ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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どうも、またもや2週間ぶりですね。
まあ、そんな事はさておき。


今回からいよいよ皆さんのお待ちかね(?)の合宿編の開幕となります!!

まずは合宿に行くまでの過程を楽しんでもらいましょうかね!!




53.合宿へ行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、とてもとても暑い夏の日の事じゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暑ぅい……」

「そうだね~……」

 

 

 

 放課後になり、いざこれから練習が始まろうと屋上に行った時、2人の少女がそんな事を言いおった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いやごめんホントに暑いんだよ。思わず昔話の口調になるくらいに暑いのよ。完全に季節は夏と言っても過言ではない月になる、セミの兄貴もミンミン鳴いておられる。それにこの日差しのせいで余計に暑さが倍増というわけだ。

 

 

 言っておこう。拓哉さんは暑がりであって寒がりでもある。つまり、暑すぎるのも寒すぎるのもどっちも大嫌いなんだ!!やっぱ春か秋が1番だろ!!あの丁度心地良い感じの季節が1番だろ!!

 

 

 という軽い現実逃避をしているんだ。

 

 

 

 一方で、俺が内心現実逃避しているあいだにもμ'sと呼ばれる我が音ノ木坂学院を代表するスクールアイドルの少女達の話は進んでいた。

 

 

 

「ていうかバカじゃないの!?この暑さの中で練習とか!!」

 おお、よく言ったぞにこさん。俺もそれを思っていたとこだ。考えてもみろ。みんなはまだ練習という名の必死になる役割があって、それで一応は暑さよりも練習に身を集中させなければならない。

 

 でも俺はどうだ?みんなが練習している中、1人だけじっとしたまま太陽に良いようにペカペカと照らされるんだぞ。干からびるわ!!じわじわと汗が出てくるのがまた気持ち悪くて嫌なんだ。

 

 

 なので室内で練習を希望しまーす。

 

 

「そんな事言ってないで、早くレッスンするわよ」

 はい、まあそうですよね。室内じゃ大きな音量までは出せないし、まず希望もしてないのになるわけないですよねー。ちくせう、絢瀬会長の言う通りすぎて口を挟めねえぜ。

 

「は、はい……!ごめんなさぃ……」

 そんな絢瀬会長の言葉に謝ったのは、にこさんではなく花陽だった。花陽は悪くないから謝らなくていいんだぞ!何なら俺の思惑を自白して花陽の代わりに俺が思いっきり謝罪するまである。

 

 

「っ、花陽、これからは先輩も後輩もないんだから、ね?」

「……はい」

 ふむ、やはり花陽はいまだに絢瀬会長の事を怖がってるな。まあ前まであんなだったし、花陽の性格を考えれば無理はないかもしれんが、怯える花陽を見て少しショックを受けてる絢瀬会長も不憫だなおい。

 

 

 

「そうだ!!合宿行こうよ!!」

「はあ?何急に言い出すのよ」

 突然の提案だった。

 

 ホント何を急に言い出してんだこいつは。唐突すぎて今日の晩御飯は何だろなって思っちまったじゃねえか。唯の晩御飯最高だかんな?言っとくけど世界一だかんな?誰にも負けねえかんな?……いや今関係ねえよ。

 

「あ~何でこんな良い事早く思いつかなかったんだろ~!」

 まず思いつかんだろ。そういうのはせめて夏休み入ってからでしょうが。けいおん!見てきなさい。あの子達も夏休みに海に合宿行ってたから。ほとんど練習してなかったけど。そういや主人公の名前がうちの唯と同じだったな。

 

「合宿かあ、面白そうにゃー!」

「そうやね。こう連日炎天下の練習だと体もキツイし」

「でも、どこに?」

 意外と賛同意見が多いな。合宿だと泊まりはほぼ確実だろ?つまり行くなら明日からの土日月か。幸い月曜が休みで連休になっているから、行くなら今週が良さそうだな。行く場所はもう分かっている、この展開だともうお決まりだろ。

 

 

「海だよ海~!夏だもの!」

 ほれ見ろ言った通りだ。だがな、穂乃果はこういう事をいつも軽々しく言う事が多い。後先考えずにだ。だからこういう時のストッパー役に俺や海未がいる。今回は俺が言ってやろう。“まずは”現実を見せてやらないとな。

 

「と言ってもだな穂乃果。合宿に行くための費用はどうするんだよ?場所は?細かい日時は?もし行くとなったら、ちゃんと考えないといけない事だぞこれは」

「うっ……それは……」

 やっぱり何も考えてなかったか。案を出すのは良い事だけど、せめてちゃんと考えて言ってほしいものだ。いきなり頭働かさせるのも大変なんだぞ。すると、俺が何かを言う前に穂乃果はことりの手を引っ張って小声で話しかけた。

 

 

「……ことりちゃん、バイト代は次いつ入るの?」

「え、ええ~……」

「おいこらバカ。ことりをあてにすんじゃねえ」

「違うよ~!ちょっと借りるだけだよー!」

 いやそれがダメなんでしょうが。ことりのバイト代だけで全員分の金が出来あがるわけないだろ。ことりはバイト代を衣装につぎ込んでくれている天使なんだぞバカめ。

 

 

「そうだっ!真姫ちゃん家なら別荘とかあるんじゃない!?」

「おいおい、いくら何でも期待しすぎるなよ。真姫の家だってそん―――、」

「あるけど……」

「あんのかよ!!」

 どんだけ常識外れなんだよこのお嬢様の家は……。というかどこのアニメの設定これ?あまりにも都合良過ぎやしませんかね?あれか、部活系アニメに必ず1人はいるお金持ちキャラか。

 

 

「おおー!ホント!?真姫ちゃんお願~い!」

「ちょっと待って、何でそうなるの!?」

 がめつい、がめついぞ穂乃果。どんだけ合宿行きたいんだよ。まあ真姫の家の別荘なら金も安く済みそうだけどさ。

 

「そうよ、いきなり押しかけるわけにはいかないわ」

 よく言ったぞ絢瀬会長。アンタも今となっちゃ立派なまとめ役でありストッパー役だわ。……これもう俺荷物係だけでいいんじゃね。

 

 すると、穂乃果もそれに気付いたのか、途端に目をウルウルさせながら言った。

 

 

「そ、そう、だよね……あ、あはは……」

 なっ……こいつ、まるで大人しく餌を求めてくるかのような犬の目をしてやがる……!?元から穂乃果が犬のような性格をしているからか何となく分かる。これは諦めに見せた遠回しの懇願なのだと。

 

 ……いや、これよく周りを見たらあれだぞ。他のみんなも何気に期待している目してるぞ。何だかんだ絢瀬会長まで少し気が引けるけどお願いできないかしら的な視線を送っているぞ。こいつら行く気満々だぞ。……どんだけ語尾にぞを付けんだよ。

 

 

「……仕方ないわね、聞いてみるわ」

「本当!?」

「やったにゃー!」

 内心めちゃくちゃ期待してたなお前ら。一瞬で笑顔になったの俺は見逃さなかったぞ。特に穂乃果、お前さっきまでの潤んだ目はどこにいった。一瞬で蒸発したのかええ?

 

 

 

「そうだ、これを機にやってしまった方がいいかもね」

 

 

 

 みんなが喜ぶ中、そんな絢瀬会長の声が聞こえた。何をやってしまった方がいいのかは分からないが、合宿に行くと決まったのなら俺も言っておかなければならない事がある。

 

 

 

 

「んじゃ、みんなは合宿頑張ってこいよ。戻って来た時に成長している事を拓哉さんは家で切に願っているから」

「……え?」

 

 

 

 穂乃果のキョトンとした声が聞こえたあと、すぐに静寂がその場を支配した。

 まだ呆けている穂乃果に聞こえるように、もう一度言う。

 

 

「だから、みんなは合宿頑張ってこいよって。俺は行かねえから」

「「「「「「「「「ええーッ!?」」」」」」」」」

 うるさっ!こんなとこで大声出すなよ鼓膜破れちゃうでしょうが。そんなに驚く事でもないでしょうに。

 

「何でたくちゃん行かないの!?みんなで合宿だよ!?たくちゃんもいないと話にならないよ!」

「いやね?考えてもみなさいよ穂乃果さんや。合宿ってあれだろ。さっきも言ってたけど海に行こうと思ってんだろ?」

「当たり前でしょ!!」

 一瞬真姫の方に視線を送って海にも別荘はあるかというアイコンタクトをとった穂乃果。真姫もそれに首を縦に一振りをする。その様子だと他にも別荘ありそうだなおい。

 

 

「なら尚更だよ。女の子達が一つ屋根の下に9人で行くのに、そこにたった1人の男である俺が行けば肩身狭いだけだし、そんなのお前らだって嫌だろ?いくら合宿って言っても少しは遊びたいだろうし、そこに俺みたいな不純物があったら気を遣わせてしまうかもしれない。特に花陽とか、俺に水着姿を見られたくないんじゃないかとか思ってな」

 やっぱ女の子だけでキャッキャウフフしながら遊びたい時間もあるだろう。なのに俺がいたらただの邪魔になってしまう。そんなのは俺も気が引けるしな。

 

 

 

 

 

「で、本音は?」

「くそ暑いから行くのめんどくさい―――ハッ!?」

 しまった。聞かれたからつい本音が出てしまった。こんな誘導尋問はズルいと思います!!あとみんなのジト目が地味に心にグサッと刺さって痛いです!!

 

 

「もうっ、たくちゃんの事だからそんな事だろうと思ったよ!言っておくけど、そうはさせないからね!」

「はんっ、俺は一度決めた事はそう簡単には曲げないって決めてるんだ。行くならお前らだけで行ってこい!俺は家で優雅にアイス食べながらアニメを見るんだ!この固い決意は誰にも―――、」

「ことりちゃん、やっちゃって!」

「たっくん……おねがぁいっ……!」

「おらーッ!さっさと準備して行くぞテメェらあ!!」

 

 ちくしょう……!体が条件反射に反応してしまう!!ことりのお願いに弱すぎだろ俺。もはや脊髄反射じゃねえか。

 

 

「たくや先輩ちょろいにゃ~」

「た、拓哉先輩……私は、大丈夫なので……」

「ったく、アンタがいなかったら誰が荷物運びすんのよ」

「岡崎君面白いな~」

「ハラショー……!」

「恒例行事か何かですかこれは……」

 

 みんな言いたい事ばかり言いやがって……。花陽、お前だけだぞ俺に気を遣ってくれるのは。嬉しくて拓哉さん軽く泣けちゃうよ。あと海未よ、こんなのが恒例行事になったら俺の身が持たんわ。

 

 

 

 

 

「よぉし、たくちゃんも潔く行く事になったし、みんなで合宿だぁー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、不本意ながらも俺も合宿に着いて行く事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、唯さん?一体全体わたくしめの部屋で何をしていらっしゃるのでせうか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 決まってしまっては即行動。という事でさっそく明日の早朝から合宿に行く事になった。それを母さんや唯に伝え、風呂から上がったら、何故か唯が俺の部屋で何やらゴソゴソとしていた。いやホント何やってんだよ。

 

 

 

 

「見ての通りだよお兄ちゃん。お兄ちゃんの合宿に行くための準備をしてるの」

「いや、別に俺1人でやるからいいんだけど……。つうか勝手に部屋入っ―――、」

「何を言ってるのお兄ちゃん!!合宿だよ!?」

 何だ、何をそんなに必死の形相で詰め寄ってくるんだ妹よ。というか今完全に話逸らしたよね。勝手に部屋入ったの怒られると思ったから咄嗟に話逸らしたよね。

 

「男子はお兄ちゃん1人。あとはみんな女の子なんだよ!?お兄ちゃんが穂乃果ちゃん達に変なちょっかいしないように私が先に“ちゃんと”準備しといてあげたの!」

「お、おう……ありがと、な……?」

 あれ、何でお礼言ってんの俺。何勢いに負けてんだ俺。イタズラ道具とか入れると思ってたのか?その前に近い、顔がとてつもなく近いぞ妹よ。さすがのお兄ちゃんもこれには少し意識してしまうからやめなさい。兄妹の禁断的なアレは二次元だけにしなさい。

 

 

「……いや、まず俺は穂乃果達に変なちょっかいとかしないからな?この合宿だって本当なら行くの面倒だから行く気なかったし。さすがにこの歳でポリスメンのお世話にはなりたくないからねお兄ちゃんは」

「その逆もあり得るの!」

「その逆?」

 その逆って、あれか?穂乃果達が俺に何かしてくるって事か?

 

 

「いやいや、それはないだろ。ないない」

「何でそんな事言いきれるの?」

「お兄ちゃんの言う事をしかと聞きたまへ我が愛しの妹よ。俺やいつもの幼馴染合わせて4人組ならまだいらん事してくるかもしれん。しかし今回は他にもメンバーはいるんだ。だから俺にちょっかいかけるよりも先に、他のメンバーと遊ぶ事の方が穂乃果達の頭に支配されている。これは確信をもって言えるぞ」

「ちょっかいって、そういう意味じゃないんだけど……さすがお兄ちゃんだね……」

 何をボソッと言っている。こんだけ近いんだからハッキリと聞こえてるぞ。とりあえず褒められてない事だけは分かった。お兄ちゃん心で泣いとくわ。

 

 

「それに、今回は合宿だ。遊びもあるかもしれないが、メインは練習、全体的に歌やダンスの強化だ。だからそっちに力が入るし、みんなもそれなりに気合いが入っているんだ。もしかしたら遊ぶよりも練習の方が身に入るかもしれないしな」

「……そっか。うん、お兄ちゃんがそう言うなら間違いないね!」

「ああ、不本意でももう決まっちまった事だ。役割はちゃんと全うしてくるよ」

 いつも通り唯の頭に手を置いて言ってやる。唯も唯でこっちに笑顔を返してくる。まったく、変な心配しなくても大丈夫だってのに。可愛い奴め。

 

「じゃあお兄ちゃん、明日から合宿のお手伝い頑張ってきてねっ!」

「おう、気楽にやってくるわ」

 トタトタトタとテンポ良く小走りで唯は部屋から出て行った。準備してくれてたのはありがたいが、一応俺も他に持って行く物とか確認しながら進めるか。……あ、勝手に部屋に入ったの説教するの忘れてた。……上手く逃げやがったな唯め。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 住んでいる者ならほとんどの人々が知っているであろう大きな駅の中。

 そこに手伝いの俺を含めたμ'sの全員がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええー!?先輩禁止!?」

 

 

 

 駅の中、穂乃果のそんな声が響き渡る。もうちょっと声を抑えなさい。他の人に迷惑でしょうが。

 

 

「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩はもちろん大事だけど、踊ってる時にそういう事気にしちゃダメだから」

「そうですね、私も3年生に合わせてしまうところがありますし」

 言われてみれば確かにそうだ。先輩後輩という関係は主に中学から部活などの関係で大事になってくる。いわゆる上下関係だ。それは中学、高校、大学、社会と上がるにつれて重要な事になってくる。

 

 しかしそれはスクールアイドルには少し障害でもある。歌って踊っている最中にもそれを意識してしまえば、先輩に当たらないようにとか、そういう変な気遣いのせいで集中力が乱れる場合もある。

 

 特に1年は3年に気を遣ってしまうだろう。真姫や凛はともかく花陽は特に。おそらくそれを気にしている絢瀬会長がこのアイデアを採用したのだろう。俺もそれについては特に反対はない。みんなが仲良くできるならそれで良い。

 

 

「そんな気遣いまったく感じないんだけど……」

「それはにこ先輩が上級生って感じがしないからにゃ~」

 1年にそこまで言われるにこさん。うん、まあ、俺からは何も言う事はないかな。それだけ親しく思われてるんだし、仲が悪いよりかは遥かにマシだろう。

 

「上級生じゃないなら何よ!?」

「うーん……後輩?」

 おい、凛よ。それはさすがにどうかと思うぞ。1年が3年にそんな事言うとか度胸ありすぎだろ。気持ちは分かるけど。気持ちは結構分かるけど!!

 

「ていうか子供?」

「マスコットとかと思ってたけど」

「どういう扱いよ!!」

 穂乃果も東條も容赦ねえなおい。子供はまだしもマスコットとかもはや人の扱いじゃねえじゃねえか。可愛い動物程度の扱いとか何それ泣ける。

 

 

 

「じゃあさっそく、今から始めるわよ。穂乃果」

 上手い感じに本題を戻しつつ、それを実施させる絢瀬会長。1番の上級生からの振りなら、穂乃果もやりやすいだろ。それに、1年からとかではなく、3年がこういうアイデアを出してくれるのは非常に良い事だ。

 そうする事で1年も2年も変な気遣いせずにそれを実施しようと思えるからな。

 

「あ、はい!良いと思います!……え……ふぅ……絵里ちゃんっ」

「うんっ」

「ふわ~、何か緊張~!」

 まあ、今まで先輩と呼んでたのにいきなり呼び捨てでってなると、穂乃果でも多少の緊張はするのか。……別にバカにしてないからね?見てて何だか微笑ましいくらいだよ。

 

 

「じゃあ凛もー!ふう~……ことり、ちゃん……?」

「はいっ、よろしくね、凛ちゃん!」

 よくやった凛、でかしたぞ!これは中々レベルの高いことりの笑顔だ!!まるで妹に向けるような慈愛に満ちた笑顔だ。非常にレアなタイプのことりスマイルだぞこれは!写真撮りたかったぜちくしょうめ!!

 

 

「それに、真姫ちゃんもっ」

 俺がカメラを取り出すのを忘れて悔やんでいるとこに、ことりは言葉を付け足すように真姫にも視線を送った。それに釣られて、他の全員も真姫へと視線を移す。

 

 

「……べ、別に今わざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ!!」

 それもそうだが、だからと言ってそこまで呼ぼうとしないとか照れてんのかよ。相変わらずのツンデレっぷりだな真姫お嬢様は。と言ったら俺だけ合宿所に入れて貰えなさそうだから決して言わない。

 

 

 と、そんな事を思っていた矢先の事だった。

 

 

 

 

 

「それに、あなたもよ。拓哉」

「…………はい?」

 不意に絢瀬会長に呼び捨てで呼ばれたから返事が少し遅れてしまった。

 

「この合宿ではみんな先輩後輩の関係を壊していくって決めたでしょ。だからあなたも私達を呼び捨てにする事」

「いや、でもこれはμ'sの合宿だろ?俺はまずμ'sじゃねえんだし、絢瀬会長とかにはそのままでもいいんじゃ―――、」

「それが嫌なのっ」

 これまた不意に、絢瀬会長に俺の唇が人差し指で開かないように触れられた。

 

「にこの事はさん付けでもまだ名前で呼んでるし、希の事も、名字だけど先輩とかさん付けじゃないのに……私だけ名字で、しかも先輩ですらなく会長って呼ばれてるの、少しだけ距離を感じて、何か嫌なの……」

「え、あ、や……その、別に距離を置いてるわけじゃなくて、これは、ですね……?μ's絡みの事がある前に東條とは会った事あったし、にこさんともスーパーで会った事あったからであって……」

 やだ、ちょっと待って。助けて誰か。何か俺変な弁解してるんだけど。と、他のみんなに視線を送った。

 

 

 が、

 

 

「たくちゃんはもっと女の子の気持ちを理解するべきだね」

「そういうたっくんも、私はアリだよ♪」

「そういう事じゃないんですよ、拓哉君……」

「どうでもいいわ」

「恒例行事か何かかにゃ?」

「これはさすがに……です……」

「少女漫画一冊分でも食わせりゃ分かるんじゃないの?」

「エリチ、ファイトやで……!」

 

 

 何かもう言われ放題だった。

 海未にまで残念そうな顔されてるし、真姫に至ってはどうでもいいとほぼ無視されてるし、にこさんそれは恐ろしいから勘弁願いたいであります。

 

 

「……だーもうっ、分かったよ!俺も呼び捨てにすりゃいいんだろ!?するする!するから、微妙に寂しそうな顔すんなっての!一応年上だろアンタは……!」

「……絵里」

「あん?」

 俺の服の裾を掴んで俯きながら言う金髪年上クォーター少女。あまりにも小さい声に思わず聞き返してしまった。

 

 

「アンタじゃなくて、私には絵里っていう名前があるんだから、ちゃんと絵里って呼んで……」

 お、あ……やばい。何がやばいってマジやばい。年上だけどそんなの関係なしに幼く感じてしまう。にこさんとはまた別の『何か』。精神的な幼さが今の絢瀬会長からは感じられた。……単刀直入に言うと、半端なく可愛いです、はい。

 

「……あー、まあ、何だ。これでいいんだろ……絵里……」

 くっそ、花陽達の事を名前で呼ぶ時も結構緊張したのに3年はまた格別に違う緊張があるな……。すると俺の口から名前が聞けて満足したのか、俯いていたはずの“絵里”の顔が満面の笑みで俺を見てきた。

 

「うん、よろしいっ!」

「……さいですか」

 こんの生徒会長め、俺に言わせるためにわざとあんな演技しやがったな……?まんまと乗せられた俺も俺だけど。いや、だってここで言わないと、ほら、駅だし他の人に注目されんのは俺も嫌だし、ね?

 

 

「良かったな~エリチ!……で、“拓哉君”、次はウチとにこっちの番やと思うんだけどな~」

「は!?待て待て待て、それこそ真姫みたいに今呼ぶ必要はないだろ!」

「うるっさいわね、さっさと呼べばいいだけの話でしょ。私もずっとにこさんじゃ何だかもどかしいのよ。ほら、早く言いなさい、“拓哉”」

 こいつら、何気にもう俺の事を名前で気兼ねなく呼んでやがる。それ自体は別に良いんだけど、こいつらに戸惑いはないのかよ。俺が異常なのか?ちょっと照れている俺が初心なだけなのか……?

 

 

「あー!もう、呼べばいいんだろ呼べば……絵里に希ににこ!これでいいだろちくしょうめ!そろそろ勘弁してくれ……」

 何で俺がこんな目に遭わなければならないんだ。本来はμ'sのみんながメインのはずなのに、気付けば俺が的になってるっておかしくない?ヘイト集めるような事したっけ?

 

「はい、拓哉君よくできました~。ウチらもそうやけど、花陽ちゃん達も拓哉君の事先輩とか付けんで気軽に呼んでええからな~」

 おい、それは俺が言うべきセリフじゃないんですかね。何でそれを希が言うんだよ。いまだにちょっと照れて体が熱いんだが。これはあれだ。季節が夏だから暑いに違いない。きっとそうだ。そうじゃないと俺どんだけ純粋ピュアボーイなんだよって話だ。体は清らかなままだよっ☆

 

 

「う、うん、よろしくね。たくや君!!」

「よろしくお願いします……拓哉くん……」

「お、おう……」

 今まで下の名前で呼ばれていたから多少は慣れているものかと思っていたがそうでもなかったらしい。普通にむず痒いよね。体中掻きたくなる不思議。真姫は断固として今は呼ぶ気はないらしい。

 

 

 

「では改めて、これより合宿に出発します!」

 区切りが良いと判断したのか、絵里がいよいよ出発の言葉を口に出す。これは合宿だ。決して遊びだけではない。この合宿でまた穂乃果達は成長しなければならない。この短い休日の間にだ。

 

 ラブライブに出るために上を目指す。そして音ノ木坂を本当の意味で廃校阻止しなければならない。まあ、もっとも今のこいつらには廃校も大事だが、このスクールアイドルの活動自体に楽しさや喜びを感じている。

 

 それが良いのか悪いのかは俺にはよく分からない。けれど、重い空気のまま練習をやるより、こうやって楽しい雰囲気のまま真剣に練習に励んでいるのはきっと良い事に違いない。

 

 苦労もたくさんあったけど、それよりも笑顔の方が多かった今までの練習なんだ。こいつらなら乗り越えられるだろ。それに俺もいる。ただの手伝いでしかない俺だけど、俺が間違った選択をしない限り、こいつらを正しい方向へと導いてやれるはずだ。

 

 

 そのためにも、この合宿は頑張ってもらわねえとな。

 

 

「部長の矢澤さんから一言っ」

「ええ!?にこ……?」

 絵里からの予想外な一言で固まるにこ。一応部活の合宿なんだから、部長が何か言わないとな。

 

 

 

 

 

「え、えーと……しゅ、しゅっぱ~つ!!」

 

 

 

 

 

 一瞬、この俺達のいる空間だけ、時間が止まったような沈黙が生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それだけ?」

「考えてなかったのよ!!」

「まとめ役が海未と絵里だからといっても、これは“部活の合宿”なんだぞ。部長が何か考えてないでどうすんだよ……」

「考えてないものは仕方ないじゃない!これだってシンプルでいいでしょ!!」

 めちゃくちゃ開き直ってんじゃねえか。幸先良いのか悪いのか、こればかりはどうにも分からない。でも、これが部長であるにこらしさなのだろう。

 

 

 良くも悪くもこんな部長だからみんなあの部室にも居やすく感じる。部長とか先輩とか、そういう圧迫感を今まで和らいでいたのも、にこのあのどうにも締まらない部長としての魅力の1つなんだろう。固すぎるより何倍も良いさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、んじゃ合宿に行くぞ!!」

「「「「「「「「「おおー!!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不本意ながらに行く事になった合宿だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付けば俺も少しテンションが高くなっているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずは遊ぶ時のための水着を楽しみにしておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?

今回から始まった合宿編。
ある意味本編は次回からになりますかね(笑)どういう本編かはまあ、ね……?海へ合宿と言えば……ですww
お楽しみはこれからですよ!!


いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!


では、新たに高評価(☆9、☆10)を入れてくださった、

そらなりさん(☆10)、マネロウさん(☆9)

大変ありがとうございました!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!


やっと全員名前呼びになった……。
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