史上最悪の『念能力者』だって、ヒーローになりたい!   作:焼き豚さんいらっしゃい

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ハンター最新416・417話がバリ面白かったので、オススメです!
今回は説明回ですが、どうしても設定として出しておきたくて……



第6話 入試前に調整しよう!

 

 

「おい、ミュハン!お前らも!30分休憩したら身体温め直して……最後にもう一回、スパーリングやるぞ!」

 

 

 雄英高校の入試を一年後に控えた俺は、いつものように自宅のトレーニングルームを使い、私設兵たちを相手にした自主トレを行っていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()、それなりに喰らい着いていけるだろう部下たちが、顔から汗を噴き出しながらダウンしている様子を横目に――俺はゆっくりと筋肉をほぐす為のマッサージを行う。

 

 

「似人様……となり失礼してもいいっすか?」

 

 

 死屍累々といった様子の私設兵たちの中でも、ひと足先に回復したミュハンは――――当然のように俺の隣へと座って、同じようにマッサージを始めた。

 ……こういった回復面においても優れるからこそ、増強型個性というのは世間的にも需要や評価が高いのだろう。

 

 

「そういや、前々から気になってたことがあるんですが…………一つ聞いてもいいですかい?」

 

「なんだ?内容にもよるけどな……もう幼馴染の話は聞くんじゃねぇぞ」

 

「いえ、その話も気になってるんですが……話によると『念能力』ってのは本来、()()()()()()()()()()()力なんですよね?オレらにも扱えるよう、覚えさせないんですか?」

 

「あぁ……なんだその話か。別に基礎を教えるのは構わねぇけど…………お前らを念能力者として一人前に仕立て上げんのは()()()だな。ハッキリ言って、この世界の人間(お前ら)は念に対して“中途半端に()()()()()()()()”んだよ」

 

 

「えっと……どういう意味です?それ??」

 

 

 

 頭の中を疑問符が埋め尽くしているであろうミュハンが小首を傾げる。

 可愛らしい美少女がやればそれなりに絵になるんだろうが、殺人者面のコイツがやってもキモいだけだろ……次に俺の前でやったら給料下げてやる。

 

 

「バカにでも分かるように説明すると……素人が念能力者になるには、大雑把に言って『2つのステップ』を踏む必要がある。ステップ①が『全身の精孔を開いて、身体からオーラを出す』こと。ステップ②が『そのオーラを知覚して、操れるようになる』こと。最低限これが出来れば、念能力者を名乗れるようになる……ここまではオーケー?」

 

「OKです。とすると……オレらにはそのステップ①か②を突破出来ない理由があるんですね?」

 

「その通りだ。正確には『お前らには()()()()()()()()()()()()()()()』。これが答えだ」

 

「なるほど……しかしなぜ、それが“素質がある”と言えるんです?」

 

 

 

 ミュハンが順調に話の流れを理解できていることを把握し、似人は静かに笑みを浮かべる。

 

 コイツはあくまで私設兵の中の“暴力担当”だが……こういった思考面において、決して苦手というわけでもない。似人が要求する最低限のラインには立てている。

 ゆえに、俺は首筋に冷感スプレーを吹きかけながら会話を継続する。

 

 

 

「その前に。前提となる知識を話しとくと……全身の精孔を開く方法は2つある。1つ目が『専門家の元で指導を受けながら、ゆっくりと開く』方法。2つ目が『念による攻撃で無理矢理開ける』方法。聞いてて分かっただろうが……1つ目はノーリスクで時間がかかるパターンで、2つ目はその逆だ。まぁ普通にやってると……1人の念能力者を作り上げるのに約数年かかる感じだな」

 

「ふむ…………ちなみに、似人様は習得までどの程度かかりましたか?」

 

「俺か?ん〜……1日だね」

 

「えぇ……??……それは…………さすがに嘘ですよね?」

 

 

 

 本気でドン引きしている様子のミュハン。

 俺にとっては見飽きたリアクションを――あえて無視しつつ――答えを提示する。

 

 

 

「で、答え合わせをしとくと『この世界の人間は、生まれながらに精孔の一部を開けている』が……その代わり『残りの精孔が固く閉ざされて、新しくは開けない』。これがアンサーだ」

 

「……なるほど。それが“素質はあるが、念能力者にはなれない”の正体ですかい」

 

「あぁ……ノーリスク・努力なしで『丈夫な肉体』と『優れたフィジカル』を赤ちゃんの頃から手に入れてる代わりに……(トップ)にはなれない。精孔に関して言うと、全体の10〜15%くらいが開いてるって感じだな」

 

 

 ミュハンは顎を触りながら、唸るようにして考え込む。

 恐らくは流し込まれた大量の『新しい知識』について、彼なりに内容を吟味しているのだろう。やがて数十秒が経過したのち……ミュハンは大きなため息をついた。

 

 

「はぁ……そういうことですか。さすが前世の知識持ちっすね…………でも、坊ちゃんにしたら良かったんじゃないですか?ある意味、念って力を独占出来る訳ですし」

 

「坊ちゃんって呼ぶんじゃねぇよ……ま、実際は半々てとこだな。力の独占は魅力的だが……他の念能力者ともバトってみたかったし」

 

 

 相変わらずのバトルジャンキー的な思考に、ミュハンは一瞬だけ眉間に皺を寄せる。が、これには彼も同意できる部分があったのか……やがて不適に口角を上げながら悪どい笑みを浮かべる。

 こういった融通(悪だくみ)が効くのも、ミュハンを普段使いしている理由の一端だ。

 

 

「ま、将来的に俺がヒーローになった際……俺の捕まえたヴィランがオーラの垂れ流しで死ぬか、念能力に覚醒しちまったら問題になりそうだしな…………刑務所(タルタロス)なんか念能力者で溢れ返ったんじゃねぇか?……クククッ!傑作かよ!」

 

「…………サラッとおっかねぇこと言わんでくださいよ……冗談ですよね?」

 

 

 流石にここまではノって来ねぇか……まぁいい。

 俺というイレギュラーが、悪人を中心に――――無造作に念能力者を増やしまくった場合、どんな混沌(カオス)が起きるか――――その結果に興味はある。しかし、完全に秩序が崩壊してしまうのは“社会的強者”の地位を保持する()()()()()()()()()都合が悪い。

 

 俺としても、この地位を手放す気はない。少なくとも()()()()()

 ましてや(ヴィラン)として扱われ、警察やヒーローから追われ、大衆(バカども)に後ろ指を刺されながら生きる人生など…………俺のプライドが許さない。

 

 

 そんな“ヒーローの卵らしからぬ”邪悪な思考実験へと没頭していると……背後から漂う甘い香りに、ぎゅっと優しく包み込まれた。

 

 

 

 

「お疲れ様です。休憩時間に入られたとのお話を伺い……参りましてよ?」 

 

 

 薄水色の美しいロングヘアーをなびかせながら、ゾッとするほど美しい声音で――津穢理のすぐ耳元でささやく。静かな知性を感じさせる瞳には、高級感あふれるモノクルが掛かっていた。

 

 彼女の名前は印照(いんてり)才子(さいこ)。15歳。

 津穢理とほぼ同い年であり――――私設兵の中では唯一の()()()()()

 

 

「おい……トレーニングしたばっかで汗臭いだろ?さっさと離れろよ」

 

「スンスン……いいえ?汗臭くありませんよ??むしろ……ふふふっ。ですが、離れろとおっしゃるのなら従いますね」

 

 

 妖艶な笑みを浮かべながら、熱い視線を送ってくる少女。

 彼女が『どれほど優秀か』は、津穢理似人も預かり知るところではあるのだが……いくら過激なスキンシップが()()()()()()()()、流石に居心地が悪い。

 

 

「お前……よく同僚がこんだけ居る中で、雇い主()にくっつけるよな?別に恋人でもねぇのに」

 

「ふふふ……似人様、知っていますか?『遺伝子の相性がいい人からは、良い匂いがする』そうでしてよ?」

 

 

 

 どこか会話の内容がすれ違っているのには気付いたが……指摘したところで面倒くさくなる未来しか見えない。

 

 

 彼女――印照はそもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 印照との出会いは4年前まで遡る。

 U(アンダー)16のチェス大会の決勝戦。その対戦相手として立ち塞がったのが彼女だった。自尊心に満ち溢れた矜持を感じさせる微笑み、自らの勝利を信じて疑わない傲慢さ……実際、それを裏付けるように彼女は、チェスの全国大会において“()()()()”を保持していた。

 

 その結果、世間からの注目度も段違いで高くなる。津穢理と印照――――両者とも名家の出身であり、超が付くほどの『美形』。

 そもそも……(U(アンダー)14があるにも関わらず)10歳の少年と11歳の少女がU(アンダー)16の決勝戦に上がってくること自体が前代未聞だった。

 

 

 

 若き天才少年と天才少女。互いに容姿端麗で、高貴な血筋を持つ――――これにメディアが食い付かない訳がない。

 決勝戦は前代未聞の客入りを見せ――90分という長きにわたる熱戦を制したのは――津穢理似人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「似人様。トレーニングがひと段落着いたのでしたら……ぜひ一局、チェスでもどうですか?今回こそ私の勝ちは揺るがなくてよ?」

 

「お前と始めちまったら30分で終わんねーだろうが。てか、今までの戦績ってどんな感じだったっけ?」

 

「えーと、確か……チェス以外も含めると1580戦729勝851敗…………ふふふっ!『個性』を使っているというのに、私の負け越しだなんて。流石でしてよ?」

 

 

 

 印照才子――――個性『IQ』。紅茶を飲んで目を閉じている間IQが倍増する。紅茶の銘柄によりIQの上がり幅能に差が出る。

 純粋に知性のみを強化するという、現代社会において引っ張りだこな“超希少個性(スーパーレア)”。

 

 しかしながら、彼女の()()はそこではない。素の人間としての実力――彼女は個性を使用しない状態でも「IQ150」を誇っている。

 正真正銘、ナチュラルボーンの天才なのだ。

 

 

「卑下すんなよ。俺以上に頭の回る人間なんてお前くらいだぜ……純粋なIQ比較や情報処理スピードじゃ普通に負けるしな」

 

「えぇ。ですが……盤外戦術や心理戦・逆境耐性、発想力では私が劣ります。ゆえに一対一の勝負では負け越しているんでしょうね」

 

「ハッ、化け物め」

 

「その言葉が似合うのは、アナタの方でしてよ?ふふふっ……まぁ、そんな所も魅力的なのですが……」

 

 

 

 

 怪物同士の語らいに、若干辟易しながらも。ミュハンは歳の離れた――分かりやす過ぎるほど、自分たちの雇い主に重たい感情を向けている――同僚へと生暖かい視線を向ける。

 彼女が加入したことで、私設兵の数は最初期の5人から6人へと増えた。そもそも盾としての役割を期待されたボディーガード集団(それでも最低限の頭は回る)に、明確な指揮官が加入したのは大きい。

 

 しかも、彼女が護衛対象(津穢理)と同年代だったことで――同じ学校に通いながら、学内での護衛を任せられるという利点もあった。

 

 

 

 

 …………もっとも、同じ学校に通う本当の目的が『護衛』とは思えなかったが。まぁいいだろう。

 

 

 

 ちなみに……ウチのご主人様が『何やら大事にしていただろう幼馴染』のことはまだ彼女に話していない。理由はシンプルに怖いから。殴り合いではミュハンが100%勝てるだろうが…………そういう問題ではない。

 「人の恋路には迂闊に関わらないのが一番」。ミュハンは内心でそう結論付けた。

 

 

 また、印照は“津穢理が入学予定”の雄英高校ヒーロー科に既に一年生として通っている。これは彼女が、津穢理より一学年歳上だからであり……あらかじめ学内の危機調査を済ませておく役割も担っている。

 ミュハンとしても、津穢理似人が『試験で不合格になる未来』など全く想像出来ないので……非常に合理的な判断だと感じていた。

 

 

 

「ふっふふふふ……また似人様と同じ学校に通える日々が待ち遠しいです。あまり待たせないでくださいね?」

 

「問題ねぇ。百パー受かる」

 

「はいっ!もちろん、疑ってなどいませんよ?ところで…………推薦枠は使われるので?招待なら確実に来るのでしょう?」

 

「いや、使わねぇ。『推薦入試で通っただけのバカ』なんて思われるくらいなら死んだ方がマシだ。それに……一般受験生(雑魚共)のレベルも観察しておきてぇしな…………っと、そろそろ時間か」

 

 

 

 時計を確認したミュハンは、ため息を吐きながらベンチから重い腰を上げた。周囲を確認すれば他の私設兵たちも――顔に疲労こそ残っているが――まだやる気に満ちている。

 

 

 

 

「よし……休憩終了。お前ら!身体温めたら、続き始めんぞ!」

 

 

 

 

 トレーニングルームに津穢理の号令と私設兵たちの応答が響き渡る。

 

 






印照 才子(いんてり さいこ)
ヒロアカの仮免試験編のアニオリキャラにして、地球上で最も可愛い女性の一人(当社調べ)。CV上田麗奈とかいう最高の声を持つ女。ソ連の爆弾魔を捕まえたい。
主人公勢の一学年上。アニメ本編とは異なり、雄英高校に通っている。


ちなみに……本作は八百万(メイン)&印照(サブ)のダブルお嬢様・ダブルヒロインルートで話が進んでいきます!

次回、幕間を挟んだら入試スタート!



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