シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。 作:のうち
フォートレスドランを追い越していった物体を追って、キャロルたちは目的地へと急いだ。
そして――。
「……なんだ、これは」
フォートレスドランの巨体が大地へ降り立つ。
その先に広がっていた光景を見て、キャロルは思わず目を細めた。
そこにいたのは、これまで散々苦労して倒してきたクローラー。
スパイン、アクソン、グリア、レセプター、ランヴィエ、デンドライト。
さらにニューロゴス、クオリアーク、シナプシス。
様々な種類のクローラーが群れを成し、大地を埋め尽くしている。
ただ無秩序に集まっているわけではない。
まるで何者かに命令されているかのように、整然とこちらを取り囲んでいた。
「……これだけの数を、どうやって集めた?」
エルメロイ二世が呟く。
「問題はそこじゃない」
橙子が眼鏡を押し上げた。
「中央を見ろ」
一行の視線が集中する。
クローラーの群れの中央。
そこには一体の機械騎士が立っていた。
赤と銀を基調とした装甲。
クローラーとは明らかに異なる人型のシルエット。
鋭い装甲を身に纏い、まるで機械仕掛けの騎士を思わせる姿。
その存在だけで、周囲のクローラーたちを従えていることが分かる。
「……あれが、ジャックナイツ」
キャロルが呟いた。
リースから聞かされていた存在。
クローラーを統率する、星遺物に関わる機械騎士。
そして――。
「どうやら、あれがさっき我々を追い越した物体の正体らしいな」
政宗が言った。
「間違いないでしょう」
イヴも頷く。
「しかし……おかしいです」
「何がだ?」
「クローラーは文明を破壊するための存在なんですよね? なのに、どうしてあの機械騎士は彼らを統率しているんでしょう?、待たずにさっさと破壊を命じればいいものを」
キャロルはフォートレスドランから降りる。
「クローラーがただの害虫なら、これまでと同じように潰せばいい。だが、誰かがあいつらを使役しているのなら話は別だ」
視線がリースへ向く。
白い妖精は、何も言わずにジャックナイツを見つめていた。
その表情には、これまで見せた怯えとは違うものが浮かんでいる。
「……リース」
キャロルが呼びかける。
「何?」
「お前は、あいつらを知っているな?」
「……もちろんよ」
リースは微笑んだ。
「だって、私たちを追ってきた敵なんだから」
「……そうか」
キャロルはそれ以上追及しなかった。
しかし、胸の奥に残る違和感は消えない。
その時だった。
「待ってください!」
イヴが声を上げた。
彼女が抱えていた星杯が、突然強い光を放ち始めた。
「星杯が……!」
「なんだ?」
政宗が身構える。
星杯から放たれた光が空中へ伸びていく。
やがて、その光は空間そのものを歪ませた。
まるで巨大な扉が開かれるように、空中に円形の亀裂が生まれる。
「ワープゲート……?」
橙子が呟いた。
「違う。これは……星遺物同士が反応しているのか?」
エルメロイ二世が分析する。
だが、答えが出るより早く――。
ゲートの向こうから、何かが姿を現した。
「もう一体……だと?」
赤と銀の装甲。
先ほどと同じ機械騎士。
それがゲートを抜け、ゆっくりと地上へ降り立った。
クローラーたちが一斉に動き出す。
まるで二体の機械騎士を王として認めたかのように。
「おいおい……」
政宗が額に手を当てる。
「随分と大歓迎ですね」
「歓迎されているつもりはないがな」
キャロルがダークキバに変身する。
だが、すぐには構えない。
視線は二体のジャックナイツへ向けられていた。
「星杯が、こいつらを…?」
イヴが震える声で言う。
「向こうが、星杯を目印にしているんだ。もとより呼ばれなくても来ていたんだろうさ。」
その瞬間。
二体のジャックナイツが同時に動いた。
クローラーの群れが、一斉にこちらへ向かってくる。
「来るぞ!」
グレイが身構える。
「全員、戦闘準備!」
キャロルの号令と同時に、一行が散開した。
クローラーの群れが大地を覆い尽くす。
スパインが飛び掛かり、アクソンが腕を振り回し、レセプターが空中から襲い掛かる。
それをクロノスに変身した政宗が迎え撃つ。
「まったく……せっかくの旅行だったというのに」
その姿を見てキャロルが一瞬だけ視線を向けた。
「政宗!」
「ええ。分かっていますよ」
政宗はバグヴァイザーiiをチェンソーモードに切り替えて構える。
「どうやら――」
その表情から、先ほどまでの穏やかな男の雰囲気が消えた。
「ここが、今回の決着の場所になりそうですね」
そして。
二体のジャックナイツが同時に動き出した。
キャロルは迫り来る敵を睨みつける。
「……ここまで来たか」
星遺物。
クローラー。
ジャックナイツ。
そして、その中心にいるリース。
全ての点が、一本の線へと繋がり始めていた。
「イヴ、アウラム!」
「はい!」
「二人は星杯を守れ!」
「分かった!」
「橙子、グレイ! 政宗!」
「任せろ」
「了解した」
「ええ」
フエッスルを手にしたしたキャロルは一歩前へ出る。
「ここから先は――」
「私たちの仕事だ!」
大地を埋め尽くすクローラーの群れ。
その奥に立つ二体の機械騎士。
そして、未だ何を考えているのか分からない白い妖精。
――最終局面は、静かに幕を開けた。