ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

56 / 199
さて、ワンダーゾーン編3話目でございます。

今回は拓哉の思考が大半を占めていますが、それが今回のメインみたいなものなので、それもまとめてお楽しみくださいませ!


では、どうぞ。




47.何が正しいのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅途中。

 別れる者とは別れ、俺、穂乃果、海未、絢瀬会長の4人は赤く染まる景色の中を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 最初に口を開いたのは、穂乃果だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、意外だな~。ことりちゃんがそんな事悩んでたなんて」

 

 

 

 

 

 

 “そんな事”。

 それは穂乃果にとってはそうなのかもしれない。実際、海未や絢瀬会長、他のみんなもそうだし、俺でさえも心のどこかでは“そんな事”などと軽く考えてしまっているのかもしれない。

 

 

 でも、ことりにとっては違う。

 ことりにとってそれは、とても重要な事で、悩める事で、変わらなければと思っている事なのだ。他人がどんなに軽く思おうと、自分の中ではグルグルと気持ち悪く回り続ける気味の悪いわだかまりのようなもの。

 

 

 問題なのは、ことりの悩みに俺が介入するかしないか。介入したとして、余計ことりが劣等感を感じてしまったら意味はない。かと言って、傍観者を気取ってことりがこのまま何も変わらなかったら、それこそ意味がないのだ。

 

 

 

 

「意外とみんな、そうなのかもしれないわね」

「え?」

 穂乃果の呟きに反応するように、絢瀬会長が返す。

 

 

「自分の事を優れているなんて思っている人間は、ほとんどいないって事。だから努力するのよ、みんな」

「そっか……」

 言われて考えてみる。絢瀬会長の言う事はもっともだと思った。わざわざ自分の事を優れているだなんて上から目線で思っている奴は、その時点でたかが知れている。本当に優れているなら上からではなく、同じ目線で悩んでいる人に手を差し伸べてあげるべきなのに。

 

 

 っと、今はこんな事を考えてるんじゃない。

 

 

「確かにそうかもしれません」

「そうやって少しずつ成長して、成長した周りの人を見てまた頑張って、ライバルみたいな関係なのかもね。友達って」

 ライバル、か。俺にとって穂乃果達はライバル……ではないと思う。何というか、手伝いとして見ているからか、ライバルというより保護者目線で考えてしまう。やだ、俺ってば主夫に向いてるかも?

 

 

「絵里先輩に、μ'sに入ってもらって本当に良かったです!」

「な、何よ急に……明日から練習メニュー軽くしてとか言わないでよー?」

 穂乃果も海未も同じ事を考えていたようだった。俺もそう思う。こうやってμ'sに入ってからというもの、絢瀬会長の言う事は的を得ているのがほとんどなのだ。俺とはまた少し違う考え方。それでも正しいと確信をもって言えるものがあった。

 

 違う考え方でも、目指すべき終点は同じだと言うように。俺では出せない答えを出せる者。違う正しさを持っている者。その1人が絢瀬会長なのだと、この数日間で分かった。

 

 

「じゃあ、また明日」

「「また明日です!」」

 軽く会釈して絢瀬会長に別れを告げる。その背中を見て思う。……やっぱスタイル良いなあの人。違う違う、何を考えてんだ俺は。さっきまでのシリアス思考はどこ行った。そんなの可愛い美人さん見たらすぐ吹っ飛ぶに決まってるだろ!

 

 

「ねえ、海未ちゃんも私を見てもっと頑張らなきゃーって思った事ある?」

 急に穂乃果が海未に問いだした。海未が何と答えるか、そんなのいつもこいつらを見守ってきた俺が分からない訳がない。

 

「数えきれないほどに」

 特に渋る事もなく海未を答えた。まるで最初からその答えを持っていたかとでもいうかのように。

 

「ええ!?海未ちゃん何をやっても私より上手じゃない!私のどこでそう思うの!?」

 まあ、穂乃果から見ればそう思っても不思議な事でもない。普通に、一般的に、常識的に見てみれば、穂乃果より海未の方が何をやっても凄い、多才のある少女と見えるだろう。

 

 しかし、ことりも先程言っていたように、海未本人からしてみればそんなのは関係ない事なのだ。周りの評価よりも自分の考え方。それだけで人の見方は無限の域にまで通りがある。

 

 周りがダメだと思っているものが自分には魅力に見えたり、周りが魅力に見えてるものが自分にはダメだと思ったり。とにかく、このように考えや悩みなんてものは個人によってガラリと変わるものだ。

 

 穂乃果は自分よりも海未の方が凄いと思っているのに、海未は穂乃果を見て頑張らないとと思っている『それ』も、結局は個人の見方や考えなのだ。だから、ことりもああやって誰にも打ち明けられずに悩んでバイトして頑張っているのだろう。

 

 

「悔しいから秘密にしておきます」

「ええ~!!」

 無限にも等しい考えや見方がある。だから俺もこいつらの考えの全てが分かるわけじゃない。むしろ分からない事の方が多いのかもしれない。それが当然だ。他人の考えを全て分かってやれるなんてのはただの幻想に過ぎない。

 

 そんなのは自惚れだ。そんな幻想はぶち殺すべきだ。悪と呼ばれても過言ではない。そんな自惚れで分かってやれるなどと上から目線で調子に乗った結果が、のちにどうしようもない事態に陥ってしまう可能性だってあるかもしれないのに。

 

 大事なのは分かってやれるなんて自惚れじゃない。分かってやる努力だ。自惚れて勝手に行動して、それが全然見当違いな行動だったら、むしろ全く逆の行動で悪い方向になったら、それはもう破綻している。

 

 だったら、まずは悩んでる相手の悩みを聞いて、正しく理解して、相手の考えがちゃんと分かって、その上で最適解を出して行動する。その方が相手の望む結果に近い事ができるから。

 

 

 

 

 ことりの悩みを聞いて、何でバイトしているのか理解して、幼馴染である俺達に対して何もない自分に悩んでいると分かって、その上で最適解を出そうとしている。

 

 

 

 

 しかし、それが中々難しい。ことりの悩みの原因の一部に俺が含まれている時点で難しいと分かってはいたが、実際かなり難しい。ことりの問題に俺が介入していいのかダメなのか、それすら曖昧なのだ。

 

 何やら海未から視線を感じるが、そんな事よりことりの事だ。久々に頭を悩ませる事が起きたな……。あー、このまま何も考えずにベッドでマンガ読みながら寝落ちしたい気分だ。……やっぱ無理。凄い視線感じる。問題の思考を一旦中断しよう。

 

 

 

「……何だよ」

「いえ、別に……。とにかく、ことりと穂乃果は、私の1番のライバルですから」

 何だよ、何もないんだったらずっと見てくんなよ。穂乃果まで俺を見てきただろうが。何なの、顔に何か付いてんの。そういうベタな展開でも起きてんの。

 

「海未ちゃん……なるほどね。確かに海未ちゃんもことりちゃんも私の1番のライバルだ!他のμ'sのみんなもそうだけど、やっぱり2人には1番負けたくないもんね!!」

 知らない間に2人が燃えるような視線を交わせていた。お前らの中でそんなに競うような何かあったっけ。幼馴染だからお互い意識してるだけか。そうなると自然に俺もライバルになってしまうんだが。これは俺もスクールアイドルをやる未来が来るかも?来ない。

 

 

「ですが、私達の知らないところでも、ライバルはたくさんできていそうですね」

「たくちゃんならそれも普通にありえちゃうしね……。うーむ、これはもっと頑張らないとだよ!私達が1番近い関係なんだから!!」

「さっきから何の話してんだよ?なんか俺の名前がでてきた気がするんだが気のせいなのか」

「気のせいです」

 気のせいらしい。というかそれ以上ツッコんでくるなら矢を射るぞと海未の目が言っている。海未アローシュート怖い。

 

 

 

 

 とまあ、そんな感じで。

 こうやって俺もこいつらの考えが何から何まで分かるわけじゃない。俺だって普通の人間だ。異能なんて当然ないし、超能力や読心術、並外れた身体能力があるわけでもない。どこまでも普通の人間なのだ。

 

 

 未だに偶像的なヒーローなんてものを目指していても、そこだけはどうしようと変わらないし変えられるものでもない。いつも困ってる人や泣いてる人を助けるなんて凄いとかよく言われるが、俺は自分でそれを凄いと思った事は一度もない。

 

 助けようと思えば、『心』があるなら、人間として生まれてきたんだったら。人を助けることなんて。

 

 

 

 

 ―――誰にだってできるんだから(、、、、、、、、、、、、)

 

 

 

 問題なのは個人の思いだ。その人が困ってる誰かを助けようと思ったのなら、その人ももうヒーローであり、その人が困ってる誰かを見捨てたのなら、その人は悪だ。

 

 

 

 

 これは俺の主観論でしかないが、誰かが困っているのを見て見ぬ振りをしている人をよく見る。その人達が何を思っているかは分からないが、困っている人を見てほんの少しでもどうにかしてあげようと思っているなら何故手を差し伸べないのか。

 

 

 ヒーローと悪に例えて考えてみる。

 

 

 言わずもがな、ヒーローならすぐさまその人に手を差し伸べるだろう。自分にできる事なのか分からなくても、ただ見過ごせないから、そんなシンプルな思いだけで行動できるなら、それはヒーローだ。

 

 

 では、悪は?

 

 

 簡単だ。困っている人を見て何も思わなかったり、それを影で笑ったり、かわいそうなどと思ってはいても何もしなかったら、そんなのは全てが悪だ。かわいそうなどと同情するなら何故助けようとしない。

 

 勇気がないからなんてのは言い訳にすらならない。そんなのはただの意気地なしだ。玉無し野郎だ。偽善なんかよりもひどい悪だ。誰かが誰かを助けてそれを偽善と嗤う(もの)と何も変わらない。

 

 

 そう考えてしまえば、この現実にはヒーローの方が少ないのかもしれない。あくまで主観論だけど、だから俺は、俺の目が、俺の手が届く範囲では、誰でもいいから困ってる人を助けようと思ってる。

 

 別に難しい事を考えてるわけじゃない。ただ俺が助けたいから。それだけだ。いつもと行動原理は変わらない。言っておくが、俺はこの考えを誰かに強要しようとは思っていない。

 

 

 無限に等しい考えがある中で、俺の考えを人に押し付けるなんて事はできないから。今まで色んな人に手を差し伸べてきた自覚はある。その中には色んな人がいた。色んな喧嘩をした。色んな口論があった。

 

 全員が全員、お前みたいに強い心を持っているわけじゃないんだと言われた事もあった。気持ちが分かるならほっといてくれと言われた事もあった。でも結局、ほっとけなかった。

 

 

 どんなに自分の心に問い詰めても、最後にはほっとけない、見捨てられないという結論に行きついてしまったから。ただ俺はいつだって自分の気持ちに正直に動いていただけだったんだ。

 

 

 

 人間だから。

 心があるから。

 意志があるから。

 

 

 本当に自分がどうしたいか。何をしたいのか、それを聞きだせば、あとはそれができるようにこちらは手助けしてやればいい。そうやっていつも乗り越えてきた。乗り越えられる事ができた。

 

 

 結局のところ、俺が今までやってきた事なんてそれだけの事に過ぎない。やろうと思えば誰でもできる。それをただやり続けてきただけなのだから。

 だから……、

 

 

 

 

 

「そういや、たくちゃんもこの人はライバルだなーとか思った人はいるの?」

 急な穂乃果の問いかけに、思考を変える。

 

 

「……いや、俺は特にいないかな。絢瀬会長の言う事を否定する訳じゃないけど、俺はライバルというよりお互いを高め合える仲間の意識の方が強いかもしれない」

 ライバルも仲間もある意味では一緒なのかもしれないが、言い方の問題みたいなものだ。こっちの方が拓哉さん的に好印象だから。ポイント高い。

 

 

「そっかー、でもたくちゃんっていつも困ってる誰かを迷わず助けに行くし、私からしたらたくちゃんのライバルなんていないんじゃないかなって思うくらいだよ。それだけたくちゃんは凄い(、、)って事だもんね!!」

 穂乃果の言葉に苦笑いだけで答えて空を見上げる。焼かれるような赤い夕焼けに目を細めながら思いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

 

 だから……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――俺は別に凄くなんてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じく夕焼けの空の下。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程少年達と別れた金髪クォーターの少女、絢瀬絵里はある場所へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神田明神。

 彼女の親友である少女が働いている神社だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリチ」

 向こうの親友もこちらに気付いたようだった。

 

 

 巫女姿の親友、東條希に向けて、絵里は一言だけ言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「希、少し付き合ってくれないかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神田明神より少しだけ歩いた横断歩道。その前には秋葉の景色が映っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたん?また戻ってくるなんて。わざわざ休憩もらってきたんやでウチ」

「ごめんなさいね、どうしても希には先に言っておきたくて」

 まだ休憩中のために巫女姿のままで着いて来てくれた希に軽く謝り、改めて前を見る。秋葉の景色を。μ'sのみんなと一緒に秋葉を廻って、気付いた事があった。それと同時に思い付いた事も。

 

 

 

 

 

「ちょっと、思いついた事があったの」

「思い付いた事?」

 それは秋葉に関係している事だろうと、希はすぐに理解する。わざわざ秋葉まで戻ってきてそれを言ったならば、それしか考えられないだろうから。

 

 

「さっき、街を歩いていて思ったの。次々新しいものを取り入れて、毎日目まぐるしく変わっていく。この街は、どんなものでも受け入れてくれる。1番ふさわしい場所なのかもなって」

 “ふさわしい場所”。それだけで察する事はできた。今日の部活で話していた事。順位を上げるために思い切った手が必要だと。

 

 

 その答えは場所にあった。

 

 

 

 

 

「……なるほど。エリチはここでやろうと思ったんやね」

「ええ」

 短い言葉のやり取りだった。でも、それだけで2人には十分通じ合える。それだけの関係が、親友のこの2人にはある。

 

 

 

 

 

 

 

「私達の、ステージに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 μ'sのライブをする新しい場所が、決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何もない自分を変えたいと悩める少女がいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな少女の悩みを聞いて何かしてやれる事はないかと考える少年がいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改めて自分達がライバルで、高め合える関係だという事を知った少女達がいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 μ'sのために自分が今できる最高の手を尽くすため、新たな場所でライブをしようと決めた少女がいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色んな思いが入り混じりながらも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題の解へと、それぞれが確実に近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いかがでしたでしょうか。


今回は話の区切り的にもこのあとの展開的にも良かったのであえて短い話にしました。


 そして、少しずつ分かってきた拓哉の中でのヒーロー像。
 本編内でも言ってましたが、これはあくまで拓哉の中のヒーロー像です。なので拓哉の考えに同意する方よりも、異論がある方の方が多いかと思います。
 書いてる自分でも拓哉のヒーロー像は中々に厳しい基準だと思っているくらいですからね(笑)
 でもこれが拓哉なんです。異常者かもしれないけど、どこまでも普通の人間なのです。
 賛否両論あると思いますが、これでもまだ拓哉の考えの一部です(笑)
 物語が進むに連れて、それもまた紐解いていこうかと思っていますので。



いつもご感想評価ありがとうございます+いつでもご感想評価お待ちしております!!


では、新たに高評価(☆9、☆10)をくださった、


春菌さん(☆9)


本当にありがとうございます!!
これからもご感想評価ドシドシ待ってます!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。