そんな本編も今は夏ですね。そっちの方が暑そう。
さあ真姫脱退編、さっそくいってみましょう。
では、どうぞ。
何てことのない、夏によくある快晴の昼。
「どうしたのたくちゃん、いつもより顔に元気がないよ?」
「やっぱ分かるか穂乃果……拓哉さんはこのまま家に帰って寝てたい気分なのよさ……」
穂乃果達といつもの自販機に飲み物を買いに行っている最中である。
昼休みまで、何とか授業で寝てたりはしたのだが(山田先生の授業は起きてた)、それでもなお睡眠時間は足りなかったらしい。穂乃果に指摘されるくらいに俺の顔には生気が見られないのか。
「まさか昨日の夏美ちゃんの事で、疲れがまだ取れてない、とか?」
「ああ、まあな」
ことりに当てられ肯定する。しかし、要員はまだある。
「それに、昨日家に帰ったら親父が帰ってきててな……それのせいもある……」
「ああ、拓哉君のお父様も帰ってらしたんですね。でも、それで何で疲れが……?」
「お前らは小学生の時しか親父を知らんから分からないと思うが、中学や今となれば分かる。あの親父うぜえ……」
風呂上がったあとも変に質問攻めしてきやがって、仕舞いには母さんが帰ってくるまで勝手に部屋に入ってきてまで絡んでくる。最初なんて唯にキモいと部屋から追い出されて泣きついてきたまである。父親の宿命かな。
「そこまでの事なの?」
「俺にとっちゃな。昨日の夕方や夜だけで一気に疲労困憊でグロッキー状態ですことよ……」
桜井ボンバーがようやく終わったと思ったら家で親父クラッシュが炸裂して俺のHPゲージはもうレッドゾーンまでいっていた。今は何とかイエローゾーンまでは回復したが、グリーンまではまだ遠い。
「で、でもさすがに夏美ちゃんも2日連続で来ないと思うし、今日は帰ったらたっくんのお父さんだけだから大丈夫だよきっと!」
ことりさん、あなた今何気に親父の事ディスってますよ。明らかに親父を面倒くさい認定してますよ。唯にもキモいと言われて泣いてたのに、これ聞いたら多分親父引きこもっちゃうぞ。何ならそのまま首吊るぞ。……2人に言われたら俺もなるかもしれない。
「海未~、俺を癒してくれ~、回復呪文かけてくれ~」
「え、ええ……!?そんな事言われても、私にはできる事など……」
「ほら、何かお前なら回復呪文くらい簡単に出せそうじゃん。青髪ロングヘア―とかまさに戦闘兼回復担当じゃん。女賢者みたいにさ」
「拓哉君はゲームのしすぎです!私には戦闘くらいしかできません!」
戦闘はしちゃうのかよ。ベホマとかケアルガとかできないのか。何ならハイポーションくれ。でも実際に発売されたハイポーションは認めない。全然美味しくなかったし、あれじゃ回復できんむしろダメージ受けるまである。
「あ~、こりゃ午後の授業も寝るか~……」
「そんなのズルいよたくちゃん!私も寝たい!海未ちゃん、たくちゃんだけ寝てる時注意しないのは不公平だよっ!」
自販機で買ったミルクティーをストローで飲んでると穂乃果が異議を唱えてきた。
「やかましい。俺はいつも一応聞いてるし、家でも余裕があれば予習もしてる。テストだって大体は平均以上出してんだ。赤点ギリギリ常習犯のお前と一緒にするな」
「本来なら成績が悪くなくても注意すべきですが、今の拓哉君の疲れようを見ると、どうにも強く言えませんね……」
「それだけ精神的にやられたって事だよね、たっくん……」
「眠い……」
何やら穂乃果が横でうるさいが、海未とことりはもう許してくれそうなので午後は寝る事にする。穂乃果め、多数決でお前はもう負けてるのだよ。民主主義万歳。
「……というか、放課後にお前らの練習をサポートしながらじっと見てなきゃいけないんだし、それも含めて体力回復したいんだよ」
「なるほど、それは大事だね!じゃあ寝ていいよっ!」
手のひら返し早すぎませんかね穂乃果さん。授業より部活優先ですか。成績悪いからお兄さん心配ですよ。
「ん?」
そんなふうに歩いていると、ふと視界の脇に見知った人物が映り込んだ。あの赤い巻き毛が特徴なのは、この学校で1人しかいない。
「……真姫?」
音楽室でピアノでも弾いていたのだろう。今はそれが終わり、教室へ帰ろうとしている。でも、今の真姫には何か違和感を感じる。何か浮かない表情をしているのだ。何かあったのか?ピアノの調子が悪かったとかか?
でもそんなふうにも思えない。何かもっと別で、それも深刻そうな感じが顔を見ていれば分かる。何かに悩んでいる……?もしμ'sの事で悩んでいるなら、放課後に相談してくるかもしれないし、それを待つしかないか。
「どうしたのたくちゃん?教室戻るよ~、もうすぐチャイム鳴っちゃうし」
「……ああ」
メンバーをサポートしたりするのが手伝いである俺の仕事だ。真姫が相談してくるなら、それをちゃんと聞かないといけない。でも真姫の事だ、一応それなりの覚悟をしておこうかねえ……。
そんなこんなであっという間に放課後である。
午後の授業寝てたから気付いたら既に生徒が帰り始めていた。穂乃果達に起こされなかったら俺は教室で1人夜をエンジョイしていたかもしれない。何なら朝まで寝てたい気分である。決して夜の学校が怖いからとかいう理由ではない。
「すっかり顔色良くなったね、たくちゃん」
「ん?ああ、約2時間ぶっ通しで寝たからな」
軽いストレッチをしている穂乃果が俺の顔を見ながら言ってきた。そう、あのあと予鈴から俺は寝始め、そこから放課後まで起きる事は一切なかった。そのおかげで余計な疲れも取れ、眠気も綺麗サッパリと消え失せたわけだ。
「え、たくや君授業寝てたの!?それはダメだにゃー!」
「黙らっしゃい。だったらまずは凛がテストで平均以上を出してから言いな。話はそれからだ」
「うっ……ノーコメントで……」
いや言い返してこいよ。それ平均以上とらないって言ってるようなもんだぞ。少しは勉強にも努力を見せなさい。赤点とったらまた理事長に何か言われるかもしんないんだから。
「拓哉くん、そんなに疲れてたんですか?」
「家でも親父と色々あってな、拓哉さんはそのせいでグロッキー状態だったんですよ……。ああ、思い出しただけでまた疲れが出てきそうだ……」
「た、大変だったんですね……」
花陽の困り笑顔が俺の心を癒してくれる。俺的に花陽にはマイナスイオンがあると思っているんだ。見てみろこのふにゃっとした笑顔。困り眉が特徴なのに、逆にそれが癒しを倍増させてるんだよ。今度おにぎり握ってやろうかな。
「あの桜井って子に負けないようにしないと……!」
どんな具を入れてやろうか考えていると、ストレッチ中のにこが1人でそんな事を呟いていた。対抗心むき出しじゃねえか。あいつはアイドル興味ないって言ってたろうに。というか何恐ろしい事言ってんだ。
「にこ、お前は今のままの少しあざとくて可愛いにこでいてくれ」
「なっ……何よいきなり!?そんな言葉でにこを誑かそうとしてもそうはいかないんだからっ!!……ま、まあ?拓哉がそこまで言うなら今のままでもごにょごにょ……」
にこまで桜井みたいなのになったらもう俺の手には負えん。それこそ俺が精神的に過労死するまである。にこには何が何でも今のままでいてもらおう。
と、この屋上にいるのが俺を含めて7人だという事に今更気付く。
「そういや、真姫はどうしたんだ?絵里と希は生徒会があるから少し遅れるって聞いたけど」
2人は生徒会というちゃんとした役割のある仕事があるから遅れるのは分かる。しかし真姫はいつもなら凛達と一緒に来るから遅刻はしないはずなんだが、もしかして昼休みのあの表情と何か関係があるのか?
「ああ、真姫ちゃんは今日日直だから少し遅れてくるんだったにゃー」
「……、」
それを早く教えろや。何今思い出しちゃったてへぺろっみたいな顔してやがる。変に深く考えた俺がバカみたいじゃねえか。まあ日直なら仕方ない。そのうち来るだろう。
「じゃあストレッチも各々したし、先に踊りの練習するぞ。みんなそれぞれの位置につけー」
はーい、という返事を合図に音楽を流し始める。絵里達3人がいなくても、まるで空いているそのポジションに3人がいると思わせるかのような6人の絶妙なポジショニング、違和感を与えない踊り。やはりここにきて穂乃果達は格段に成長している。
夏の合宿のおかげもあるかもしれない。あの厳しい暑さの中で集中して練習したおかげか、以前よりも遥かに踊っている時の集中力が高くなっている。これなら、この9人なら、本当にラブライブ!に出られるかもしれない。
曲も終盤に差し掛かった時だった。
屋上のドアがガチャンッと開けられる音がした。
真姫だ。
穂乃果がそれに気づき、早く列に入るように視線を促すが、真姫はそれを大きく首を横に振ってすぐ傍の壁へもたれ込み、そのまま座った。……いや、その座り方されると男の子である拓哉さん的に視線が送りにくいんですが……主にスカートで。
というよりかだ。普段μ'sのメンバーは部室で練習着に着替えてから屋上へ来る事になっている。更衣室がない分、部室で着替えるしかないからだ。だから、
着替えてないし、浮かない顔で座っている。もしかして風邪か何かか?なら早めに帰らせないといけない。見学に来る意志は良いが、それで悪化したら余計ダメだからだ。真姫が来た時点で曲の終盤に差し掛かっていたため、音楽が終わるのはすぐだった。
それと同時に穂乃果達が真姫駆け寄る。
「真姫ちゃんどうしちゃったの?制服のままだし……もしかして体調悪い?」
「ひょっとして、熱中症かな?もう夏だし、湿度も高いこの時期は油断して水分不足になりやすいから、軽い脱水を起こしても気付きにくいって……」
そう言ってことりは真姫の額に手を当てる。表情から察するに、風邪でも熱中症でもないみたいだ。
なら……。
「真姫、何か悩んでる事でもあるんじゃないのか?もし相談があるなら、俺に―――、」
最後まで俺の言葉が続く事はなかった。真姫がバッ!と立ち、正面の穂乃果の顔を見据えた。その表情は……何かに苦しんでいるかのような表情にも見えた。
そして、確かな一言を放った。
「……私、今日でμ'sやめるから」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?
「……え?真姫ちゃん、今、何て……それって、どういう……」
穂乃果や他のメンバーの驚きの表情を見て、真姫の言葉が聞き間違いではないのだと思い知らされる。
「真姫ちゃん、何で……何か嫌な事でもあったの……?気に入らない事とか、不満があったとか……」
穂乃果が真姫の両腕を掴んで食い下がる。その顔は、とてもいつもの元気のある穂乃果の顔ではなかった。何かに縋るような、現実を受け入れられないような表情。
「べ、別にそんなんじゃないけど……」
「まさか……真姫ちゃん、お家の、人……?」
「……、」
花陽の言葉に、真姫は顔を俯かせる。以前、真姫はスクールアイドル、μ'sに入って入るという事を父親に言っていないと聞いた。まさか、それがバレたっていうのか……?
「……この前の合宿の時に私の家の別荘を使ったでしょ。それで、お母さんがうっかりお父さんにμ'sの事を話しちゃって、それで……」
いつもの真姫の声ではなかった。いつもの強気で、自分に自信のある真姫の声ではなかった。顔を俯かせ、震えているその声は、今にも泣きそうな女の子だった。
「私……もう、μ'sを続けられなく、なっちゃった……!」
それが限界だったんだろう。自分がもうμ'sを続けられないという事実に、真姫のタガが外れ、絶対に見せる事のなかった真姫の泣き声が屋上に響いた。
少し時間が経ち、真姫は何度もごめん、ごめんなさいと呟きながら、目元の涙を必死に腕で取ろうとしていた。それを俺達は黙って見ている事しかできなかった。
「真姫ちゃ―――、」
「明日……ちゃんと退部届持ってくるから……」
穂乃果が何か言う前に、真姫はそれだけを言い残し、屋上を去って行った。
真姫が泣いているあいだ、メンバーはそれぞれ真姫に言っていたが、俺は……俺だけは、ずっと黙って見ているだけだった。
「……たくちゃん、どうして、ずっと黙ってたの……?」
そんな俺を、穂乃果が少し非難したような目で見ていた。何故真姫に何も言わなかったのかと。何故『岡崎拓哉』がそこで黙っているんだと。そんな目を、ここにいる全員がしていた。
「……悪い、1日だけ待ってくれ」
そう言って、俺は1人帰る事にした。
――――――――――――――――――――
「……、」
自宅のベッド。
そこで横になり、俺は1人放課後の事を考えていた。
μ'sは確実に歌や踊り共に上達していた。今の9人だからこそいける高みへどんどん進んでいった。なのに、突然の真姫の脱退宣言でそれは止まってしまう。ここに来て誰かが脱退するなんて考えてもいなかった。
故に、俺の思考は本能的に真姫のあの言葉から停止していた。我ながら情けない話だ。想定外の事が起きて冷静でいられるほど、俺はまだそんなに出来ていない。アドリブに強いわけでもない。ましてや脱退なんて、微塵にも思っていなかった。
だから、今考える。
もう一度屋上での出来事を振り返って、考えるんだ。俺が何をすべきか、これからどう動くべきかを。
真姫は言っていた。確かにμ'sを辞めると。父親にバレて、逆らえもせずにその決断をせざるをえなかった。
「……そうか」
そこで、俺は1つの推測に至った。
いや、もし外れていても関係ない。これは俺の決断だ。真姫の気持ちとか、真姫の家の事情とか、そんなのはどうだっていい。俺がしたいからする。
それだけだ。
――――――――――――――――――――――
翌日の放課後。
今日も焼き付けるかのような太陽がずっと地上を舞台に照らしていた。
音ノ木坂学院の屋上。いつもそこで練習をしているμ'sの面々と、その手伝いである岡崎拓哉も通常通り、揃っていた。
しかし、そこにはいつものようなワイワイとした陽気な空気は流れていなかった。あるのは、沈黙、不安、動揺、疑心、険悪、それらだった。
「持ってきたわ……退部届……」
沈黙を破ったのは真姫。ポケットから白い封筒が出てくる。そこに書かれていたのは、文字通りの『退部届』。
「ッ……」
それを見た誰かが動揺の声をあげる。どうしようもない、認めたくない事実が、目の前にはあるのだから。
真姫がそれを差し出したのは、にこだった。
「……にこちゃんが、部長だから……」
「……っ」
最もな事を言われ、にこはそれを手に取る。それを受理してしまった瞬間に、真姫の退部は成立する。してしまう。
高坂穂乃果はそれを黙って見ていたあと、視線を唯一の少年の方へ向ける。
岡崎拓哉。
少女が最も信頼していて、いかなるトラブルがあっても、少年ならどうにかしてくれる。解決してくれる。そんな不確かで確かな信頼があった。
だから。
なのに。
昨日拓哉は何も話さなかった。真姫が辞めると言った時も、動揺はしていたが、言葉を出す事はなかった。それに穂乃果は微かながら苛立ちを覚えたのだ。いつもならこんな事を拓哉が黙って見ているわけがない。
何がなんでもどうにかしようとするはずだ。動くはずだ。動いてくれるはずだ。そう思っていたのに、結局拓哉はずっと黙っていただけだった。それについて問いかけたが、1日待ってくれと言われ、そのまま帰ってしまった。
はっきり言って空気は最悪だ。今日も登校の時だっていつもなら一緒に行っていたが、今日は別々に登校した。教室内でも拓哉と喋る事はなかったし、昼休みも一緒に食べる事はなかった。男子1人しかいないのにどこで食事をとったかは分からないままだったが、とにかく今日は一度も会話をしていない。
だが、今の拓哉の顔は、昨日とは違っていた。
(これは……)
昨日の動揺していた顔ではない。いつもの、何とかしてくれそうな、そんな雰囲気を纏っているかのように思わせる、そんな目付きをしていた。
「……じゃあ、これで、私は行くわ。活動、頑張ってね……」
普段なら頑張ってなんて言わない少女が、言った。その顔はとても辛く、悲しく、悔しい気持ちが溢れていた。真姫が屋上のドアに手を掛けた瞬間。
「待てよ」
少年の声がかかる。
「……何よ」
真姫がビクッとなりながらも、足を止め、微かに少年の方へ視線を向ける。
「俺はまだ聞いてないぞ。お前の気持ちを」
「……は?」
拓哉の言葉に、一瞬理解が追いつかなくなる。それでも真姫は言葉に鋭さを付けて返す。
「何言ってるのよ……言ったでしょ……。私はμ'sを辞めるって、聞いてなかったの!?」
「聞いたさ」
「だったら何で―――、」
「でもそれはお前自身の気持ちじゃない」
そこで真姫の言葉が詰まる。床全面が鋭い棘で覆われていたのに、ほんのわずか両足2本分だけ、綺麗に地面を踏まれたかのような、虚を突かれる。
「そうだろ。お前が昨日言った事は、お前が父親に言われて言った事だ。辞めろと言われたから辞める。そんなのは父親の意見であって、お前の気持ちじゃない」
「だ、だけど!しょうがないじゃない!!だって言われたんだから……お父さんに辞めなさいって言われたんだから!!」
「それでお前は納得できたのか?心から納得できたのか?父親にそう言われて、はいそうですかと簡単に辞められるようなものでしかなかったのか?お前にとってのμ'sは」
「違うッッッ!!」
普段絶対大声を上げない真姫の声が、屋上に響く。
「そんなわけないでしょ!!私にとってμ'sは自分の大好きな音楽を奏でられる大切な場所なの!!それを……簡単に捨てれるはずないでしょッ!!」
拓哉を見る真姫の目には、確かな敵意があった。大切な場所をそんなものと言われた怒り、それを今拓哉へとぶつけている。
「でも仕方ないじゃない!!辞めたくなくても、いくらμ'sが大好きでも、お父さんに言われたらもう逆らう事なんてできないんだから!!私の音楽はもう終わってしまったんだからッ!!」
真姫の本音。それが今ようやく穂乃果達にも伝わった。普段本音を言わない真姫の、紛れもない本当の気持ち。μ'sが大切で、大事で、だから辞めたくなくて、でも辞めなきゃいけないから、ここで全部吐き出す。
そして、岡崎拓哉は見据える。少し卑怯な真似だったが、それを言わないと真姫は本音を出さないかもしれないと思ったから。でもこれで本音が分かった。この少女は、まだ本気でμ'sを辞めたいなんて思っていない。
「それがお前の本音なんだろ。μ'sが大好きだから本当はやめたくないんだろ。逆らえないから、自分の気持ちを押し殺していただけなんだろ」
少年は真姫へ近寄る。それに合わせて真姫も少年の顔を見上げる。真姫は、泣いていた。
「なら言えよ、西木野真姫」
ちゃんと少女の目を見据え、少年は言う。
「μ'sを辞めたくないって、続けたいって言えよ。お前の本当の気持ちを今もう一度ここで言ってみろ」
その声に呼応するかのように、少女はもう一度俯き、顔を上げて叫んだ。
「……続けたい。私……μ'sを続けたい……!辞めたくなんかない!!大切な場所にもっといたい!!……でも、もうお父さんに言う事もできないんだから……他に道なんてないのッ!!」
言うだけ言うと、真姫は屋上から出て行ってしまう。他のメンバーがそれを焦ったように見ているが、穂乃果だけは少年をじっと見ていた。
そして少年は。
聞いた。
確かめた。
核を掴んだ。
だから、あいつをもう、見捨てられない。
辞めたくないと、続けたいと、確かに真姫は泣きながらそう言った。
そう、泣いていたのだ。昨日の動揺なんてもうどうでもいい。女の子が泣いていた、自分が動く理由なんて、それだけでよかったのだ。
「……これからどうするの、たくちゃん」
穂乃果が拓哉に聞いてくる。その声音は、いつもの拓哉を信頼しているものだった。他のメンバーの視線が集まる中、岡崎拓哉は前を見据えた。
泣きながら少女が去って行った屋上のドアを見ながら、言う。
そもそもの話をすればだ。
真姫を泣かせたのは誰だ?そんな原因を作ったのは誰だ?真姫の気持ちも聞かないで自分の意見だけを押し付けたのは誰だ?
であれば。
答えは明白だった。
元凶を叩けばいい。
「殴り込みだ」
さて、いかがでしたでしょうか?
岡崎が珍しく何も考えられなくなったり、それで穂乃果が拓哉に少し不信感?を抱いたり、真姫が泣いたり、本音を言ったり……だけど、最終的には岡崎拓哉が道を切り開く。
真姫脱退編、さっそく次がクライマックスです。
いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!
最近感想が減っていて寂しかったり。初期から読んでくれていた人は今もいるのだろうかと最近ふと思ったりします……。
さて、ここから少し告知です。
岡崎拓哉が主人公の最新作。
『ラブライブ!~悲劇と喜劇の物語~』がいよいよ来週の水曜日から始まります!!
あらすじは読んでくれている人ならあとがきで何回か見かけていると思いますが、まあ洗脳?されたμ'sと岡崎の戦いです。
暴力的表現が苦手な人には少し厳しいかもしれませんが、この本編以上にヒーローする岡崎拓哉が見れるかもしれませんので、その辺はご期待ください!!