史上最悪の『念能力者』だって、ヒーローになりたい!   作:焼き豚さんいらっしゃい

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418話でツェリの能力の新要素が開示されまくったの激アツ&どうしよっかな感
原作ストック溜まってるとはいえ、あと2話でハンター休載に入りそうなの寂しいなぁ……笑



第9話 思惑

 

 

「実技総合成績、出ました!!」

 

 

 巨大なモニターに映し出された映像を眺めながら、照明を落とした会議室へと集結した“雄英高校の教師陣たち”が――どこか浮き足だった様子で活発な議論を交わしている。

 

「救助ポイント0で2位とはなぁ!!」

「1ポイントや2ポイントは標的を捕捉して近寄ってくる。他の受験生が後半になり鈍っていく中、派手な“個性”を使い続け目立って迎撃しきっていた。タフネスの賜物だ」

「対照的に敵ポイント0で8位!」

「アレに立ち向かったのは過去にもいたけど……ぶっ飛ばしたのは久しく見てないね」

「思わず『YEAH!』って言っちゃったからな〜〜」

 

 

 例年以上に将来有望な合格者が多く、教師陣の表情には隠しきれない高揚が滲んでいた。

 ヒーロー科で教鞭を執る者として……この国の平和を背負って立つだろう原石たちが、まもなく我が校の校門をくぐって入学してくる。その事実に、言葉にできないほどの誇らしさと期待が見て取れた。

 

 しかし、そんな教師たちの期待に満ちた視線は――――今やた(・)っ(・)た(・)1(・)人(・)の“ある人物”に向けられ一点に集中している。

 

 

 

「だけど……やっぱり『彼』よねぇ」

「あぁ、凄まじい完成度だ。一芸や派手さにおいて『彼』を上回る生徒ならまだ居るだろうが……あくまで総合力(トータル)で言えば。我が校が創立して以来、最高の逸材だろう」

「筆記試験はほぼ満点!実技試験の得点も歴代で最高クラス!ヤバ過ぎんだろっ!!」

「私は『彼』の精神性を大きく評価したいわ!試験中盤で合格ラインを超える得点を入手してから、彼は他の受験生を“サポート”することに切り替えていた!!ああいった自己犠牲の精神はヒーローとしての素質そのものっ!まさにヒーローになるべくして生まれた『生粋の人格者』よ!!」

「敵ポイント66、救助ポイント66!合計132ポイント!!今年の受験生で唯一の3桁台!」

「2位が合計77ポイントだと考えると……圧倒的だな」

 

 

 教師たちの話題をかっさらい、恐ろしいほどの才能を見せつけた1(・)人(・)の(・)少(・)年(・)。

 ある教師がその言葉に畏敬と興奮を交えて――“彼”の名前を口にする。

 

 

 

 

「津穢理(つえり)……似人(にひと)…………!」

 

 

 

 

 

 現役ヒーローが集まった会議室に、静かな熱気が満ちていく。

 誰もがその“次世代を担う圧倒的な才能”に、知らず知らずのうちに魅せられていた。人間ならば誰しも――――「新時代の到来を自らの眼で見届けたい」と、そう願ってしまうものなのだろう。

 

 

「ていうかYO〜?こんな逸材が、今まで全く目立たず在野に埋もれてたってのか?推薦枠は送らなかったのかぁ??」

「いや……推薦の話自体はあったようだが、本人の希望により一般入試を選んだそうだ。恐らくはフェアネスを重視する性格なんだろう」

「さっき調べてみたんだけど……この子、経(・)歴(・)も異常よ。ありとあらゆる競技や武道大会で優勝レベルの成績を残してる。全国模試の結果でも何度も1位を取ってるわ」

「文武両道……って、レベルじゃねえな。『本物の天才』か」

「苗字が『津穢理』だからま(・)さ(・)か(・)とは思ったが……あの『カキン・ワールド・ホールディングス』CEOの1人息子だそうだ」

「おいおいおい!正真正銘のサラブレッドじゃねえか!とんでもないな……」

 

 

 

 

 あちこちで賞賛や驚愕といった声が飛び交い、会議室がまるで学生の休み時間のような賑やかさに包まれた。

 しかしながら……周囲の皆が目の前の熱狂に浮かされる中、そ(・)の(・)2(・)人(・)だ(・)け(・)は(・)熱の行き着く先を見定めるように静かに佇んでいる。それは決して蚊帳の外に居るわけではなく、そ(・)の(・)話(・)題(・)に(・)興味がないわけでもない。

 

 ただ冷静に『この先で何が起こるのか』を考えている者たち――――根津校長と相澤消太の姿があった。

 

 そんな2人の表情は、まさに対照的と言えるだろう。

 真剣に……ただ純粋に期待と警戒の色を瞳に宿した根津と、己の嫌悪感を隠しもせずにモニターを鋭く睨め付ける相澤。

 

 やがて周囲の喧騒に紛れるように……根津校長が静かに口を開いた。

 

 

 

 

「さて……相澤くんは彼(・)について。津穢理くんについて、何を感じたかな?」

 

「…………才能や実力に関して言えば、申し分ないです。ただ……ヒーローとして意見するなら。彼は絶(・)対(・)に(・)ヒ(・)ー(・)ロ(・)ー(・)に(・)な(・)る(・)べ(・)き(・)で(・)は(・)な(・)い(・)、ヒ(・)ー(・)ロ(・)ー(・)に(・)し(・)て(・)は(・)い(・)け(・)な(・)い(・)人物だと考えます」

 

「……なるほど。なかなか手厳しいね?一応……その根拠を聞いてもいいかな?」

 

 

 周囲の喧騒から離れた場所で、根津は相澤に何かを試すような視線を向ける。

 相澤は一度、ゆっくりと瞳を閉じ…………自分の中で考えを整理しつつ、しばし思考を巡らせる。やがて意を決したように、静かに口を開く。

 

 

「試験の結果だけで言うなら……満点に近いレベルだった。“個性”自体も素晴らしい。増強型でもトップクラスの身体強化を使いこなすだけでなく、『索敵』や『隠密』すらも可能な汎用性には目を見張るものがある。そのうえ頭の回転が早く、適切な状況判断も出来ているとなれば……文句の付け所も殆どない。だが……!何より決定的に……!ヤツの精神面(メンタル)が……最(・)悪(・)過(・)ぎ(・)た(・)!!!」

 

「ふむ……むぅ……ふむふむぅ……」

 

「アイツは一貫して他人を傷付けることに躊躇がない。試験では多くの受験生を助けるように立ち回っていたが……アレは奴が“試(・)験(・)の(・)思(・)惑(・)”に気付いていたからでしょう。少なくとも自主的な救済行為ではない。それどころか、試験内容に『アンチヒーロー行為の禁止』ルールが無ければ……むしろ積極的に他人を蹴落としていたハズだ」

 

「そこまで言うからには……ある程度の根拠があって言ってるんだろうね?」

 

 

 とてもではないが、まだ『ヒーローを目指して間もない10代の少年』に対して向けるべきではない言葉の数々に――今度は根津がその真意を問うように鋭い視線を向ける。一方で……相澤の言葉を真っ向から否定する様子もなく、ただ淡々とその返答を待っていた。

 

 

「些細な違和感なら幾つかありましたが……明確な根拠と言える場面は『2つ』ありました。まずは実技試験の開始直前。受験生たちで溢れかえっていたゲート前で、彼の周辺だけ不(・)自(・)然(・)に(・)人(・)が(・)離(・)れ(・)て(・)いった。監視カメラの映像を確認しても、違反行為は見受けられませんでしたが……彼が他の受験生たちに対して『何か妨害を仕掛けた』のは明白です」

 

「なるほど。もう1つの根拠は?」

 

「0P敵が出現したタイミングです。彼はケ(・)ガ(・)を(・)し(・)た(・)受(・)験(・)生(・)を(・)目(・)視(・)していながら、それに気(・)付(・)か(・)な(・)い(・)フ(・)リ(・)をしていました。俺は個性柄からして……他人の視線には敏感な方です。彼は間違いなく、怪我人の存在に気付いていた」

 

「しかし、怪我人に気付いたからといって……今回の試験において『他人を助けること』は義務ではないよ?」

 

「分かっています。彼の判断が、ある種の合理性に基づいていることも……ただ、俺が問題にしているのは『彼がずっと他(・)人(・)を(・)ポ(・)イ(・)ン(・)ト(・)と(・)し(・)か(・)見(・)て(・)い(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)』です。他人を妨害する時も見捨てる時も、人間なら誰もが感じるような些細な動揺すらなく……無(・)反(・)応(・)で(・)全(・)く(・)躊(・)躇(・)し(・)て(・)な(・)い(・)。はっきり言って異常です」

 

 

 相澤の主張を聞き届けた根津は、わずかな間を置いて一度だけ深くうなずいた。つい先程までの厳しい目付きと、張り詰めた表情をフッと和らげ……一転して柔らかい笑みを浮かべる。

 

 

「相澤くん。君の主張は分かったのさ!もちろん、キミの意見に完全に賛同という訳では無いけど……少なくとも、キミの憂慮は正当なものだ。彼の言動について言えば、私も同じ分析をしていたしね」

 

「……ありがとうございます」

 

「じゃあ最後に……相澤くんは彼を“不合格にするべき”と考えるかな?」

 

「いえ、それこそま(・)さ(・)か(・)です。既存の枠組みで彼を不合格にするのは不可能……それこそ公正に反します。それに何より……あれほどの『怪物』を我々の目の届かない場所に置いておくなど、最悪の事態を招きかねません」

 

「確かに。不安材料を抱えた問題生徒を、正しい道に教え導くのも我々(教師)の役目だからね!ということは……『彼の入学そのもの』はこの場で満場一致の結論として良いかな?」

 

 

 相澤は肯定の意を示す。とはいえ、保(・)険(・)と(・)し(・)て(・)最後に釘を刺しておくことも忘れない。

 

 

「……えぇ。問題ありません。ただ、津穢理(彼)は……」

 

「分かっているよ!入学後は相澤くんのクラスに配属されるよう、こちらで手配しておくのさ!彼のことは頼んだよ」

 

「重ね重ねありがとうございます。では、俺はそろそろ失礼しますね……」

 

 

 言わずともこちらの意図を察してくれた校長に、相澤は深々と頭を下げる。

 問題意識の共有から落とし所まで……校長の懐の深さのおかげで、かなり建設的な話し合いができた。さっそく、これから自分が受け持つ生徒を雄(・)英(・)に(・)迎(・)え(・)入(・)れ(・)る(・)準備を始めようと、校長に背を向けたところで――――後ろから声を掛けられる。

 

 

 

 

「相澤くん!最後にキミに言っておきたいことがあるんだ!」

 

 

 つぶらな瞳をした根津校長と視線が交差する。

 個性を持って生まれたネズミという特殊な生い立ちと、その小柄な体格からは想像出来ないほどに――校長の『言葉』には人の心を動かす、目に見えない不思議な力が込められていた。

 

 

 

「人は誰だって、正義にも悪にもなりうる。特に、この個性社会においては――――悪にならざるを得ない境遇の人間だって大勢いる。だからこそ、私は『ただ悪を嫌悪し、正義を成す』こと以上に『自(・)ら(・)の(・)意(・)志(・)で(・)正(・)義(・)を(・)選(・)び(・)取(・)れ(・)る(・)』人物(資質)にこそ価値があると思うんだ」

 

 

「……………………」

 

 

「そして、彼は自(・)ら(・)の(・)手(・)で(・)この雄英の門戸を叩いたんだ!少なくとも、初めの一歩は踏み出せたんじゃないかと……“私”はそう思っているよ!」

 

 

 

 

 

 

 相澤は無言で会釈を返す。根津校長の言葉に異論があった訳ではない。

 相澤の――己の根底に根ざしている『信念』や『ヒーローとしての直感』が、全力で彼の存在に対して警鐘を鳴らしているのだ。いかに校長の理念に共感出来たとしても、いかに校長が尊敬できる人物だったとしても……それを理由に警戒を緩めることなど出来なかった。

 

 

 

(津穢理(つえり)……似人(にひと)…………!学生を逸脱した能力……!映像越しでも伝わる邪悪な気配に、職業ヒーローとして感じた直感的な嫌悪……!入試で見せたアンチヒーロー的行動の数々……!)

 

(間違いない。ヤツには“悪としての脅威的なポ(・)テ(・)ン(・)シ(・)ャ(・)ル(・)”が存在する。そして本人はそれに無頓着どころか……自制する気配すらない)

 

(俺が今まで見てきたヴィランも……その多くが最初から“大それたこと”をしでかした訳じゃない。必ず悪として成長していく『芽』があった。奴も……このまま行けば、好奇心や気分の赴くままに他者を害する『誰にも止められない怪物』にだってなりうる)

 

 

 廊下を早歩きで進みながら――相澤は決意を新たにする。

 

 

 

(俺はお前がこの雄英の敷居をまたぎ、ヒーロー科に入ってくること自体を否(・)定(・)し(・)な(・)い(・)。だが、もしお前がこ(・)の(・)ま(・)ま(・)変(・)わ(・)れ(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)と(・)し(・)た(・)ら(・)……俺は全身全霊をもって、お前がヒーローになるのを阻止する!!)

 

 

(お前は……絶対にヒーローライセンスを手にしてはいけない人間だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 





相澤先生は、ツェリくんを「生徒」や「子供」としては保護の対象と考えてますが……一方でヒーローとして『不適格な人間性』とも評価しているので、ヒーローになるのを阻止しに来る模様。これが……流行りの“フレネミー”ってコト?!(多分違う)

次回から高校編スタート!



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