魂の葬儀屋 ―Wisp Buriers―   作:ttr@

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八 パイロン

 現場に到着すると、虚人の姿はおろか、回収できなかった生徒の遺体もどこかに消えていた。

 

 華燐と俺がみさきに目を向けると、彼女は首を横に振った。

 

 感知範囲に虚人はいないらしい。

 

「そうですか」

 

 緊張がないわけではないらしく、華燐が小さく息を吐く。

 

 上位虚人と交戦する上に、霧島を守る必要がある。

 

 それを考えれば、仕方のないことだ。

 

 華燐は胸に手を当て、息を吸うと、

 

「行きましょう」

 

 と言って、彼らがたまり場にしていたという場所に向かう。

 

 位置は被害に遭った生徒から、確認が取れているらしく、草だらけで整備もされていない道を進む。

 

 いつ虚人が襲ってきてもおかしくないが、前を歩く華燐の足取りには迷いがなかった。

 

 みさきがいる以上、不意を突かれなければいいと判断したのだろう。

 

 数分ほど歩き、洞穴が見えてくると、華燐の足が止まった。

 

 たまり場とやらはこの洞穴なのだろう。

 

 華燐の後ろから覗き込むように洞穴の様子を窺う。

 

 入り口には、山から拾ってきたのか、通行止めのパイロンや標識が無造作に立てられていた。

 

 本人たちの意図とは違う形だろうが、ここに立ち入ってはいけない。

 

 状況も相まって、そう思わされるには十分だった。

 

 後ろから肩を掴まれる。

 

 振り向くと、霧島は諦めと愉快さの混じった形容しがたい笑みを浮かべていた。

 

「なあ……祝、俺は今からあんなおっかないところに入って、虚人を誘き出すらしいぞ?」

 

 いつもの霧島なら、冷めた態度を取る場面だ。

 

 覚悟を決めても参っているのは確かなようで、肩は地面に吸い寄せられるように落ち、背中も丸くなっていた。

 

 その姿には生気が感じられなかった。

 

「……」

 

 励ましや鼓舞を期待しているわけではないだろう。

 

 そう考えると、掛ける言葉が見つからなかった。

 

 霧島もただ気持ちを言葉にしたかっただけなのだろう。

 

 俺からの答えがないと分かると、それで十分だと言うように、

 

「ありがとう」

 

 とだけ言って、洞穴の奥を見つめ始めた。

 

「悪いな」

 

 そう返すのが精一杯だった。

 

 意識を目の前の洞穴と任務に戻す。

 

「みさきさん、洞穴の中に虚人はいますか?」

 

「感知できる範囲にはいないっすね。洞穴がどこまで続いてるか分からないと、それ以上は何とも言えないっす」

 

「承知しました」

 

 今のやり取りの間にも、華燐とみさきは段取りについて話を進めていたようだ。

 

 話はまとまったようで、静寂と共に、空気が張り詰める。

 

 自然と華燐に視線が集まる。

 

 華燐は目を瞑り、胸に手を当て、息を整える。

 

 そして――

 

「今より、上位虚人の納棺を行います。全員で生きて帰りましょう」

 

 作戦を開始した。

 




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