ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

84 / 199

何気に2話前のサブタイと似ていたり(意図的)


73.堕ちていくもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日はもう、授業を聞く気にはならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先生の話を聞いてるようで聞いていない。その日は全部それだった。休み時間も、昼休みも、誰とも喋らない。穂乃果や海未も喋る事は一度もなかった。

 それを見て拓哉は自分のせいだな、と内心思いつつも、それは今だけであり、時間が経つにつれそれはなくなっていくと思って気にも留めなかった。

 

 

(……帰るか)

 HRが終わり、それと同時に立ち上がる。“いつもなら”すぐに部室に行くが、その必要さえ既になかった。帰宅するだけ、そのためにバッグを手に持ち移動を始める。

 

 

 

 声はかけない。

 元々μ'sに恨まれる覚悟で離れたのだ。彼女達の笑顔を守るために、わだかまりもなく、また1つに戻らせるために。そのためならば自分は悪にさえなろう。もう表では支えてやれないけれど、もう話す事さえできないのかもしれないけれど、影の薄い裏からなら、また支えてやろう。

 

 

(きっとこれが正解だったんだ)

 あのままじゃ確実にμ'sは崩壊していた。リーダーである穂乃果によって。だからそれを阻止した。いなくなっても何の問題もない自分が離れる事によって。そうしてμ'sをμ'sのまま維持させるようにした。

 

 咄嗟の判断だった。考える時間がなくて、そんな余裕すら与えられなくて、本当に最善策なのかも確信はできなくて、それでも出した答えがあれだった。

 以前までやってきた事とは正反対。μ'sを守るために突き放す。嫌われたって、軽蔑されたって、殴られたって構わない。ダークヒーローとしての選択だった。

 

 もうこれからは直接的に彼女達を助けてはやれないけど、間接的になら助けてやれるかもしれない。ヒデコ達に話を聞いたりとか、先生に聞いたりとか、μ's本人とは話せなくても関わりのある者とならば問題はそんなにないはずだ。

 

 

(これからの事、少し考えないとな……)

 下駄箱で靴に履き替えながら考える。今までとは違うサポートをしなくてはならない。そう考えると少し面倒くさいが、これも自分で選んだ道だろと思い直す。

 

(とりあえず明日から土日で休日。色々とありすぎたし、少し頭を休ませたいな)

 1週間のあいだに問題や事件が起こりすぎたせいで拓哉の思考回路を参っていた。頭を回し過ぎたせいで最近思考の幅が狭くなっている気がした。

 

 

(……?)

 そこで。

 拓哉はある疑問が芽生えそうになる、が。

 

(まあいいか。すぐに出てこないって事はそんなに大した事じゃねえだろ)

 すぐに思考を切り替える。

 

 

 

 

 

 

 それがとても重要な事だろうとは思いもしないで。

 思考の幅が狭くなっていて、ロクに頭も回っていないのを理解して、本当に屋上でのあの選択は最善策だったのかという疑問さえ無意識に掻き消して、見えぬ泥沼へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土曜を丸1日体を休める事に専念し、今日は何となしに外をブラブラと歩いている。というわけではなく、唯におつかいを頼まれたから渋々外に出ていた。本来暑い季節や寒い季節には外出したくないのが本音である。

 

 

 

 

 

 

 

(夕方でもこの時期は暑いな……。早く帰って家で涼もう)

 夕焼けでオレンジ色に染まっている景色を見ながら帰路へつく。何てことのない日常の一コマのようにも見える“それ”は、岡崎拓哉が無意識に作り出している演技にすぎない。

 

 平常を、日常を、いつも通りを演じていないとおかしくなってしまいそうだから。本人が意識していなくとも、無意識に見苦しい演技をしてしまっている。まるで見たくない世界があるから、それを見ないように自分を狂わせればいいと考えているような、そんな異常さ。

 

 

 

 それを意識せずにやっている岡崎拓哉という少年は、『平凡』か『異常者』で言うならば、現時点では『異常者』でしかない。

 

 

 

 

「あっ」

「?」

 ふと、声がした方へ視線を向けると、そこには多少見慣れた少女がいた。

 

 

 

 

「亜里沙?」

「こ、こんにちは……拓哉さん……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立ち話も何だから近くの公園にやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、ミルクティーで良ければだけど、飲むか?」

「あ、ありがとうございます……」

 ベンチに座っている亜里沙に自販機で買った缶のミルクティーを渡す。

 

 何故挨拶だけで済まさず、話すまでの流れになったのか。

 理由は簡単だった。

 

 

 亜里沙が話したそうにしていたから。

 拓哉的にはμ'sとは話せなくても、他の者なら別にいつも通り喋っても構わない。全てを閉ざす必要はないからだ。全てを閉じてしまったら、影から支える事もできなくなってしまう。

 

「拓哉さんは、お散歩してたんですか?……あっ、このミルクティーおいしっ」

 さっそくプルタブを開けてミルクティーを啜っている亜里沙が軽い質問をぶつけてくる。

 

「このクソ暑い中散歩するようなバカじゃねえよ俺は。唯に買い物頼まれたから仕方なくだ」

「ああ、なるほど~……」

 それだけ言って亜里沙はまたミルクティーを啜る。まるで緊張を隠すようにしているかのように。だから今度は拓哉から仕掛けた。

 

「で、亜里沙は何してたんだよ」

「私は、ちょっとした気晴らしというか、家にいるのが耐えられなかったというか……」

「何かあったのか?」

 率直な疑問を唱える。亜里沙とはまだ数えられるくらいしか会ってないが、それでも亜里沙の事は結構分かっているつもりだ。だから、あの亜里沙が気晴らしとか、ましてや家にいるのが耐えられないなんて、珍しいにもほどがある。

 

 

「……お姉ちゃんが、ちょっと……」

「ッ!?絵里に、絵里に何かあったのか!?」

 豹変。

 拓哉の変わりようを表す言葉として、これ以上に合っているものはなかった。

 

「……え?」

 それに対する亜里沙の顔は、何も分かっていない、という顔じゃない。

 むしろ。

 

 

「拓哉さん、まさか、知らないんですか……?」

「…………は?」

 何故μ'sの手伝いである拓哉が知らないんだと思っているかのような。そんな表情だった。

 

「お姉ちゃん、学校にいる時はまだ平気そうに笑顔でいたみたいなんですけど……。部屋にいる時は、ずっと泣いてるんです……」

「絵里が、泣いて……?いや、おかしい。何で……、μ'sは、戻ったはずだろ……。なのに何があったっていうんだ……!?」

 拓哉の中で何かがズレていくような感覚がした。自分が出した過程と結果が結びついてないような、まるで喉に異物があってそれが取れないような違和感。

 

 

 

 そして、拓哉の呟いた言葉を聞いて。

 亜里沙は本当に不思議そうに、いや、信じられないとでも言うかのように、拓哉を見ていた。

 

 

 

 

 

「拓哉さんがμ'sの手伝いを辞めたというのは、お姉ちゃんが学校から帰ってきた時にすぐ聞かされました」

「ッ」

 ここで詰まる。

 亜里沙はμ'sを応援していた。本当にファンでいてくれた。手伝いをしていた拓哉にも応援や励ましをくれていた。

 

 

 なのに、岡崎拓哉はそれを裏切った。

 本気で応援してくれていた亜里沙を本心はどうあれ、拓哉はμ'sを愚弄した形で手伝いから降りたのだ。それを裏切り以外で何と言えばいいのか。いや、ない。ないからこそ、拓哉は何も言えない。亜里沙に糾弾されたって言い返してはならない。

 

 

「……でも私は、拓哉さんなら、何か考えがあってそうしたんじゃないかって思ってるんです……。だって、私は知ってる。拓哉さんがどれだけ本気でお姉ちゃん達を支えようとしているか、どうすればお姉ちゃん達がより輝けるようにできるかって。そんな事を考えてくれる人が、拓哉さんが……μ'sをバカにして、そんな簡単に辞めちゃうなんてありえないもん」

「亜里沙……」

 

 正直予想外だった。まだ知り合ってそんなに話した事もないのに、これだけ自分が亜里沙に評価されている事が。糾弾されても仕方ない事だと思っていたのに、殴られても受け入れるべきだと思っていたのに、この女の子は、どこまでも優しい。

 

 

 

 だが、そこから雰囲気は変わっていった。

 

 

 

 

 

 

「だから……、今度も拓哉さんの事だから何か考えているとばかり思ってました」

「……え?」

 会話が噛みあっていないような気がした。まるで亜里沙が1人語っているかのような感覚。

 

「その様子じゃ、本当に何も知らないんですね……」

「あり、さ……?一体、何を……?」

 これで拓哉は何も知らないという事が、無残にも確定してしまった。でも、言うしかない。これを言わないと、多分、おそらく、何も始まらずに何もかもが終わってしまう。何となくだが、亜里沙はそう感じ取った。

 

 だから、どれだけキツかろうが、目の前の少年を絶望のどん底に落としてしまいそうになろうが、言わなければならない。

 

 

 

 

 

 

 この少年は自分の姉を救ってくれたヒーローだから。

 

 

 

 

 何か問題が起きた時も諦めず、μ'sを導いてくれたヒーローだって聞いたから。

 

 

 

 

 誰かが泣いていたら、必ず助けてくれるヒーローだって言っていたから。

 

 

 

 

 困っている人がいれば、誰であっても手を差し伸べるヒーローだって知っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果さんが、μ'sを辞めてしまったんです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから。

 なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年の瞳から、生気が失われたような錯覚に陥った。

 

 

 

 

 

 そこで亜里沙は今更小さな疑問にぶつかる。

 

 

 

 

(……あ……れ……?)

 

 

 

 

 

 そもそもの話。

 

 何故この少年はμ'sの手伝いを辞めたのか。

 

 何故この少年はそのような選択をしたのか。

 

 何故この少年は今までとは違う道をとったのか。

 

 何故この少年は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 推測で自問自答をする。

 

 

 

 もしも手伝いを辞める事でもう一度μ'sがまとまるなどと勘違いしていたら?

 

 もしもそのような選択しかできないくらいに焦っていたのだとしたら?

 

 もしも今までとは違う道をとる事しかできなくなっていたとしたら?

 

 

 

 

 

 

 もしも、自分がいなくなれば元通りになるなんてとんだ正反対の事を考えているのだとしたら……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 考え方はまるっきり変わってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ」

 少年の声に亜里沙はハッと意識を現実に擦り戻される。

 

「拓哉、さん……?」

「何でだ……」

「え……?」

 違う。いつもの拓哉の声とは何か違う。直感的に亜里沙はそれを感じ取る。

 

 

 

「何でなんだよ……。何で穂乃果はμ'sを辞めたんだ!?俺が辞めたんだからあいつは辞める必要なんてなかったはずだ!むしろ俺が辞めてあいつらはまたμ'sとして元に戻れるはずだったのにッ!!何でそんなバカげた選択をしたんだあいつはッ!?」

 亜里沙の肩に両手を乗せ、必死に問うてくる拓哉を見て、亜里沙は身震いをした。恐怖の意味で。今の拓哉はおかしい。まるで人が違う。

 

 

「え……ぁ、お姉ちゃんから聞いたんですけど……穂乃果さんは、その……拓哉さんがいないμ'sなんて続ける意味がない。拓哉さんが辞めるなら私もって、ことりさんもいない今、もうどうでもいいって……。辞めちゃったそう、です……」

「…………ぁ?」

 言って数秒。

 亜里沙の肩に力強く置かれていた拓哉の両手は、まさに正反対に、力なく崩れ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

(ま、さか……、俺の……せい……?)

 目を見開いたまま、俯く。亜里沙からはうまく見えてはいないようだ。

 

 

 

(俺があそこであんな事を言わなければ……穂乃果は辞めなかったかもしれない……?いや、ことりもいない今、もうどうでもいいって、俺が辞めても辞めなくても結末は変わらなかったっていうのか……?)

 どう考えても、そうとしか思えなかった。あそこで拓哉が辞めなくても、穂乃果は辞めていた。という事はどっちみち、μ'sは解散していたという事になる。

 

 

(いや違う。絵里は1人で泣いていたんだぞ……!みんなの前では平常を装って、元気づけようとしていたんじゃねえか……!そこに俺がいれば、絵里もまだ楽になっていたかもしれないのにッ!!俺まで辞めてしまったせいで絵里は余計な涙を流して、元に戻れなくなった……)

 

 

 

 

 もう、何もかもが分からなくなっていた。

 何が正しくて、何が間違っているのか、そんな判断さえ拓哉には分からないでいた。自分のとった行動が、何から何まで裏目に出ている。もう、認める認めない以前の問題。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺の選択は……間違っていた……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いかがでしたでしょうか?


シリアス続きで精神参っちゃいますね。
ダークヒーローとしてあの選択をした岡崎。だけど、その選択自体が救いではなく崩壊に繋がっているのだとしたら?
それはもう、ダークヒーローでもありませんね。失格です。
堕ちたヒーロー。今後どうなっていくのか。見守ってやってください。

そしてこの作品。
王道であり主人公がヒーローとして活躍するのが主なストーリーですが、ヒーローと言えば決め台詞。
既に数話前から決め台詞っぽい事を何回か言わせてるのですが、お気づきになってる方は果たして……。


いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)をお待ちしております!!




最近たまに以前Twitterの方で岡崎くんや唯のイラスト(所謂ファンアート)を描いて送ってきてくださった読者の方が数人いたのですが、それを見てはニヤニヤしております。
唯なんてまだ自分自身も描いていないのにイラストにしてくれる方は何なんでしょうか、最高かよ。
色んな方の岡崎像や唯像が見られるのは楽しいし、作者として嬉しいかぎりですね!



久々宣伝。Twitterやってます(主に進捗状況、投稿報告など)。
https://twitter.com/tabolovelive
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。