ども、色々あって投稿が1日遅れました、申し訳ございません。
今回から真姫脱退編突入!!
では、どうぞ。
「あっ、お帰り~お兄ちゃ……どうしたの、その疲れ果てた顔……?」
「ああ……唯、唯や……我が愛しき妹よ……その顔が見れただけでお兄ちゃんは少しだけ癒されたよ……」
「お兄ちゃんだから自意識過剰のつもりで言うけど、私を見て“少し”しか癒されないって、相当の事があったみたいだね……」
そんなわけで桜井と別れ、穂乃果達とも無事別れた俺は自宅へと帰宅した。
しかし、唐突な桜井とのエンカウントにより俺の精神はズタボロなのだ。あの唯の顔を見ても少ししか癒されないなんてもはや重症だ。何なら末期だ。このまま玄関で倒れ込んで明日を迎えたい。……はい邪魔ですねさーせん。
「で、何かあったの?」
ぐったりとした表情の俺に唯が問いかけてくる。ああ、心配してくれる唯がいるだけで俺は世界と戦えるよ……。鞄を唯に預け、そのまま質問に答える。
「……桜井と会った」
「……あ~、」
言うと、唯もそれはしょうがないかな~みたいな表情になる。中学の間、俺と唯はお互い両親の家で別々に暮らしていたが、唯とはほぼ毎日連絡を取り合っていた。だからお互いの近況報告なども兼ねて愚痴ったち楽しい話をしていたりしていた。
だから唯も当然俺からの愚痴として桜井を一方的に知っているのだ。ヤツがどんな性格なのか、俺に付き纏ってくるとか、そんな諸々を。同じ女の子から見ると桜井はいかにも敵みたいな認識があるみたいで、あのあざとさが何とも腹立つらしい。
自分が可愛いとちゃんと自覚しているからこそあんな事ができるのであって、そういう自覚があるから他の女子からの嫉妬をよく買うみたいだ。何故俺がそんな事を知っているのかというと、ある一件でそれを知ったまでである。
だから唯にもそれを話してみて、唯から見る桜井はどうなのだろうかと思ったのだ。あの唯でさえも桜井を腹立つと考えるのなら、それは相当なんだろうなと思いながら。しかし、唯の言葉は俺の予想を超えていた。……いや、超えてくれた。
唯いわく、『人間なんだから色んな人達がいるのは当たり前の事だし、私は別に何とも思わないよ~』という事らしい。別段腹立つ事もないらしい、というかそもそも興味なさげなのは俺の気のせいだと思いたいが、マイナス方面で捉えられるよりかは数段マシだ。
「まあ、そういう女の子もいるし、お兄ちゃんも積極的に来てくれる女の子がいてくれた方が良いんじゃない?」
「積極的すぎて逆に怪しいんだよあいつは……。それに桜井の性格を知ってれば余計にな」
あいつは自分がああいう性格してるって自覚してるからタチが悪い。絶対影で俺を金づるにしようとしているに違いない。俺の財布は俺が守る!!
「純粋な女の子が近くにいればいいのに……」
「お兄ちゃんの周りにいっぱいいるでしょ」
「穂乃果達はあれだよ……何か、こう、守るべき対象……みたいな?」
実際μ'sである穂乃果達は贔屓目なしに見ても美少女ばかりで、純粋な子達ばかりだ。にこは少しアレだが。それを差し引いてもあいつらは女の子としての魅力は十分にある。
しかし、やはり手伝いの俺から見れば、恋愛対象ではなく守るべき対象として考えてしまう。俺なんかがスクールアイドルである彼女達を恋愛対象として見ていいはずがないんだ。
「穂乃果ちゃん達、前途多難だなあ……」
「んあ?何がだ?」
考え事していたせいで唯の言葉の意味がよく分からなかった。
「いや、何でもないよ~」
靴を脱いでいる俺の後ろでクルクルと回り出す唯。何だよそれ超可愛いあざといのに超可愛い。ダメだ、唯を前にするとどんな考え事しても海の藻屑となって消え失せてしまう。唯マジ心の洗浄機。
「ん?」
靴を脱ぎ、リビングへ移動しようとした時、何か違和感を感じた。後ろへ振り返る。違和感を感じた方へと視線を向ける。
正確には、靴を脱いだ場所へ。
「誰の靴だ?」
明らかに俺のではない、けれど唯や母さんが履くような靴でもない。大人の男性が履くような、そんな使い古されたサラリーマンが履くような靴が、あった。
「あー、やっぱお兄ちゃんのとこにも連絡いってなかったんだ……」
「連絡って事は……」
それで大体の察しはついた。足早にリビングへと向かう。あの使い古された靴。見慣れてしまった黒い靴。小学中学の頃飽きるほど見た靴。その持ち主が、いる。
「うん、帰ってきてるよ。お父さんが」
バッ!と、勢いよくリビングの方へ顔を出す。そこにいたのは。
中学3年を共に過ごした、紛れもない、俺の父親。
岡崎冬哉が新聞とコーヒーを両手に持って椅子に座っていた。
俺に気付いた親父はコーヒーを置き、お気楽に手を上げる。
「よお、ただいま、拓哉。……いや、今お前が帰って来たんだからおかえりと言うべきか……?」
その声を聞いて安心する。ああ、俺の親父は今も元気に健在している。なら大丈夫だろう。何も心配いらないだろう。
顔を俯け、腰を低くする。
「お?どうした拓哉?数か月とはいえ愛しの父さんと会えなくて寂しかったか?何なら父さんの胸へ飛び込んできてもいいんだぞ。高校生でも息子は息子だ。しっかりと受け止めてあげようじゃないか!!」
「……そうかい」
「お?」
「あ、お父さんこれ逃げた方がいいやつだよ」
当人直々にそう言うんならもう遠慮はいらねえよな……。唯はもう何となく察したらしいが、もう止める気はないらしい。さすが唯だ、偉いぞ。
少しずつ親父の方へ歩み、徐々に速度を上げる。
そして。
「さあ来い拓哉、感動の再会といこうじゃなぶぎゅるばァッ!?」
「いきなり転校しろだの手続きしただのと言って俺を追い出してよくもノコノコと帰ってきやがったなクソ親父喰らいやがれジャンピングニーバットォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」
両手を広げ大の字で無防備な親父へプロレス技、ジャンピングニーバットを直撃させる。いわゆる飛び膝蹴りである。
「この短期間で……また成長した、な……」
大黒柱の父親は、息子によって沈められた。
――――――――――――――――――――
「いやー、喰らった喰らった!拓哉もレベルを上げたなあ」
「あの直撃を喰らってものの数分で起き上がるアンタの頑丈さにビックリだよ」
唯に氷袋を貰った親父はそれを頬に当てながら笑顔で話す。中学の頃、何回もこういう事が俺と親父の間にあったのだが、親父の頑丈さにいつも驚かされたものだ。親父いわく、『お前の拳なんて母さんの拳に比べたら何てことないさ』という事らしい。やっぱ母さんは怒らせないでおこうとまた心に誓った。
「で、何でいきなり帰ってきたんだよ。サプライズとか言った瞬間また殴るからな」
今日でこういう質問するのも2回目でもうウンザリしてるんだけどな。桜井のあとに親父って、何でこうも疲れる相手ばかりしないといけないのか。そもそも桜井はまだしも親父は連絡してこれたはずだ。
「あれだ、普通に忘れてた」
「……、」
「お兄ちゃ、ちょっ、気持ちは分かるけど落ち着いて!そこのフォークは今関係ないから!晩ご飯まだだからっ!」
唯に宥められ、仕方なく側にあったフォークを元に戻す。別に刺そうと思ったわけじゃないから。頭の中ぐちゃぐちゃにしてやろうかと思ったわけじゃないから。ホントダヨ?
「正確に言うとだな、途中で思い出して連絡しようと思ったんだけど、そうしようとすると何故かいきなりおばあさんが重い荷物持って困ってたり、道に迷ってそうな人がいたから案内してたり、気付いたらもう家に着いてた」
「……、はあ……」
思わず溜め息が出る。俺の親父はこういうとこがあるのだ。困ってる人がいれば絶対に放っておく事ができない体質。大事な用事があっても困ってる人がいれば優先事項がそっちへと自動変換されてしまう。
いわゆるヒーロー体質だ。
「何でこうも親父の周りにはそう都合よくトラブルが起きるんだよ。呪われてんじゃねえかアンタ?」
「お前が言うなお前が。起きてしまうんだから仕方ないだろう。それとも何か、お前はそういう人を見て放っておけるのか?」
「絶対に助ける」
「だろ?」
「ホントこの2人は……」
何故か唯に呆れられた。やめて、お兄ちゃん悲しんじゃうよ。仕方ないでしょ、似ちゃったもんは。
そう、俺が今の性格になったのは、親父の教育が1番の原因なのである。
小さい頃から『困ってる人がいれば絶対に助ける事。自分から手を差し伸べる事』という教育をされてきた。まもなくして妹の唯が産まれてきたから余計親父の教育論は強まっていったのだ。
だから、子供の頃からヒーローもののアニメや特撮やマンガを見て、今でもそれが続いている。親父にってのが腹立つけど、こういう性格になって後悔はまったくと言っていいほどしていない。
だってそうだろ。俺のこんなわがままみたいな性格でも誰かを救えるんなら、それが1番なんだから。……ああちくしょう、何で親父が原因なんだ……。
「まあそういう経緯で連絡を忘れていたわけだ。母さんには既に連絡してあるから、その点については大丈夫だ」
「ああ、じゃあ母さんはもう速攻で帰ってくるだろうな」
何せこの両親、年齢はそれなりだが、見た目は年齢の少し下に見え、しかも無駄にラブラブなのである。まあ夫婦になっても良好な関係でいてくれるのは息子としてはありがたいが、それにしてもである。
仲良きことは良き事なり。それを体現したのがまさにこの両親だが、それを見させられる俺と唯の気持ちを分かって欲しい。小学生の時でもはや呆れの境地にまで達してるんだから、今だともう悟りの境地にまでレベルアップしてそうだ。
「それはそれとして、どうだ拓哉。今の学校生活は」
急に話が切り替わる。さっきまでのふざけた顔とは違い、少し柔らかい、親の表情になった。
「あん?共学なのにも関わらず、唯一の男子生徒として満喫してるよちくしょう」
「ああ、その辺はもう唯から聞いたよ。何やら穂乃果ちゃん達と学校を救おうとしてるらしいじゃないか」
いかにもニンマリとした笑顔でこちらを見てくる親父。さっきまでの親の表情はどうした。いきなり弄ってやろうみたいな顔しやがってぶん殴るぞ。
「……救おうとしてるのは穂乃果達だ。俺はただそれを手伝ってるだけに過ぎない」
「でも彼女達の貢献はしている。支えてるんなら、お前も十分に学校を救おうとしてるヒーローだよ」
「……、」
ホント、この親は俺の事を見透かしてくる。思わず顔を逸らすが、それこそが親父の言っている事を認めてしまうという事実に他ならない。親父には俺の隠し事なんてほとんど意味ないのだ。
「それに……」
しかし。
「女の子しかいない学校で、しかもその中のスクールアイドルの手伝いをしてるって……とんだハーレム青春してるじゃないか~」
「なっ……ば、違うっつの!!んなハーレム築いた覚えはねえ!!」
いきなり何て事言いやがるこのクソ親父。ハーレムなんて二次元だから良いんだろ。現実でなったらとんでもない修羅場不可避だし問題しかねえじゃねえか。
というか、
「つうか、親父が共学っつうから行ったのに男子1人もいねえし、しかも廃校寸前ってどういう事だコラッ!!まさか知ってたんじゃねえだろうなテメェ!!」
俺が言いたかったのはこれだ。廃校寸前の学校に転校とか聞いた事がない。そもそもそんなのがあり得ていいのかとまで思っているくらいだ。親父と理事長である陽菜さんは知り合いだ。
つまり、この2人だからこそ、こんなあり得ない話もあり得てしまったのではないか?というのが俺の推測だったのだが。
「ああ、知ってたよ」
あっけらかんとそれに答える親父。
「と言っても南さんと話してその時にようやく知ったんだが、それで余計お前を転校させようとしたんだ」
「……どういう、事だよ」
「元々は普通に転校させようとしただけだった。でも実際に話すと、既に音ノ木坂は廃校寸前だって知らされた。じゃあここで俺から拓哉へとても簡単な質問をしよう」
人差し指を立て、いかにもクイズ番組を思わせるかのような声音で、親父は俺に問いをした。
「俺がそれを聞いて、黙ってはいそうですかと終わらせるように見えるか?」
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「その沈黙が答えだな。そう、学校は廃校寸前、だが俺は何もできない。……でも、もしも廃校を何とかしてくれるかもしれない者がいるとしたら?それがまさにそういう性格で、困っている人がいれば絶対に放っておけない者だとしたら?」
分かりきった表情で、親父は俺へと指を指す。
「お前だよ、拓哉。お前を音ノ木坂へ送るしかなかった。いや、だからこそ余計に送るべきだと思ったんだ。お前なら廃校をどうにかしようと動いてくれるかもしれない。それを南さんにも伝えたよ。ある意味懸けだったが、お前は動いてくれた」
……そうか、だから初日に理事長室で陽菜さんに会った時、たまに暗い表情をみせてたのはそれが理由だったのか。2人で話して、俺には話さず、俺が廃校に食い付くかどうか、そんな懸け。
「……ったく、まんまと親父にハメられたって事かよ」
「そこに南さんを入れない辺り、お前の優しさが溢れ出してるな」
「陽菜さんは親父の無理な用件を受け入れるしかなかったんだ。じゃあ陽菜さんは被害者側だろ」
「無理な用件って……まるで俺が拓哉を押し付けたみたいに言―――、」
「違うか?」
「……はい」
何も違ってねえじゃねえかよ。結局は親父の掌の上で俺は踊ってたって事か。廃校にまんまと食い付き、形はどうあれ穂乃果達の手伝いだとしても、廃校をどうにかしようと動いている。ここまで親父の思ってる通りなのだ。
「なあ、拓哉」
「……何だよ」
俺に言いくるめられ、少しシュンとしていた親父がまた真剣な表情に変わり、俺と視線を交わす。
「音ノ木坂に転校して、廃校という現実にも突きつけられ、それをどうにかしようと必死に活動していて……そんな今を、お前は……後悔しているか?」
親父にしては、珍しく愚問をしてきた。
だから、俺も答える。
最初から答えは決まっている。
その答えに、揺らぎなんてものは存在しなかった。
「してるわけねえだろ」
そんな俺達を、すぐ傍で見ていた唯は、微笑ましい何かを見ているようだった。
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同時刻。
そこは、あるいは家だった。
ただ、家という割にはとても大きく、一般家庭では到底住めないくらいのデカさだった。まさに豪邸。
そんな豪邸の中で、バサッと。鞄が落ちる音が響く。
落ちたのは学生鞄。音ノ木坂学院の鞄。それを落とした主は、言わずもがな、μ's内で有名なお嬢様。
西木野真姫。
「……今……なん、て……?」
途切れそうな言葉を何とか紡いでいく。確かな質問をするために。お願いだから嘘だと言って、聞き間違いであってという微かな願望も含めて。
対して。
「聞こえなかったのかい」
真姫の真正面にいる男性はもう一度、真姫のその微かな願望を絶望へ変える一言を放つ。
「今活動しているスクールアイドル、μ'sを辞めなさい」
――――波乱は、続く。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回から真姫脱退編突入!!のはずなのに、突入したのは終盤じゃねえかというツッコミは自分でしてるのでツッコまないでください。
一期の終盤も近づき、それに伴い、桜井夏美やら岡崎冬哉やら、新キャラから序盤にいたキャラが集まったり帰って来たりしてますね~。
その前にまず真姫脱退編をどうにかしないと……。
いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!
読者の方からのご感想がとんでもないくらいの活力になるって、それ1番言われてるから←
ありがたい……ありがたい……!