シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。   作:のうち

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第五話 時を止める男

アメリカでの休日は、思っていた以上に穏やかなものになる――はずだった。

 

 昼食を終えた壇政宗は、キャロルたちと共に街を歩いていた。

 

 仕事のために訪れたアメリカだったが、ここ数日は慌ただしい日程が続いていた。大会の視察に商談、会食。ようやくそれらを終えて得た貴重な休日なのだ。

 

 だからこそ、こうして仕事とは関係のない街を歩いている時間は悪くなかった。

 

 だが――。

 

「……ん?」

 

 先ほどまで談笑していたキャロルが、不意に足を止めた。

 

「どうした?」

 

「……星杯が反応している」

 

 その言葉に、イヴも手にしていた星杯へ視線を落とす。

 

「はい。間違いありません」

 

 星杯が淡い光を放っている。

 

 それは、これまで何度か観測してきたものと同じ反応だった。

 

「信号の出力が上がっています」

 

「ということは……」

 

 アウラムが周囲を見回す。

 

 そして――。

 

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 大地が激しく揺れた。

 

「地震!?」

 

 周囲から悲鳴が上がる。

 

 しかし、キャロルは即座に首を横に振った。

 

「違う!」

 

 次の瞬間。

 

 道路が大きく盛り上がった。

 

 アスファルトを突き破り、巨大な機械の脚が地上へと突き出す。

 

「なっ……!」

 

 続いて姿を現したのは、巨大な虫を思わせる異形。

 

 無数の脚。

 

 鋭い装甲。

 

 そして、全身に機械と生物の特徴を併せ持つ奇怪な構造。

 

「クローラー……」

 

 イヴが呟く。

 

「星杯の守護者です!」

 

「どうして今になって!?」

 

「星杯が活性化したからだ!」

 

 キャロルが叫ぶ。

 

「休眠していた個体が、星杯から発せられた信号を受け取って起動したんだ!」

 

 まるでその言葉を証明するかのように、地面の下から次々とクローラーが姿を現す。

 

 その数は一匹や二匹ではない。

 

「多すぎる……!」

 

 アウラムが剣を構える。

 

 だが、クローラーたちは彼らには目もくれず、街中に存在する機械へ向かっていく。

 

 巨大な電子看板。

 

 通信設備。

 

 自動車。

 

 そして――。

 

「……あれは」

 

 政宗の顔から笑みが消えた。

 

 クローラーが向かっている先。

 

 そこには、昨日まで自社が開催していた『バンバンロワイヤル』の大会会場があった。大会が終わった翌日の今日も様々なゲームイベントや新作玩具の展示などが行わなれている。

 

 巨大モニター。

 

 大量のゲーム機。

 

 通信設備。

 

 そして、大会運営のために設置されたサーバー。

 

「……私の会社の設備まで狙っているのか」

 

 クローラーが巨大な爪を振り下ろす。

 

 ――ドゴォン!!

 

 設備の一部が吹き飛んだ。

 

「私が苦労して用意した会場を……」

 

 政宗の声が低くなる。

 

「好き勝手に壊してくれますね」

 

「そこを気にするのか!?」

 

 アウラムが思わず叫ぶ。

 

「当然でしょう」

 

 政宗は真顔だった。

 

「社員たちが頑張って準備したものですから」

 

 そう言うと、政宗は避難する人々へ視線を向けた。

 

「……とはいえ、今はそれ以上に優先すべきことがあります」

 

 政宗は周囲を見渡す。

 

 逃げ惑う人々。

 

 破壊される街。

 

 そして、クローラーへ立ち向かおうとしているキャロルたち。

 

「キャロルさん」

 

「なんだ?」

 

「あなた方は、あれを止める気なんですか?」

 

「止めるしかない」

 

「そうですか」

 

 政宗は静かに頷いた。

 

「ならば、私も手伝いましょう」

 

「壇さん?」

 

 橙子が振り返る。

 

 政宗は懐へ手を入れた。

 

 取り出されたのは、ライトブルーと銀を基調とした、携帯ゲーム機を思わせる機械。

 

 中央には小型モニター。

 

 その両脇には赤と水色のボタンが配置されている。

 

 そして、もう一つ。

 

 仮面ライダークロニクルガシャット。

 

「……それは?」

 

 キャロルが尋ねる。

 

「私の切り札です」

 

 政宗はガシャットを掲げた。

 

「今こそ、審判の時……!」

 

『仮面ライダークロニクル!』

 

『ガシャット!』

 

 ガシャットを装填する。

 

「変……身」

 

 その瞬間――。

 

 政宗の頭上に巨大な時計が浮かび上がった。

 

 緑。

 

 赤。

 

 白。

 

 三色の時計が重なり合い、巨大な文字盤を形成する。

 

 そこから数字が一つずつ現れる。

 

 Ⅰ。

 

 Ⅱ。

 

 Ⅲ。

 

 Ⅳ。

 

 Ⅴ。

 

 Ⅵ。

 

 Ⅶ。

 

 Ⅷ。

 

 Ⅸ。

 

 Ⅹ。

 

 Ⅺ。

 

 Ⅻ。

 

 十二の数字が政宗の前で円環を描く。

 

『バグルアップ!』

 

 時計の針が高速で回転する。

 

『天を掴めライダー!』

 

「ウォー!」

 

『刻めクロニクル!』

 

「ウォー!」

 

『今こそ時は――極まれりィィィィ!!』

 

「ウォー!」

 

 無数の時計が砕け散った。

 

 緑、赤、白の光が政宗の身体へと収束していく。

 

 装甲が形成され、最後に仮面が完成する。

 

 そこに立っていたのは――。

 

 仮面ライダークロノス。

 

「……仮面ライダー」

 

 橙子が呟く。

 

 当然だ。

 

 彼女はこんな力を持つ政宗を知らない。

 

 キャロルも驚きを隠せず、変身した男を見つめている。

 

 だがクロノスは二人の反応など気にも留めず、クローラーを見据えた。

 

「私の休暇を潰すどころか、我が社のゲームを楽しみにここまでやってきたユーザー達を傷つけるなど!!!」

 

 一拍。

 

「絶版だぁ……、お前達は私が絶版にする!」

 

 クロノスが地面を蹴った。

 

「速い!」

 

 アウラムが驚く。

 

 巨大なクローラーが爪を振り下ろす。

 

 クロノスはそれを軽々とかわし、拳を叩き込む。

 

 ――ドゴォン!!

 

 クローラーの装甲が大きくへこむ。

 

「なるほど……」

 

 キャロルが目を細める。

 

「見た目以上にやるな」

 

 クロノスはベルトのバグヴァイザーiiを取り外して銀色のグリップを装着した。

 

 武器へと姿を変えたそれを握り締める。

 

 クローラーが再び襲い掛かってくる。

 

「遅い」

 

 クロノスは攻撃をかわしながら、武器を振り抜く。

 

 ――ズバンッ!

 

 装甲が切り裂かれる。

 

 クローラーが怯んだ。

 

「まだだ」

 

 クロノスは再び、バクヴァイザーを腰に戻し

 

 赤いAボタン。

 

 水色のBボタン。

 

 二つのボタンへ指をかけ――。

 

「……ポーズ」

 

 世界から、音が消えた。

 

 飛び散る瓦礫。

 

 舞い上がる粉塵。

 

 逃げ惑う人々。

 

 そして、襲い掛かろうとしていたクローラー。

 

 全てが停止している。

 

「……え?」

 

 イヴが目を見開く。

 

 動いているのは、ただ一人。

 

 クロノスだけだった。

 

 クロノスは静止したクローラーの前へゆっくりと歩いていく。

 

 そして、その巨体を見上げる。

 

「さて……」

 

 静止した世界の中で、クロノスは静かに呟いた。

 

「審判の時は静寂に行われなければ行けない。」

 

 時を止める男。

 

 文明を喰らう機械生命体。

 

 その二つが、この日アメリカの街で激突した。

 

 そしてキャロルたちは、この戦いをきっかけに――。

 

 また一人の新たな仲間を得ることになる。

 

 だが、その戦いはまだ始まったばかりだった。




何故、クロノスのポーズによる時間停止を知覚することが出来たのか。
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