魂の葬儀屋 ―Wisp Buriers―   作:ttr@

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十三 寝覚め

「霧島、話は聞こえているだろう。そろそろ出てきたらどうだ」

 

 俺は草むらに向かって声を掛ける。

 

「まあ、バレてるよな」

 

 霧島が木の陰から姿を現し、気が進まない様子で、こちらへ歩いてくる。

 

 そんな霧島を出迎えるように、華燐が一歩前へ出ると、真剣な面持ちで霧島の目を見据えた。

 

 状況が呑み込めないのか、霧島は眉根を寄せると、こちらに視線を寄越す。

 

 取り合う気はないと、俺は顔を逸らした。

 

「霧島さん」

 

「なんだよ……」

 

 名前を呼ばれ、霧島は居心地が悪そうに返事をする。

 

 華燐はそれを気にすることもなく、

 

「先ほどは助けていただき、ありがとうございます」

 

 そう礼を言って、頭を下げた。

 

「……何のことかわからないな」

 

「さっき、私が殺されそうになった時、短刀を投げてくださったのは霧島さんですよね?」

 

 しらを切ろうとする霧島と、それを許さない華燐。

 

 二人の視線が交わる。

 

「……」

 

「……」

 

 霧島の頬を汗が伝う。

 

「……ッ、ああそうだよ。俺が投げた。これで満足か?」

 

 華燐の視線に耐え切れなくなった霧島が、投げやりに認める。

 

「ふふっ……ええ、もちろんです」

 

 その様子に華燐は満足したようで、口元に手を当て微笑む。

 

 強情さでは華燐の勝ちか。

 

 ……それはそうとして、

 

「霧島、お前はなんで戻ってきたんだ」

 

 短い付き合いだが、わざわざ危険に首を突っ込むような奴でもない……はずだ。

 

「あ、それ私も聞きたかったっす」

 

「私もお聞きしたいです」

 

 みさきと華燐も続く。

 

 どうやら気になっていたのは同じらしい。

 

 俺たちの視線に霧島が押し黙る。

 

 しかし、さっきの華燐との問答もあってか、しばらくすると、霧島は諦めたように肩を落とし、首筋に手を当てた。

 

「短刀、借りたままだったから」

 

「……」

 

 思ってもみなかった霧島の答えに、言葉が詰まる。

 

 本人も無理があると、自覚しているのか所在なさげに視線を動かしていた。

 

 素直じゃないのもここまで行けば、もはや芸術的だな。

 

 自然と霧島を見る目が生暖かくなる。

 

 霧島は俺の目を、いや、俺たちの目を見て、何か勘違いしたのだろう。

 

「燈守の武器を返さないまま、お前たちに死なれたら寝覚めが――」

 

 聞いてもいない言い訳を念仏のように唱え始めた。

 

「アッハハハハ! ひ、ひぃ……っ、無理っす、お腹よじれてもう……!」

 

 みさきがこらえきれずに噴き出した。

 

 よほどおかしかったのか、腹を押さえて地面を転がっている。

 

「……ッ」

 

 そこで霧島も限界が来たらしい。

 

「もういいだろ……俺は現場を保存してくる……」

 

 そう言って、洞穴へ歩いていく。

 

 そんな霧島の後ろ姿を見て、俺と華燐は顔を見合わせると、どちらともなく笑い合った。

 

 その後、みさきに回収班の手配を任せ、俺は華燐と、虚人が納棺された棺の前に立つ。

 

「こいつのこと、どう思った?」

 

 棺をコンと叩く。

 

「虚人としての能力だけなら、もっと強い方もいました。ですが、火に適応された上、あそこまで柔軟に戦う虚人は見たことがありません。恐らくですが、」

 

「ああ、魂の剥がし方が変わったんだろう」

 

 もしくは単に腕を上げたのか。

 

 どちらにせよ吐き気のする話だ。

 

「とにかく、このことはお前からも上に報告しておいてくれ」

 

「わかりました」

 

 華燐は携帯を取り出し、少し離れた場所で話し出す。

 

 独り残された俺は棺を見つめる。

 

 俺たちの推測が当たっていれば、今後はこのレベルの虚人が増えてくる。

 

 今回は華燐たちがいたから、どうにかなった。

 

 だが、今後、俺一人で納棺しなければならない時……俺は人間のままでいられるのだろうか。

 




今回の更新をもって、本作はしばらく更新を休止します。

物語はまだ途中であり、続きを書く意思もありますが、しばらくは別の作品を書きながら、経験を積みたいと考えています。再開時期は未定となりますが、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
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