どうも、今回は後半オリジナルです。
シリアスはまだどぅえす。
では、どうぞ。
「どーしよー!!」
太陽が屋上を熱く照り付けるそんな放課後。
我が幼馴染のおバカ代表、高坂穂乃果が頭を抱えながら叫ぶ声が響いた。というかほぼ全員が落ち込んでいる様子である。かくいう俺も只今絶賛四つん這い状態だ。
理由は先程起こった悲しい現実にある。
「だってしょうがないじゃない!!くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから!!」
腕を組んで言うのはにこ。そう、先程学園祭で講堂を使用するために生徒会室で恒例行事だという講堂使用権をくじ引きで決めていたのだが、我がアイドル研究部部長の矢澤パイセンは見事に驚きの白さと言わんばかりのハズレ玉を当ててしまったのだ。
「あー!開き直ったにゃー!!」
「うるさーい!」
「何でハズレちゃったのぉぉぉ……!」
花陽がフェンスに項垂れ涙を流す。穂乃果達からすれば、講堂はスクールアイドルとしてステージに立つのに1番適している場所なのだ。それが使えないとなると、落ち込んでしまうのも仕方ない。
「もうダメだー!あぅ……」
「穂乃果が死んだ!この人でなし!!」
「うるさいわよ!!」
穂乃果に至っては頭がパンクしたようだ。煙がプスプスと出ている……ようにも見える。渾身のランサーネタも今のにこには通じなかった。みんなのダメージがでかすぎるな。
「まあ、予想してたオチね」
「にこっち……ウチ、信じてたんよ……?」
「うるさいうるさいうるさーい!!悪かったわよー!!」
ここまでくるとさすがのにこも謝罪するしかなかったか。まあ、こればっかりは運だし、にこは悪くはないのだが……うん、部長ってこういう時責任重いよね。
「気持ちを切り替えましょ。講堂が使えない以上、他のところでやるしかないわ」
と、ここで絵里が話を切り出した。さすが生徒会長、こういう場面では人をまとめるための能力が良い感じに発揮される。
「体育館もグラウンドも、運動部が使ってる……」
「ではどこで……」
広い場所が使えないのなら、何とかして他に使えそうな場所を自分達で探すしかない。そこでみんなそれらしい事を考える。最初に口を開いたのはにこだった。
「……部室とか?」
「狭いわ。ライブハウスか」
ロックバンドじゃないんだから、9人で踊るとなると相当キツイ。しかも客もそんなに入らない。宣伝も兼ねてるんだから狭くて客足が見込めないのはなしである。
「あ、じゃあ廊下は!?」
「邪魔になるわ!!せっかく来てる客の通り道を邪魔してどうする!!このあほのか!!」
「私に当たり強いのは何でなのかな!?」
そりゃお前、穂乃果が1番気兼ねなく何でも言えるからに決まってるでしょうが。気を遣う必要がないというのは楽なのだ。それに穂乃果なら数秒すればすぐ忘れるから余計にね。
「いっその事、校門付近はどうだ?そこなら入り口に近いし、嫌でも客の視界に入るだろ」
「ああ、元々ここに入学する予定でパンフ見てた真姫達と違って、拓哉は音ノ木坂の学園祭は初めてだったわね。そこはダメなの。ほら、学園祭の時って大体校門付近は受付があるじゃない?それの妨げになるような事はしてはいけないのよ」
「あー……そっか」
そりゃそうだ。よく考えなくとも学園祭の校門付近ってのは受付があるのが定石みたいなものだしな。当たり前の事を分かっていない俺も少し焦ってるって事か。
……ん?いや待てよ?
9人が十分に踊れて客もたくさん呼べてそれなりに広い場所。あるじゃねえか。たった1つだけ確実なとこが。
「「じゃあここは?あ……、」」
穂乃果と声が被った。という事は穂乃果も同じ考えだったのだろう。2人して顔を見合わせ軽く笑いながら、みんなへ説明する。
「ここに簡易ステージを作ればいいんじゃないか?この屋上の広さなら客も結構入れるだろうし」
「屋外ステージ?」
「そう、ライブをするなら定番中の定番。野外ライブだ」
ライブといえば、屋内ステージはもちろんだが、それ以外によくあるのが野外ライブだ。アイドルやらロックバンドやら、ジャンルが違う数あるアーティスト達も野外ライブは何度も経験している。まあここは野外というより屋外だが。
俺の次に、穂乃果が自分なるの意見を伝える。
「何よりここは、私達にとって凄く大事な場所!ライブをやるのにふさわしいと思うんだ!!」
「野外ライブ、かっこいいにゃー!」
凛が穂乃果の発言にノリノリになる。運動好きな凛にとっては外で思いっきり踊る事は結構嬉しい事なのかもしれない。そんなノ凛ノ凛とは違い、絵里は穂乃果へ質問をぶつける。……ノ凛ノ凛って何だよ。
「でも、それならどうやって屋上にお客さんを呼ぶの?」
「確かに……ここなら、たまたま通りかかるという事もないですし……」
「下手すると1人も来なかったりして」
「えぇ!?それはちょっと……」
次々に不安な声が挙がる中、穂乃果はそれを吹き飛ばすような事を簡単に言ってのけた。
「じゃあ、おっきな声で歌おうよ!!」
「はあ、そんな簡単な事で解決できるわ―――、」
「校舎の中や、外を歩いてるお客さんにも聞こえるような声で歌おう!!そしたら、きっとみんな興味をもって見に来てくれるよ!!」
にこの言葉を遮りながら穂乃果は言う。きっと穂乃果の中では何の不安も疑問もないんだろう。だから自信をもって言っている。それは、決して確信のない虚言に近いものかもしれない。
だけど。
「ふふっ、穂乃果らしいわね」
「……ダメ?」
絵里は笑う。それも心地良さそうに。
「いつもそうやって、ここまできたんだもんね。μ'sっていうグループは」
「絵里ちゃん……」
そう、今までもそんな穂乃果の確信のない自信のある言葉でやってきたのだ。たとえそれが虚言に聞こえたって、それでいつも頑張って乗り越えてきた事を、穂乃果達といつも対峙してきた絵里はよく知っている。
だからそれを信じる。穂乃果の言葉を信じる。ただそれだけの事。いつもの事だ。
「決まりよ!ライブはこの屋上にステージを作って行いましょ!」
「確かに、それが1番μ'sらしいライブかもねっ」
絵里の言葉に希が反応する。希だってそうだ。絵里と同じように最初から穂乃果を知っていて、更には影でサポートまでしていたんだから、μ'sらしさなんて穂乃果の次に分かっていると言っても過言ではない。
「よぉーし、凛も大声で歌うにゃー!!」
「じゃあ各自、歌いたい曲の候補を出してくること。さあ、練習始めるわよ!!」
色々と決める事が決まって、全員の声に一層気合いが入ったような気がした。
―――――――――――――――――――――――
「おし、お疲れ~。見てたけど、今日はみんな動きとか良かったぞ」
「そりゃあ学園祭に向けてだからね~。気合いも入っちゃうよ!!」
それぞれにドリンクを渡す。青かった空がオレンジに染まり、それが夕方だと認識させる。今日の練習はこれで終わりだ。いつも通りこのまま帰るだけである。
「それでは私は少し弓道部の方へ寄って行きますので、先に帰っておいてくれて構いません」
「おう、分かった」
1人先に部室へ帰って行った海未。弓道部も兼ねているから大変だと思うが、そういや弓道部は学園祭で何かするのだろうか。明るい学園祭で静かなイメージのある弓道部が何かするとは思えないけど。べ、別に偏見とかじゃないんだからねっ!!
「じゃあ俺も先に下駄箱あたりで待って―――、」
「おお、いたいた岡崎」
言い切る前に、海未とすれ違いで屋上にやってきたのは我らが担任の山田先生だった。というかあれだ。わざわざ俺の名前を言ってきたあたり嫌な予感しかしない。チラリとグラウンドの方を見ると部員がチラホラと片付けをしている。部活はもおう終わっているって事は……。
「……やー先生、今日もお互い部活お疲れさまです!こちらも今終わりましたんで、居残りはせずに品行方正のある生徒として真っ直ぐ下校したいと思い―――、」
「丁度良かった。荷物運び手伝え」
「もはや頼むでもなく命令形なんて清々しくて惚れちゃいそうです先生図太い性格してますね」
「御託は良い。行くぞ」
やだ、この人に俺の皮肉が通じない。しかも首根っこを容易く掴まれて引きずられている。こんな力を持っているなんて、山田先生やはり怖え。
引きずられる中、何やら複数の哀れみの視線を感じた。そこを見やると、穂乃果達が俺を見ている。これはあれだ。すぐには帰れそうにないな。伝えるだけ伝えておこう。
「あー、悪い、先帰っててくれ」
「う、うん、頑張ってね?」
穂乃果を筆頭に、俺へ軽く手を振る彼女達は、さながら戦争へ出向く夫を見送る妻のようだった。……それ夫婦じゃねえか。
「で」
所変わって俺は今先生と歩いている。というか荷物運びを手伝わされている。
「何で俺は強制的にこんな事を手伝わされているんですかね」
「足りない頭でも少し考えてみれば分かるだろ。お前が男だからだ」
「男子が1人しかいないこの学校の事を考えれば、それはもう俺にその命がくるのは運命じゃないすか」
「良かったな。運命って言いかえればdestinyだぞ。ほら、そういう響き好きだろ男子って」
「どこの中二病だよ。何なら俺はfreedomの方が好きですよ。自由っていいよね」
「ガンダムの話じゃないぞ」
「知ってんのかよ」
意外と話通じるぞこの人。話の論点ズレてるけど。結局荷物運びをやらされている俺だが、この段ボールがやけに重いのだ。なるほど、これじゃ男の俺に頼むのも仕方ないわけだ。こんなのを女の子に持たすわけにもいくまい。……普通に持っている先生についてはノーコメントだ。
「そういや、この段ボールの中には何入ってるんすか?やけに重いけど」
「ん?ああ、ライトの機材とか色々だな」
「へえ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
思わず足が止まった。
「今……なんと?」
「聞こえなかったわけじゃないだろ。ライトだよ、もちろん懐中電灯とかいうオチはないぞ。れっきとしたライブなどで使われるライト機材だ」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
「そんなのを何で先生が……?陸上部とかが使うわけじゃないですよね?」
「当たり前だろ。こんな機材を使うのは、お前らアイドル研究部しかいないよ」
待て待て、俺の脳内回路がおかしいのか?さっきから理解が追いつかないぞ。段ボールを見たところ綺麗に包装されている。つまり新品というわけだ。でも、これを何で……。
「そういえば言ってなかったか。メンバーに入ったっていう絢瀬もまだ伝えてない……というか伝え忘れてるのか?まあいいや」
そして先生は相変わらず、俺の予想外の事を遥かに上回る事を言った。
「私はアイドル研究部の顧問だよ」
今度の今度こそ、理解する事を一瞬放棄した。だが聞く事があったために無理矢理思考を巡らせる。
「いや、でも……先生は陸上部の顧問じゃ?」
「ああそうだよ。でもアイドル研究部の顧問も兼ねてる。別に顧問を2つ掛け持つのは禁止じゃないしな」
あっけらかんと答える先生に、まだ聞きたい事がある俺は質問をぶつける。
「じゃあ、何で先生はアイドル研究部の顧問に……?」
「まず第一に、部活には必ず顧問が必要なんだよ。部活を作るにしてもな。でもアイドル研究部には元から顧問はいなかった。顧問のいない部活の集まりはもはや部活じゃない。同好会だ」
言われて、思い返す。確かに部活には基本的に顧問の先生がいる。運動部にも文化部にも言える事だ。それが普通なんだから。
ならば、アイドル研究部はどうだ?俺達が入ってからも一度も顧問と呼ばれるべき先生はいなかったし、俺達が入る前に顧問がいたという事もにこから聞いた事がない。それはつまり、同好会と思われていたから?認める認めない以前に、前提条件からして破綻していた?
「お前達が来る前からアイドル研究部はあったが、人数が人数だし、顧問もいなかった。ただの同好会だったよ。……でも、ある時不意にこの学校を救ってやろうなんて遠回しに言ってきたヤツらがいてな」
その言葉に、過剰に体が反応した。そんな事を言ったのは紛れもない、俺達だから。
「最初は何だかんだ言って笑ってたけどさ、時間が進むにつれお前達……は少し言い方が違うか。高坂達のスクールアイドルはどんどん注目されて知名度も上がっていっただろ?そこで思ったんだよ。あいつらなら本当に廃校をどうにかしてくれるんじゃないかってな」
「じゃあ、先生はそれで……」
「そう、生徒達が頑張って廃校問題をどうにかしようとしてくれているんだぞ?そんなのを見てしまったら、先生兼元OGである私が黙っていられると思うか?」
ニヤニヤしながら視線を向けてくる先生に思わず視線が釘付けになる。
「ダメだ、このままじゃダメなんだって自分を言い聞かせたら、自然とやるべき事が頭に浮かんだんだ。確かに私は陸上部の顧問だ。でも、高坂達のために何かしてやりたい。だから顧問を兼ねる事にした。あいにく私はスクールアイドルの事はからっきしだし、陸上部もあるからアイドル研究部を見に行く事すらあまりできない」
元から陸上部を請け負っていたんだからそれは仕方ないと思う。数が少ないとはいえ、陸上部はどの学校にもある立派な運動部の代表だ。それを見やるのは顧問として普通の事なのだから、先生が気に病む事なんて何一つない。
「でも、アイドル研究部には岡崎がいる。踊る事も歌う事もできないけど、高坂達を手伝ってやれる存在がいるってだけで、私は安心できる。アイドル研究部の事はお前に任せる事にしてるんだ、私の勝手だけどなっ」
重い荷物を運びながらでも、先生の表情は柔らかかった。
「私にはアイドル研究部を直接的に支える事はできない。表立って会ってやる事もできない。だけど……こういう事ならしてやれる。いくらあいつらをちゃんと見てやれなくても、いつも遠くのグラウンドからしか屋上を見てやれなくても、こうやって裏から高坂達を手伝う事くらいならしてやれる。ライブを盛り上げるための手段でしかないけど、ないよりかはマシだろ?」
ああ、何だよ……。やっぱりこの学校は良い人ばかりじゃねえか。見てくれている人は必ずどこかにいる。そう思っていた。だけど、それがこんなにも近くにいた事がとてつもなく嬉しい。
「岡崎の反応を見ると高坂達は私が顧問だって事をまだ知らないだろうし、自腹で買っといて正解だったな」
「なっ、このライト自腹で買ったんですか!?少ないにしても、アイドル研究部にも部活予算があるのに何で……」
「アイドル研究部は前まで元々同好会扱いだったし、予算も少ないのは知ってる。だからだよ。スクールアイドルが踊るにはステージや曲だけじゃない、衣装も必要だろ?それもその衣装を少ない予算で南が手作りしてるらしいじゃないか。それなのに部活の予算を削るわけにもいかんだろ」
「だからって、何も自腹で買わなくたって」
「いいんだよ」
本当に、何も気にしてないように先生は言った。
「岡崎、お前がとんでもないお人好しで、しかもそれをただやりたいからやっているって事を私は知っている。それと同じだよ。私もやりたいからやってる。それだけの事さ。お前のやり方をお前が否定するわけにもいかないだろう?」
「ぐっ……」
この先生、俺の事をよく分かっている。この人だけはいつも読めない。何かしらお互いコントみたいな事をしたりしていると思ったら、不意にこうやって真面目になる時がある。体育会系だけと思っていたらちゃんと考えている人なのだ、この人は。
「まっ、もっと簡単に言わせてもらうとさ」
俺の少し前を歩く先生が止まり、必然的に俺も止まる。そして、こちらに振り向いた先生はとびっきりの笑顔でこう言った。
「私も学校を救うヒーローの1人になりたいんだよ」
廊下の窓から差し込む夕日が、先生のとこだけをスポットライトで当てているかのように照らし出す。それは何とも幻想的で、美しくて、だけど言葉はとても熱くて、まるで同い年だと思ってしまうくらいには、今の先生からは幼さを感じた。
自然と、口が開いていた。
「……もう、立派なヒーローの1人ですよ。先生は」
「おっ、そうか?なら是非とも高坂達にはこの学校を救ってもらわないとだな!」
ったく、思わず見惚れてたなんて言おうとしたけど、これを言ったら絶対からかわれるに違いないから言わないでおく。
そして俺達はまた歩き出す。
先ほどとは違い、お互いが軽い足取りで。
「で、先生はいつから顧問になったんですか」
「矢澤が入ってからだな」
「俺達が部活入った最初からじゃねえか」
さて、いかがでしたでしょうか?
シリアス突入すると思った?残念!まだです!
部活をやるにおいて顧問は絶対条件ですよね。それをアニメではないので、こちらで勝手に補完させていただきました。
先生イケメンかよぉ……。
今回は後半オリジナルでしたが、次回も序盤はオリジナルからの入りだと思います。皆さん焦らしプレイは好きかね。あ、ごめっ、ゴミ投げないで!
まだ上げてくぜ~。
いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆9、☆10)を入れてくださった、
黒と閃光さん(☆10)
1名の方からいただきました。ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)をお待ちしております!!
最近初期の頃から読んでくださっている方達からのご感想が少し増えていてフフッってニヤケちゃう。
やっぱこういうのは活力になるなあ。