シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。 作:のうち
アメリカでの休日は、思っていた以上に穏やかなものになる――はずだった。
昼食を終えた壇政宗は、キャロルたちと共に街を歩いていた。
仕事のために訪れたアメリカだったが、ここ数日は慌ただしい日程が続いていた。大会の視察に商談、会食。ようやくそれらを終えて得た貴重な休日なのだ。
だからこそ、こうして仕事とは関係のない街を歩いている時間は悪くなかった。
だが――。
「……ん?」
先ほどまで談笑していたキャロルが、不意に足を止めた。
「どうした?」
「……星杯が反応している」
その言葉に、イヴも手にしていた星杯へ視線を落とす。
「はい。間違いありません」
星杯が淡い光を放っている。
それは、これまで何度か観測してきたものと同じ反応だった。
「信号の出力が上がっています」
「ということは……」
アウラムが周囲を見回す。
そして――。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
大地が激しく揺れた。
「地震!?」
周囲から悲鳴が上がる。
しかし、キャロルは即座に首を横に振った。
「違う!」
次の瞬間。
道路が大きく盛り上がった。
アスファルトを突き破り、巨大な機械の脚が地上へと突き出す。
「なっ……!」
続いて姿を現したのは、巨大な虫を思わせる異形。
無数の脚。
鋭い装甲。
そして、全身に機械と生物の特徴を併せ持つ奇怪な構造。
「クローラー……」
イヴが呟く。
「星杯の守護者です!」
「どうして今になって!?」
「星杯が活性化したからだ!」
キャロルが叫ぶ。
「休眠していた個体が、星杯から発せられた信号を受け取って起動したんだ!」
まるでその言葉を証明するかのように、地面の下から次々とクローラーが姿を現す。
その数は一匹や二匹ではない。
「多すぎる……!」
アウラムが剣を構える。
だが、クローラーたちは彼らには目もくれず、街中に存在する機械へ向かっていく。
巨大な電子看板。
通信設備。
自動車。
そして――。
「……あれは」
政宗の顔から笑みが消えた。
クローラーが向かっている先。
そこには、昨日まで自社が開催していた『バンバンロワイヤル』の大会会場があった。大会が終わった翌日の今日も様々なゲームイベントや新作玩具の展示などが行わなれている。
巨大モニター。
大量のゲーム機。
通信設備。
そして、大会運営のために設置されたサーバー。
「……私の会社の設備まで狙っているのか」
クローラーが巨大な爪を振り下ろす。
――ドゴォン!!
設備の一部が吹き飛んだ。
「私が苦労して用意した会場を……」
政宗の声が低くなる。
「好き勝手に壊してくれますね」
「そこを気にするのか!?」
アウラムが思わず叫ぶ。
「当然でしょう」
政宗は真顔だった。
「社員たちが頑張って準備したものですから」
そう言うと、政宗は避難する人々へ視線を向けた。
「……とはいえ、今はそれ以上に優先すべきことがあります」
政宗は周囲を見渡す。
逃げ惑う人々。
破壊される街。
そして、クローラーへ立ち向かおうとしているキャロルたち。
「キャロルさん」
「なんだ?」
「あなた方は、あれを止める気なんですか?」
「止めるしかない」
「そうですか」
政宗は静かに頷いた。
「ならば、私も手伝いましょう」
「壇さん?」
橙子が振り返る。
政宗は懐へ手を入れた。
取り出されたのは、ライトブルーと銀を基調とした、携帯ゲーム機を思わせる機械。
中央には小型モニター。
その両脇には赤と水色のボタンが配置されている。
そして、もう一つ。
仮面ライダークロニクルガシャット。
「……それは?」
キャロルが尋ねる。
「私の切り札です」
政宗はガシャットを掲げた。
「今こそ、審判の時……!」
『仮面ライダークロニクル!』
『ガシャット!』
ガシャットを装填する。
「変……身」
その瞬間――。
政宗の頭上に巨大な時計が浮かび上がった。
緑。
赤。
白。
三色の時計が重なり合い、巨大な文字盤を形成する。
そこから数字が一つずつ現れる。
Ⅰ。
Ⅱ。
Ⅲ。
Ⅳ。
Ⅴ。
Ⅵ。
Ⅶ。
Ⅷ。
Ⅸ。
Ⅹ。
Ⅺ。
Ⅻ。
十二の数字が政宗の前で円環を描く。
『バグルアップ!』
時計の針が高速で回転する。
『天を掴めライダー!』
「ウォー!」
『刻めクロニクル!』
「ウォー!」
『今こそ時は――極まれりィィィィ!!』
「ウォー!」
無数の時計が砕け散った。
緑、赤、白の光が政宗の身体へと収束していく。
装甲が形成され、最後に仮面が完成する。
そこに立っていたのは――。
仮面ライダークロノス。
「……仮面ライダー」
橙子が呟く。
当然だ。
彼女はこんな力を持つ政宗を知らない。
キャロルも驚きを隠せず、変身した男を見つめている。
だがクロノスは二人の反応など気にも留めず、クローラーを見据えた。
「私の休暇を潰すどころか、我が社のゲームを楽しみにここまでやってきたユーザー達を傷つけるなど!!!」
一拍。
「絶版だぁ……、お前達は私が絶版にする!」
クロノスが地面を蹴った。
「速い!」
アウラムが驚く。
巨大なクローラーが爪を振り下ろす。
クロノスはそれを軽々とかわし、拳を叩き込む。
――ドゴォン!!
クローラーの装甲が大きくへこむ。
「なるほど……」
キャロルが目を細める。
「見た目以上にやるな」
クロノスはベルトのバグヴァイザーiiを取り外して銀色のグリップを装着した。
武器へと姿を変えたそれを握り締める。
クローラーが再び襲い掛かってくる。
「遅い」
クロノスは攻撃をかわしながら、武器を振り抜く。
――ズバンッ!
装甲が切り裂かれる。
クローラーが怯んだ。
「まだだ」
クロノスは再び、バクヴァイザーを腰に戻し
赤いAボタン。
水色のBボタン。
二つのボタンへ指をかけ――。
「……ポーズ」
世界から、音が消えた。
飛び散る瓦礫。
舞い上がる粉塵。
逃げ惑う人々。
そして、襲い掛かろうとしていたクローラー。
全てが停止している。
「……え?」
イヴが目を見開く。
動いているのは、ただ一人。
クロノスだけだった。
クロノスは静止したクローラーの前へゆっくりと歩いていく。
そして、その巨体を見上げる。
「さて……」
静止した世界の中で、クロノスは静かに呟いた。
「審判の時は静寂に行われなければ行けない。」
時を止める男。
文明を喰らう機械生命体。
その二つが、この日アメリカの街で激突した。
そしてキャロルたちは、この戦いをきっかけに――。
また一人の新たな仲間を得ることになる。
だが、その戦いはまだ始まったばかりだった。
何故、クロノスのポーズによる時間停止を知覚することが出来たのか。