ミッション:災厄「ルズローシヴ=レレイ」を消滅させよ 作:Moa
前回、知らない男に殺されました。
今回はその続きです。
夢でした。
夢でした?
夢でした、で済ませていいんですか?
いや、ゲーム的にはバッドエンドを見た後に正規ルートへ戻った、ということなのかもしれません。
そういう仕組みは分かります。
分かりますが、エオルミアちゃん本人が言うんですよ。
「私は殺されました」
言い方。
やめてください。
リシェラちゃんも即座に「やめて」と言いました。
分かります。
私もやめてほしいです。
エオルミアちゃんはたぶん、起きたことをそのまま報告しているだけなんです。
夢の中で術式が発動しました。
ルズローシヴ=レレイが消えました。
男が現れました。
殺されました。
報告としては正しいのかもしれません。
でも違うんです。
そういうことではないんです。
目の前で手を握っている人が、自分の死をそんなふうに言うのは嫌なんです。
リシェラちゃんの「事実でも嫌だよ」が、本当に全部でした。
そして目覚めた時、リシェラちゃんが手を握っていました。
強く。
離さないように。
ここで私は一回止まりました。
百合です。
いや、怖いです。
怖いんですが、百合です。
知らない男はルズローシヴ=レレイを「命より大切なもの」と呼びました。
そしてリシェラちゃんはエオルミアちゃんの手を握っていました。
離さないように握っていました。
え?
これ、重ねてますよね?
誰かにとって命より大切なものを、知らないまま消そうとしていた。
そしてリシェラちゃんにとって、エオルミアちゃんはもう失いたくない人になっている。
待ってください。
百合を見に来たんです。
百合はあります。
ありますが、同時に知らない男の命より大切なものが発生しています。
どういうことですか。
しかも、エオルミアちゃんが男のことを「敵とは断定できません」と言うんです。
敵意はありました。
でも敵とは断定できません。
喪失しているように見えました。
喪失。
その言葉が出るんですか。
殺されたのに?
敵意があったのに?
でも敵ではないかもしれない?
じゃあ何なんですか。
怒っていた人?
何かを奪われた人?
こちらが何かをしてしまった相手?
怖いです。
リシェラちゃんの、
「それ、消しちゃいけないものだったんじゃないの」
で、完全に止まりました。
それです。
それを言われたらもう、そうとしか思えなくなるじゃないですか。
ミッション達成したのに理不尽に殺された、ではないのかもしれません。
ミッションを達成したこと自体が駄目だったんですか?
でも天界は危ないんですよ。
濁りは残っています。
空にもまだ漂っています。
だから術式が必要なのも分かります。
分かるんです。
分かるんですが。
ルファーナさんは「いい名前だね」と言いました。
ルネアちゃんは「真名みたい」と言いました。
古い手紙には「親愛なるルズローシヴ=レレイへ」と書かれていました。
ライラさんは「使い方を誤らないように」と言いました。
知らない男は「命より大切なものだった」と言いました。
気づかなかったけど、並べるともう駄目です。
本当に駄目です。
これを消そうとしていたんですか?
いや、でも災厄なんですよね?
天界の記録では災厄なんですよね?
でも災厄に「親愛なる」って書きますか?
災厄を「命より大切なもの」って呼びますか?
真名みたいな災厄って何ですか?
いい名前の災厄って何ですか?
何?
私は何を消そうとしていたんですか?
いや、私は消していません。
エオルミアちゃんが消そうとしていました。
でもプレイヤーとしては私も「はい」を押しました。
押しましたよ。
だってミッションがそうだったから。
怖いです。
ここでエオルミアちゃんが術式を止めました。
「発動可能であることと、発動すべきであることは同義ではありません」
成長。
成長なんですが、状況が怖すぎて素直に喜べません。
でも大事です。
本当に大事です。
最初のエオルミアちゃんなら、たぶん止めなかったと思います。
天界を守るためです。
災厄を消滅させるためです。
必要なことです。
そう言って発動していたと思います。
でも今は止めた。
「分からないから止めました」
これが本当に良いです。
分からないから進めるのではなく、分からないから止める。
分からないのに任務だから実行する、ではなくなっている。
エオルミアちゃん、ちゃんと変わっています。
でも待ってください。
分からないから止める、まで来たのに、まだ何も分かっていないんです。
ルズローシヴ=レレイが何なのか分からない。
知らない男が誰なのか分からない。
天界の記録が正しいのか分からない。
消すべきなのか分からない。
消してはいけないのかも分からない。
何も分かっていません。
怖いです。
ヴェルノさんが「災厄なのか、名前なのか。命より大切なものなのか」と言っていました。
急にまともなことを言わないでください。
助かります。
でも急にまともなことを言われると逆に怖いです。
この人、胡散臭いのにこういう時に必要なことを言うんですよね。
信用していいんですか。
駄目な気もします。
でも今は正しいです。
困ります。
それで、誰に聞くかという話になって、天界の記録を調べようという流れになりました。
そうですよね。
侵入者の記録。
濁りが発生した時の記録。
ルズローシヴ=レレイという名前がどこから出たのか。
ちゃんと調べた方がいいです。
そう思っていたら、リシェラちゃんが言いました。
「そういえば、ライラさんに、ルズローシヴ=レレイの話してなかったよね?」
あ、そういえば。
言ってなかったかも。
火の宝玉編で、エオルミアちゃんは「天界に広がる濁りの根源を消滅させるためです」と言いました。
「ルズローシヴ=レレイを消滅させるためです」とは言っていませんでした。
言っていませんでした。
友人に「ライラさん、名前を聞いていたら止めてた?」と聞きました。
友人は黙りました。
黙るな。
黙るということは答えでは?
リシェラちゃんの「念のため、聞いてみる?」も怖いです。
友人に「これ念のためで済む?」と聞いたら、また黙りました。
また黙るな。
もう沈黙で会話しないでください。
でも、聞きに行くことになってよかったです。
本当に。
エオルミアちゃんが、自分は名前を省略したと気づいた。
相手に判断材料を渡さないまま火の力を借りたと気づいた。
そこを誤りかもしれないと思えた。
これも大きいです。
この作品、ずっと名前の話をしていますよね。
リシェラちゃんは罪人と呼ばれた。
出生義務違反者と呼ばれた。
でもエオルミアちゃんは、リシェラちゃんをその名前だけでは扱わないと決めた。
エオルミアちゃんは天界の使者で、災厄を消す者で、使命の器と呼ばれた。
でも今、自分で術式を止めた。
そしてルズローシヴ=レレイは災厄と呼ばれている。
でも、誰かに親愛を込めて呼ばれた名前かもしれない。
誰かの命より大切なものかもしれない。
もうミッション名を信じていいのか分かりません。
「ミッション:災厄ルズローシヴ=レレイを消滅させよ」
このタイトル、怖くないですか?
消滅させよって言っているんですよ。
でも本当に消滅させていいんですか?
災厄って本当に災厄なんですか?
ルズローシヴ=レレイって何なんですか?
次はライラさんに聞きに行くようです。
怖いです。
今から、伏せていた名前を伝えます。
今から、ルズローシヴ=レレイという名前を伝えます。
怖いです。
でも聞かなければいけないと思います。
聞いてください。
聞いてください、エオルミアちゃん。
リシェラちゃん、手を離さないでください。
ライラさん、何を知っているんですか。
何か言ってください。
いや、言わないでください。
でも言ってください。