史上最悪の『念能力者』だって、ヒーローになりたい! 作:焼き豚さんいらっしゃい
どもです
1000円握りしめて、汗だくになってラーメン食ったり。本誌マジおもろいので、オススメです。
『健全なる精神は、健全なる肉体に宿る』
(古代ローマの詩人 デキムス・ユニウス・ユウェナリスの一節より)
古代ローマにおいて、人は神に対して「健全なる身体へ、健全なる精神が与えられるよう」祈りを捧げていた。信仰心の薄れた現代においても、その精神的支柱は未だ残されており、肉体と精神の結びつきに“密接な関わりがあること”を疑う者など居ないだろう。
さて、ここで一つ疑問を投げかけよう。
もし仮に『
相反する精神と肉体は、そのまま共存しうるのか?
それとも、邪悪な肉体によって精神までもが引っ張られてしまうのか?
はたまた、その2つが混じり合い
精神によって肉体が支配されるのか、肉体によって精神が支配されるのか…………その真相はまさに『神のみぞ知り得る』のだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
個性発現から1ヶ月後…………
みなさん、こんにちはっ!!そろそろ『念』の扱い方にも慣れてきた、
え?たった一ヶ月で『念』に慣れるもクソもあるかって?チッチッチッ……念の基礎となる四大行はもちろん、応用技に関しても
えっと…………やっぱり理解から習得までのスピードが尋常じゃなさ過ぎるんですが……。
とはいえ、
個性『オーラ操作』。文字通り、
当初は念の覚醒を促し、知覚する以外には何の効果も持たない能力だと思っていた。しかしながら
例えて言うなら、自転車における補助輪・エレキギターにおけるアンプのような役割だ。
拙い部分を補い、優れた部分をより秀でたものへと昇華させる起爆剤。あくまでサポートに過ぎないが、痒いところに手が届く
この能力が存在するからこそ、あれだけの成長速度で念をマスター出来たのだと……私は確信している。
じゃなきゃ自分の才能が天元突破してたってことで…………うん、そんな訳ないよね。ハンターハンター原作には未登場のモブなんやし。ゴンキル並みか、それすらも凌駕しうるの才能の持ち主だなんて……ありえる訳ない。
あとは何気に
ところで…………“念”の習得って個人の性格に影響を与えたりするんですかね?
最近ちょっと、
個性発現や念の習得に起因する性格の変質か、幼子の無邪気な残酷さが顔を覗かせたのか――――以前の私には、こういった一面など存在しなかったハズだ。
ま、まぁこの話はまた今度しようか!うんっ!…………さて、私の個性について話を戻すとしよう。
実を言うと、この個性には
直接、自分の手で触れている相手に限定されるが――――相手のオーラを吸収したり、オーラの流れを乱すような芸当が可能だった。もちろん、やろうと思えば自身のオーラを他者に分け与えることだって出来るハズだ。
とはいえ、こっちの能力はそれほど強力ではなく…………一瞬で相手の全オーラを吸い尽くしたり、昏倒させることは不可能。あくまでも触れている間にちょっとだけオーラを頂いたり、相手のコンディションを僅かに崩すことが出来る程度。仮に戦闘において使用した場合、少しだけ有利を取れるだろうという塩梅。
一応、庭にいた小動物や実家で働いている使用人相手に試した結果……ほぼ間違いないだろうという確証を得た。
穏やかな正午過ぎ。
すでに日課となっている午前の“念修行”を終えた私は、広々とした実家の芝生の上でごろりと横になる。穏やかな陽射しを全身に浴びながら、私は気持ちよさそうにゆっくりと伸びをしてみた。平和だなぁ……。
なんて呑気になっていると……屋敷で使用人をしている1人の女性が、いそいそとやって来るのが視界の隅に映った。
「
使用人の呼び掛けに応えながら、ゆっくりと上体を起こす。
しょぼしょぼと半開きの寝惚け眼を擦りつつ、適当な返事でも返そうかと思い――――死角から一直線に飛び込んできた物体によって、再び芝生の上へと押し倒された。
「ごふっ!」
一切の勢いを殺さず、自らに突っ込んできた
「おひさしぶりですわーー!!ツェリさん!会いたかったんですわよっ!!」
彼女の名前は、
彼女と知り合ったキッカケ自体は、そう珍しいものでもなかった。互いに大企業の長たる両親を持つ以上、
ただでさえ大人の――それも上流階級の者たちが集う場所において、数少ない同世代の子供同士。2人とも肩身の狭い思いをしていたというのもあり、私たちはすぐに意気投合した。
初めての原作キャラとの交流に、私が一人で舞い上がっていた側面もあったが………。
ともかく、僕と彼女は物心がつき始めるだろう時期から出会っており――今ではすっかり仲良しな幼馴染なのであるっ!
「ツェリさんっ!ツェリさんは本日、一体何をしていらしたの?」
「私?今日はね〜……“ヒーローになるための特訓”が終わったから、お昼寝でもしようかと思ってたよ〜」
「ふふふっ、ツェリさんならきっと立派なヒーローになれますわ!」
「はは、ありがとね……モモは何してたんだい?」
「私は……すぐ近くまで用事で来ていたので、お母様に言って遊びに来ましたのっ!」
興奮気味に胸元へと顔を押し付ける八百万に、私は自然と柔和な笑みを浮かべながら彼女の頭を撫でる。か、かわいい……!なんだこの生き物!やっべ、もう胸がキュンキュンしちゃう……!!
しばらくの間、彼女にされるがまま身を委ねる。
すると、胸に抱きついたままの八百万が、心なしか少し顔を赤くしながら私の匂いを嗅ぎ始めたようにも見えたが…………ま、気にすることでもないか!(楽観)
30分ほど経っただろうか。互いにスキンシップを取ったり、他愛もない雑談を交わしたりしていると、やがて体力に限界が来た八百万がゆっくりと舟を漕ぎ始める。
「モモ、眠いか?」
「ツェリさん……ごめんなさい。少し……横になってもよろしいでしょうか?」
すでに限界までまぶたが重くなっている八百万が、少し睨むような目つきになってコチラを見てくる。そんな可愛いらしい姿に、思わず苦笑しつつも私は膝を貸し出した。
まるで冬眠を控えたリスのように――特に抵抗も無く、膝の上にもぞもぞと寝転がる八百万。ものの数分と経たたない内に、彼女は小さな寝息を立てながら胸を上下に動かし始めた。
そんな彼女の様子に――――私は自分の中で、静かに覚悟を決める。
その覚悟とは…………『
とはいえ、唐突に言われても意味不明だろう。まずはその理由を順を追って説明していきたい。
まず初めに――――念には『制約と誓約』と呼ばれる基本概念が存在する。
というより、もはや
しかしながら、この
念能力者にとっては、いかにギリギリの匙加減が出来るかどうかが“念の性能”そのものを大きく左右するのだ。
だからこそ、この話は私にとっても他人事ではなかった。
個性『オーラ操作』の性能は決して戦闘向きではない。前述した通り、あくまでも“念”による戦闘を補助するためのもの。よって――――この世界で起きる未来を知った上で、ヒーローを目指す私にとって――――『制約と誓約』による念の強化は
まず一つは、現時点の私にとって『記憶の他に代償となり得るものを持たない』からだ。いくら御曹司の生まれとはいえ、たった4歳では無力に等しい。
かといって『念に関する情報』や自我に影響しかねない『重要な記憶』、『寿命』を代償にする訳にもいかず…………
それに引き換え『未来で起こり得る
そんな
そして何より、もう一つの理由。
それは『
実際、私が原作キャラの八百万と遭遇した際には必要以上にテンションが上がり、当初の予定以上に親密な関係になってしまった。それこそ、彼女の未来が歪みかねないほどに。
また(あくまで仮定の話だが)、将来的に“原作キャラとモブキャラの命を天秤に掛けるような必要が生じた場合”――――ほぼ確実に判断を誤るだろうという、負の確信が私にはあった。ゆえに己の中から
膝の上でスヤスヤと寝息を立てる八百万の髪を撫でながら、私は自らに“制約”を課す。
『これより私は、
これで、たった一つの能力だけで
ふと、気がつくと私は自宅の庭で寝転がっていた。膝の上には心地良さそうに眠りにつく八百万がいる。
(そうだ。モモが遊びに来て……それに付き合ってる間に、私も寝ちゃったか……)
しかしながら、胸の奥に小さな棘が刺さったような違和感がある。何かを忘れてしまった――そんな気がする。
だが、何を忘れたのか内容を必死に思い出そうとしても……思考は不自然なくらい澄み渡ったままで、何も頭に浮かばない。
それはまるで、脳内を埋め尽くしていたはずの雑音が消え去ったようで、磨き上げられたガラスのように心地良くも感じられた。
妙に気分が軽い。
しかし、
「……なんだろう」
ぽつりと呟くも、答えなど出ない。
ロリお嬢様を愛でよ