後に三分一原の戦いと呼ばれる、越後の命運を分けた大戦は、我ら長尾方の勝利に終わった。越後国衆の過半を敵に回したこの戦で、勝敗を決した最大の要因は柿崎景家の寝返りである。
父・為景から課せられた最後の試練――柿崎調略。
結果から言えば、どうにか成功した。もっとも、その過程は俺の想像していたものとは大きく違っていたが。
柿崎景家は実直そのものの男だった。俺が寝返りを打診すると、彼は開口一番こう言ったのである。
――寝返ってほしくば、今ここで立ち合いを所望する。そして、そこもと自身が拙者を倒してみせよ。
意味が分からなかった。調略とは言葉で行うものではなかったのか。
結局、その場で立ち合う羽目になり、激闘の末に辛うじて勝利した。滅茶苦茶強かった。もし景家がより経験を積んだ武者であったのなら、俺に勝ち目は無かっただろう。
ともかく、俺は景家に勝利し、景家は約束を違えなかった。三分一原の戦場で柿崎は長尾方に加わり、その槍をもって勝利に大きく貢献してくれたのである。
実に戦国武士の鑑のような男であった。この合戦以来、景家は何かと俺を慕ってくれる。得難い忠臣であるゆえ、この縁は末永く保ちたいものである。
さらに三分一原の戦いから数か月後、反長尾勢力の盟主であった上条定憲が病没する。これを契機として反長尾方は急速に勢いを失い、やがて長尾方との和睦が成立した。
こうして長きにわたった越後の内乱は、ようやく終息へ向かう。
そして宣言通り、父は隠居した。
調略を成し遂げ、戦を勝ち抜き、和睦の調停まで果たした俺の姿を見て、ようやく後を任せられると思ったのだろう。大きな混乱もなく家督継承は終わり、俺は長尾家の当主となった。
同時に、越後守護代として国政を担う立場となる。
父とは違う道を歩もう。それが家督を継いだ時の率直な感想だった。
為景は偉大な人物である。だが同時に、あまりにも苛烈だった。権威を振るい、敵対者を容赦なく打ち倒し、時には主君として奉ずる守護すら凌ぐ勢いで国政を主導した。
それゆえに多くの敵を作った。内乱がこれほど長引いた理由の一つでもある。ならば息子である俺は、同じ轍を踏む訳にはいかない。
俺は国衆との融和を重視する。そこで俺は本来の主君である越後守護・上杉定実の権威回復に力を注いだ。
これが思いのほか功を奏した。この時代、人々はまだ正統を重んじる。武力だけで従う者もいるが、正しい主君だから従うという者もまた少なくない。
加えて三分一原での武功によって、俺自身への評価も高まっていた。おかげで越後統治は比較的順調に進んだ。
ただし、一つだけ大きな問題があった。
上杉定実に跡継ぎがいないのである。これは洒落にならない問題だった。
せっかく越後平定の目途が立ち始めたというのに、由緒ある越後上杉家が断絶すれば、再び国中が騒然となるのは目に見えている。
なにしろ越後の国衆たちは、長尾家の家臣ではない。彼らが仕えているのはあくまで越後守護上杉家である。さらに言えば、彼らが最も重視しているのは自ら治める所領の安堵だ。
では、もし守護家が断絶すればどうなるか。
長尾家が掲げてきた大義名分もまた失われる。守護を補佐して国を治める守護代。その建前が消え去れば、国衆をまとめることは格段に難しくなるだろう。
つまりこれは上杉家だけの問題ではない。長尾家の存立そのものに関わる問題だった。
それに俺の正室は上杉定実の娘でもある。義父の宿願を叶えてあげたいと思うのは、当然のことだろう。
したがって 俺は後継者探しに奔走することになった。そこで浮上したのが、陸奥の雄――伊達稙宗の子を養子として迎える案である。
名は時宗丸。
稙宗の母は上杉定実と縁のある家の出であり、血筋に不足はない。家格も申し分なく、越後守護上杉家の後継としては申し分ない人選だった。
もちろん、候補は時宗丸だけではない。
関東の山内上杉家や扇谷上杉家から養子を迎える案も取り沙汰された。だが、それは殆ど机上の空論だった。山内上杉家は北条との争いの真っただ中にあり、一族の男子を遠く越後へ送り出す余裕などない。
では扇谷上杉家はどうかといえば、こちらはさらに厳しい。往年の威勢は見る影もなく、家そのものが消えかねない有様だった。
結局のところ、守護上杉家の名跡を継がせるに足る人物は限られていたのである。
そう考えれば、時宗丸の入嗣はほとんど唯一の正解だった。少なくとも、この時までは。
方針が固まって、胸を撫で下ろした直後で問題が起きた。しかも当然のように。悲しいかな、それが越後という国だった。
時宗丸の母は、越後北部に勢力を張る揚北衆の有力国人、中条藤資の妹だった。つまり時宗丸が越後上杉家を継げば、中条氏は守護家との血縁を得ることになる。
そうなれば何が起きるか。
中条氏の発言力が飛躍的に増すのだ。当然、他の揚北衆は面白くない。本庄氏、色部氏、鮎川氏らはこぞって時宗丸の入嗣に反対した。その上、反対派は中条城に攻め入るまでの事態に陥った。
もう勘弁してほしい。ようやく内乱が終わったと思ったら、今度は後継者問題である。
しかも話はそこで終わらなかった。
何を思ったのか、中条氏は越後守護の上杉家でも、守護代たる長尾家でもなく、陸奥の伊達氏へ救援を求めたらしい。
気持ちは分からなくもない。長尾家の力を借りれば、ただでさえ強力な長尾家の影響力がさらに強まってしまう。それを警戒したのだろう。
そもそも長尾家に対抗しようと、中条氏は時宗丸の入嗣に積極的なのだ。それで長尾に借りを作っては元も子もない。だが、だからといって陸奥の大名を引き込むのはどうなのか。
越後の問題に他国の勢力が介入すれば、騒動はさらに大きくなる。最悪の場合、越後そのものが戦場になりかねない。まったく、面倒な話だった。
「どうするよ」
そう言ったのは父・為景である。隠居した今は政務から身を引き、悠々自適な暮らしを送っていた。正直、少し羨ましい。
だが最近、父はどことなく覇気を失っているように見えた。
何と言えばいいのだろうか。不思議な話だが、今世の俺には人の生命力のようなものが見える。それはまるで紙に走り書きしたラクガキのような、斑な線だ。
健康な者であれば、その線は淡く細い。意識して目を凝らさなければ見落としてしまうほどである。だが、死に瀕した者や寿命の尽きかけた老人となると話は別だ。線は濃く、太くなり、その存在を否応なく主張する。
隠居してからというもの父の線は、日に日に太くなっていた。会うたびに、少しずつ。まるで命の終わりが近づいていることを知らせるかのように。
これで心配するなという方が無理な話だった。
だが父は、自分の身を案じられることを嫌う。俺は胸の内の不安を押し込み、いつも通りの調子で父の問いに答えた。
「どうするも何も、時宗丸殿を
「お前の息子、猿千代じゃダメか」
父は冗談交じりに告げる。
上杉定実の娘を正室に迎えている以上、俺の子にも上杉家を継ぐ資格はある。だがそれは難しかった。まず、俺の息子はただ一人。長尾家の嫡男として育てている最中であり、軽々しく手放せる存在ではない。
加えて、仮に長尾の者が定実公の養子となり守護家を継げば、越後上杉家は名目こそ存続しても、実態は長尾家の支配下に置かれたも同然となる。
国衆たちが、それを素直に受け入れるとは思えなかった。守護代である長尾家が守護家まで呑み込もうとしていると受け取られれば、余計な火種を生むだけだろう。
「御戯れを」
「では本庄らはどうする」
「黙らせます」
俺は即答した。
「幸い、この件は既に朝廷へ奏聞しております。綸旨も頂戴しました」
「ほう」
「ついでに錦の御旗も新調しておきました」
「仕事が早いな」
「父上の背中を見て育ちましたので」
「ははっ。嬉しいことを言うてくれる」
為景は愉快そうに笑った。実際、父のやり方は見習うべき点が多い。
自らの行動を正当化するため、権威を徹底的に利用する。単純かつ強力な手法だった。
一度は主君を自刃へ追い込み、関東管領すら打ち破った人物でありながら、父は幕府と朝廷から越後守護代として認められた。
それは父が権威を軽んじなかったからだ。この時代、人は力だけでは従わない。正統な名分があってこそ、多くの者が動く。
武力は人を屈服させ、権威は人を納得させる。そしてこの時代において権威とは、金と人脈、そして地位さえあれば手に入るものでもあった。
であれば、使わない理由がない。そうした権謀術数については、幼い頃から父に嫌というほど叩き込まれている。少なくとも、その教育はしっかり俺の糧になっていた。
「だが道一、いいのか?」
「何がでしょう」
「黙らせるというのは武力をもってか?」
「必要とあらば」
「それは、お前が掲げる『国衆との融和』と相反するのではないか?」
「……うっ」
痛いところを突かれた。
父の言う通りだった。このやり方は、俺自身が目指す道とは相容れない。力でねじ伏せれば禍根は残る。国衆との信頼など築けるはずもない。だが――
「……ですが、ここで御館様の後継が決まらなければ、越後はさらに混乱します」
「続けよ」
「加えて、こちらに打つ手がないならともかく、伊達に越後へ介入する名目を与えるのは得策ではありません」
「うむ」
「理想を語るだけで国は治まりません。まずは火種を消すべきかと」
為景は口元をわずかに歪めた。
「及第点だ」
「と、申しますと?」
「伊達陸奥守は婚姻を駆使し、奥州の勢力図を塗り替えた男だ。下手に出れば、いずれ越後にまで手を伸ばしかねん。そのことを忘れるな」
「肝に銘じます」
やはり父は視野が広い。俺が目先の問題に気を取られている間にも、その先にある脅威の本質まで見据えている。まだまだ学ぶべきことは多い。
ともあれ、父からお墨付きを得られた。少なくとも、今回の判断は大きく外してはいなかったようだ。
そういう訳で俺は伊達氏へ書状を送り、本庄らの反発については越後にて対処するゆえ、時宗丸殿の件は案ずるに及ばぬと伝えた。また中条氏に対しては、御館様自ら同様の内容を認めた書状を送っていただいたうえで、
『越後守護上杉家でも守護代長尾家でもなく、なぜ陸奥守護伊達家へ助けを求めたのか』
と、厳しく問い質していただいた。これで矛を収めてくれれば御の字だ。なおも騒ぎ立てるようなら、その時は御館様の名のもとに鎮めればよい。
本庄ら越後秩父氏を祖とする揚北衆に対しても、御館様には自ら書状にて説得に当たっていただいた。後継を定めねば越後上杉家は断絶し、その混乱は誰の利益にもならぬ――そう諭していただいたのである。
こちらも聞き分けてくれればそれに越したことはない。しかし、それでも反発するというのなら、もはや話し合いだけでは済まない。御館様の号令のもと、力ずくで従わせるしかないだろう。おお、乱世乱世。
そうして伊達氏の跳梁を食い止め、書状を送り、時には武力をちらつかせながら揚北衆同士の争いを鎮めた。その結果、時宗丸を迎え入れる準備はようやく整ったのである。
だが、ここでまたしても新たな問題が持ち上がった。伊達稙宗の嫡男・伊達晴宗が、実父である稙宗を幽閉したのだ。どうやら土豪らの領地割譲問題に加え、今回の時宗丸入嗣の件でも父子の意見は鋭く対立していたらしい。
しかし、事はそれだけでは終わらなかった。稙宗はほどなく救出されると、自ら奥州諸侯を糾合し、晴宗討伐の兵を挙げる構えを見せたのである。かくして陸奥に大規模な内乱が勃発した。
後に「天文の乱」と呼ばれる争いである。
こうなれば伊達氏にとって、時宗丸を越後守護上杉家へ入嗣させるどころではない。まずは自家の存亡を賭けた戦に挑まねばならなくなったのだ。さもありなん。
「どうしてこうなる」
思わず頭を抱えた。
ひどい話である。ここまで何もかもが思い通りに運ばないと、もはや天運に見放されているのではないかと疑いたくなる。
時宗丸入嗣の話が立ち消えとなったことで、御館様はすっかり気落ちし、ついには出家してしまわれた。そして、悪い出来事というものは往々にして重なる。
父・長尾為景の訃報が届いたのだ。
それは、あまりにも突然の別れだった。
★
天文十年十二月二十四日――長尾為景、死去。
「……ラストクリスマスでも歌ってやろうか」
葬儀を滞りなく終えたからだろうか。そんな軽口が口をついて出た。だが、気分は少しも晴れない。
そもそも旧暦なのだから、現代の暦とは十日や二十日ほどずれている。おまけに失恋の歌だ。父への手向けになるはずもない。
「……いかんな」
どうやら思っている以上に動揺しているらしい。それだけ父の背中が偉大だったということか。まだ問題が山積みだというのに、これではいけない。
「兄上」
背後から声が掛かった。振り返ると、そこには一人の立派な若武者が立っていた。白皙の肌に整った顔立ち。凛とした立ち姿は、遠目には美しい姫君と見紛うほどである。
虎千代――いや、先頃元服を済ませ、諱を景虎と改めた我が妹だった。だから見紛うほど、ではない。事実女なのだから。
「ああ。平三か」
「……その呼び方はあまり好ましくありません。特に兄上には呼んでほしくありませぬ」
「だからといって、おいそれと諱を口にするわけにもいかないだろう」
「では虎千代とお呼びください」
「それは幼名だろうが」
思わず突っ込むと、妹は小さく笑った。それはかつてのような、狂気じみた笑いではない。穏やかで、深い落ち着きを感じさせる微笑みだった。
林泉寺で六年にわたり修行を積んだ成果だろうか。その歳月は決して無駄ではなかったらしい。
世の道理も知らず、木刀を振り回していた頃の面影はまだ残っているものの、人としては見違えるほど成長していた。天室光育和尚には感謝してもし足りない。
兄として、これほど誇らしいことはない。今の彼女の姿を見れば、父上もきっと目を丸くされたことだろう。
「で、何の用だ」
「はい。兄上にお願いがあって参りました」
「言ってみろ」
「お手合わせ願いたいのです」
「……俺の感動を返してくれ」
褒めた矢先にこれである。ほらそこ、小首をかしげない。父の葬儀が終わった直後だぞ。何で甲冑姿なのかと思ったら、そういう算段だったか。
「お前が六つを数える頃には、もう大して実力差はなかっただろうが。今のお前に勝てるとは到底思えん」
「いいえ。兄上は力を隠してございます」
「何を言っている。俺は――」
「眼です」
平三は迷いなく言った。
「兄上の眼は、尋常ならざる力を携えてはございませんか?」
息を呑んだ。
「……何を根拠にそのような」
「勘にございますれば」
あっさりとした返答だった。
以前、この力のことを父や家臣たちに話したことがある。だが誰一人として本気にはしなかった。子供の空想か、せいぜい冗談の類と思われた程度だ。
人の命を可視化するこの眼は、決して気分の良いものではない。死にゆく者の命の残滓を見せつけられ、生ある者にも終わりの影が付き纏う。その不快さも、不安も、誰かと分かち合えるものではなかった。
だからだろうか。何の証拠もなく、この妹だけが当たり前のように見抜いてくれたことが、少しだけ嬉しかった。
「兄上?」
「……いや、何でもない。それで、何の話だったか」
「その力を存分に用いて、この虎千代とお立ち合いいただきたいのです」
「いやいや」
確かに俺の眼は少々異質かもしれない。だが、直接的な戦闘能力などないに等しい。強いて言えば、相手の弱点が見えることと、線をなぞればたちまち体力を奪えるくらいだ。
だが、その程度である。
そもそも本気で相手を殺すつもりなら、刀や槍で斬り伏せれば済む話だ。線の有無など関係ない。少なくとも俺自身は、戦闘においてこの力を有用だと思ったことはなかった。
「この力は戦の役に立たんぞ」
「そうやもしれませぬ」
「実の妹に向けるような代物でもない」
「承知しておりまする」
「ならば、なぜそのような無茶を言う」
平三は一歩前へ出た。その瞳には迷いも躊躇いもない。
「兄上の全てを、私にぶつけていただきたいのです」
「分からない。どういうことだ」
思わず眉をひそめる。だが平三は至って真面目だった。
「――以前、兄上は仰いました。立派な武者となったなら、その時は兄上をお助けせよと」
妹は背筋を伸ばし、真っ直ぐに俺を見据える。
「なれば、今こそご覧ください。この虎千代が、立派な武士となれたかどうかを。私には、戦うことでしかそれをお示しすることができませぬ」
「……」
いや、助けになってほしい云々の話は、そういう意味で言ったわけじゃない。どちらかといえば精神論というか、人として成長してほしいという話だったはずだ。
そもそもそういう体育会系のノリは、柿崎あたりが好みそうなものである。あるいは揚北衆の豪族たちか。あいつら無駄に強いから。
俺はどちらかといえば、後方で采配を振るう方が性に合っている。武勇を競うより、机に向かって書状を書いている方が落ち着く人間だ。
だが、そこまで真っ直ぐな目で見られては、無下に断るわけにもいかなかった。
林泉寺へ送り出したあの日から六年。妹が何を学び、どれほど成長したのか。兄として、それを見届ける義務くらいはあるだろう。
「……いいだろう。生憎、木刀の持ち合わせがない。真剣で構わんな」
俺はゆっくりと立ち上がった。平三の口元が、嬉しそうに緩む。
「望むところにございます」
その返答には、一片の迷いもなかった。
勝敗だって? そんなもの、俺が一方的に叩きのめされたに決まっているだろう。
眼の異能など何の役にも立たなかった。人の弱点が見えようが、命の線が見えようが関係ない。何かする前に、先手を取られる。
することなすこと全部見切られてぼこぼこにされる。多少食い下がれたのは不幸中の幸いか。
でもやはりちょっと容赦が無さすぎである。切り傷がたくさんできてしまった。あれだけ立派になったと感心したばかりだというのに、まったく兄への敬意というものがまるで感じられなかった。
いやまぁ、立派に育ってくれたのは心強いけどね。これは本当の気持ち。
読まなくていい雑設定
・長尾晴景
第三話終了時点で三十一歳前後。
義父の願いを叶えることができず、父が朽ちていく様をただ見ていることしかできなかったため、かなり精神的に参っている。
加えて、揚北衆の反乱もなかなか収まらず、「融和などと、我ながら甘いことを言っているなぁ」と自嘲気味。それでも越後統一は父の悲願であるため、何とかして成し遂げたいと考えている。
一方で、大熊朝秀、上田長尾家、柿崎景家など、越後の実力者たちは着々と晴景のもとに集いつつある。
最近の悩みは、息子の体調があまりよくないこと。
・長尾為景
享年56歳。息子に夢を託して、他界する。
・柿崎景家
マジで強い。第三話冒頭時点では二十二歳の若武者で、晴景とは四歳差。
三分一原前の時点における戦闘能力は、辛うじて晴景が上回っている。ただし、あと数年もすれば普通に逆転される見込み。
史実の越後においては、おそらく謙信に次ぐ武勇の持ち主。本作では生まれて初めて晴景に土をつけられたことで、晴景を深く敬愛するようになる。
・上杉定実
為景、晴景の主君にして越後守護。
人生の大半を為景の傀儡として過ごしてきた人物。子宝にも恵まれず、ようやく養子を迎えられると思った矢先、その希望すら潰えてしまう。結果、すっかり疲れ切って出家することになる。
晴景との仲は決して悪くない。むしろ定実自身、晴景のことは人として好ましく感じている。
それでも、為景によってもたらされたやりようのない諦観と無念だけは、どうにかして晴らしたいと思っている。
・長尾景虎
虎千代から諱を改めた。仮名は平三。ちなみに晴景の仮名は弥六郎。
林泉寺で道徳を学び、多少は人ならざる側面を隠す術を身につけた。原作と同様、本作でも毘沙門天を篤く信仰しているが、その度合いはやや控えめ。その分、兄への崇拝が増している。
兄である晴景が、自分と同じくこの世界における異物であることを直感的に理解している。だからこそ、そんな兄に認められたい、頼られたいという気持ちが強い。
何より、自分の内にある有り余る人外じみた力も、兄ならば正しく使いこなしてくれると信じている。
感想、評価、心からお待ちしております。