ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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一応月曜には間に合いました(震え声)





79.修復

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外へ出ると、やはりまだ夏は続いているという事を嫌でも思い知らされる。

 暑い日差しが熱となり容赦なく体力を奪おうとしてきて、さっそくじわりと汗が額から出てきそうになるのを腕で拭う。

 

 

 

 

 

「ことりちゃんを迎えに行くって言ったってどうやって空港まで行くのたくちゃん!!」

 

 少し後ろを走って付いてくる穂乃果が問いかけてきた。

 

 

「当然走りじゃ間に合わねえ。だからタクシーでも何でも使える足を捕まえる!何がなんでも間に合わせるんだよ!!」

 

 走りながら答える。

 そうだ。色んな人にあとの事を任せた。海未からは信頼されて送り出された。だから何としてもやらねばならない。例え可能性が少なくとも、ここぞという時は必ず、迷わずに断言しないといけない。

 

 

「絶対にことりを連れて帰る!間に合わない可能性なんて出てこさせやしねえからなッ!!」

 

 校門が見えた。まずはタクシーを捕まえるのが先決だが、ほぼ毎日あの道を通っているから分かる。

 あの道ではほとんどタクシーは通らないのだ。だから期待はできない。最低でももう少し通りに出ないといけないが、今の拓哉達にとってはその走る距離だけでも短縮できないのが惜しい。

 

 

「くそッ!穂乃果、海未にことりが何時の便に乗るか聞いてくれ!あまり余裕はないと思うけど、時間を把握しとくだけでも思いっきり走る気持ちの準備はできる!」

 

「う、うん!―――って、うわぐぶぅ!?」

 

 海未に聞こうと携帯を開くために少しよそ見したのがいけなかった。拓哉が急に止まったのに気付かずに穂乃果はそのまま拓哉の背中にぶつかってしまう。

 

「どうして、ここに……」

 

「たくちゃん?」

 

 校門を出たすぐの場所。階段の上から下を見下ろして呟く拓哉の視線に釣られ、穂乃果も階段の下、分かりやすく言えばその道路を見る。

 そこに、車1台と、1人の男性が立っていた。

 

 とにかく時間が惜しい。

 拓哉と穂乃果は階段をできるだけ早く降りてその男性の元へと駆け付ける。先に声を発したのは拓哉だった。

 

 

 

 

「……何でいるんだよ、親父」

 

「なあに、学生じゃ限界なところを大人がサポートしに来ただけだよ」

 

 岡崎冬哉。

 拓哉の父にして“本物のヒーロー”が、まるで計っていたかのようなタイミングで現れた。

 

 

「仕事はどうしたんだよ」

 

「昼から有給をとった。大事なイベントに親が参加しないわけにはいかないからな」

 

「小学生の運動会かよ……」

 

 軽く悪態つきながらも、微かに笑みを隠せない。実際冬哉のこの行為は非常に助けになる。欲しいところで必ず最善策を出してくる。これぞまさにヒーローの所業だった。

 

「とりあえず乗るんだ。行くんだろ、ことりちゃんを迎えに」

 

「「……、」」

 

 穂乃果と目を合わし、2人同時に首を縦に振る。2人して後部座席に乗り、拓哉があらかじめ穂乃果にシートベルトをするように指摘する。そのあいだに冬哉も運転席に座りエンジンをかけていた。

 

「今は少しでも時間が惜しい。頼む、親父」

 

「了解」

 

 もはや即答にも近い冬哉の返事が返ってくる。それで拓哉は分かる。エンジン音を耳で認識し、とりあえずどこか掴める場所を掴む。穂乃果にもそうするように言って、それをミラーで冬哉が見終わった瞬間、冬哉の口が開いた。

 

 

 

「捕まってろよ2人共。最短ルートで最速に空港まで向かうからなあ!!」

 

「えっ?ぇぅわあッ!?」

 

 穂乃果が聞き返そうとする直前に声がブレた。まさに急発進。周りに走っている車がいないからか、冬哉はこれでもかというスピードで車を走らせた。

 

「た、たくちゃん!?たくちゃんのお父さんって、こんな危なっかしい運転する人だったっけえ!?」

 

「いつもは絶対しないけど、こうやって何かあった時はこんなもんだよ、うちの親父は」

 

 慌てる穂乃果に対して拓哉は冷静そのものだった。中学の頃にこういう事に巻き込まれた事が何回かあったからかもはや慣れてしまったのだ。こういった時の冬哉はとにかく凄い。目的地まで何故か最短最速で着く事がほとんどだった。

 

 

 

 

 さて、いくら最短最速で着くとは言っても学校から空港までだ。もちろん距離はある分時間もかかってしまう。今は何でも時間が惜しい拓哉は激しく揺れる車内も気にせずに携帯を取り出す。

 

 そんなに多くない携帯番号から1つを選び、相手へとかける。その相手は2コール目で応答した。

 

 

「あら、珍しい子から電話がきたわね」

 

「急にすいません。今すぐに話したい事があったんで」

 

 どこか妖艶さを感じさせながらも優しい声が耳に入ってきた。

 

 南陽菜。

 南ことりの親にして、音ノ木坂学院の理事長。今はことりを見送りに行っていて学校にはいない彼女に拓哉は話す事があった。今だからこそ話さないといけない事が。

 

 

「今日は生徒としてじゃなく、ことりの幼馴染の1人として陽菜さんに電話しました。先に謝っておきます。すいません」

 

「謝ってくるなんてどうしたの、拓哉君?」

 

 言葉ではそう言っているが、陽菜の声色はとても落ち着いていた。まるでこれから拓哉が言おうとしている事が予想できているかのような声色。

 拓哉的には言いにくい事なのだが、これを言わないと何も始まらない。だから。

 

 

「……俺は今から、ことりや陽菜さんにとって最低な事をしに行きます」

 

「あらあら、それをわざわざ私に言うなんてどういう事かしら?」

 

「陽菜さんにだけは言っておかないといけないので……俺のわがままで迷惑をかける事になってしまうから」

 

 あくまで詳細は言わない。多分、言わなくても陽菜は拓哉が何をしようとしているのかを分かっている。その上で、わざと色々拓哉に質問をぶつけてきている。拓哉の意志を確認するために。

 

 

「そう……。じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……、」

 

 やはりだ。陽菜は分かって言っている。それなのに止めないという事は……。

 

「拓哉君」

 

「はい……」

 

「どうせやるなら後腐れなくやってちょうだいね。ことりがあとから後悔しないように、()()()()()()()()()()()()()()って笑って思ってもらえるようにしてくれないと、理事長室に呼び出ししちゃうからね」

 

「……はい、分かってます」

 

「……期待してるわよ」

 

 

 電話の切れる音がした。

 これで陽菜の許可は得た。最初から反対はしていなかったが、あとでもう一度謝ろうと思った拓哉は携帯をポケットに仕舞う。そこで穂乃果に声をかけられた。

 

「……たくちゃん、何で私もいるって言わなかったの?」

 

 陽菜との会話を聞いていた穂乃果の疑問だった。ことりを連れ戻そうとしているのは拓哉だけじゃない、穂乃果もだ。なのに拓哉は陽菜との会話で一度も穂乃果の名前を出していなかった。

 理由は単純。

 

「今からやろうとしてる事は本来間違っている事だ。だったらスクールアイドルのお前に汚名を被せるわけにはいかない。陽菜さんだから大丈夫だとは思うけど、汚れ役は俺1人で十分だ」

 

「たくちゃん……またそうやって自分だけ―――、」

 

「昨日までの俺とは違うっての。だから心配すんな。ちょっと陽菜さんに怒られて、ついでに絵里達に殴られればそれで済む話だ」

 

「最後のは必要なの……」

 

 殴られるだけで済むならいいけど、というのが本音だが、拓哉は絵里達に罵倒されながら蹴り飛ばされても文句を言えないような事をした。あとから待ち受けている罰に一瞬顔が引き攣るが、今はことりが最優先なため、切り替える。

 

 

「ことりを連れ戻す心の準備はできてんのか?」

 

 簡単な、覚悟が必要な問いをする。

 にも関わらず、穂乃果は前を見据えて即答した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつも通り、目の前の壁にぶつかっていくだけだよ」

 

 

 

 

 

 

 聞いて、笑みを隠そうともせずに拓哉も前を見る。

 ―――空港が、見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程から何回も繰り返して見ていた腕時計をまた見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が乗る飛行機の便までもうすぐだった。

 そろそろ移動しなくてはならない。何か諦めたかのように溜め息を吐いて席を立つ。

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

「ことりちゃん!!」

 

 自然と足が止まった。

 小さい頃からずっと一緒にいた幼馴染の声。本来なら、今ここにいるはずがないのに、聞き間違いのしようがなかった。

 

 

 ゆっくりと、振り向く。

 視覚に認識する。自分の幼馴染、高坂穂乃果。

 

 と……。

 

 

「…………え?」

 

 

 その隣にいるのは、茶色がかったツンツン頭の1人の少年だった。

 おそらくことりが今1番会いたくなくて、1番会いたい幼馴染だった。

 

 

 

 

 

 

 

「よお、ことり」

 

 

 

 

 

 

 いつも通りの声色で、その少年は口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を連れ戻しに来た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ……その……、な、何で……?」

 

 

 頭が混乱した。海未に聞いたが、今のμ'sは危険な状態にあるはずだ。拓哉が辞め、穂乃果も辞めて、活動休止になるほどだったのに、絶対に来ないと思っていた2人がいる。その事にことりの脳内が危うくショートしそうになる。

 

 

「だから言ったろ。お前を音ノ木坂学院に連れ戻しに来た」

 

「でも、何で……たっくんと穂乃果ちゃんは……その、辞めたって……」

 

 言われた途端、2人の表情が一気に引き攣った感じに変化した。

 

 

「あ、あー、その事ね、うん、それはだな。あのー、ほら、もう解決したというか~、まだ完全にはしてないというか…………だーッ!!それは今どうでもいい!!今はお前を連れ戻すのが最優先事項なんだ!!面倒な事は聞くな!!」

 

「ご、ごめんなさい……?」

 

 

 何だかはぐらかされたような気がするが、『その事』を今聞くのは拓哉と穂乃果的にどうもマズイらしい。

 だからか、2人の顔はすぐに切り替えられた。

 

「ゴホン……話を戻すぞ。留学するな、ことり」

 

「え……?」

 

「詳しくは穂乃果から話があるそうだ」

 

 親指で隣の穂乃果を指す拓哉。

 すると、穂乃果は1度目を閉じて深呼吸し、目を開けるや否や、ことりの方へと近づいてきた。

 

 

 そして。

 

 

 

「ことりちゃん、ごめん!」

 

「穂乃果、ちゃん……?」

 

「私、スクールアイドルやりたいの!ことりちゃんと一緒にやりたいの!!いつか、別の夢に向かう時が来るとしても……!!」

 

「……!!」

 

「行かないで、ことりちゃん!!」

 

 

 ヒドイ我が儘だった。

 ただ一緒にスクールアイドルがしたいからという理由で、デザイナーに見込まれた留学の件を白紙にしろだなんて、とんでもない我が儘発言だった。

 

 

 だけど、それが高坂穂乃果なのだ。普通の人じゃ寂しくてもそれを言わずに応援して見送るような場面でも、離れたくないからその根本をなかった事にさせる。トンデモ発言でありながら、だからこそ本音を偽りもせずに吐く事ができる。

 

 

 

 

 

「お前もどこかで期待してたんだろ、ことり」

 

 穂乃果に抱き付かれた状態で、前方にいる拓哉を見る。

 

「俺達を見付けた時、お前の瞳は困惑と同時に期待もしてた。どこかで思ってたんじゃないのか?俺か穂乃果か、それとも他の誰かが来て留学するなって言ってくれるのを」

 

 

 全部図星だった。

 何回も腕時計を見ていたのは、時間が来てしまう前に誰かが来てくれないかと思っていた。陽菜を別れる際も、もしかしたら陽菜が止めてくれるかもしれないと思っていた。もう自分じゃどうしようもないから、誰かに止めてもらうしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言えよ、南ことり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 “本物のヒーロー”が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「紛れもない本音を。穂乃果は言ったぞ。どれだけ我が儘でも、お前と離れたくないと言ってみせた。俺も穂乃果も諦めかけたけど、最後の最後には諦めずに立ち上がった。だったら次はことりの番だ。最後の最後で、お前はどうしたい」

 

 

 意外にも、“それ”はすんなりと出てきた。

 

 

「……私の方こそ、ごめん。私、自分の気持ち……分かってたのに……!穂乃果ちゃんや海未ちゃんやたっくんやみんなと、離れたくなかったのに……自分の気持ちにずっと嘘ついてた……」

 

 声が震える。

 穂乃果の目にもうっすらと涙が浮かんでいたが、ことりの目にも涙は溢れてきた。

 

 

 

 

 

 

「一緒にいたい……離れたくなんかない……またみんなと隣同士で笑い合いたい……あの場所に……μ'sに帰りたいよ……!!」

 

 

 

 それだけ聞けば、もはや十分だった。

 あとは、陽菜に言われた通り、後悔をさせないようにするだけ。

 

 

 

 

 

「俺達は、お前の夢を壊そうとしてる」

 

「夢はまた目指す事はできるもん……でもみんなと一緒にスクールアイドルができるのは“今”だけだから」

 

「後悔はしないか」

 

「ここで留学してみんなと会えない方が後悔するよ……」

 

「……そっか」

 

「ねえ、たっくん」

 

「何だ?」

 

「たっくんは……私に行ってほしくなかった?それとも、行った方がよかったって思ってる……?」

 

「……あー、」

 

「むー……、穂乃果ちゃんも私も本音言ったよ……?」

 

「たくちゃんだけズルいぞー!!」

 

「何でいきなり結託してんだよお前らは!感動シリアス場面だっただろうが!」

 

「「……、」」

 

 

 

 

 

 

 何だか話がおかしな方向に行っている気がしてならないが、このままでは2人共ここから動きそうにもない。

 拓哉は指で軽く頬を掻きながら、明らかに照れているのを誤魔化しながら、それでも言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……絶対に行かせたくなかった」

 

「「……、」」

 

 

 暫しの沈黙が3人のあいだで流れた。

 やがて。

 

 

「「おお~……!」」

 

「感心すんな!俺だって照れる時くらいあるわ!というか普段照れまくってるわ!!ったく……今はこういうギャグテイストな時間送ってる場合じゃないってのに……」

 

 

 頭を乱暴に掻き毟りながら悶える拓哉に、未だにくっついている穂乃果とことりは、涙で目を赤くしていながらも笑い合いながら言った。

 

 

 

 

「「でも、これが私達『らしい』でしょ?」」

 

 

「……、」

 

 

 してやったりな顔で言う穂乃果とことり。それに変に悩んでる自分がバカバカしく感じた拓哉は溜め息を吐きながらも、最後には笑みを零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だな」

 

「「えへへ~」」

 

 

 

 

 ようやく笑顔が戻った。

 いつもの『幼馴染』のやり取りだった。もう心配はいらない。

 

 

 一息つきたいところだが、本題を思い出しターミナルに設置されている時計を見る。

 時間はあまりないが、まだ間に合わないわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校に戻るぞ2人共。訳は車の中で話す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、()()の問題だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?

予告詐欺はこの作品ではいつもの事!!
作戦については次回にします。

さてさて、いよいよ一期も終わりですね。
落ち着いたら『悲劇と喜劇の物語』の方も更新を始めようと思っています。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!(感想が主に作者の活力になります)




次回、最終回(一期の)
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