シンフォギアの世界にウィッチクラフトのロリババアに転生した。   作:のうち

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第九話 勝利の後に

 大地を埋め尽くすほどのクローラー。

 

 その中央には二体のジャックナイツ。

 

 キャロルたちがこれまで相手にしてきたクローラーとは、明らかに規模が違っていた。

 

「来るぞ!」

 

 アウラムの声が響く。

 

 直後、大地を這っていたクローラーたちが一斉に動き出した。

 

 スパインが地面を蹴り、鋭い脚部を振り上げながらキャロルへと飛び掛かる。

 

「――遅い!」

 

 キャロルは横へ跳んだ。

 

 目の前を巨大な脚が通過する。

 

 着地と同時に身体を捻り、拳を叩き込む。

 

 硬質な装甲が大きくへこみ、スパインが吹き飛んだ。

 

 だが、一体を倒したところで終わりではない。

 

「キャロル!」

 

「分かっている!」

 

 左右から別のクローラーが迫る。

 

 キャロルは片方の攻撃を腕で受け流し、もう一体の突進を身を低くして回避。

 

 そのまま敵の懐へ潜り込む。

 

「そこだ!」

 

 強烈な一撃。

 

 クローラーの身体が宙へ浮き、そのまま地面へ叩きつけられた。

 

 しかし――。

 

「数が多すぎる……!」

 

 グレイが鎌を振るう。

 

 迫ってきたクローラーを切り裂き、その勢いのまま身体を回転させ、背後から迫っていた個体も薙ぎ払う。

 

 だが、倒したクローラーの後ろからさらに別の個体が現れる。

 

「キリがない!」

 

「グレイ、無理に全部相手にするな!」

 

 エルメロイ二世が叫ぶ。

 

「敵は我々を包囲しようとしている! 中央突破するより、左右の群れを分断しろ!」

 

「分かりました!」

 

 グレイが走る。

 

 その横を無数の機械生命体が追いかける。

 

 グレイは振り返ることなく走り続け――。

 

「今だ!」

 

 地面に刻まれていたルーンが光った。

 

 次の瞬間。

 

 轟音。

 

 地面から炎が吹き上がり、クローラーの群れをまとめて吹き飛ばした。

 

「相変わらず便利だな」

 

 キャロルが呟く。

 

「直接戦うより、こういう使い方の方が得意でね」

 

 橙子は眼鏡を押し上げる。

 

 彼女の周囲には複数の使い魔が展開していた。

 

「右側、あと十数体」

 

「了解!」

 

 キャロルが駆ける。

 

 迫ってきたクローラーの攻撃を躱し、身体を翻す。

 

 そして――。

 

「――行け!」

 

 放たれた一撃が敵を吹き飛ばす。

 

 だが、その直後。

 

「キャロルさん!」

 

 イヴの声。

 

 振り返る。

 

 大型のクローラーが、イヴとアウラムのいる方向へ突進していた。

 

「させるか!」

 

 アウラムが前へ出る。

 

 だが、敵の巨体を真正面から受け止めるには力が足りない。

 

「うわあああっ!」

 

 吹き飛ばされる。

 

「アウラム!」

 

 イヴが駆け寄ろうとする。

 

 その前に――。

 

 巨大な影が降り立った。

 

「――そこまでだ」

 

 政宗だった。

 

 彼はクローラーを真正面から受け止める。

 

 大地が足元からひび割れる。

 

「なるほど……」

 

 政宗は敵を押し返しながら呟く。

 

「こういう重量級は、真正面から相手をするものではありませんね」

 

 クローラーが腕を振り下ろす。

 

 政宗はそれを躱し、相手の懐へ入り込む。

 

 そして一撃。

 

 さらに一撃。

 

 最後の一撃でクローラーを吹き飛ばした。

 

「政宗さん……!」

 

「怪我は?」

 

「ありません!」

 

「なら結構」

 

 政宗は振り返る。

 

 その視線の先。

 

 そこに、一体のジャックナイツが立っていた。

 

「……来ましたか」

 

 ジャックナイツが腕を構える。

 

 次の瞬間、凄まじい速度で政宗へ突っ込んだ。

 

「――ッ!」

 

 政宗が防御する。

 

 衝撃。

 

 身体が大きく後退する。

 

「速い……!」

 

 先ほどまで戦っていたクローラーとは明らかに違う。

 

 ジャックナイツは間髪入れずに二撃、三撃と攻撃を繰り出す。

 

 政宗はそれを防ぎ、避け、反撃する。

 

 しかし――。

 

 届かない。

 

「なるほど」

 

 政宗が笑う。

 

「こいつは確かに厄介だ」

 

 その頃、反対側ではキャロルももう一体のジャックナイツと交戦していた。

 

「こいつ……!」

 

 攻撃を叩き込む。

 

 しかし、ジャックナイツは腕で受け止める。

 

 キャロルの一撃で大地が砕けるほどの衝撃が発生する。

 

 それでも相手は倒れない。

 

「硬い……!」

 

 ジャックナイツの反撃。

 

 キャロルは身体を捻って躱す。

 

 次の攻撃。

 

 さらに次。

 

 連続攻撃を紙一重で避けながら、キャロルは相手の動きを観察する。

 

「……なるほど」

 

 ジャックナイツが再び踏み込んだ。

 

「そこだ!」

 

 キャロルは攻撃を受け流し、至近距離から反撃。

 

 ジャックナイツの装甲が大きく吹き飛ぶ。

 

 だが――。

 

 その背後から無数のクローラーが殺到した。

 

「チッ!」

 

 キャロルが舌打ちする。

 

「まだいたか!」

 

 その瞬間。

 

「キャロル!」

 

 政宗の声が響いた。

 

 彼はジャックナイツとの戦闘を続けながら、こちらを見ていた。

 

「そちらを片付けたら、私の方を手伝ってもらえませんか!」

 

「お前の方が余裕ありそうに見えるが!」

 

「気のせいですよ!」

 

 政宗が笑う。

 

 その瞬間だった。

 

 彼が装着している装置から音声が響く。

 

 政宗が二つのボタンへ手を伸ばす。

 

「――ポーズ」

 

 世界が止まった。

 

 風が止まる。

 

 飛び散っていた土埃も止まる。

 

 迫っていたクローラーも。

 

 そしてジャックナイツさえも。

 

 完全に静止した。

 

 政宗だけが動いている。

 

「さて……」

 

 政宗は静止した世界を歩く。

 

「ここからが私の時間です」

 

 次々と敵の死角へ回り込む。

 

 クローラーの群れ。

 

 ジャックナイツ。

 

 全てを確認する。

 

 そして――。

 

「終わりにしましょう」

 

 時間が動き出した。

 

 次の瞬間。

 

 大地を覆っていたクローラーが一斉に吹き飛んだ。

 

 ジャックナイツの身体にも無数の衝撃が走る。

 

「今だ!」

 

 キャロルが叫ぶ。

 

 仲間たちが一斉に攻撃を開始する。

 

 橙子のルーン。

 

 グレイの一閃。

 

 キャロルの一撃。

 

 そして政宗の追撃。

 

 集中攻撃を受けたジャックナイツが大きくよろめく。

 

「これで――終わりだ!」

 

 キャロルの一撃が炸裂する。

 

 ジャックナイツが地面へ叩きつけられた。

 

 しばらくして、その身体から力が抜ける。

 

 動かない。

 

 周囲を埋め尽くしていたクローラーも、次々と活動を停止していく。

 

 やがて――。

 

 静寂が訪れた。

 

「……終わった?」

 

 アウラムが呟く。

 

 誰も答えない。

 

 キャロルは周囲を見渡す。

 

 敵は動かない。

 

 星杯も無事だ。

 

「……終わったな」

 

 ようやく、キャロルがそう告げた。

 

 イヴが安堵したように息を吐く。

 

「よかった……」

 

 政宗も変身を解除する。

 

「これでようやく、休暇の続きができますね」

 

「まだ言っているのか」

 

 橙子が呆れたように言う。

 

「私としては重要な問題ですよ」

 

 政宗は肩をすくめた。

 

 こうして――。

 

 長かった戦いは終わった。

 

 誰もがそう思っていた。

 

 数日後。

 

 工房には、再び穏やかな時間が戻っていた。

 

 壊れた設備も少しずつ修復され、キャロルたちは次の調査に備えている。

 

「次はどこへ行くんですか?」

 

 イヴが尋ねる。

 

「まだ決めていない」

 

 キャロルは資料を閉じる。

 

「今回の件で分かったことを整理してからだ」

 

「そうですか」

 

 イヴが笑った。

 

 いつもの日常。

 

 いつもの仲間。

 

 戦いは終わった。

 

 その夜。

 

 全てが終わり、誰もいなくなった廊下を、イヴが歩いていた。

 

「今日は疲れたなぁ……」

 

 自室へ戻ろうとした、その時。

 

「……あれ?」

 

 足が止まる。

 

 胸の奥に、奇妙な感覚。

 

「なんだろう……」

 

 胸元へ手を当てる。

 

 次の瞬間――。

 

 黒い光が、彼女の身体から溢れ出した。

 

「え……?」

 

 イヴの瞳が見開かれる。

 

 光は彼女の身体を包み込み――。

 

 やがて、静かに消えていった。

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 そして。

 

 ゆっくりと顔を上げる。

 

「……ふふ」

 

 そこに浮かんでいたのは、先ほどまでの少女とは違う笑み。

 

 瞳に宿る光も違う。

 

「ようやく……」

 

 少女は自分の手を眺める。

 

「手に入れた」

 

 鏡に映った自分の姿を見る。

 

 そこにいるのは、確かにイヴ。

 

 しかし――。

 

「この身体なら……」

 

 黒い影が背後で揺らめく。

 

「何も恐れる必要はない」

 

 そして少女は、静かに笑った。

 

「――イヴリース」

 

 その声が夜の廊下へ消えていく、この夜を境に彼女はウィッチクラフトを退職して姿をくらませたのだった。

 

 




 今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。
とりあえずはこれでロリババアベンジャーズはこれで終わります。

今回のロリババアベンジャーズのメンバーで誰が好き

  • シングルファーザー壇政宗
  • 橙子
  • イヴ
  • アウラム
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