ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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どうも、最近スーパームーンとか世間は言ってますけど、今日雨降ってます。


では、どうぞ。





85.勝負

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……、」

 

 

 

 

 

 

 

 一室の部屋から夜空を見上げている少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 高坂穂乃果。

 

 

 μ'sのリーダーでありながら、ラブライブに出なくてもいいと言った少女である。

 他のメンバーはその真意にまだ気付いてはいない。何せ、これはμ'sの問題というよりは、高坂穂乃果個人による問題の方が大きいからだ。

 

 

(たくちゃんはどうなんだろ……)

 

 

 星がそんなに見えない空を見ながら思案する。

 出なくてもいいんじゃないかと言ったあと、メンバーはみんな戸惑っていたが、岡崎拓哉だけはすぐにいつも通りに戻っていたのを穂乃果は見ていた。

 

 穂乃果が遊びに行こうと言った時だってそうだ。みんなが慌てている中、あの少年だけは否定も困惑もすることなく穂乃果の案に同意を示した。それのおかげで穂乃果の案も採用されたようなものでもある。

 

 であれば、拓哉は穂乃果の真意に気付いている……?

 

 

(でももしそうだとしたら、何でたくちゃんは何も言わなかったのかな……?」

 

 もし拓哉が穂乃果の真意に気付いているとして、何故すぐにその場で言わなかったのかが疑問に残る。あくまで穂乃果の憶測に過ぎないが、もしそうだとしたら、拓哉には何か考えがあるのだろうか。

 

 それとも、本当にただ遊びたいがために穂乃果の案に賛同しただけなのか。いくら考えても答えは出てこない。憶測から確信に至るまでの判断材料がなさすぎる。

 

 

「はぁ……」

 

 無意識に溜め息が零れた。

 夜空を見ていると自分がこの世界でどれだけちっぽけな存在なのか思い知らされる。

 

 世界が抱えている問題や悩みに比べれば、高坂穂乃果自身の悩みなんてたかが知れていると言われているような気がして。確かにその通りではあるが、その人にはその人なりの悩みの重さが違うのだ。

 

 誰かにとっての小さな悩みが、誰かにとっての大きな悩みなのと同じように。当たり前のように悩んでいる穂乃果の悩みも、誰かからすれば小さいものかもしれない。それでも、穂乃果自身はその悩みを重たく考えている。

 

 

 

 そう思ってしまうほどの事が以前起きたから。

 

 

 

 拓哉の考えている答えが見つからないように、穂乃果も自分の悩みの答えを見付けられないでいた。

 だから今日はあえて気分転換と都合の良いように言いながらメンバーを遊びに誘った。

 

 

 また溜め息が出そうになった時。

 引き戸の方からトントンとノックの音がした。

 

 

「お姉ちゃん」

 

「雪穂?」

 

 妹の雪穂が返事もせずに部屋へと入ってきた。

 いつもそれが日常なので特に怒るなどという事はしない。

 

 

「見たよ~!またラブライブやるんだって?」

 

「……う、うん」

 

「もちろんエントリーするんでしょ?」

 

「……あー」

 

 そこでさすが妹、姉の態度の異変にすぐに気付いた。

 いつもならすぐに即答で出ると言い出しそうな姉がしどろもどろになっているから当然の事ではある。

 

 

「……出ないの!?」

 

「あー!やめてよ雪穂までー!!」

 

 そのまま穂乃果はベッドの上でジタバタと小暴れしている。

 までと言ったのをみると、メンバーの人達にもやはり言われたんだなとすぐに確信する雪穂。色々と言いたい事はあるが、とりあえずこの高校生に見えない動きをしている姉に言葉を選びながら声をかける。

 

 

「出なよ~。だって、亜里沙も凄い楽しみにしてたよ?」

 

「……、」

 

 一応我が儘を体と動きで表現している子供のような真似は止めてくれた。

 そして、ようやく話を聞くように入ったと感じた雪穂は、1番の核心につくであろう言葉を口に出す。

 

 

「それにさ……今度のラブライブの開催日、知ってる?」

 

「ううん」

 

「来年の3月」

 

 チクリと、心の奥底にあった『何か』が穂乃果の動きを余計に硬直させた。

 

 

「上手くいけば、私と亜里沙は4月から音ノ木坂の新入生。でも、私達が入学するって事は……」

 

「……っ」

 

「もう分かるでしょ」

 

 もう何も言う必要はなかった。

 言葉が断片的でも、雪穂が何を言いたかったのか十分に理解できてしまった。

 

 雪穂が出て行ったあとも、その引き戸の方をずっと見ていた。正しくは引き戸ではなく、もはや虚空を見ているというのが正確か。

 先程自分の心の奥底にあった『何か』の正体が何なのか考える。

 

 

 いや、既に分かっていた。

 分かっていて尚、『それ』を考えたくはなかったのかもしれない。

 

『それ』が来るのは当たり前の事で、どうしたって回避する事なんてできないのだから。ならば、極力『それ』を考える事自体を放棄、抑えるしかない。

 当たり前とは、時に非情でもあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、生徒会長としてファイルや資料を運んでいる途中だった。

 

 

 

 

 

 

「何でさっそくこき使われてんの俺」

 

「たくちゃんが近くにいたからで~す」

 

「何気に重いんだぞこのファイル共!それをいきなり両手の上に乗せられたわたくしめの気持ちがあなたに分かりますかっ!!」

 

「だから私も少ないなりに持ってるじゃん!それとも何?私が全部持とうか?」

 

「ふざけんな。女の子にこんな無駄に重い物を持たせておくわけにはいかねえっつの」

 

 分かってて言ってるあたり、穂乃果も小悪魔というか、こんなところでも拓哉のお人好しは絶好調である。文句は言いつつも何だかんだ手伝ってくれる拓哉に微笑みながらもちゃんと内心で感謝しておく穂乃果。

 

 

「……、」

 

 正直、こうでもしないと個人的に空気を重く感じてしまうと穂乃果は思っていた。

 昨日拓哉に感じた疑問や、『あの事』について考えてしまいそうだったから。

 

 結局拓哉に昨日の事を確認できないでいた。

 聞いてしまえばすぐに分かるかもしれないが、何だかそれをするのに本能的に口が拒否していたのだ。

 

 

「ん?どうした?思い詰めた顔して」

 

「わひゃあ!?」

 

 急に拓哉の顔が目の前に現れた。

 思ったより顔が近すぎて素直に驚いてしまう。

 

 

「さすがにそこまで驚かれると窓から飛び降りたくなるぞ」

 

「ご、ごめん!いきなりたくちゃんの顔が出てきたからびっくりしちゃって……。ていうかそれは大袈裟すぎっ!」

 

 驚いて落としそうになるファイルや資料を何とかバランスを取りつつ安定した位置に戻す。

 

 

「一応こっちは何回か名前呼んだんだぞ。生徒会長として何か考えてるのかは知らないけど、ちゃんと前見て歩けよ。下ばっか向いてたら色々と前が見えなぶぎゃあッ!?」

 

「たくちゃん……」

 

 盛大に拓哉が躓いて転んだ。

 豪快にファイル資料を床にぶち撒ける様を見て思わず穂乃果も苦笑いすらする事を忘れる。

 

 

「……ま、まあ、何だ、その……あれだな。たまには下を見て歩くのも悪くないしな。そうじゃないといつ躓いて転ぶか分からないし。前を見つつ注意しながら下を見る事を忘れるな。今の俺が悪い見本だから、あ、今転んだのはワザとだから」

 

「ならまず起き上がろうよ。それと早く拾いなよ」

 

 うつ伏せに転んだまま話す拓哉に厳しく指摘する穂乃果。きっと今の拓哉は顔が真っ赤に違いない。床と衝撃的なキスをしたままの拓哉は周りが見えない状態で両手を使って周りを漁る。落ちている資料などを片っ端からそれだけで回収するつもりらしい。

 はっきり言ってダサい。

 

 

 

「へー、またラブライブあるんだね!」

 

 ふと、そんな声が前方から聞こえた。

 未だにわちゃわちゃと手と何故か足までゲジゲジのように動かしている気色悪い人間を放置してその声の方へと歩いていく。

 

 

「楽しみだね~!」

 

 友人と楽しそうに話しながら去っていく生徒を横目に貼られているポスターを見る。

 そこには『第二回ラブライブ!開催』と書かれていた。

 

 

「……、」

 

 何を思っているのか。それは高坂穂乃果にしか分からない。というか顔が見えないと拓哉は思いながら倒れたまま穂乃果の背中を見る。

 先程の声は拓哉にも聞こえていた。

 

 つまりラブライブのポスターでも見ているのだろう。

 しかし、そこから穂乃果は動かない。ずっと見つめたまま制止している。

 

 

 するとそこへ介入者が現れた。

 

 

 

 

「穂乃果!」

 

「にこちゃん?」

 

 今の現状にもっとも不満を抱いている少女が、険しい表情をしながら穂乃果に詰め寄ってきた。

 

 

「どうしたの?」

 

「……勝負よ」

 

「……え?」

 

 いきなりの宣戦布告だった。

 詳細は放課後にとだけ言って立ち去ろうとしたにこだったが、視界の隅に何やら視線を感じて見やる。

 

 

 

 

 

「何してんの、アンタ……?」

 

「……ちょっと()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 その少年は、にこを見るなり何故かニヤリと不敵な笑みを作りながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 場所は変わって神田明神の階段下。

 

 

 

 そこに2人の少女が指定のジャージ姿で立っていた。

 その1人のにこが階段上を指差しながら口を開く。

 

 

「いい?これから2人でこの石段をダッシュで競争よ!」

 

「何で競争……?」

 

 もう1人のジャージ姿をしている穂乃果が流されたまま疑問を独り言のように口にしていた。

 

 

「穂乃果ちゃんをやる気にさせたいみたいだけど……」

 

「強引ですね……」

 

 一方、上では他のメンバーと手伝いの拓哉が下の様子を窺っていた。

 ことりと海未を始め、絵里達も何だか不安そうな顔をしているが、拓哉だけがいつもと変わらない調子で、

 

 

「むしろこの現状を見てみればにこの判断は正解だよ」

 

「え?」

 

 誰かからの声なのか判断もせずに、それに答える形で拓哉は続ける。

 

 

「いつまでたってもうやむや状態な現状を打破するには、ゆっくりと時間をかけて紐解いていくよりもにこのように1発勝負で切り抜ける方が手っ取り早いって事だ。にこの手段が少し強引だとしても、にこはちゃんと()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その結果がこの競争。

 にこと穂乃果。どちらかが勝てば全てが決まる。とてもシンプルで分かりやすい方法だからこそ、懸ける想いの強さが溢れ出ている。

 

 

「俺はあくまで中立的な存在だから、中間地点でも行ってるよ」

 

「中立……?」

 

 海未の疑問に答える事もせず、拓哉は階段の中間地点まで移動し始める。

 そこまで行けば下の2人の会話もより鮮明に聞こえた。

 

 

「また今度にしようよ。今日からダンスレッスンだよ~?」

 

「ラブライブよ!私は出たいの!!だからここで勝負よ!!私が勝ったらラブライブに出る!穂乃果が勝ったら出ない!」

 

 勝つか負けるかの勝負。

 それによってもたらされる結果は大きい。

 

 穂乃果自身、それは分かっていた。

 あのにこが、ラブライブに出たいと強く思っているにこが、負けたら出ないというリスクの大きい賭けにまで出ているのだ。2分の1の確率の勝負。必ずどちらかが勝って、どちらかが負ける。

 

 シンプル故に、その代償はとても大きかった。

 だから。

 

 

 

「……分かった」

 

「……、」

 

 少し上の方から見ている拓哉は穂乃果の顔を見て誰にも分からないように口角を上げた。

 

 

(無意識的ににこに影響でもされたか。ようやく『何か』と()()()()()()()()()())

 

 

 

 

 

 そこからは暫しの沈黙のまま、2人は位置に着く。

 ふと穂乃果は上を見上げると。階段の中間地点に拓哉がいるのを確認した。

 

 

(たくちゃん、何であそこに……いや、今は集中しないと)

 

「いい。行くわよ。よーー」

 

 にこの言葉でさらに集中力を高める。

 自然と足の力を込めて、その時を待つ、

 

 

「ーーいドン!!」

 

「……うぇ!?ッ!!」

 

 暇なんてなかった。

 にこのもはや清々しいと思えるほどのインチキが穂乃果を襲う。

 

 

「にこちゃんズルいー!!」

 

「ふん!!悔しかったら追い抜いてごらんなさい!!」

 

「……ッ!!」

 

 言われて、余計に足に力が入るのを感じた。

 今からでも間に合わないわけじゃない。抜こうと思えば追い抜く事ができるかもしれない。

 

 走っている最中、昨日の雪穂の言葉が頭に蘇ってきた。

 

 

 

『今度のラブライブの開催日、知ってる?』

 

 

 

『私達が入学するって事は……もう、分かるでしょ?』

 

 

 視線の先に、にこの背中、そしてそのもっと先に、こちらを心配そうな目で見ている絵里と希がいた。

 その誰もが、3年生……。

 

 追い抜いてしまえば勝てる。自分の意見を押し通せる。押し通せてしまえる。

 しかし、勝ってしまえば、1つのあり得たかもしれない可能性が、潰される。

 

 

 その時だった。

 

 

 

「はっはっはっ……!はっあッ……ぁ!?」

 

 にこの足が階段に躓いた。

 もうブレーキはきかない。そのまま重力に引きずり落とされる。転ける。石段で転けてしまえばおそらくケガは逃れられない。反射的ににこは目を瞑った。

 

 

 

 だが、衝撃はいつまでたっても来なかった。

 代わりに、誰かに受け止められたような感触がにこを包んだ。

 

 

「ったく、運よく俺がいたとこで躓いて良かったな。ちゃんと前を見るのはいいけど、たまには注意しながら下も見ねえと危ないぞ」

 

 穂乃果からすればどこかで聞いた事のあるような言葉だった。

 にこが倒れる寸前、拓哉がにこへと駆け寄り上手く転ぶのを阻止してくれたのだ。

 

 慌てて穂乃果もにこの元へと駆け寄る。

 

 

「にこちゃんっ、大丈夫?」

 

「へ、平気……。拓哉が受け止めてくれたから……」

 

「手伝いとしちゃ大事なメンバーにケガされるのは絶対嫌なんでね」

 

 上にいるメンバーも何とかなったのを見てホッとしている。

 少し落ち着いたところで穂乃果はにこに少し咎めるように、

 

 

「もぉ~ズルするからだよ~……」

 

「……うるさいわね。ズルでも何でもいいのよ!ラブライブに出られれば……!」

 

「にこちゃん……」

 

 にこの気持ちは分かる。そんなの、穂乃果でなくとも他のメンバーや拓哉でさえ当たり前のように分かっている。

 この少女のラブライブに対する思いや情熱を。だから、どんな手段を使ってでもいい。この勝負に勝ちさえすれば出られるのだから。

 

 

 その結果がこれだ。

 拓哉がいたからいいものの、いなければ危うくケガをするところですらあった。

 

 

「それだけにこはラブライブに出たかったんだよな。1人じゃなく、この9人で」

 

「ッ……」

 

 拓哉の言葉に穂乃果の体が僅かにピクリと動く。

 穂乃果以外のメンバーはやる気になっていた。だが、リーダーの穂乃果のたった1人の反対意見のせいで、9人での参加は遮られたようなものだからだ。

 

 

「……今なら、今度なら、μ'sの9人で良いとこまでいけると思ってたのよ。優勝じゃなくてもいい、せめて良い思い出になるようにしたかったの……」

 

 言葉の重さが違う。

 素直にそう感じた。

 

 1年や2年が言うのとはまったく別と言っていいほどの重さがあった。

 

 

 

「まさか勝つか負けるかの勝負でこんな結末になるとはな……あ、雨か……」

 

 こんな時に雨が降ってきた。

 まるで、お互い頭を冷やせと言われているかのような勢いで。

 

 

「ちょうどいい。勝負は中断だ。これ以上は雨で地面も濡れるし危険だからな。ひとまず雨宿りできる場所に避難するぞ」

 

 2人とも、俯いたまま小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 代償の大きかった勝つか負けるかの勝負は、まさかの第三の結末によって幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?


何気に岡崎が転んだ時の言葉が伏線になってたりしてます。
次回で2期の1話は終わりになるかと。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!


では、新たに高評価を入れてくださった


実況夢見る少年幽魔さん


大変ありがとうございました!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!



スーパームーンよりポケモンサンムーンが気になっている今日この頃。
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