シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。 作:のうち
ロリババ 外伝 キャロルと星の遺物
キャロル・マールス・ディーンハイムが現在取り組んでいるのは、ウィッチ・クラフト・マスターヴェール――彼女の義母であり師でもあるヴェールから依頼された、とある遺物の調査だった。
数日前、ウィッチクラフトの工房へ運び込まれた巨大な人工物。
それは地球上の既存技術では製造されたとは到底考えられない代物であり、便宜上、「星遺物」と呼称されていた。
その中でも、今回キャロルが調査しているのは、星遺物の中核と思われる装置。
仮称――星杯。
キャロルは工房の一角に設置された星杯を眺めながら、端末に表示された解析データへ目を通していた。
調査を始めてから数日。
ヴェールからあてがわれた二人の助手、イヴとアウラムもよく働いている。
特にイヴは、この手の解析作業に関してはかなり優秀だった。
「キャロルさん。ちょっと来てもらってもいいですか?」
「どうしたの?」
少し離れた場所から聞こえてきたイヴの声に、キャロルは振り返る。
イヴは端末を片手に、何やら難しい顔をしていた。
「いえ、この仮称星遺物から発せられるエネルギーの波長なんですが……」
「……とりあえず、最初から説明してくれ」
「はい」
イヴは頷き、端末に解析結果を表示する。
「この星遺物なんですが、微弱ながら一定間隔でエネルギーを放出しています」
「それ自体は昨日の時点で確認していたな」
「はい。でも、問題はそのエネルギーの放出パターンです」
イヴが画面を切り替える。
そこに表示されたのは、波形を記録したグラフだった。
「これ、ただのエネルギー放出じゃありません」
「……信号か」
「はい」
キャロルの目が細くなる。
「この星遺物は、一定のパターンで信号を発信しています。そして解析したところ……」
イヴが一度言葉を切った。
「その信号は、宇宙空間に向けて発信されている可能性が高いです」
「…………」
工房の中に、短い沈黙が落ちた。
キャロルは無言のまま星杯へ視線を向ける。
「宇宙に?」
「はい。正確には、特定の方向へ向けているというより、星遺物そのものを中心にして、宇宙空間へ向けて信号を放射しているようです」
「受信を想定した通信……ということか?」
「まだ断定はできません。ただ……」
イヴは別の資料を表示した。
「これを見てください」
そこに表示されたのは、世界各地の地図だった。
赤い点がいくつも表示されている。
「ヴェールさんから預かった資料を調べていたんですが……世界各地で、この星遺物から発せられているものと同じ波長のエネルギー反応が観測されています」
キャロルの表情が変わった。
「……世界中に?」
「はい」
「発生源は?」
「まだ特定できていません。ただ、いずれも地表、あるいは地中から検出されています」
「いつからだ?」
「記録を遡れる範囲では、かなり以前からです。ただし――」
イヴが新たなデータを表示する。
「ここ数年で、反応が少しずつ強くなっています」
キャロルは黙って画面を見つめる。
星杯。
世界各地で観測される同一波長のエネルギー。
そして、宇宙へ向けて発信される謎の信号。
「……なるほど」
キャロルは腕を組む。
「つまり、この星遺物は……」
その時だった。
工房の外から、慌ただしい足音が響いてきた。
「キャロル!」
アウラムだった。
「どうした?」
「それが……!」
息を切らしたアウラムが、工房へ駆け込んでくる。
「外で、とんでもないものが見つかった!」
キャロルは眉をひそめる。
そして――。
星杯から、今までとは異なる波形の光が走った。
まるで何かに応えるように。
キャロルは星杯を見上げる。
「……まさか」
遥か彼方。
誰も知ることのない宇宙の暗闇で。
ひとつの存在が、地球から発せられた信号を受信していた。
そして、それはゆっくりと地球へ向けて進路を変えた。