踏み台オリ主より、さらに下に置かれた存在による物語。
暗い暗い牢獄の中。
全て奪われた私は、ただただ死ぬまでの緩い道のりを浪費する。
待つのは、あとは死のみ。
もう奪われるものもなければ、手に入れるものも何もない。
今頃、私から全てを奪ったアイツはどうしているだろうか。
何も気にせず、ましてや奪ったつもりもなく、王道な主人公ライフを送っているに違いない。
私を転生させた神も、思惑通りに事が進んで、きっと鼻高々にアイツのことを見守っていることだろう。
所詮私は踏み台にもなれない入れ物、キャリアでしかなかったわけだ。
確かに私の望みは叶えられた。
最悪の形で、最低限だけは遵守される程度に。
恨み言もあれば、妬みもある。
けれど、なってしまったものは仕方がない。
今やただの薄汚れた小娘に過ぎない私など、どうなってしまおうが誰も気にしないし、気にも留めない。
命を奪われ、選択肢を奪われ、再び生を受けたと思えば肉親を奪われ、未来を奪われ、純潔も人権すらも奪われ、必死に生きていればと命令に従っていれば希望を奪われ、頼みの綱には裏切られる。
何度も死のうと思ったが、死ねなかった。
そういう約束だったのだから、そういう“身体”になっているのだから、死にたくても無理だった。
これで、転生し立ての頃は、色々と満喫してやるぞ、と躍起になっていたのが懐かしい。
ふふ、あの頃は本当に馬鹿だった。
すぐにそんなことも言ってられないような地獄の日々へと堕ちてしまったが。
魔力を封じられ、牢獄に捕らわれ、突き付けられた罰は、俗に言う終身刑。
望みはこういう形で叶えられているわけか、本当にアイツのこと以外は心底どうでもいいようだ。
本当に馬鹿らしくて、惨めで、涙すら出ないよ。
私は転生者である。
何の理由かもわからないが、私は死んだらしく、真っ白な世界で言い表せないほどの美人な女神に転生することを告げられた。
私はただただ普通に生きていただけなのに、特に何か持病があったりだとか紛争地域にいたりだとか、そんなことは何もなかったにも関わらず、気が付いたら死んでいた。
一時期流行った神様転生のテンプレらしい。
女神がそう語っていた。
尊大な態度で女神が言うには、ちょうどいいタイミングでちょうどいい魂が輪廻に戻ろうとしていたから拾ったらしい。
この“ちょうどいい”っていうのが、どんな意味だったのか知るのはもっと後になってのことだが。
さらに女神曰く、他の神と転生させた存在同士を競わせているからその内の一人になれ、とのこと。
どうやら女神以外にも神はいるらしく、また神にとって人間とはその程度の存在でしかないようだ。
神ごとに送れる転生者は二人まで、とのことで私以外にも一人先に転生させた、と女神は言った。
転生特典を三つ付けてやる、と言われたが、はてさてサブカルに疎い人生を歩んできた私にとっては、その原作とやらもどんな世界か知らず、女神に散々溜息と共に苦言を訂されながら、その特典とやらを選んだ。
私が頼んだことは、以下の三つ。
寿命で死ぬまでは如何なることがあろうと五体満足で死なない。
その世界水準的に見ても優れた魔法の力。
私のサポート役になる存在。
これだけあれば、満足に生きられるだろうと、今思えば“高を括っていた”。
こうして私は、特典を与えられて『リリカルなのは』なる世界に飛び込んだのであった。
「飯の時間だ」
看守から牢獄の中へと突き出された昼食を受け取る。
私は知っている。
この昼食、本来ならもう一時間早く出されるはずだったものだと言うことを。
そして、本来ならばアツアツとまでは行かなくても、ある程度は温かいものであったことも。
だけど、私の元に来る食べ物は一度たりとも温かいものはなかった。
見てわかる通り、私は看守たちから嫌われている。
というよりも、管理局の人間から犯罪者という存在であること以上に嫌われている。
ま、彼らの象徴に傷を付け、多少とは言え汚したんだ。
これも巡りが悪かった。仕方がない。
改めて私が生を受けたのは、何でもないごく普通の一般家庭の次女としてだった。
転生する前に生きていた現代と比べると、少し過去に当たるような生活水準と文化レベルであったが、元々都会に住んでいたわけでもない私にとってはそこまで問題となることはなかった。
父も母も優しいし、姉と弟と過ごす日々も楽しいもの。
前世の家族には申し訳なく思うこともあったが、良い家族だった。
しかし、そんな平穏な日々も長くは続かなかった。
どんな場所にも悪いことを考える奴らはいて、得てしてそういった奴らは何でもない無碍な民を食い物にする。
私の家族がその毒牙にかかってしまった。
襲われる集落、殺される男と老人、そして捕まって慰みものへとされていく女、遊び道具にされる子供。
その頃はまだ幼かったこともあって、慰みものにはならなかったが、目の前で父は殺され、母と姉は犯され狂わされ、弟は魔法の的にされて死んだ。
私は魔法の才能があったゆえか、他の者達とは違う扱いを受け、その組織で使われるために、魔法を使う道具とするために生き残らされた。
魔法の使い方を血反吐を吐いても叩き込まれ、戦い方を――人の殺し方を全てを刷り切るほどに身体に教え込まれた。
何度も死ぬような目に遭ったが、特典のおかげか四肢は欠けることなく、生き長らえた。
クソみたいな日々だった。
とてもなじゃいが、生きていると呼べるものではなかった。
私の済んでいた集落を襲ったのは、次元犯罪組織と呼ぶいくつかの世界を股にかけた組織らしく、様々な世界で犯罪を犯している海賊みたいなところで、私の集落は食料目当てで襲われたようだ。
私たち、そこに生きていたものへの処遇は“ついで”でしかない。
胸糞悪く、とても彼らに加担するつもりはなかったが、体内に爆弾を仕込まれ、さらに洗脳のような魔法をかけられては、もうどうしようもない。
生きるためには彼らの言いなりに力を振るい、指示されただけのことをする機械になるしかなかった。
そうやって、彼らの組織の中で魔法が使える暗殺者として動き始めた頃には、なぜ転生させられたのかなんて完全に忘れてしまっていた。
それどころではなかったのだから。
組織の命で古代文明の発掘をしているスクライア一族とやらの採掘場を襲った時に、古代ベルカ文明の遺産『融合騎』であるネイトと出会った。
彼女はどうやら特典のサポート役にあたる存在らしく、彼女自体も私を待っていたと言う。
まあ、何となく胡散臭さも感じてはいたが、背に腹は代えられぬ状況であったのも確かであるし、神とは言っても他人の手によって、出会いが仕組まれていれば、そう感じ取ってしまっても仕方がないこと。
当時の私は、そう結論付けた。
その後、彼女の存在によって私の仕事での危険度は下がり、効率も著しく上昇した。
当初は組織から差し出すよう言われていたが、ネイト自身が頑なに固辞したことと私が出した結果により、私は組織からも彼女と共にあることを認められた。
しかし、当時の私にとっても一つ疑問だったことがある。
私の魔力光とネイトの魔力光の違いだ。
私の魔力光はくすんだ銀、彼女の魔力光は黄金。
私のために用意されたのなら、もっと適合率の高い融合騎を使わしてくれてもよかったのに。
もちろんこの疑問は、しばらくして解消されることとなる。
裏切りと絶望と共に。
そう、それから五年余りの時が経過し、それこそ完全に転生者が他にもいるということを失念していたところで、私は、同じ女神によって転生させられたアイツ――――上代勇護と出会った。
「けっ、根っからの犯罪者さまは大変だねぇ。それも管理局の大英雄たる陸と海、両方のエースに楯突くだなんてよ」
渡された食事を食べていると、格子の向こう側から話しかけられた。
そう珍しいことでもない。
看守というのはなかなかにストレスが溜まるらしく、何も言い返さない私に対して看守はよく愚痴や暴言を吐いていく。
まあ、たまに外の情勢についての愚痴もあるので、特にやることもない私は食べながら、それに耳を傾ける。
喋らないのは、単純な話、現在声帯を完全に潰されて喋ることができないまま、投獄されているからだ。
こんな私でも管理局の後ろ暗いことは山ほど知っている。
ゆえに殺せないが、物理的に口封じというわけだ。
組織に埋め込まれた爆弾も物理的なものではなく、魔法による仕込みであるので特に外されていない。
情報流出を恐れた組織によって、かなりの数の言葉が禁止Wordに設定されているので、まともに喋れてもほとんど喋れないのも同然であるのだが。
「しかも、仲間の融合騎にまで裏切られるとか、お前、どんだけ人望がねえんだよ。よっぽどじゃねえか」
そう言ってくれるな。
ネイトにとっては、ある意味当然のことであったんだ。
裏切りは必然――いや、むしろネイトにとっても私は仲間でも何でもなかったんだろう。
レリック、大きな力を持つロストロギアであり、私にはそのレリックの回収が命じられていた。
組織にとってはどうでもいい代物であるのだが、協力関係にあった次元犯罪者ジェイル・スカリエッティの要請によるものだ。
私はスカリエッティの部下であるナンバーズたちと共に、レリックを死守しようとする管理局の部隊『機動六課』と幾度とぶつかった。
その中で、私と最後に相対をしたのが上代勇護だ。
上代勇護という男は、どうやら原作が始まる前からこの物語に干渉を始めていたらしく、名前から推測するに主人公であるエース・オブ・エース『高町なのは』とは古くからの付き合いのある幼馴染み関係。
次元世界でも名高いプレシア・テスタロッサ事件や闇の書事件でも、彼女らとともに解決に貢献し、犯罪者の検挙率も非常に高いという、時空管理局地上本部のエース様。
華々しいエピソードを聞いていると、その戦った相手の情報からどうやらかなりの数の転生者を倒しているようだ。
機動六課の面々はなかなかに強かったが、メインとなるのは十代の子供、そう手間取るものではなかったが、上代勇護だけは別物だった。
他の追随を許さない魔力量と戦闘技能・センス、そして圧倒的な存在感と力を持つロストロギア指定されてもおかしくない黄金の剣。
善戦したが、そこで私とユニゾンしていたネイトが突如ユニゾンを解除。
私は、上代勇護の魔法を直撃をもらい、加えてネイトは上代勇護とユニゾンし、一気に窮地に陥った。
そして、そこから語られる真実。
ネイトは確かに私のサポートとして送られたが、実際はこうやって上代勇護の元へと渡っていく想定であったこと。
私は元々そのために転生させられたこと。
そのために死なないように特典が与えられ、今までの人生を歩まさせられていたこと。
ショックは大きかったが、そこからも私は闘い続け、高町なのは、八神はやて、八神ヴィータのそれぞれにダメージを与えたものの、ネイトのユニゾンによって底上げされた上代勇護の黄金の剣による一撃によって私は撃墜され、結果として捕縛された。
その時の一撃は、目に焼き付いて離れないほどに輝かしい、ネイトの魔力光と同じ黄金の魔力で構成されたものだった。
投獄された私を待ち受けていたのは、これまで組織の元で行ってきたことの精算。
トップが死んだというのに、私は裁判を受けさせられ、その際に多くの罪が挙げられた。
まあ、そのほとんどが真実であるのだから、私は受け止めざるを得ない。
喋れないので、反論も何一つできなかったし。
与えられた刑の名前は終身刑、私の長い投獄生活が始まった。
牢獄の中での生活一日目に、あの女神が夢の中に現れた。
意訳すると、お気に入りの上代勇護のために四つ目の特典を運んでくれてありがとう。寿命で死ぬっていう約束は守ってあげるから、あとは物語の片隅でひっそりと野垂れ死になさい。
こんなところだろうか。
私と言う存在は、そんな程度のものでしかなかったらしい。
何のために生きてきたのか、まるでわからない。
投獄されてから何か月かは、そんな感情の中で無気力に過ごした。
時期は覚えていないが、そんな時に上代勇護が面会にやってきた。
「あんたも転生者なんだろ?」
今更などうでもいい言葉と共に。
質問には答えられないと首を振ってやると、上代勇護はカバンの中から何かを取り出した。
「喉が潰れてて喋れないのはわかってる。だから、指でなぞったら文字が書けるようにタブレットを持ってきた。俺の質問に答えてほしい」
何とも馬鹿らしい発言だ。
そこから私は嫌々ながらも従うことにして、幾つか上代勇護と言葉を交わした。
と言っても、大したことは伝えていない。
向こうが一方的に上から目線で喋り続けるものだから、最低限どうでもいいことにだけ返事をしてやっただけだ。
訂正者ということはネイトから伝わっていたようなので肯定してやったが、私に関することはそれだけしか答えていない。
こんな状況になって、何か伝えたところで意味なんてあるものか。
ナンバーズたちとは違い、私は保護観察処分になどなっていないのだし。
「こう言っちゃなんだが、お前、俺の仲間にならないか? もちろん俺の部下っていう形にはなるけどよ」
そんなことまでも口走る。
コイツは、たぶん馬鹿だ。正真正銘、真性の。
司法取引として、私がいた組織の話をすれば、情状酌量の余地ありとして終身刑は一時的に解除。
その後、上代勇護の元で、管理局や上代勇護たちの命令に絶対服従で過ごし、良いことをしていれば刑は軽くなる、と上代勇護は語る。
だが、その上代勇護のめは如実に語っている。
これまで組織で私を使おうとしていた連中と同じ目だ。
それにどこか卑下た感情も感じる。
周囲は綺麗どころばかりだろうに、本当に馬鹿馬鹿しい。
確かに私は成長した結果、あの女神に影響でもされたのか、そこそこ美しい部類の女性となった。
そうなってしまった弊害もかなりこの身で受けてきた。
とても綺麗とは言えない身体になってしまったが、それでもまあ……魅力的に見えないことも、ない、んだろうか。よくわからないが。
「ああ、そうかよ。じゃあ、お前はそうやって牢屋の中にいるんだな。意識が変わったら、看守に伝えろ。そしたら俺がもらいにきてやるよ」
結果として、私はこの話を断った。
私はお前のために生かされてきたんだ。
一回くらい私の手でお前に不快感を与えたい。
そんな細やかな反抗であった。
でも、効果は覿面だったらしく、上代勇護は不機嫌に言い放って帰っていった。
だがな、上代勇護、そんな時は来ないよ。
何せ、私は寿命で死ぬまで生きると言っても、寿命自体が縮まってしまえば、寿命で死んでしまうのだから。
あんな犯罪組織で暗殺者として扱われていた私が、まともな扱いをされていて、普通の身体であるわけがないのだから。
それからさらに半年、私の体調は急変した。
幼少期からの度重なる魔法と身体の酷使と、何度も行われた薬漬けによるものだ。
あれだけのことをして、あれだけのことをされてきたら、幾ら見た目は良くても、いつ崩壊してもおかしくない砂の城でしかない。
まあ、悲しむ人なんていないし、元から死んだ身であった。
私という存在は組織によって家族を奪われた瞬間に死んだようなものだ。
今更死に直したところで何になる。
希望はなく、絶望にその身を浸し、悪意の中で戦いに暮れ、結果としては他人から多くのものwお奪いながら、多くのものを奪われ、そして死に直す。
組織によって奪われなかったとしても、もとより私は上代勇護にネイトを届けるためだけに転生させられた存在。
どうせ、まともな人生は用意されていなかっただろうさ。
馬鹿馬鹿しい限りだが、無意味な人生であった。
ここまで来ると確かに上代勇護の元に下るというのも手だったのかもしれないな。
結果は何一つ変わりはしなかっただろうが。
あぁ、妬ましい。
羨ましいよ、他の転生者たちが。
でも、だからと言って、何かするわけでもない。
何かがしたいわけでもない。
ただ……また、次があるのなら、今度こそはまともに生きて、死にたい、なぁ……。
そんなわけで、ただ思い付きを書き殴って投稿。
執筆時間2時間くらい。
一応神様転生もののアンチテーゼ的なものになる、のかなぁ?
救いが何一つなかったので、気分を悪くした人がいるかもしれません。
それにつちえは謝罪しておきます。
が、本当に山もなく、谷もなく、オチもなく、意味もなく、ただ一つのテーマに絞るとこうなってしまったんです。
許してください。
テーマとしては、よく神様転生ものである
・特典は〇個まで
・他の神も転生させている
・転生者同士が争う
っていう要素の中で、もしも神側が自分が転生者が生き残るように画策するとどうなるのか、というものになります。
転生させられた側の扱いとしては、踏み台よりも尚悪いもの。
主人公の名前が登場しないのは仕様です。
名前を出す意味もないので、設定すらしていません。
ただ、容姿設定としては、黒髪ロングにぼんきゅっぼんのお姉さんです。
容姿レベルは、本人自覚なしだけども、かなりの美人でした、と。
年齢はstrikers時点で23歳くらい。
魔力光はくすんだ銀色、近接から遠距離砲撃まで何でもござれのオールラウンダー。
わりと管理局側からすると司法取引してでも配下にしておきたい程度の性能。
実は、知らない内にそこそこ転生者を殺している。
口癖は「仕方がない」「馬鹿馬鹿しい」
転生特典は
・寿命で死ぬまでは五体満足でいられる運命
・次元世界でも上位に入る魔法の力(チートまでは行かない)
・サポート役としての融合騎()
こんな感じの主人公でした。
上代勇護くんの方が設定が濃いくらいで、両親が魔導士で、これでもかというくらいに魔導士の才能を受け継ぐ。
レアスキルこそないものの、特典以外で元々魔力操作については次元世界随一。
なのはの幼馴染みで、テンプレ的に「良い子にしないといけない」時期を共に過ごす。
その後、アニメ一期、二期と経て、メインメンバーと関わり合う。
その途中で、何度も他の神による転生者と戦い、勝利を収めている。
ちょっとスケベなイケメン。
なのはたちには押し隠しているが、そこそこゲスい。
特典は
・原作に深く関われる運命
・SSSとか目じゃないほどの魔力
・約束された勝利の剣
融合騎ネイトとの相性は魔力光が同じこともあって、相性は抜群。
実は主人公に対して、邪な気持ちもあったものの、一目惚れに近いことになっていた。
この物語の後も「なのは」シリーズに関わり続け、女性陣にそこそこ好意を抱かれながら、転生者と戦い続ける。
登場した女神様としては他の神様に負けたくなしい、上代勇護くんも気に入ったので生き残らせたい、っていう感じで。
作中全く出てないけど、融合騎ネイトの名前の元ネタは金星の架空の衛星から。
それを遣わせた存在というわけで、女神はイシュタルになります。
この話は本当に続かない。