少女は生きるために殺しを続けた。その先にあるモノは──。   作:燈夜4649

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輝きを失ったもの

「おかえり。疲れたでしょう、リリアーナ」

 

 施設の白い小さな門をくぐると、私を待っていたのは赤毛のスカーレットだった。

 

「ええ。今戻ったわ、スカーレット」

「今回の任務はどうだった?」

 

 スカーレットの窺うような視線。

 その目は、私の顔を真っすぐに見据えていた。

 

「どうって……いつもと同じ。なにも変わらない」

「迷いはないんだ」

 

 スカーレットが変な事を聞く。

 

「当り前じゃない。祖国の敵をグサリと一撃。それで終わり」

「そう」

「ええ」

 

 いつもと同じ。

 祖国と王家と民衆の敵を討つ。

 迷いなどあるはずがない。

 スカーレットは一体、なんのことを言っているのだろう。

 

「そうなんだ。ねえリリアーナ?」

「なに? スカーレット」

 

 スカーレットは一呼吸おいて、遠い目をした。

 

「私ね、殺すのが嫌になっちゃった」

 

 スカーレットの目はなにも映してはいない。

 

「え?」

 

 私が聞くと、スカーレットは両手を前に突き出しつつ、ひらひらと手を振った。

 

「ううん、忘れて。なんでもないわ」

「……スカーレット?」

 

 急いで取り繕うスカーレットに、私は首を捻るばかりだったのである。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 朝からオスカードが騒がしい。

 部屋に押し掛けたオスカードは、私を見つけるなり荒れに荒れた。

 

「スカーレットを見たか、リリアーナ!?」

「知りません」

「隠すとためにならんぞ!」

 

 オスカードの膝が上がる。

 そしてそれはそのまま振り下ろされて、私の腹に靴先がめり込んだ。

 

「くはっ!?」

 

 私は苦悶の声を上げ、体をくの字に折って床に倒れては転げまわる。

 

「リリアーナ! スカーレットはどこだ!」

「知り……ません」

 

 かかとが思い切り腹に振り下ろされた。

 

「がっ!?」

 

 私は咳き込む。

 咳き込むが、息もできない。

 

「この役立たずが!」

 

 オスカードは捨て台詞一つ残し、立ち去った。

 唾液に鉄錆の味が混じる。

 それにしてもスカーレット。一体なにが?

 

 

 

 ◇

 

 

 

「お姉ちゃん……」

「スカーレットは施設を抜け出したの」

 

 ぐずる妹を私はあやす。

 

「施設を?」

「うん」

 

 スカーレットは施設を出て行ったらしい。

 皆の噂では『探さないでください』との書置きが見つかったそうだ。

 

「どうして?」

「わからない」

 

 理由は不明だ。

 私にも、及びもつかない。

 

「どこに行ったの?」

「わからない」

 

 わからない。

 スカーレットはここを出て、いったいどこに消えたのだろう。

 

「今どうしてるの?」

「わからない」

 

 まして、なにをしているのかなんて……想像の範疇を超えている。

 

「わからないばかりじゃ、なにもわからないよ。お姉ちゃんずるい!」

「ごめん。ごめんね、ディアーナ」

 

 ああ、妹が涙を浮かべて泣き出した。

 

「ずるい、ずるいよ!」

「ごめん。ごめんなさい」

 

 弱々しい拳が私の腹を殴る。

 私はただ、意味も分からぬまま、それに耐え続けていた。

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