シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。 作:のうち
星杯から発せられる謎の信号が確認された翌日。
ウィッチクラフトの工房では、昨日と変わらず星杯の調査が続いていた。
キャロルは解析結果を眺めながら、腕を組んで唸っている。
「……やはり分からん。信号の発信源が星杯そのものなのは間違いないが、何のために発信しているのかがさっぱりだ」
「昨日のデータからすると、何かを呼んでいる可能性もありますね」
イヴが端末を操作しながら答える。
「宇宙から何かが来る、ということですか?」
アウラムが尋ねた、その時だった。
工房の入口から、小さな声が聞こえてきた。
「すみませーん……」
「ん?」
三人が同時に振り返る。
そこにいたのは――。
まるでお伽話に出てくる妖精のような、小さな少女だった。
ただし、いわゆるティンカーベルを想像してはいけない。
全身が見事なまでに白一色。
髪も、服も、羽も白い。
例えるなら、「ティンカーベルを作ろうとしたら色塗りをするのが面倒になって、そのまま白一色で完成させたガレージキット」のような姿だった。
少女は宙に浮かびながら、工房の中を見回している。
「……可愛らしいお客さんだな」
キャロルが呟く。
「えっと……あなたは?」
イヴが恐る恐る尋ねる。
「私ですか?」
少女は胸に手を当てた。
「私はリースと申します」
「リース……?」
「はい。そして、あなたたちに伝えなければならないことがあります」
リースの表情から、笑みが消えた。
「この星に……機怪蟲――クローラーの群れが迫っています」
「クローラー?」
キャロルの眉が動く。
「はい」
リースは頷く。
「クローラーは、文明を食い尽くす存在です」
彼女の説明によれば、クローラーは宇宙を渡り歩き、一定以上に発展した機械文明を持つ惑星を見つけると、その文明を無差別に破壊する。
機械を食らい、施設を壊し、兵器を奪い、都市を飲み込む。
まるで宇宙規模の害虫。
「過度に発展した文明をリセットする。それが、クローラーの役目です」
「……随分と迷惑な害虫だな」
キャロルが吐き捨てる。
「ですが、クローラーは突然やって来るわけではありません」
リースは星杯を指差した。
「まず、彼らは星に目印となるものを送り込みます」
「……星遺物」
「はい」
イヴの顔が強張る。
「星遺物は、その星の文明を調査するための観測装置。そして文明が一定以上の水準に達した時――」
「信号を発信する」
キャロルが続けた。
「その信号を目印にして、本隊がやって来る……そういうことか」
「その通りです」
リースは頷いた。
「だから、今のうちに星遺物を破壊しなければなりません」
「なら話は簡単だ」
キャロルは星杯へ歩み寄る。
「これを壊せばいい」
「……それが、そう簡単にはいかないんです」
「何?」
「星遺物には自己修復能力があります」
リースの説明では、星遺物が複数存在する場合、そのうち一つの信号が途絶えると、残った星遺物が保有するエネルギーリソースを一時的に修復へ回すという。
「つまり、一つ壊しても……」
「別の星遺物がエネルギーを供給して、復元させます」
「厄介だな」
キャロルが舌打ちする。
さらに問題があるという。
「星遺物には、それぞれを守護するガーディアンが存在します」
「ガーディアン?」
「はい。クローラーの中でも特別な個体が、星遺物を守っています」
キャロルは星杯を見る。
そして、ふと疑問を抱いた。
「……だが、こいつはここにある」
星杯は現在、ウィッチクラフトの工房に安置されている。
つまり――。
「この星杯を守っていたクローラーは、どうした?」
リースが答えるより先に、
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「っ!?」
突然、大地が激しく揺れた。
「地震!?」
イヴが机に手をつく。
「違う!」
キャロルが叫ぶ。
「何かが下から来る!」
次の瞬間――。
ズドォォォォォン!!
工房の屋根が吹き飛んだ。
「きゃああああっ!」
瓦礫が降り注ぐ。
そして、煙の向こうから巨大な影が現れた。
それは――。
巨大な機械仕掛けの蟲だった。
無数の関節を持つ脚。
金属質の外殻。
生物とも機械ともつかない異形。
その脚の一本が、工房の床を踏み潰す。
キャロルは顔を上げる。
「……なるほど」
口元を歪める。
「どうやら、まだ守護者が残っていたらしいな」
巨大な機械蟲が咆哮する。
そして、その視線が――
星杯へと向けられた。
今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。良ければ感想などとお願いします。