魂の葬儀屋 ―Wisp Buriers―   作:ttr@

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十一 模倣

 虚人との距離が再度縮まる。

 

 葬を流した影響か、最初と比べて奴の動きは幾分緩やかで、目で捉えることができた。

 

 だが、こちらはそれ以上に消耗している。

 

 わずかな体力も無駄にすることはできない。

 

 攻撃の予備動作を見逃さないよう、全意識を目の前の虚人に注ぐ。

 

 瞬間、奴の動きがピタと止まる。

 

 足元は土を抉り、跳ぶ力を溜めている。

 

 これは少しまずいかもしれないな。

 

 落雷のような轟音と共に大地が爆ぜる。

 

 虚人の姿が視界から消える。

 

「祝先輩、右っす!」

 

 みさきの声に反射して、逆方向に飛び退く。

 

 虚人の蹴りが空を切ると、遅れて蹴りの衝撃が俺を襲った。

 

 衝撃は服と皮膚を容易く裂き、肉を抉った。

 

 激痛が走る。

 

 追撃に備えなければ。

 

 痛みをこらえ、受け身を取り、虚人を視界に収める。

 

 すると、奴はこちらを追撃するわけでも、華燐たちを襲うわけでもなく、ただ、立ち尽くしていた。

 

 どうやら、今の動きは奴にとっても負荷が大きいらしい。

 

 奴の両足は内側から爆発したように、骨が折れ、折れた骨はいっそ何かの花のように、足の肉を貫き咲いていた。

 

 足が再生していく。

 

 俺もこの隙に抉れた腹に葬を流し治療する。

 

 幸い、表面の肉を抉ったところで傷は止まっていた。

 

 奴の足が再生する速度を見るに、完治まで十数秒か。

 

 華燐とみさきの方に目だけを向ける。

 

 華燐はみさきが設計図を描くのに専念できるよう、虚人との間に立ち構えている。

 

 みさきの方は淀みなく設計図を描き進めているようだった。

 

 あの調子ならあと二度か三度耐えしのげれば、

 

 ――設計図が完成する。

 

 簡単ではないが、決して不可能でもない。

 

 これなら、何とかなる。

 

 そう思ったのがいけなかったのだろうか。

 

 虚人の両足の再生が止まった。

 

 直後、片足だけが再生を再開する。

 

 再生を片足だけに集中させた影響か、両足を再生している時どころか、葬を流す前よりもなお速い。

 

 こいつはどれだけ進化するんだ。

 

 虚人の片足が完治し、先ほどと同じように、足に力を籠め、地面を抉る。

 

 またしても大地が爆ぜる。

 

 だが、来ることが分かっていれば、対処できないわけじゃない。

 

 少し慣れた目で、奴の動きを追う。

 

 互いの間合いに入ると、奴は俺の懐に潜り込み、手刀を繰り出す。

 

 俺がさっき見せた動きだった。

 

 学習速度は称賛に値する。

 

 だが、青い。

 

 虚人は手刀を振りぬき、俺の背後へ回る。

 

 同時に俺の腹に浅く血の花が咲いた。

 

 だが虚人の手刀は、肉を抉る前に止まっていた。

 

 振りぬいた手刀に視線を向けると――手首より先がない事に気付いたようだった。

 

 俺は虚人が手刀を振りぬく間際、軌道上にナイフを構えた。

 

 振りぬかれた手刀は綺麗な放物線を描き、手首から俺のナイフに触れた。

 

 結果は見ての通り、手首から先を失った。

 

 チラと虚人のもう片方の足を見ると、再生を終えているようだった。

 

 こいつは状況を理解すれば、すぐにでもさっきと同じ蹴りを放ってくる。

 

 そうなる前に叩く。

 

 その場でしゃがみ込み、振り向きざまに虚人の両足を深く切りつける。

 

 骨で刃が止まり、切断には至らない。

 

 もう一度……は無理そうだな。

 

 視界の端で、虚人が腕を振り下ろすのが見えた。

 

 虚人の足を払い、虚人の体勢を崩して攻撃を回避する。

 

 後ろに下がり距離を取る。

 

 どうやら、奴は他の何を置いても、足の再生を優先したようだ。

 

 みるみるうちに足の傷が塞がっていく。

 

 数秒もすればまた、攻撃を再開するだろう。

 

 だが、一か所の再生を優先するということは、

 

「みすみす再生を許すとでも、お思いですか?」

 

 他の傷は鎧に覆われてすらいない。

 

 華燐の声と共に、虚人が業火に飲まれた。

 




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