色々とお知らせがあるのであとがきも見てくださいね!
では、どうぞ!!
「あれだな、考えなしにやっちゃいけない事も世の中にはたくさんあるんだな」
「キッチンに来たと思えばいきなり何を言ってるんですか……」
さっそく今しがたにこさんにやった事を後悔している俺ガイル。仮にも店の中だぞ。しかも客に対してあんな事したら色々マズイんじゃないかと今更心配になってるまである。この勢いで即クビにしてくんないかな。
「たくちゃん、何かやったの?」
ふと穂乃果に問いかけられた。そうか、穂乃果と海未は途中からキッチンにいたから“アレ”を見ていなかったんだな。それでいい、見られてたら俺が冥土に行く事になる。メイドに冥土に送られるってか。……笑えねえ。
「いや、執事らしい事をしてきたまでだよ。それよりお前らは何してんだよ?」
嘘は言ってない。うん、これもある意味合ってるから問題ないよね。そして話題を速攻変える。これ以上聞かれたらボロが出かねない。もし出たらあとは地獄が待ってるだけだ。
「それが聞いてよたくちゃん!海未ちゃんったらここに移動してからずっと洗い物ばかりしてお客さんのとこに行こうとしないんだよ!!」
ああ、なるほど、凄く納得したわ。こいつならそういう策に出るなと思ってたし。俺が変にサボろうものなら叱咤してくるのに、自分の苦手分野の時にはあらゆる手段を使って逃げようとするからなこいつ。……あれ、俺と一緒じゃん。
「し、仕事はしています!そもそもメイドというのは本来こういう仕事がメインのはずです!」
「ほら、こういう屁理屈言って動こうとしないんだよ!」
確かに本来のメイドは海未の言うような事がメインの仕事で合っている。それには俺も同意だ。しかし、海未は理解していない。ここは本物のメイドが集う場所ではない。あくまで店なのだ。
つまり、
「海未、そんな屁理屈は通用しないぞ。ここはあくまでメイド喫茶という店なんだ。メインのメイドが客と接さないで何がメイド喫茶だ。ここでは客と接するのがメイドの仕事なんだよ。分かったか?」
「う、うう……」
はい論破。論破したよ!それは違うよしたよ!ダンガンでロンパしたよ!!超清々しいよ!!……あ、オムライス作らないと。
「わ、分かりました……。この洗い物が終われば行きます。……ですが拓哉君、やけにメイド喫茶の事を熱弁しますね」
「あん?そりゃそうだろ。こちとらアニメで何回もメイド喫茶を見てきたんだ。どういうものかも大体は理解してるつもりだっつの。……まあさすがに自分が執事やらされるとは思わなかったけど」
ここまでベタな王道展開になるのは予想外だった。ここって現実だよね?こんな事あんの?ちゃんとバイト代出してくれるからまだいいけど。
「それにしてもたくちゃん、手際いいね」
穂乃果が急に隣から覗き込んできた。近い、それと危ないから少し下がってなさい。火傷したら大変でしょうが。
「まあな、これでも前の家では親父の代わりに俺が家事してたし。そこら辺の新妻主婦よりかは家事できると自負している。何なら主夫になってもいいまである」
「暗に自分は働かない宣言してますね……」
「バッカお前、主夫は主夫で家の仕事があるでしょうが。洗濯炊事家事親父でしょうが」
「最後おかしくない?」
親父の相手がこれまた面倒なんだよ。たまに酔っぱらって帰ってくるし、そのたびにベッドまで肩で担いで行かなくちゃいけない。面倒な時は蹴り飛ばして床に寝かせるけど。
「海未ちゃ~ん、これもおねが~い」
「あ、はい!」
フライパンでわっしゃわっしゃやってると、キッチンにことりがやってくる。すると海未の顔を確認した途端にことりが注意をした。
「ダメだよ海未ちゃんっ、ここにいる時は笑顔を絶やしちゃダメっ」
「ですがここは……」
「お客さんの目の前じゃなくても、そういう心構えが大事なのっ♪」
「は、はい」
……………へえ。
「あと、たっくん♪」
「ん、どうし―――ッ!?」
あ、あるぇー?今癒されるような笑顔だったはずなのに、一瞬目を離した隙に何が起こった。俺の知ってる癒しの笑顔じゃなくなってるんだけど。凍てつく波動的なものを感じるんだけど。
「さっきにこ先輩にした事、私見ちゃったんだけどぉ……」
「え、あ、や、そのっ、あれはー……ですね?執事だからやっぱり成りきらないとなーと思ったまででありまして……。決してやましい気持ちなどはこれっぽっちもございませんのことよ?ホントダヨ!?」
何故だろうか。ことりの顔に不気味な影が見えるのは。あれってアニメとかで言うヤンデレっぽい影的なやつじゃね?そして大抵は絶対に上機嫌ではない事は分かる。嫌な予感しかしない。
「たくちゃん、向こうで何かしたの?」
「バッカお前、俺が店の中でそんな事すると思うか?いつもより執事的に紳士な対応をしたまでだっつの。あれだよ、ちょっとしたサービスだよ」
やばい、このままじゃことりのせいで穂乃果と海未の耳にまで入ってしまう。それだけは何としても阻止しないと。でもオムライスも作ってるから中々集中できない。やばいよやばいよー!!
「たっくん、あれは店では本来やっちゃいけない行為なんだよ……」
「あ、やっぱり?さすがに知り合いでも手の甲にキスはマズかったかーはっはっはっ!!…………ハッ!?」
「……たくちゃん?」
「……拓哉君?」
し、しまったァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!
自分で墓穴を掘ってしまった……!!バカヤロウ岡崎拓哉バカヤロウ!!自分から冥土に行くためのチケット用意してどうすんだよ。ことりの誘導尋問がヤバイ。思いっきり引っかかったよ。
そして、俺の首がフライパンからことり達の方へガチガチと、まるで壊れかけのロボットのようにぎこちない動きで振り向く。
「私達のいないとこでそーんな事してたんだー♪」
「それはそれはとても楽しかったのでしょうね……♪」
「いや、だからあれなんですよ……。執事的な対応をね?ほら、俺ここで働くの初めてだしルールとかあんま分からないじゃん?だ、だからつい張りきっちゃってですね……」
「女の子にあんな事するのは、普通セクハラだよ……?」
「ホントまじすいませんでした」
もうあれだよね。光の速さで土下座したよね。オムライス完成したから丁度良かったね。何が良いんだよ。キッチンで執事がメイドに土下座してんだぞ。仕える世界での闇の部分が垣間見えたぞ。
「はぁ……今回だけは許してあげるから、たっくんは早くにこ先輩にオムライス持って行ってあげて」
何と、凍てつく大天使様からのお許しが出たぞ。オムライス完成させてて良かったね!!命拾いしたよ!!
「私のためにたっくんもここで働いてくれてるんだし、今日くらいは大目に見ないとね♪」
「結婚しよう、ことり」
「はいっ♪」
「何言ってんのさたくちゃん!!早く持って行きなよ!!冷めちゃったらお客さんに迷惑でしょ!」
分かってるっての。ちょっとしたジョークじゃねえか。ほら、幼馴染だからこそ言える冗談みたいな?
……あれ、そういやことり何気に承諾してなかった?
「お待たせいたしました、お嬢様。執事特製手作りオムライスでございます」
「あ、ありがと……」
何とか戻ってこれた。最初はキッチンが安息所と思っていたのに気付けばこっちが安息所になっていた。何を言っているか分からねえと思うが、俺も分からなかった。
「……ねえ、岡崎君。その、さっきの事なんだけど」
オムライスを提供したところで絢瀬会長に話しかけられる。さっきのとはにこさんにやった事だろう。その点に関してはもう対策は考えてある。
「すみませんお嬢様、その事についてなのですが、当店ではやってはいけないというルールらしく、わたくしめが不知なばかりに混乱を招いてしまった事、誠に申し訳ありません」
みんなが見ている中で謝罪をすれば、事はすぐに収まる。これが俺のアドリブ力だ。どうだ参ったか。
「い、いいのよ別に……!私達も少し驚いてしまったけど、あれが執事のやる事だと思って納得してしまっていたから……。わ、私達もちょっと興味が湧いてしまったし……」
いや何でだよ。興味湧いちゃダメだろ。どんだけ俺セクハラしなくちゃならないんだよ。一般客に通報されるわ。
「美味しい……」
「お、マジでか。口に合って何よりだ」
「口調元に戻ってるんだけど……」
おっとしまった。急に褒められたからつい元の口調に戻ってしまった。でも執事口調も面倒だし、いつも通りでいいかな。店長全然出てこねえし何も言われないだろ。
「ちょっとしたキャラ変だよ。こういう軽い執事もいるっていう設定と思ってくれ」
「絶対今適当に考えたでしょ」
「さすがにこさん、よく分かってるな」
「アンタはこういう時に限っては省エネ人間だからね」
それって褒められてるの?貶されてるの?どっち?にこさんの態度的に褒められてはなさそう。いやそれ普通にバカにされてんじゃねえか。
「たくちゃん、海未ちゃんが接客行くからキッチンで洗い物お願いしていい?」
「ああ、分かった」
海未が少し緊張しながらも出てきた。これはことりのためだと思っていたが、こんなんじゃ海未のためでもあるな……。店の方も少しだけ忙しくなってきた。仕方ない、働くか。
「じゃあみんな、俺達は今からやる事あるから、まあゆっくりしてってくれ」
全員が頷いた事を確認してからキッチンへと戻る。……海未の奴、接客するって分かった途端緊張してポンコツになりやがったな。洗い物がたんまりとありやがる……。
「ありがとうございましたー!!」
太陽が夕日に変わる頃、ようやく忙しかったのが落ち着き、他のみんなも帰っていった。
俺がキッチンで皿を拭いていると、ゆるりとコップを拭きながら穂乃果が口を開く。ちなみに海未はフロアでテーブルを拭いている。
「ことりちゃん、やっぱりここにいるとちょっと違うねっ」
「え、そうかな……?」
「別人みたい!いつも以上に活き活きしてるよ!」
確かに、ここで働いてる時のことりは学校や普段とはまた違う感じだった。それは嫌悪感とかでは決してなく、ただ純粋に楽しいから、そんな笑顔に満ち溢れている。
「……うん、なんかね、この服を着ていると出来るっていうか、この街に来ると不思議と勇気が貰えるの。もし、思い切って自分を変えようとしたら、この街ならきっと受け入れてくれる気がする。そんな気持ちにさせてくれるんだ!」
何だよ、スラスラと出てきてるじゃねえか……。
「だから好きっ!!」
そんなにハッキリと言えるなら、もう心配する必要はなさそうだ。
「……あ、ことりちゃん今のだよ!!」
「え?」
「今ことりちゃんが言った事を、そのまま歌にすればいいんだよ!!この街を見て、友達を見て、色んなものを見て、ことりちゃんが感じた事、思った事、ただそれを、そのまま歌に乗せるだけでいいんだよ!!」
「そのまま、歌に……」
「そうだよ、ことり」
拭き終わると同時に、話に入る。
「たっくん?」
「俺もここで働いてまだたったの数時間だけど、それでも分かる。ことりがどれだけこの店が好きで、この街が好きで、楽しいのかを。可愛い服を着れて、ただ働くってだけじゃ絶対に持つ事のできない気持ちがことりにはある」
「気持ち……?」
「そうだ。ことりは本当に楽しそうにしている。笑顔が輝いてるんだよ。ことりは歌詞で悩んでいたけど、穂乃果の言う通り、自分のその気持ちを歌詞にするだけでいいんだ」
ことりからすれば灯台下暗しになるのかもしれない。それが自然と感じ過ぎていたから気付く事が出来なかったんだ。でももう違う。それを分からせてくれる者がいる。仲間がいる。親友がいる。
「ことりは最初から持っていたんだよ。歌詞を書くのに必要なものを。それが当たり前だと思っていたからことり自身が気付けなかっただけなんだ。でもそれを穂乃果や俺達が言って気付かせてやる事ができた」
答えは最初から用意されていた。あとは気付くのが早いか遅いかの問題でしかなかった。少し時間はかかってしまったけれど、ちゃんと答えを見つける事ができた。
「なあことり、お前は自分には何もないって言ってた。変わらないととも言っていた。でもそれは違う。既に変わってたんだよお前は」
「もう、変わってた……私が?」
「ああ。変わろうとしてこのバイトを始めた時点でことりはもう変われていたんだ。だがそれを予兆とでも言うなら、その服を着たら出来るとか、この街に来たら勇気が貰えるとか、それはもうことりが変われている証拠なんじゃないのか」
人には気持ちのスイッチみたいなものがある。それは単純なボタンではなく、例えばネクタイを締めたら気合いが入るとか、両手で両頬をパンッと自分で叩いて喝を入れるとか、そういう類のものがある。
ことりがそれでいうメイド服なのだろう。メイド服を着ればスイッチが入り、いつもより元気に笑顔で振る舞う事ができるように。カンフル剤のように別人になったような雰囲気で接客をする。
「お前には人を笑顔にさせてくれる才能がある。お前の笑顔でこっちまで笑顔になれるような元気になれる。それだけで十分なんだよ。それだけで、ことりは俺達の隣で堂々といてくれたらいいんだ。笑っていてくれていいんだ。直接的な助けなんていらなかった。ほんの少しだけ手を差し伸べて、側でことりを見守ってきて分かる事ができた」
ことりの頭に手を置く。一瞬気持ち良さそうに目を細めることりは、頭を撫でていく内に笑顔で綻んでいく。
「だからさ、もう自分に何もないなんて悩まないでくれ。ことりには立派な気持ちがあるじゃねえか。癒してくれるような笑顔があるじゃねえか。変わろうと努力する立派な姿勢があるじゃねえか。自信を持てよ。俺達から見ても、ことりは立派な幼馴染だよ」
「そ、そこまで言われると、さすがに照れちゃうよ……」
「事実だよ。こういう時の俺は嘘は言えないからな。そしてそのことりの思いを歌詞にぶつけてみろ。今までの悩みが嘘のように書けるはずだ」
ことりの頭を撫で続ける。トサカみたいな部分が撫でてて特に気持ちいい。このままずっと撫でていたいまである。
「……分かった。私、頑張って歌詞を作るよ!」
「ん、その意気だ。こうなったらさっそく絢瀬会長達にも連絡しないとな」
「それはいいとしてたくちゃん、いつまでことりちゃんの頭撫でてるつもり?」
「んなもん一生に決まってんだろ何言ってんだ」
いとおかし。いとおかしですよ穂乃果さん。こんな気持ちいい頭から手を離せるわけないでしょ。よく考えてものを言いなさい。
「仕事がまだ残っています。さっさと手を離して仕事に戻りなさい」
「ハイ」
いつの間にかキッチンに戻ってきていた海未にまったく気付かなかった。さすがに海未には逆らえない。さらばことりのトサカ。いつかまた撫でられるその日まで元気でな。
「ありがとね、穂乃果ちゃん、海未ちゃん、たっくん……」
不意に、ことりのそんな言葉が聞こえた。
別に事前に何を言うかなど決めてはいなかった。
幼馴染だからかと言われれば、そうかもしれないしそうでないのかもしれない。
ことりの悩みが解決したからという安心もどこかにあったのかもしれない。
ただ、ことりに対しての俺達の言葉が同じだったのは、何かしらの必然だったかもしれない。
「「お礼なんていらないよ」」
「あの、私は……?」
「いや、海未はずっとフロアにいたし」
「あぅ……」
さて、いかがでしたでしょうか?
次回でワンダーゾーン編終了予定であります。(あくまで予定)
メイドは可愛いの~。
ここでですね、前回の感想で意外と多くの方が拓哉の執事服が似合うと言ってくださった方がいたので、試しにイラストを描いてみました。
※見る見ないは個人の自由ですが、見てもイメージと違う絵下手などのご意見はなしでお願いします。責任は問えませんので!
【挿絵表示】
とまあ、そんな訳で、……今日でこの『奇跡と軌跡の物語』を書き始めて丁度1年経ちました。
つまり、一周年です!!
いやー、1年経ったのにまだ1期の、しかもワンダーゾーン編てどんだけ長いねんと思う方、作者も一緒です(笑)その分長く楽しめるから良いよね!
何はともあれまずは1年ずっと書き続ける事ができたのも、いつも読んで下さる読者の皆様、日に日に少しずつでも増えていくお気に入り、高評価(☆9、☆10)をくださる皆様、ご感想をくださる皆様のおかげでございます。
1年の間、週一更新もずっと続けられてきました!ですが、リアルの方が最近忙しく、これからは週一更新は難しくなるかもしれないので、いつものように日曜、月曜に更新するのは出来ない可能性が高いです。これからは週一で更新できても曜日はランダムになる事があるかもしれないので、ご理解の程をお願いいたします。
一応曜日はランダムでも週一更新は続けていきたいと思ってますよ!!
と、こんな感じで微妙なお知らせもありましたが、せっかくのめでたい1周年なので明るくいきましょう!
いつもご感想高評価ありがとうございます。
では、新たに高評価(☆9、☆10)をくださった、
希望の利き手さん(☆10)、無良独人さん(☆9)、せいいずさん(☆10)、9296さん(☆9)、橘田露草さん(☆10)、シベリア香川さん(☆10)
以上6人の方から高評価を頂きました!大変ありがとうございました!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!
ではでは、めでたく1周年も迎え、新年も迎え、ですが変わらずに進んでいくこの作品、これからも『奇跡と軌跡の物語』を何卒よろしくお願いいたします!!
さて!!ここでおひとつお知らせをば。
一周年を記念してですね。何と、特別番外編として“コラボ”する事が決定致しました!!
そしてありがたくコラボさせていただくお相手がですね、Twitterでもとても仲良くさせてもらっている『ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常~』の作者様、薮椿さんでございます!!
ハメでラブライブ!小説を読んでいる方ならばご存知の方も多いかと思います。
もしまだご存知でない方もこれを機に読んでみましょう!刺激も強いですがとても面白い作品ですので是非に!
コラボを了承してくださった薮椿さんには感謝が足りないのでございます!
コラボ小説の日程につきましてはまだ未定のため、色々と決まり次第最新話を投稿する度にご報告していくつもりでございます。
P.S.
花陽誕は諸事情により、もしかしたら当日に投稿できない可能性がががが……でも頑張ります!