俺は華燐と別れた後、部屋に戻った。
扉を開け、中に入り鍵を掛ける。
靴を脱ごうと足元を見ると、霧島の靴の隣に、見覚えのある靴が一足増えていた。
どうやら、みさきが来ているらしい。
奥から、何やら二人の声が聞こえる。
明日の予定を伝えるのに丁度いい。
みさきの部屋まで行く手間も省けたな。
奥へ向かうと、どこから持ってきたのか、トランプを机の上に広げる二人の姿があった。
二人の様子は対照的で、霧島は面白くなさそうに後ろへ両手をつき、みさきは真剣な顔で手札を睨んでいた。
「お前たちは何をしているんだ」
俺が戻ってきたことに気が付いたのだろう。
霧島がこちらを見てくる。
その目は、心なしか疲れと期待を滲ませているように見える。
何かあったのだろうか。
「祝、こいつどうにかしてくれ」
「藪から棒にどうした」
「お前が出ていった後すぐに、こいつがトランプを持ってきて付き合わされているんだが……死ぬほど弱いくせに勝つまでやるって言って聞かなくてな」
「……悪いことをしたな」
霧島とのやり取りで、俺がいることにようやく気が付いたのだろう。
みさきは俺の方を振り向くと、
「あ、お帰りっす。祝先輩聞いてくださいっす。霧島さんがずーっとトランプでズルしてくるんすよ!」
待ちわびたとばかりに、一気にまくし立てる。
それだけじゃ足りないのか、立ち上がって俺の方に向かってくる。
「お前は一旦落ち着け」
手刀でみさきの額を軽く叩く。
「イテッ」
「明日は九時に受付で華燐と落ち合う。さっさと片付けて自分の部屋に戻れ」
みさきが何か文句を言いだす前に、要件を伝える。
「……分かったっす」
文句を言う気分じゃなくなったのだろう。
額を抑えながら、そう返事をすると、そそくさと机の上のトランプを片付け始める。
あくびをしているのを見るに、それなりに眠かったようだ。
「助かったよ」
霧島が礼を言う。
「気にしないでいい。それよりも、話した通り、明日は九時に受付だ。早く寝た方がいい」
「そうだな、さっさと清乃江を帰して寝よう」
霧島がみさきの片付けを手伝い始める。
数分後、みさきはトランプと散らかしたものを片付け終え、
「おやすみなさい。また明日っす」
そう言って、自分の部屋に帰っていった。
みさきを見送った俺たちは就寝の準備をしようと、扉に背を向ける。
すると、バンッと、扉が開いた。
何事かと扉の方に振り返ると、
「あ、霧島さん片付け手伝ってくれてありがとうっす。お礼いうの忘れてたっす」
みさきは霧島にそう伝えると、またしてもバンッと扉を閉め、今度こそ帰っていった。
嵐が過ぎ去った後とは、今のような状況を指すのだろう。
奇妙な静けさが残されていた。
「なあ祝、あいつは本当になんなんだ」
霧島が口を開く。
「さあな」
「……」
「とりあえず寝てしまおう」
俺がそう言うと、霧島も無言で頷いた。
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