ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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何編と強いて言うならば。



『μ's、崩壊編』


69.予兆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果ァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周りに人がいる事や録画用カメラを切る事すら忘れて叫ぶ。気付けば体が勝手に動いていた。倒れている穂乃果の方へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果!大丈夫っ!?」

「お姉ちゃん!!」

 絵里やすぐに姉の元へ駆けつけた雪穂が声をかける。反応がないところを見ると、それほど余裕がないらしい。拓哉もステージ上へとすぐさま上がって声をかける。

 

「穂乃果ッ!!しっかりしろ!大丈夫か!?」

 反応はない。荒い呼吸が続いているが意識を失っているわけではなさそうだ。その時、何か予期せぬ事が起きたのだと理解した客のいる方も次々とザワつき始めた。

 

 

「何々?」

「どうしちゃったんだろう?」

「誰か倒れた?」

「大丈夫なの?」

 

 

 この状況ははっきり言って良くない。それをすぐさま理解した絵里は客に説明を始める。

 

 

「すみません!メンバーにアクシデントがありました。少々お待ちください!!」

 絵里が説明しているあいだにことりと海未が穂乃果の肩を担いで移動させていく。普通ならここは男である拓哉が穂乃果を移動させるべきなのだが、件の拓哉は座って地面を見たままただ拳を強く握っているだけだった。

 

「続けられるわよね?まだ諦めたりしないわよね!?ねえ!?」

 にこが全員に問いかける。このままでも続けると言わんばかりの目をしながら。だけど、状況が状況だった。

 

「……穂乃果はもう無理だ。あのまま踊らせるわけにはいかない」

 静かに立ち上がり、だが目線は地面に向けたまま拓哉が言った。

 

「それに……」

 拓哉のあとに希が続く。視線は客のいる方へ向いていた。それに釣られて他のメンバーも視線を向ける。そこには、次々と離れていく客の姿がチラホラといた。おそらく時間もそうたたない内にどんどんと減っていくのは目に見えている。

 

 

 

 

 

 実質上のライブ中止。

 誰が見てもそれは明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 海未達に連れられて行く穂乃果を尻目に、拓哉は誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺のせいだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日がたった。

 

 

 

 

 

 穂乃果は未だ学校を休んでいる。聞いた話によると単なる風邪らしいが、それでも倒れるほど無理をしていたのはよほどの事だったのだろう。穂乃果が休み始めた時に見舞いにでも行こうと話し合ったが、寝込んでいるところをお邪魔するのも悪いから今度という話になった。

 

 

 穂乃果が休んでいるあいだに色々話し合ったりもした。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。山田先生に呼ばれたり、山田先生に手伝わされたり、山田先生に部活の事を聞かれたり……ほぼ山田先生じゃねえか。

 

 とは言ってもこれは俺が自主的にそうしているのだ。何回か顔は出しているが、それは大切な話し合いがあった場合であり、それ以外は何かと理由をつけて出ていない。だけど俺がいなくてもまとめ役は海未や絵里がやっていて問題はなかったらしい。

 

 俺がいなくても問題がないってのは、前から分かっていた事だったからそんなに気にしていない。()()()()()()()。それだけメンバーが頼りになるという事なのだ。

 

 

 そして、穂乃果を除いた俺達は今、『穂むら』に来ていた。そう、数日たったし穂乃果の見舞いに行こうと絵里が言ったのだ。せっかくの見舞いだから俺も行かせてもらう事にした。

 

 

 

「申し訳ありませんでした!」

「すいませんでした、桐穂さん」

 絵里と共に頭を下げる。店は営業中だが他に客はいないので本題に入らせてもらう事にした。何故謝ったのかと言うと、理由は簡単。穂乃果の体調の異変に気付けなかったからだ。

 

「あなた達……」

 俺は穂乃果達の手伝いという立場にいながら、そんな異変にも気付けなかった。桐穂さんにも大輔さんにも何を言われても仕方ない。これじゃ幼馴染失格だ。

 

「なーに言ってるの~?」

「え?」

「桐穂、さん……?」

 今にも怒られると思い受け入れ態勢に入っていたのに、桐穂さんの軽い声で少し緊張が弱まってしまう。

 

「あの子がどうせできるできるって全部背負い込んだんでしょ?昔からずっとそうなんだから!だから拓哉君も幼馴染だからと言って気にしちゃダメ!もちろんあなた達もね!」

「……、」

 いつもの桐穂さんと変わらない。ということは本当に桐穂さんは気にしてないんだろう。穂乃果が無茶するのはいつもの事なんだから、と。確かに穂乃果は昔から無謀で無茶な事ばかりしていた。

 

 でも俺と穂乃果は中学生の頃は離れていた。多分、そのあいだに穂乃果は俺が思っていた以上にそういう事をするのが多かったのだろう。俺が穂乃果を知らない時間。俺がそれを知らなかったから、穂乃果は倒れた……。

 

「そんな事より、退屈してるみたいだから上がってって!」

「え、それは……」

「穂乃果ちゃん、ずっと熱が出たままだって……」

「一昨日あたりから下がってきてるの。もうすっかり元気よ!」

 こんな時でも変わらないな、桐穂さんは……。やはりこの人は穂乃果の母親なんだ。桐穂さんの笑顔は穂乃果と同じで人を安心させてくれる。

 

 

「……じゃあ、少しだけ上がっていくか」

 さすがに全員が行くと多いので、1年の真姫達を外に残して穂乃果の部屋に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果?」

「あっ、海未ちゃん!ことりちゃん!たくちゃん!」

「良かった~、起きられるようになったんだあ」

 穂乃果の部屋に着くと、そこにいたのはパジャマ姿でプリンを食べている穂乃果がいた。

 

「うん!風邪だからプリン3個食べてもいいって!」

「3個は食いすぎだろ」

「心配して損したわ……」

 まったくだ。あんな倒れ方をしたから俺はもちろん、みんなも相当心配していたっていうのに、プリン3個って何だ、俺にも分けろ。

 

「お母さんの言う通りやね」

「それで、足の方はどうなの?」

「ああ、うん。軽く挫いただけだから、腫れが引いたら大丈夫だって」

「っ……」

 そう言って穂乃果が出したのは右足。倒れた時に挫いたらしく、痛々しい包帯が巻かれていた。……これも、俺がちゃんと注意深く見ていたら回避できていたかもしれない事だった。

 

「……本当に今回はごめんね。せっかく最高のライブになりそうだったのに……。たくちゃんも、いっぱい頑張って、私達のライブのためにステージの準備とかしてくれてたのに……」

「穂乃果のせいじゃないわ。私達のせい……」

「でも……」

「はい」

 絵里が穂乃果に渡したのは数枚のCD。

 

「真姫がピアノでリラックスできる曲を弾いてくれたわ。これ聴いてゆっくり休んで」

「わぁ~……!真姫ちゃんありがとー!!」

 嬉しそうな顔をしたと思ったらこのバカ、普通に大声出して外にいる真姫に手を振り始めやがった。自分の今の立場分かってんのか。

 

「何やってんのー!」

「アンタ風邪ひいてんのよ!?」

「うわぁ、ごほっ、けほっ!」

「ったく、バカみたいに病人が大声出してんじゃねえよ。バカだけど」

「最後は余計だよ!ずびーっ」

 風邪ひいてるヤツが大声出せばそりゃそうなる。せっかく治りかけてるのにまたぶり返したいのかこいつは。

 

「アンタ……幼馴染だからといってよく男の拓哉の前で鼻なんてかめるわね」

「へ?そんな気にする事かな?」

「まあ、小学生の頃こいつが風邪引いた時は基本的に俺が世話してたからな。鼻かむのも手伝ったくらいだ」

「至れり尽くせりね……」

「えへへー」

 穂乃果、にこは別に褒めてるわけじゃないと思うぞ。何なら小バカにされてるまである。

 

「ほら、病み上がりなんですから、無理しないでください」

「ありがとう、でも、明日には学校行けると思うんだ」

「ほんと?」

「うん、だからね」

 その先を、穂乃果は笑顔で語った。

 

 

 

「短いのでいいから、もう一度ライブできないかなって!ほら、ラブライブ出場決定まであと少しあるでしょ?何ていうか、埋め合わせっていうか……何かできないかなって!」

 

 

 それは、一種の罪滅ぼしみたいな意味も込めて言ったのだろう。自分があそこで倒れてしまったから、その埋め合わせのためにもう一度ライブをすると。そうすれば、まだラブライブ出場もできるんじゃないかと。

 

 だが、そんな希望を持った穂乃果の言葉を聞いても、誰もが浮かない表情だけをしていた。

 

 

 

「穂乃―――、拓哉……?」

 絵里が言う前に手で制す。いくらまとめ役とはいえ、絵里にこんな事を言わせるわけにはいかない。これは俺の役目であり役割だ。

 

 

 

 

「……たくちゃん?」

「……ラブライブには……出場しない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬にして、この場の空気が凍った。そのような錯覚に襲われるくらいに、言葉では言い表せない何かがサーッと引いてくのを感じた。感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」

 だが、その中でも1番何かが凍り付いていたのは、穂乃果だった。

 

「理事長にも言われたんだ。無理しすぎたんじゃないかって、こういう結果に招くためにアイドル活動をしていたのかって、手伝いとして近くにいたのに、それに気付けなかったのかって」

 穂乃果は何も言わない。今はそれでいい。変に口を挟まれるより、このまま最後まで言う事を言うだけだ。

 

「それで絵里達と話し合った。そして、エントリーをやめた。……もうランキングに、μ'sの名前は……ない」

「そん、な……」

「私達が悪いんです。穂乃果に無理をさせたから……」

「ううん、違う……。私が調子に乗って……」

「誰が悪いなんて話してもしょうがないでしょ。あれは全員の責任よ。体調管理を怠って無理をした穂乃果も悪いけど、それに気付かなかった私達も悪い。

「エリチの言う通りやね」

 

 

 

 違う。これは全員の責任ではない。一見絵里の言う通りに聞こえるかもしれないが、そんな綺麗事は俺には通用しない。今回の一件、全ての責任は俺にある。手伝いだからと言って、そっちの方に気がいってばかりだった俺の責任だ。

 

 俺がもっとしっかりして練習の方にも顔を出していればこうはならなかった。穂乃果の異変にもちゃんと気付いてやれたはずなんだ。ラブライブ出場を諦める必要なんてなかったはずなんだ。俺がもっと穂乃果を見ていれば……穂乃果が倒れる事態にはならなかった。

 

 

 

「……じゃあ、私達はもう行くわね」

「うん……ありがとね……」

 穂乃果は顔を上げなかった。やはり自分に責任があると思っているのだろう。()()()()()()()()()()。このままだと穂乃果は学校に来たとしても暗いままだ。何とかしなくてはいけない。

 

 

「俺は少し穂乃果と話す事があるから、もう少しだけここにいるよ」

「え?」

「た、くちゃん?」

「俺はここから家が近いし、幼馴染同士で話したい事もあるんだよ」

「……そう、分かったわ。じゃあまた学校でね、穂乃果。行きましょ、海未、ことり」

 

 ……絵里が気を利かせてくれたんだろう。穂乃果の他に幼馴染の海未とことりを遠回しに引き離してくれた。アイコンタクトで軽く礼をする。すると絵里はウインクで返してきた。クォーターがやるととても様になるな……。

 

 

「……どうしたの、たくちゃん」

 さあ、これで俺と穂乃果の2人だけになった。近くにあったイスに座る。さっそく本題に入ろう。

 

 

 

 

「最初にはっきり言っておく。穂乃果、お前は何も悪くない。悪いのは全部俺だ」

「……え?」

 まさかこんな事を言われると思っていなかった穂乃果は数秒間固まっていた。

 

「穂乃果が倒れたのも、無理をしていたのも、全部俺のせいだ。俺がちゃんと近くで見ていればこうはならなかった」

「……待って」

「手伝いという役割ばかりに気を取られてお前の近くにいてやれなかった俺の責任なんだ」

「待ってよ、ねえ……!待って!!」

 穂乃果が俺の服の裾を必死に掴んできた。さすがに黙ってしまう。

 

「違う……違うよ……たくちゃんこそ、何も悪くないよ……。私が自分1人で勝手に無理をしたから……」

「いや、そもそも俺がお前達の近くから離れている事自体がおかしかったんだ。理事長にも言われた通り、ホント、何のために手伝いとして今までお前達の側にいたんだって話だよ」

「ちがっ……!だってたくちゃんは私達のためにステージや準備を頑張ってくれてたんだよ!?それなのに、それを全部私が台無しにしちゃったんだよ……せっかくのステージを……」

「それも込みなんだよ穂乃果……。結局は全部俺がちゃんと見ててやれなかった結果なんだ。俺がどっちも見ていれば穂乃果は倒れなかったし、ライブを中止にする事もなかった。それに……」

 拳を握る。最後の『それ』が1番穂乃果や俺の心を抉る要素だったから。

 

 

 

「……ラブライブ出場を諦める必要もなかったはずなんだ」

「ッ……」

 俺の服を掴んでいた穂乃果の力強かった手が、弱くなった。

 

「穂乃果は一生懸命頑張ってた。確かに無理して頑張りすぎたせいでこうなってしまったのは否めないけど、それは俺の責任だ。穂乃果は自分のできる事を精一杯やろうとしただけなんだ。大丈夫、穂乃果は悪くない。だから自分に責任があるなんて思わないでくれ」

「でも、それじゃ……たくちゃんが……」

「いいんだよ。穂乃果は穂乃果なりに頑張った。それを誇りに思え。()()()()()()()()()()()()()()()。だからお前はμ'sのリーダーらしく、今はただラブライブ出場ができなくなった事を悔しがればいい。そしてそれを糧にまた頑張ればいい」

 

 穂乃果の頭を軽く撫でる。少し気持ち良さそうにしていた穂乃果の目には、どんどんと涙が溜まっていった。

 

 

「ごめん……ごめんね、たくちゃん……ッ!たくちゃんに全部背負わせるなんて間違ってるのに……私……ラブライブに出場できない事が1番悲しいなんて思ってる……!!」

「構わねえよ。言ったろ、穂乃果は穂乃果らしくいろ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。不満があれば全部俺が受け止めてやる。ほら、病人でも泣くくらいの元気はあるだろ?」

「た、くちゃん……ぅ……うぅ……ッ!ひぐっ……」

 

 

 

 

 

 言って、穂乃果は俺にしがみ付いてきた。顔を見せないように俺の胸へ顔をうずめて、だけど堪えきれない涙を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、それでいい。穂乃果の、穂乃果達の、μ'sの悲しみや憎しみや憎悪、負の関係にあるものは全部俺が背負い込む。それでほんの少しでもこいつらが楽になるのであれば、俺は構わない。

 

 

 

 

 

 

 

 それがたとえ、μ'sにどう思われたって。嫌われたって。構わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ての業は、俺が引き受ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、今だけは。

 目の前の少女のために全てを尽くそう。泣き止むまで、ずっと抱き締め続ける事を、許してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


着実に、確実に、じわじわと、ゆっくりと、崩壊が進んでいきます。
一応まだシリアスは少な目にしているつもりです(自分の中では)
お気づきになった方は少ないやもしれませんが、今回は主人公の一人称視点でしたが、語りが少ないと感じた方がいればその方は中々鋭いです。
ええ、主人公の語りが普段より少ない、一行だけとかにしたのも全てわざとです。つまり心の中で岡崎の思考はあまり回転していない、言ってしまえば視界が狭くなっている、みたいな感じです。

さあさあ、岡崎にも異変が見えてきた今回でしたが、次もまた読んでいただけると嬉しいなと思いつつ、今日はこの辺で。


いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!

では、新たに高評価(☆9、☆10)を入れてくださった、


ゐろりさん(☆10)、東條九音さん(☆10)、なこHIMさん(☆10)


計3名の方からいただきました。ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)をお待ちしております!!



ポケモンGO端末対応してなくて辛いです。スクールアイドルGOとかでないですかね。
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