあぶないよ~!』
と言いつつ着いて行ってしまうことり。
『あ……ま、待ってください~!』
そして自分も、着いて行ってしまう。
物心付いた頃から海未はいつも穂乃果の後ろを着いて行くようになっていた。自分が恥ずかしがりなせいでもあるが、何かとあれこれすぐ行動する穂乃果にまるで反射的に着いて行ってしまうのだ。
ことりは海未とは違って特に引っ込みがちというわけではないが、やはりと言えばやはり、穂乃果に着いて行くのであった。
海未が穂乃果達に追いついた頃には既に穂乃果がせっせと木に登り始めていた。
『あ、危ないですよ穂乃果ぁ』
『んしょっと、海未ちゃん達も早く来なよお!』
穂乃果が登りながらこちらに言ってくる。
しかし、ことりも海未もそんなすぐに登れるほど心の準備が出来てはいない。そもそも登りたくないのが本音だ。
『早くぅ!!』
でも、しかし、だが、いつも通り、いつも通り穂乃果の無茶な行動に振り回されてきたことりと海未は付き合わされる運命にあったのだ!!
『うぅ~、分かったよぉ~』
そう言いながら登り始めることり。それを見て海未は焦りながらも仕方なく自分も登り始める。
普通に言って、今登っている木は小学生からすると充分すぎるほど大きかった。
それを登るということは登った後に見る景色は高いということ。屋上に柵があるように、綱渡りの際に命綱があるように、限りある安全の手が施されているわけではない。手と足に入れている力を抜けば落ちて簡単に小さい体に大ケガをしてしまう状況。
そんな中、既に登り切って太めの枝に移っていた穂乃果は、
『ほら、ことりちゃん、こっちだよ!』
『うぅ~……ふぅぃ~……』
ことりの手を引っ張り手助けしていた。海未もその後穂乃果に手助けしてもらい3人共太い枝に移ることには成功した。
の、だが……。
『ふぇ~……怖いよぉ~!』
足を踏み外すと確実に落ちてしまうこの状況で、ことりと海未は抱き合って泣いていた。
対して穂乃果は、
『うわぁー! 凄いよー!』
1人景色を見て感嘆としていた。
『ことりちゃん達も見てみなよ! 凄いよ!』
はしゃぎながら言ってくる穂乃果だが、海未達2人はそんな場合ではなかった。子供だから、ただ純粋に高い所が怖かった。逆に怖がらずにはしゃいでる穂乃果は異常なんじゃないのかと海未は思ってしまう。
とにかく怖い。ここから降りるのも怖い。何なら誰かに助けてほしいとまで思う。
例えばあの少年に。
『ほらほら! ちょっとでもいいから見てみてよ!!』
そう言われ肩を揺すられる。
こんな場所で揺すられるなんてたまったもんじゃない。このまま揺すられるのが嫌なので仕方なく抱き合っていた手を離し視界を広げていく。
そこには。
街に沈みかけようとしている夕日があった。
ただ、それだけだった。
しかし、それは今までまともに夕日をじっくり見たことがなかった海未とことりを惹き込むくらいに幻想的でもあったのだ。
低い場所から見るのとは違う。たった数メートル違う高さから見るだけでこんなにも景色は違うのかと、海未は思っていた。そこにはもう、恐怖心は存在しない。ことりも一緒に見惚れていて、穂乃果も満足そうに見ていた。
『ねえ? 凄く綺麗でしょ?』
穂乃果がフフンッと少しドヤ顔で言ってくる。
『うん、ふわぁ~……凄く綺麗~……』
ことりはさっきの穂乃果と同じようにキラキラした目で見ている。
『ふぁぁ……』
海未は声は静かに、しかしことり同様に見惚れていた。
3人が3人、夕日に見惚れ感動していた。
そして。
3人の体重に耐えきれなくなった枝に、亀裂が入る。
ビキィッ!と、それは突然訪れた。
『えっ?』
『どうしたの? 海未ちゃ――うわぁ!?』
『きゃあー!』
3人が、落ちる。あらゆる感触が消え、あるのは重力への知覚だけだった。
海未はもうダメだと歯を食いしばった。この高さから落ちたら小さいこの体はただでは済まない。確実に大ケガは逃れられないだろう。消え去っていた恐怖が再び襲ってきて反射的に目を瞑る。
ことりは何で登ったんだろうと思った。引っ込み思案な海未の代わりに自分がちゃんと穂乃果を止めていたらこうなることは避けられたはずなのに。どうなるか分からない未来に恐れながらも恐怖で目を瞑る。
穂乃果は後悔していた。最初からこんなことを言わなかったら2人を危険な目に合わせることはなかったはずだ。自分のせいで2人が大ケガをしてしまったら、もう会わせる顔がなくなってしまう。どうしようもない後悔と恐ろしさで目を瞑る。
最中、3人は同じことを思った。
(たくちゃん……)
(たっくん……)
(拓哉君……)
一人の少年を思い浮かべる。
こんなとき、彼なら必ず助けに来てくれる。けれど肝心の少年は今ここにはいない。そんな保障など希望にすらならない願望だった。
しかし、それでも思ってしまう。
(((助けてッッッ……!!)))
そして。
それに呼応するかのように。
『おおおォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!』
―――――――――――――――――――
元々ヒーローには憧れていた。
小学生くらいの男子なら大体が特撮物やら、アニメを見て一度はヒーローに憧れるはずだ。自分はああなりたい、ああいうヒーローになってみたい。岡崎拓哉はそれが、他の男子よりその思いが強かった。
みんなが助けを呼べば必ず来てくれるヒーローに憧れた。泣いている女の子に手を差し伸べるヒーローに憧れた。都合よく、そしてかっこよく颯爽と現れるヒーローに憧れた。
自分もああなりたい。いつも拓哉はそう思っていた。しかし、この現実の世界ではまず異能を持った悪党なんていない。怪獣がいるわけでもない。ましてやデカいロボットが出てくるわけでもない。何もない、何の異能もないただの現実。本当ならその方が町が悪党によって混乱の渦に巻き込まれることもないし、そちらの方が平和なのかもしれない。
しかし、それでも拓哉はヒーローになりたいと思っていた。
例え異能がなくとも、泣いている女の子に手を差し伸べることくらいは出来る。
例え異能がなくとも、助けを呼んでいる誰かの元に駆け付けることくらいは出来る。
例え異能がなくとも、非情な運命に必死に抗うことくらいは出来る。
例え異能がなくとも、たった今、窮地に立たされている幼馴染達を助けることくらいは出来る。
『おおおォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!』
穂乃果達が落ちそうになる前から拓哉は走り始めていた。ギリギリ間に合う。もし間に合わなくても、間に合わせる。
幸い穂乃果達は3人共固まって落ちかけていた。バラバラで離れて落ちていたら全員助けるのは無理だ。だが、固まっていたら、助けられる。
拓哉は3人の落下地点へと飛び込んだ。
自らがクッションになるように。それで自分がケガを負うことになっても。自分がクッション代わりになれば穂乃果達は痛みはあろうと大ケガにまでは至らないはずだ。
そして、3人が拓哉の上に落下した。
ドスンッ!!という鈍い音がした。
『おぶふぅっ……!!』
いたたた……と海未は腰をさすりながらそんな声が聞こえた方向、つまり下を見ると、
『た、拓哉君!?』
拓哉が下敷きになっていた。
『いったーい……ってたっくん!?』
『いててて……た、たくちゃん!?』
ことりと穂乃果も下敷きになっている拓哉を見て驚きだす。
そして当の拓哉は。
『お、驚くのは後にして、まずはどいてくんない……?』
割と平気そうで答えた。
3人はすぐさま拓哉の上から離れ、
『たくちゃん! 大丈夫!?』
『たっくん、死なないで~!!』
『拓哉君! お、おケガはありませんか!?』
倒れている拓哉に向かって心配の声をかける。ことりは少し早とちりしているようだが。
『あ、ああ……な、何とか大丈夫っぽそうだよ……って!! そうじゃなくて!!』
拓哉が痛がりながらも勢いよく起き上がってくる。それに対し3人は何故3人の落下してきた体重をもろに受けてすぐ起き上がれるのかが疑問に思っていた。
それと同時に、拓哉の発言に対する疑問も忘れずに。
『それよりも、お前らは大丈夫だったか? 大きなケガとかしてないか!?』
『い、いや、確かに痛かったのは痛かったけど、大ケガはしてないよ? ね? 海未ちゃん、ことりちゃん』
『う、うん…』
『は、はい…』
拓哉以外の全員が驚いていた。自分達より明らかに負傷が大きいはずなのに、自分そっちのけでこちらの心配しかしていない。顔面から地面に突撃したと言っても過言ではない勢いでぶつかったせいか、拓哉の顔は砂まみれで服も汚れていた。膝も擦りむいて血が出ている。
誰が見ても痛々しいと分かるほどの姿。それなのに、今の拓哉は『そっか、お前らにケガがないなら良かったよ』と、あっけらかんと言いながら服に付いた砂を落としていた。
自分達のせいでケガをしたのに拓哉はただ笑っている。自分達が無事だから。自身の危険を顧みず最大の危機だった自分達を助けてくれた。
それはまるで、3人が3人、落ちる時に心の中で叫んだ声に拓哉が応えてくれたかのように。
それはまるで、助けを呼んだら駆け付けて来てくれたヒーローのように。
まさに穂乃果達にとって、岡崎拓哉はヒーローだった。
『うぇっ、全然砂落ちねえや。まあいっか。とにかくお前らが無事で良かったよ』
『で、ですが拓哉君がケガを……!』
『んぁ? こんなもん別に痛くも何ともないっての。男ならこんな擦り傷くらいで喚かないもんなんだよ!』
『そ、そうですか……』
拓哉が元気いっぱいに言うもんだから海未も気圧されて思わず納得してしまう。
『そういえば、たくちゃんは何でこの公園に来たの?』
穂乃果が思い出したかのように言う。
言われてみればそうだ。何故都合よくこんな場所にいたのか。もしくは来たのか。
『ああ、それはだな。母さんに頼まれて桐穂さんとこに饅頭買いに行ったら、桐穂さんに穂乃果がまだ帰ってこないから連れて帰って来てくれって言われたんだよ』
『だからここに来たんだ』
『そうだよ。そしたらお前らが木に登ってて落ちそうになってたから走って来たわけ』
そう言われれば拓哉が何故ここに来たのか納得がいった。
するとことりが、
『ことり、木から落ちそうになった時にたっくん助けてって思ったんだ。そしたら本当にたっくんが助けに来てくれて……。たっくんはことりのヒーローさんだね』
ことりが嬉しそうに言う。
それに続くように穂乃果や海未も口を開いた。
『あっ、それ穂乃果も思ってたよ! たくちゃん助けてって!』
『私も思いました。本当に拓哉君がヒーローのように見えました……』
それそれが思ってたことを言うと、拓哉が目を見開いて、
『えっ? マジ!? 俺ヒーローみたいだった!?』
物凄く食い気味で言ってきた。
『ヒーローみたいじゃなくて、ヒーローだったよたくちゃんは!! 凄くかっこよかったよ!!』
穂乃果自体もヒーロー物が好きなせいか、はしゃぎながら言う。
『よっしゃぁぁああ!! とうとうヒーローになれたぜ俺はあ!!』
うしゃオラァ!!とバカ騒ぎしている拓哉を見て海未は何を騒いでいるんだと、思っていても言えない性格だから一つ軽い溜息を吐く。
『拓哉君はヒーローというものに憧れていましたもんね……』
『おうよ! 憧れてたヒーローにやっとなれた俺は無敵だぜえ!!』
しかし、ヒーローに助けられたとしても、決してすぐにさっきの恐怖が消えることはない。
『私は、怖かったです……』
『え?』
今まで騒いでいた拓哉がポカンとした目で海未を見る。
『……私は怖かったんです。木から落ちる時、もうダメかと思いました。死んじゃうかもって思いました……!』
海未が先ほどの恐怖を思い出しながら泣きそうになっているのを見て、穂乃果とことりも次第にさっきの出来事を思い出し体が震えていく。
『私達の自業自得だというのは分かってます……。それでも……っ……それでも……怖かった……』
海未は親に教えられていた敬語が取れてしまうほど怖かったのだろう。
『ごめんね……海未ちゃん……穂乃果のせいで……っ……』
穂乃果は自分のせいで2人に大ケガをさせてしまったらどうしようかと後悔していたのだろう。
『こ、ことりも、ちゃんと穂乃果ちゃんを止めてたらこんなことにならなかったのに……ごめんなさい……!』
ことりは自分がちゃんと意見を出しておけば止められたのかもしれないと悔やんでいたのだろう。
そして拓哉は。
『なら俺がお前らをずっと守ってやる』
一言。
拓哉のたった一言で3人は黙り、
『『『え?』』』
その一文字だけを絞り出す。
『俺はお前らの泣き顔を見たくないんだよ。だから俺がお前らにもう怖い思いをさせないように守ってやる。どんな時も必ず守ってやる。絶対だ!』
それは、小学生が言うにはあまりにも軽すぎて、あまりにも浅はかなのかもしれない。
しかし、それはあまりにもかっこよく、有無を言わせないほどの覚悟があった。
『それって、穂乃果達のヒーローになってくれるってこと……?』
穂乃果が涙を拭いながら聞いてくる。
『そうだ』
『ことり達を守ってくれるってこと……?』
ことりがまだ半泣きで聞いてくる。
『そうだ』
『私達を助けてくれるってことですか……?』
海未が涙を流しながら聞いてくる。
『そうだ。何があっても守る。守り抜いてみせる! 俺がヒーローになって必ず、絶対駆け付けてやる。だからもう泣くな』
その発言には不思議と説得力と包容力があった。
いつしか恐怖心は薄れていた。
『じゃ、じゃあ……今日からたくちゃんは穂乃果達のヒーローだね!!』
穂乃果が元気を取り戻しいつもの笑顔に戻った。
『そういうこった! さあ、んじゃ解決したことだし、もう日も落ちるから早くみんなで帰るぞー!』
『『うん!!』』
穂乃果とことりが元気な返事をして前を走っていく。
『あっ、そうだ。海未』
穂乃果達を追いかけようとしたら拓哉が不意に海未を呼び止める。
『何でしょう?』
『明日でも明後日でもいいからさ、お前んとこの家で稽古受けさせてくんないかな。やっぱりさ、強くならないと守るものも守れないしな!!』
拓哉がそう言いながら笑顔で聞いてくる。
『分かりました。帰ったら聞いてみますね』
それを聞くと拓哉は満足そうに穂乃果達を追いかけて行った。
痛くも何ともないと言っていた足を少し引きずりながら。
『ふふっ。でも、足が治ってからじゃないとダメですよ? 拓哉君』
――――――――――――――――――
それが俺がヒーローを目指すきっかけだった。
あの頃から俺は海未の父親に稽古をつけてもらいに行って6年生の終わりになるまで心身共に鍛えていった。小学生の終わりには引っ越してしまったけど、こうして戻って来た。
自分で言うのも何だが、強くなったと思う。人助けをしていると必然的に喧嘩に発展してしまうことが多かったため、引っ越してからも自然と体は鍛えられていたんだろう。
俺は今もこいつらのヒーローのままでいれているのだろうか?
「なあ、俺ってさ……今でも、お前らのヒーローでいれてるのかな?」
俺の急な質問に穂乃果達はキョトンとしながら、3人で顔を見合わせて再びこっちを見て来て。
「たくちゃんはいつでも私達のヒーローだよ!!」
何の迷いもなく、自然に、元気に、穂乃果が言ってきた。後から海未もことりも頷く。
そう、言ってくれた。
「そっか」
自然とニヤケてしまう。いけね、これじゃ変に思われてしまう。
でも、今だけはいいかな。
「あの頃より格段に強くて頼れる拓哉さんになって戻ってきたぜお前らあ!!」
「その発言はいらなかったですね」
ヒーローが崩れ落ちた瞬間だった。
前回、過去編はすぐに終わると言ったな。あれは嘘だ。
…いや、短くするつもりだったんだけど書きながら考えるやり方でやってたらいつの間にかいつもと変わらない長さになっちった☆
ちょ、ごめん、謝るからトマト投げないでっ。真姫ちゃんが怒るよ!!
それにしてもいつになったらアニメ本編に入るのだろうか?
何故か自分が1番疑問に思ってます。