シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。   作:のうち

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第六話 社長の疑惑

 戦闘が終わった。

 

 街にはクローラーによって破壊された跡が残っているものの、幸いにも大きな人的被害は出ていない。

 

 キャロルたちは、ひとまず安全な場所へ移動していた。

 

「……」

 

 キャロルは、目の前に立つ男を見つめていた。

 

 壇政宗。

 

 先ほどまで仮面ライダークロノスとして戦っていた男だ。

 

 変身を解除した今は、どこにでもいそうな一人の紳士にしか見えない。

 

「壇政宗」

 

「はい」

 

「さっきの力について聞きたい」

 

「構いませんよ」

 

 政宗は特に嫌がる様子もなく答えた。

 

「私は、あの姿に変身できます。そして――時間を止めることもできる」

 

「時間を止める……」

 

 イヴが驚いたように呟く。

 

「ああ。先ほど使ったのが、その力だ」

 

 政宗は淡々と説明する。

 

「ただし、便利な力ではありますが、万能というわけではありません」

 

「……なるほど」

 

 キャロルはそれ以上追及しなかった。

 

 今は能力の詳細を掘り下げるよりも、今回の事件から得られた情報を整理する方が重要だった。

 

「今回の戦闘で分かったことがある」

 

 キャロルは星杯へ視線を向ける。

 

「星遺物は、ただの遺物ではない」

 

 その場にいた全員が耳を傾ける。

 

「星杯が活性化したことで、休眠状態だったクローラーが目覚めた。そして奴らは、この街の機械を無差別に襲った」

 

「リースの話が本当なら……」

 

 アウラムが呟く。

 

「同じことが、他の星遺物でも起きる可能性がある」

 

「ああ」

 

 キャロルは頷く。

 

「世界中に存在する星遺物を放置すれば、同じようにクローラーを呼び寄せることになる」

 

「となると……」

 

 橙子が腕を組む。

 

「我々のやることは決まったな」

 

「星遺物を探す」

 

 キャロルが答えた。

 

「そして、クローラーの本隊が地球へ到達する前に、対策を見つける」

 

「随分と大仕事になったものだ」

 

 エルメロイ二世がため息を吐く。

 

「世界中を飛び回ることになるぞ」

 

「だからこそ、人手が必要なんだ」

 

 キャロルはそう言うと、政宗へ視線を向けた。

 

「壇政宗」

 

「はい?」

 

「私たちと一緒に来ないか?」

 

「……私を?」

 

「ああ」

 

 政宗は少し困ったように笑う。

 

「私はゲーム会社の社長ですよ。戦士でも冒険家でもありません」

 

「だが、戦える」

 

「それはまあ……否定しませんが」

 

 政宗は先ほどの戦闘を思い出す。

 

「それに、今回のような事件が今後も続くのであれば、私の会社や社員にも被害が及ぶ可能性がありますからね」

 

 そして、少しだけ表情を引き締めた。

 

「……息子にも」

 

 キャロルは黙って頷く。

 

「そういうことだ」

 

「なるほど」

 

 政宗はしばらく考えた。

 

 そして――。

 

「分かりました。協力しましょう」

 

「助かる」

 

「ただし、本業に支障が出ない範囲でお願いしますよ」

 

「善処する」

 

「そこは約束していただきたいものですがね」

 

 政宗は苦笑した。

 

 こうして、壇政宗はキャロルたちの仲間に加わることになった。

 

 その日の夜。

 

 橙子たちは、今後の行動について話し合っていた。

 

 世界各地で確認された星遺物の反応。

 

 それらを地図上に表示し、今後の調査予定を組み立てていく。

 

「まずは、この地域からだな」

 

 エルメロイ二世が地図を指差す。

 

「反応が比較的強い。星遺物が存在する可能性が高い」

 

「なら、明日にでも向かおう」

 

 キャロルが答える。

 

「そうだな」

 

 その時だった。

 

「キャロルさん!」

 

 イヴが声を上げた。

 

「新しい反応です!」

 

 画面上に、新たな光点が表示される。

 

「場所は?」

 

「ヨーロッパです」

 

「……また遠いな」

 

 政宗が苦笑する。

 

「どうやら、本当に世界中を飛び回ることになりそうですね」

 

「そのようだ」

 

 キャロルは地図を見つめた。

 

「出発の準備をするぞ」

 

 こうして、星遺物を巡る旅は新たな仲間を加え、次の舞台へと進むことになった。

 

 だが――。

 

 その場を離れた政宗の表情には、僅かな陰があった。

 

 誰もいない場所まで移動すると、政宗は足を止める。

 

「…………」

 

 先ほどの戦闘を思い返していた。

 

 どうにも腑に落ちない。

 

 仮面ライダークロノス。

 

 その力の一つである――ポーズ。

 

 時間そのものを停止させる能力。

 

 停止した時間の中で基本的に自由に動けるのは、クロノスだけだ。

 

 敵も。

 

 味方も。

 

 飛び散った瓦礫も。

 

 全てが停止する。

 

 それが政宗の知る『ポーズ』だった。

 

 しかし――。

 

「……二人」

 

 政宗は小さく呟いた。

 

 あの時間停止の中で。

 

 自分以外に、動いている者がいた。

 

 一人ではない。

 

 二人だ。

 

「イヴ……」

 

 そして。

 

「リース」

 

 間違いない。

 

 時間が停止したあの瞬間。

 

 周囲の全てが停止していた。

 

 それなのに、イヴとリースだけは動いていた。

 

「偶然……ではないな」

 

 政宗はそう確信する。

 

 ポーズが発動する直前から動いていたわけでもない。

 

 時間停止を見切ったわけでもない。

 

 停止した時間の中で、二人は動いていた。

 

「イヴは……まだ分からなくもない」

 

 政宗は考え込む。

 

 だが――。

 

「リース、お前は一体何者だ?」

 

 宇宙からやって来た妖精。

 

 星遺物について異常なほど詳しい。

 

 クローラーについても、まるで自分自身がその生態を知っているかのように語っていた。

 

 そして何より。

 

 時間停止の中で、イヴと共に動いていた。

 

「…………」

 

 政宗はしばらく黙っていた。

 

 このことを、今すぐキャロルたちに話すつもりはない。

 

 まだ証拠がない。

 

 下手に話せば、仲間たちを混乱させるだけだ。

 

「焦る必要はありませんね」

 

 政宗は静かに歩き出す。

 

「いずれ分かるでしょう」

 

 リースが何者なのか。

 

 なぜイヴが時間停止の影響を受けなかったのか。

 

 そして――。

 

 星遺物と二人の間に、どんな秘密が隠されているのか。

 

 答えは、いずれ明らかになる。

 

 ただ一つ。

 

 政宗には、確信していることがあった。

 

 あの二人は、普通ではない。

 

 その疑念を胸の奥へしまい込みながら、政宗は仲間たちのもとへ戻っていった。

 

 彼らはまだ知らない。

 

 自分たちのすぐ傍にいる少女が――。

 

 この事件の裏側で、全てを操る存在へと繋がっていることを。

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