ミッション:災厄「ルズローシヴ=レレイ」を消滅させよ 作:Moa
2周目なので、今回はできるだけ違う遊び方をしてみたいと思います。
具体的には、サブイベントを回収する。
選ばなかった選択肢を見る。
勝てなかった相手に挑む。
1周目では意味が分からなかった台詞も、今なら分かるかもしれません。
何気なく通り過ぎた場所にも、何かあるかもしれません。
それから、簡易消滅術式。
1周目ではかなり使っていたのですが、今回は使わずに進めてみようと思います。
強くてニューゲームですし。
装備も引き継いでいますし。
グミもちゃんと買います。宿屋にも泊まります。
1周目の私は、グミ代と宿代を節約するためにミクリオさんを削っていました。
文章にすると最悪ですね。
知らなかったんです。
知らなかったとはいえ。
今回はやりません。
縛りプレイは苦手ですが、2周目なら何とかなるかもしれません。
簡易消滅術式使用回数0回。
この数字を守って進みます。
***
お祭りの願い事のシーンでは、別の選択肢も見てみました。
事前にセーブしてから、1周目では選ばなかった選択肢を見ています。
今回は、見ます。
「ルズローシヴ=レレイが消滅しますように」
選びました。
選んでしまいました。
選択肢にカーソルを合わせた時点で、少し躊躇しました。
いや、かなり躊躇しました。
でも、差分を確認するためです。
2周目です。
選ばなかった選択肢を見ると決めました。
そう自分に言い聞かせて、決定ボタンを押しました。
エオルミアちゃんが、短冊にその願いを書きます。
ルズローシヴ=レレイが消滅しますように。
文字だけなら、1周目と同じです。
ずっと見てきた名前です。
メインミッションにも入っている。
簡易消滅術式の説明欄にも入っている。
天界の記録にも、災厄の識別名として書かれている。
1周目の私は、たぶんこれを押してもそこまで気にしなかったと思います。
メインミッションですし。
一番上にありますし。
ゲーム的には自然な選択肢です。
主人公が天界を救うために旅をしているのだから、その原因となる災厄の消滅を願う。
何もおかしくありません。
でも今は違います。
私は知っています。
ルズローシヴ=レレイはミクリオさんです。
災厄の名前ではない。
現象の名前ではない。
倒すべき怪物の名前でもない。
ミクリオさんの真名です。
だから、これは、
「ミクリオさんが消えますように」
と書いているのと同じです。
やめて。
いや、選んだのは私です。
やめてください。
私が。
エオルミアちゃんは、何も知らない顔で短冊を見ています。
使命ですので、と言います。
エオルミアちゃんも知りません。
知らないから書ける。
天界を救うために必要なことだと信じているから、迷わず願える。
1周目では、その真面目さが頼もしかったはずです。
今見ると怖いです。
そして、選択後。
簡易消滅術式の使用回数が増えました。
増えました。
願っただけで増えるんですね。
戦闘中ではありません。
誰も傷ついていません。
エオルミアちゃんは術式具に触れてすらいません。
剣で斬ったわけでもない。
術式具を使ったわけでもない。
四属性の宝玉を起動したわけでもない。
ただ、消えますようにと願った。
それだけで、ミクリオさんが少し削れる。
怖い。
簡易消滅術式は、回復アイテムを使うたびに対象を削るものだと思っていました。
少なくとも、手段と結果は繋がっていると思っていました。
術式を起動した。
だから使用回数が増えた。
でも違いました。
願いでも増える。
消えてほしいと思うこと自体が、術式の一部になる。
もしかすると、このゲームでは最初から、プレイヤーが「ルズローシヴ=レレイは消すべきものだ」と思うことそのものが、消滅術式に組み込まれていたのかもしれません。
タイトルを見る。
ミッションを読む。
便利な回復アイテムを使う。
お祭りで願う。
そうやって何度も、
消すべきもの。
消えてもいいもの。
消えた方が世界のためになるもの。
だと認識させられる。
そして最後に、消滅させますか、と聞かれる。
怖い。
1周目の時、これを押さなくて本当に良かったです。
リシェラちゃんが笑えますように、を選んだ過去の私、ありがとう。
あの時は百合だから選びました。
一番かわいい選択肢だったから。
リシェラちゃんに幸せになってほしかったから。
深く考えたわけではありません。
でも結果的に、ミクリオさんを一回分救っていました。
百合に救われた命があります。
ただし、今の私は押しました。
差分を見たかったからです。
使用回数0回で進めると言った直後に、増やしました。
最低では?
いや、セーブしてあります。
この後ロードします。
なかったことにします。
なかったことにできます。
ゲーム上は。
セーブデータは選択前に戻ります。
簡易消滅術式の使用回数も0回に戻ります。
エオルミアちゃんは短冊に別の願いを書きます。
ミクリオさんが削られたという判定も、データ上は消えます。
でも、私は見ました。
ルズローシヴ=レレイが消滅しますように、と書かれるところを見ました。
使用回数が増えるところを見ました。
願いだけで誰かの名が削れるところを見ました。
ロードしました。
戻りました。
使用回数は0回です。
短冊もまだ書かれていません。
何も起きていません。
戻りましたが、見たことは戻りません。
エオルミアちゃんがどんな顔でその願いを書いたのかも覚えています。
リシェラちゃんが何と言ったのかも覚えています。
数字が0から1に変わった瞬間も覚えています。
差分回収って、こういう気持ちになるものなんですか?
もっと、選ばなかった会話が見られて楽しい、とか。
新しい一面が分かって面白い、とか。
そういうものだと思っていました。
まさか、殺さなかった人を一回だけ殺してからロードするような気持ちになるとは思いませんでした。
会話はこんな感じでした。
エオルミア「ルズローシヴ=レレイが消滅しますように」
リシェラ「真面目だね」
エオルミア「使命ですので」
リシェラ「そういうところ、エオルミアらしいよ」
1周目なら、普通に微笑ましい会話として読んでいたと思います。
使命に真面目なエオルミアちゃんと、そんな彼女を少し呆れながらも好ましく思っているリシェラちゃん。
実際、リシェラちゃんの言葉には好意があると思います。
でも今は、
「ミクリオさんが消滅しますように」
「真面目だね」
「使命ですので」
「そういうところ、エオルミアらしいよ」
に見えます。
やめてください。
誰も悪くないのが一番きついです。
エオルミアちゃんは使命を果たそうとしているだけです。
リシェラちゃんはエオルミアちゃんの真面目さを肯定しているだけです。
だからこそ、天界の使命そのものがおかしいのだと分かります。
個人の善意や誠実さを、そのまま誰かを消す力に変換しないでください。
***
ちなみに「天界が救われますように」を選ぶと、こうなりました。
エオルミア「天界が救われますように」
リシェラ「……やっぱり、エオルミアは天界を助けたいんだね」
エオルミア「はい。それが私の使命です」
リシェラ「そっか」
エオルミア「ですが」
リシェラ「うん?」
エオルミア「天界が救われることと、貴女が笑えることが、矛盾しない方法を探したいと思います」
リシェラ「……そういうこと、急に言う」
尊いです。
こちらも、1周目より意味が重くなっています。
1周目では、天界を救うこととリシェラちゃんが笑えることは、なんとなく両立すると思っていました。
災厄を倒して、出生義務の問題も何とかして、二人で幸せになる。
そういう普通のハッピーエンドを想像していました。
でも今は、天界を救うためにミクリオさんを消すという選択肢が、実際に存在したことを知っています。
天界を救うこと。
リシェラちゃんを救うこと。
ミクリオさんを消さないこと。
全部を両立させる方法が、本当に必要だったんですね。
誰か一人を世界の解決策にしない方法。
リシェラちゃんの身体を、世界を維持するための解決策にしない。
ミクリオさんの存在を、天界を救うための解決策にしない。
ここまで来ると、エオルミアちゃんの言葉は百合の台詞であると同時に、このゲーム全体の答えにも見えます。
天界が救われることと、貴女が笑えることが、矛盾しない方法を探したい。
そして、それだけではなく。
天界が救われることと、誰かが存在し続けることが、矛盾しない方法を探す。
1周目のエオルミアちゃんは、まだそこまで知りません。
でも、この願いを選んだエオルミアちゃんは、最初から「どちらかを諦める」以外の道を探そうとしていたんですね。
ということで、このデータで進めていきます。
簡易消滅術式使用回数0回。
天界が救われますように。
リシェラちゃんが笑えますように。
ミクリオさんが、消えませんように。
全部、叶えるルートを探します。