シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。   作:のうち

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第二話 白い妖精と機械の虫

 

 星杯から発せられる謎の信号が確認された翌日。

 

 ウィッチクラフトの工房では、昨日と変わらず星杯の調査が続いていた。

 

 キャロルは解析結果を眺めながら、腕を組んで唸っている。

 

「……やはり分からん。信号の発信源が星杯そのものなのは間違いないが、何のために発信しているのかがさっぱりだ」

 

「昨日のデータからすると、何かを呼んでいる可能性もありますね」

 

 イヴが端末を操作しながら答える。

 

「宇宙から何かが来る、ということですか?」

 

 アウラムが尋ねた、その時だった。

 

 工房の入口から、小さな声が聞こえてきた。

 

「すみませーん……」

 

「ん?」

 

 三人が同時に振り返る。

 

 そこにいたのは――。

 

 まるでお伽話に出てくる妖精のような、小さな少女だった。

 

 ただし、いわゆるティンカーベルを想像してはいけない。

 

 全身が見事なまでに白一色。

 

 髪も、服も、羽も白い。

 

 例えるなら、「ティンカーベルを作ろうとしたら色塗りをするのが面倒になって、そのまま白一色で完成させたガレージキット」のような姿だった。

 

 少女は宙に浮かびながら、工房の中を見回している。

 

「……可愛らしいお客さんだな」

 

 キャロルが呟く。

 

「えっと……あなたは?」

 

 イヴが恐る恐る尋ねる。

 

「私ですか?」

 

 少女は胸に手を当てた。

 

「私はリースと申します」

 

「リース……?」

 

「はい。そして、あなたたちに伝えなければならないことがあります」

 

 リースの表情から、笑みが消えた。

 

「この星に……機怪蟲――クローラーの群れが迫っています」

 

「クローラー?」

 

 キャロルの眉が動く。

 

「はい」

 

 リースは頷く。

 

「クローラーは、文明を食い尽くす存在です」

 

 彼女の説明によれば、クローラーは宇宙を渡り歩き、一定以上に発展した機械文明を持つ惑星を見つけると、その文明を無差別に破壊する。

 

 機械を食らい、施設を壊し、兵器を奪い、都市を飲み込む。

 

 まるで宇宙規模の害虫。

 

「過度に発展した文明をリセットする。それが、クローラーの役目です」

 

「……随分と迷惑な害虫だな」

 

 キャロルが吐き捨てる。

 

「ですが、クローラーは突然やって来るわけではありません」

 

 リースは星杯を指差した。

 

「まず、彼らは星に目印となるものを送り込みます」

 

「……星遺物」

 

「はい」

 

 イヴの顔が強張る。

 

「星遺物は、その星の文明を調査するための観測装置。そして文明が一定以上の水準に達した時――」

 

「信号を発信する」

 

 キャロルが続けた。

 

「その信号を目印にして、本隊がやって来る……そういうことか」

 

「その通りです」

 

 リースは頷いた。

 

「だから、今のうちに星遺物を破壊しなければなりません」

 

「なら話は簡単だ」

 

 キャロルは星杯へ歩み寄る。

 

「これを壊せばいい」

 

「……それが、そう簡単にはいかないんです」

 

「何?」

 

「星遺物には自己修復能力があります」

 

 リースの説明では、星遺物が複数存在する場合、そのうち一つの信号が途絶えると、残った星遺物が保有するエネルギーリソースを一時的に修復へ回すという。

 

「つまり、一つ壊しても……」

 

「別の星遺物がエネルギーを供給して、復元させます」

 

「厄介だな」

 

 キャロルが舌打ちする。

 

 さらに問題があるという。

 

「星遺物には、それぞれを守護するガーディアンが存在します」

 

「ガーディアン?」

 

「はい。クローラーの中でも特別な個体が、星遺物を守っています」

 

 キャロルは星杯を見る。

 

 そして、ふと疑問を抱いた。

 

「……だが、こいつはここにある」

 

 星杯は現在、ウィッチクラフトの工房に安置されている。

 

 つまり――。

 

「この星杯を守っていたクローラーは、どうした?」

 

 リースが答えるより先に、

 

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

「っ!?」

 

 突然、大地が激しく揺れた。

 

「地震!?」

 

 イヴが机に手をつく。

 

「違う!」

 

 キャロルが叫ぶ。

 

「何かが下から来る!」

 

 次の瞬間――。

 

 ズドォォォォォン!!

 

 工房の屋根が吹き飛んだ。

 

「きゃああああっ!」

 

 瓦礫が降り注ぐ。

 

 そして、煙の向こうから巨大な影が現れた。

 

 それは――。

 

 巨大な機械仕掛けの蟲だった。

 

 無数の関節を持つ脚。

 

 金属質の外殻。

 

 生物とも機械ともつかない異形。

 

 その脚の一本が、工房の床を踏み潰す。

 

 キャロルは顔を上げる。

 

「……なるほど」

 

 口元を歪める。

 

「どうやら、まだ守護者が残っていたらしいな」

 

 巨大な機械蟲が咆哮する。

 

 そして、その視線が――

 

 星杯へと向けられた。




 今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。良ければ感想などとお願いします。
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