シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。 作:のうち
戦闘が終わった。
街にはクローラーによって破壊された跡が残っているものの、幸いにも大きな人的被害は出ていない。
キャロルたちは、ひとまず安全な場所へ移動していた。
「……」
キャロルは、目の前に立つ男を見つめていた。
壇政宗。
先ほどまで仮面ライダークロノスとして戦っていた男だ。
変身を解除した今は、どこにでもいそうな一人の紳士にしか見えない。
「壇政宗」
「はい」
「さっきの力について聞きたい」
「構いませんよ」
政宗は特に嫌がる様子もなく答えた。
「私は、あの姿に変身できます。そして――時間を止めることもできる」
「時間を止める……」
イヴが驚いたように呟く。
「ああ。先ほど使ったのが、その力だ」
政宗は淡々と説明する。
「ただし、便利な力ではありますが、万能というわけではありません」
「……なるほど」
キャロルはそれ以上追及しなかった。
今は能力の詳細を掘り下げるよりも、今回の事件から得られた情報を整理する方が重要だった。
「今回の戦闘で分かったことがある」
キャロルは星杯へ視線を向ける。
「星遺物は、ただの遺物ではない」
その場にいた全員が耳を傾ける。
「星杯が活性化したことで、休眠状態だったクローラーが目覚めた。そして奴らは、この街の機械を無差別に襲った」
「リースの話が本当なら……」
アウラムが呟く。
「同じことが、他の星遺物でも起きる可能性がある」
「ああ」
キャロルは頷く。
「世界中に存在する星遺物を放置すれば、同じようにクローラーを呼び寄せることになる」
「となると……」
橙子が腕を組む。
「我々のやることは決まったな」
「星遺物を探す」
キャロルが答えた。
「そして、クローラーの本隊が地球へ到達する前に、対策を見つける」
「随分と大仕事になったものだ」
エルメロイ二世がため息を吐く。
「世界中を飛び回ることになるぞ」
「だからこそ、人手が必要なんだ」
キャロルはそう言うと、政宗へ視線を向けた。
「壇政宗」
「はい?」
「私たちと一緒に来ないか?」
「……私を?」
「ああ」
政宗は少し困ったように笑う。
「私はゲーム会社の社長ですよ。戦士でも冒険家でもありません」
「だが、戦える」
「それはまあ……否定しませんが」
政宗は先ほどの戦闘を思い出す。
「それに、今回のような事件が今後も続くのであれば、私の会社や社員にも被害が及ぶ可能性がありますからね」
そして、少しだけ表情を引き締めた。
「……息子にも」
キャロルは黙って頷く。
「そういうことだ」
「なるほど」
政宗はしばらく考えた。
そして――。
「分かりました。協力しましょう」
「助かる」
「ただし、本業に支障が出ない範囲でお願いしますよ」
「善処する」
「そこは約束していただきたいものですがね」
政宗は苦笑した。
こうして、壇政宗はキャロルたちの仲間に加わることになった。
その日の夜。
橙子たちは、今後の行動について話し合っていた。
世界各地で確認された星遺物の反応。
それらを地図上に表示し、今後の調査予定を組み立てていく。
「まずは、この地域からだな」
エルメロイ二世が地図を指差す。
「反応が比較的強い。星遺物が存在する可能性が高い」
「なら、明日にでも向かおう」
キャロルが答える。
「そうだな」
その時だった。
「キャロルさん!」
イヴが声を上げた。
「新しい反応です!」
画面上に、新たな光点が表示される。
「場所は?」
「ヨーロッパです」
「……また遠いな」
政宗が苦笑する。
「どうやら、本当に世界中を飛び回ることになりそうですね」
「そのようだ」
キャロルは地図を見つめた。
「出発の準備をするぞ」
こうして、星遺物を巡る旅は新たな仲間を加え、次の舞台へと進むことになった。
だが――。
その場を離れた政宗の表情には、僅かな陰があった。
誰もいない場所まで移動すると、政宗は足を止める。
「…………」
先ほどの戦闘を思い返していた。
どうにも腑に落ちない。
仮面ライダークロノス。
その力の一つである――ポーズ。
時間そのものを停止させる能力。
停止した時間の中で基本的に自由に動けるのは、クロノスだけだ。
敵も。
味方も。
飛び散った瓦礫も。
全てが停止する。
それが政宗の知る『ポーズ』だった。
しかし――。
「……二人」
政宗は小さく呟いた。
あの時間停止の中で。
自分以外に、動いている者がいた。
一人ではない。
二人だ。
「イヴ……」
そして。
「リース」
間違いない。
時間が停止したあの瞬間。
周囲の全てが停止していた。
それなのに、イヴとリースだけは動いていた。
「偶然……ではないな」
政宗はそう確信する。
ポーズが発動する直前から動いていたわけでもない。
時間停止を見切ったわけでもない。
停止した時間の中で、二人は動いていた。
「イヴは……まだ分からなくもない」
政宗は考え込む。
だが――。
「リース、お前は一体何者だ?」
宇宙からやって来た妖精。
星遺物について異常なほど詳しい。
クローラーについても、まるで自分自身がその生態を知っているかのように語っていた。
そして何より。
時間停止の中で、イヴと共に動いていた。
「…………」
政宗はしばらく黙っていた。
このことを、今すぐキャロルたちに話すつもりはない。
まだ証拠がない。
下手に話せば、仲間たちを混乱させるだけだ。
「焦る必要はありませんね」
政宗は静かに歩き出す。
「いずれ分かるでしょう」
リースが何者なのか。
なぜイヴが時間停止の影響を受けなかったのか。
そして――。
星遺物と二人の間に、どんな秘密が隠されているのか。
答えは、いずれ明らかになる。
ただ一つ。
政宗には、確信していることがあった。
あの二人は、普通ではない。
その疑念を胸の奥へしまい込みながら、政宗は仲間たちのもとへ戻っていった。
彼らはまだ知らない。
自分たちのすぐ傍にいる少女が――。
この事件の裏側で、全てを操る存在へと繋がっていることを。