魂の葬儀屋 ―Wisp Buriers―   作:ttr@

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五 嵐のあと

俺は華燐と別れた後、部屋に戻った。

 

 扉を開け、中に入り鍵を掛ける。

 

 靴を脱ごうと足元を見ると、霧島の靴の隣に、見覚えのある靴が一足増えていた。

 

 どうやら、みさきが来ているらしい。

 

 奥から、何やら二人の声が聞こえる。

 

 明日の予定を伝えるのに丁度いい。

 

 みさきの部屋まで行く手間も省けたな。

 

 奥へ向かうと、どこから持ってきたのか、トランプを机の上に広げる二人の姿があった。

 

 二人の様子は対照的で、霧島は面白くなさそうに後ろへ両手をつき、みさきは真剣な顔で手札を睨んでいた。

 

「お前たちは何をしているんだ」

 

 俺が戻ってきたことに気が付いたのだろう。

 

 霧島がこちらを見てくる。

 

 その目は、心なしか疲れと期待を滲ませているように見える。

 

 何かあったのだろうか。

 

「祝、こいつどうにかしてくれ」

 

「藪から棒にどうした」

 

「お前が出ていった後すぐに、こいつがトランプを持ってきて付き合わされているんだが……死ぬほど弱いくせに勝つまでやるって言って聞かなくてな」

 

「……悪いことをしたな」

 

 霧島とのやり取りで、俺がいることにようやく気が付いたのだろう。

 

 みさきは俺の方を振り向くと、

 

「あ、お帰りっす。祝先輩聞いてくださいっす。霧島さんがずーっとトランプでズルしてくるんすよ!」

 

 待ちわびたとばかりに、一気にまくし立てる。

 

 それだけじゃ足りないのか、立ち上がって俺の方に向かってくる。

 

「お前は一旦落ち着け」

 

 手刀でみさきの額を軽く叩く。

 

「イテッ」

 

「明日は九時に受付で華燐と落ち合う。さっさと片付けて自分の部屋に戻れ」

 

 みさきが何か文句を言いだす前に、要件を伝える。

 

「……分かったっす」

 

 文句を言う気分じゃなくなったのだろう。

 

 額を抑えながら、そう返事をすると、そそくさと机の上のトランプを片付け始める。

 

 あくびをしているのを見るに、それなりに眠かったようだ。

 

「助かったよ」

 

 霧島が礼を言う。

 

「気にしないでいい。それよりも、話した通り、明日は九時に受付だ。早く寝た方がいい」

 

「そうだな、さっさと清乃江を帰して寝よう」

 

 霧島がみさきの片付けを手伝い始める。

 

 数分後、みさきはトランプと散らかしたものを片付け終え、

 

「おやすみなさい。また明日っす」

 

 そう言って、自分の部屋に帰っていった。

 

 みさきを見送った俺たちは就寝の準備をしようと、扉に背を向ける。

 

 すると、バンッと、扉が開いた。

 

 何事かと扉の方に振り返ると、

 

「あ、霧島さん片付け手伝ってくれてありがとうっす。お礼いうの忘れてたっす」

 

 みさきは霧島にそう伝えると、またしてもバンッと扉を閉め、今度こそ帰っていった。

 

 嵐が過ぎ去った後とは、今のような状況を指すのだろう。

 

 奇妙な静けさが残されていた。

 

「なあ祝、あいつは本当になんなんだ」

 

 霧島が口を開く。

 

「さあな」

 

「……」

 

「とりあえず寝てしまおう」

 

 俺がそう言うと、霧島も無言で頷いた。

 




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