ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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磁力の洞窟

 

「捕ったぞーーー!!!」

「相変わらず騒がしい奴じゃ、もうちょっと静かに捕まえられんのか」

 

 磁力の洞窟は深い森に囲まれており、黒チョコボでしかたどり着くことができない。

 チョコボの森で黒チョコボを捕まえた一行は、そのまま磁力の洞窟へ向かった。

 磁力の洞窟へ足を踏み入れた瞬間、一行はトロイアで聞いた話の意味を理解した。

 

「……おっっも!!」

「なんちゅう磁力じゃ!こりゃ、金属製の装備しとったらろくに身動きがとれんぞ!」

 

 ギースは全身を引っ張られる感覚に耐えながら一歩踏み出したが、上下左右、あらゆる方向へ身体が引っ張られ、思うように動くことができない。

 無理をすれば動ける。しかし、この状態で戦うのは困難だった。それは一行全員が理解していた。

 

「私の爪なら平気なようです」

 

 ヤンは拳に装備した爪が磁力に引き寄せられる感覚はなく、問題なく扱えることを確認した。

 

「案ずるな!私とセオドールの魔法がついておる!」

「ああ、私も剣ではなく、テラ様と同じ杖を武器にすれば問題なさそうだ」

「一応わしも今持っとるのは木槌じゃからな、戦えるぞ!」

 

 装備さえ工夫すれば、テラたちは問題なく戦える。

 しかし、剣と刀が主の武器であるセシルとギースはそうはいかない。

 

「じゃあ、戦闘はほぼ四人に任せる形になるか……」

「心苦しいが……そうなるな……」

 

 ろくに身動きができない二人が無理に戦いに出るより、動ける四人が、戦った方がよい。

 

「となると、残った問題はあと一つだな」

「一つ?」

「この洞窟じゃ使えない武器や防具をどうするかだよ。さすがに入り口へ放置するわけにもいかないだろ」

 

 金属製の装備は、この洞窟では役に立たないどころか足かせになる。

 だからといって、置き去りにするわけにもいかない。

 洞窟へ放置している間に、魔物に持ち去られたり壊されたりする可能性もあるのだから。

 

「……一緒に持っていくしかあるまい」

「……誰が」

「おぬしとセシルが」

「だよなー」

 

 一応聞いてはみたものの、答えは最初から分かり切っていた。

 戦力となる四人へ荷物を持たせては本末転倒だ。

 となれば、戦闘へ参加しづらい二人が責任を持って運ぶしかない。

 

「ギース、自分の分は自分で持っていくから、他のみんなの装備を分担して持っていこう」

「全身金属装備のお前が何言ってるんだ。俺どころか、全員分かき集めてもセシルより少ないぞ、多分」

 

 他の仲間は比較的軽装で、金属製なのは武器や一部の装飾品程度。

 だが、セシルは違う。

 鎧から籠手、盾に至るまで、装備のほとんどが金属製だ。

 

「セシルは自分の防具だけ持っとけ。それ以外は武器も含めて全部俺が持つから」

「す、すまない……」

「気にするなって、その分いつも助けてもらってるんだから」

 

 そうして使えない武器や防具を二人で抱え、一行は洞窟の奥へと進んでいった。

 途中、何度か魔物の襲撃を受けたが、そのたびに四人が迎え撃ち、危なげなく撃退していく。

 だが、いつもと違う陣形ということもあり、それぞれに疲労の色が見え始めていた。

 安全地帯の魔法陣を見つけると、さすがのギースも弱音を吐いた。

 

「休憩!休憩しようぜ!!俺は戦闘してないけど、さすがに疲れた!!」

 

 大げさに疲れたと騒ぎ、ギースは抱えていた武器や防具を慎重に床へ下して、その場にへたり込む。

 

「確かにそろそろ休憩はすべきだろう。消耗したままで進むのは危険だ」

 

 セオドールの言葉に、誰も異を唱えなかった。

 

「よし、じゃあテント設置するぜ」

「雑用が板についておるの、おぬし」

「まあ、野営で慣れてるし。王族だろうと関係なく、訓練生は下っ端の荷物持ちからだったし」

 

 てきぱきとギースは慣れた手つきでテントを組み立てていく。

 その無駄のない動きを見て、シドは感心したように頷いた。

 

「ちなみに俺の従兄は、釘打ちのエッジといわれたぐらいにうまいぜ」

「なんじゃそのヘンテコな異名」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 休憩を終えた一行は、再び洞窟の奥へと歩みを進める。

 魔物たちの襲撃を退けながら進み続け、やがてセシルたちは最深部へたどり着いた。

 そこには、クリスタルルームによく似た空間が広がっていた。

 

「わざわざクリスタル用の部屋まで作るとはご苦労なことで……」

「オマエタチ、ヨクココマデコレタ!」

 

 声とともに、クリスタルの前へダークエルフが姿を現した。

 ダークエルフは、薄く笑みを浮かべている。

 

「ダガ、ソンナソウビデ、コノワタシノマリョクニ、カテルトオモウカ?」

「セシル殿!」

「ここは我らに任せておけい!」

 

 ヤンとテラが同時に前へ躍り出る。

 

「ムダダ!!」

 

 ダークエルフは嘲るように笑いながら、片手を軽く振り上げる。

 

「ファイラ!」

 

 灼熱の炎がヤンを飲み込む。

 

「ぬおおっ!?」

 

 熱風に押し返され、ヤンは踏み込もうとした足を止められる。

 

「サンダラ!」

 

 炎が消えぬうちに、紫電が走り、テラの身体を鋭く貫いた。

 

「ぐっ……!」

 

「ブリザラ!」

 

 休む間もなく放たれた氷雪が逃げ場なく一行を飲み込み、まとめて吹き飛ばした。

 

「ぐあっ!」

「『れんぞくま』だと!?」

「ダークエルフの魔力……まさかこれほどとは……」

 

 誰一人として立ち上がれない。

 みな、膝をついたまま身体を起こすことすらできなかった。

 

「剣さえ……使えれば……!」

 

 セシルは歯を食いしばる。

 ダークエルフは金属製の武器に弱い──その知識はあった。

 だが、この洞窟では剣を握ることすら許されない。

 この手に剣さえあれば。

 

「コレデトドメダ!!」

 

 ダークエルフが勝利を確信したように腕を振り上げる。

 ──その時だった。

 セシルの胸元、ひそひ草から、優しく澄んだ音色が静かに響き始めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 話は少しさかのぼる。

 トロイア城では、ひそひ草を通してセシルたちの様子を聞いていたギルバートが、その異変に気づいていた。

 

「セシルたちが……危ない!」

 

 ギルバートは勢いよくベッドから身を起こし、そのまま立ち上がる。

 だが、一歩踏み出した瞬間、力の入らない足が崩れ、その場へ膝をついた。

 

「まだ、動ける体ではありません!」

「どこへ行こうというのです!」

 

 医師と看護師は慌ててギルバートを支え、その身体を押し留める。

 

「心配いらない……すぐそこの竪琴まで……う!」

「あなたは、まだ歩くことさえままならぬはず!無理をしては!」

「構わないさ……今、セシルたちを救えるのは僕しか……いない!」

 

 震える足に力を込め、ギルバートは一歩、また一歩と前へ進む。

 倒れそうになるたび壁へ手をつき、それでも決して歩みを止めなかった。

 ようやく自らの竪琴へたどり着くと、そっと抱き寄せる。

 そして静かに息を整え、弦へ指を添えた。

 

 仲間へ届け──

 

 その願いを音色へ込め、ギルバートは竪琴を奏ではじめた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「おお……」

「この温かい音色は……」

「ギルバートの竪琴だ!」

「ナンダ!コノフカイナオトハ!!グ……ゲゲゲ!」

 

 ひそひ草から流れるギルバートの竪琴の音色に、ダークエルフは苦しげに顔を歪める。

 

「今だセシル!この音色が流れている間はヤツも磁力を操ることは出来ないはずだ!」

 

 ひそひ草から、ギルバートの声が響く。

 

「剣を……剣を装備するんだ!」

「ギルバート……分かった!」

「ふっ……重い中はるばる持ってきたかいがあってよかったよ!」

 

 ギースは抱えていた武器や防具を急いで放り出す。

 セシルたちはそれぞれ装備を身につけ直し、再びダークエルフへ向き直った。

 セシルは剣を握りしめた。

 

「待たせたな、ダークエルフ」

「ガゴゴ……ヨクモ!オマエタチコロス!!」

 

 ダークエルフは恨みを込めた目で一行を睨みつける。

 

「祝!磁力からの解放だ!!」

 

 ギースは刀を軽く振り、何度か肩を回して身体の動きを確かめる。

 重苦しい束縛が嘘のように消え去り、その表情はこれ以上ないほど晴れやかだった。

 刀を肩へ担ぐと、口元に獰猛な笑みを浮かべる。

 

「覚悟しろよ、お前のだいっっきらいな金属で痛めつけてやるよ」

「なんとも悪そうな笑みじゃの」

「これまでの道中でだいぶ我慢をしていたようだな」

 

 先ほどまで荷物持ちに徹していた男とは思えないほど、生き生きとした様子だった。

 

「ウググ……ナメルナ!!」

 

 怒りに任せてダークエルフは魔法を放つが、先ほどまでの勢いはない。

 セシルの剣、ヤンの拳、テラとセオドールの魔法が次々と襲いかかり、ダークエルフは防戦一方となる。

 

「ギルバートの竪琴のおかげで、だいぶ力を削がれてるな!」

 

 ギースが刀を振り抜く。

 その一撃に、ダークエルフは大きくのけぞった。

 

「ナラバ……スガタヲカエルシカナイ!!」

「!?」

 

 次の瞬間、ダークエルフの全身が黒い瘴気に包まれる。

 骨が軋み、肉体が膨れ上がり、人の姿はみるみるうちに巨大な竜へと変貌していく。

 

「グオオオオオオッ!!」

 

 咆哮が洞窟を震わせた。

 

「ダークエルフじゃないのかよ!」

 

 ダークドラゴンへと変貌した姿を見て、ギースは思わず叫んだ。

 

「一体どっちだよ!ダークエルフが正体なのか、ダークドラゴンが正体なのか!」

「この際どっちでも構わん!!」

 

 シドの一喝が洞窟に響く。

 

「グオオオオッ!!」

 

 ダークドラゴンは大きく息を吸い込み、漆黒のブレスを吐き出した。

 

「避けろ!!」

 

 セシルの叫びに、一行は咄嗟に左右へ飛び退く。

 ブレスは凄まじい勢いで通り過ぎ、背後の岩壁を激しく抉った。

 セシルは地を蹴り、一気に間合いを詰める。

 

「はあああっ!!」

 

 剣がダークドラゴンを斬り裂く。

 聖なる力を帯びた一撃に、ダークドラゴンは大きくひるみ、苦しげな咆哮を上げた。

 

「きいとるぞ!!」

「図体はでかくなっても、苦手なものは変わらないんだな!」

 

 言うが早いか、ギースは地を蹴った。

 低い姿勢のまま一直線に駆け抜け、その姿は黒い影のようにダークドラゴンの懐へ潜り込む。

 ダークドラゴンは巨大な尾を振り回し、ギースを薙ぎ払おうとする。

 

「遅い」

 

 だが、ギースは紙一重で身をひねり、尾を軽々とかわす。

 そのまま一歩、また一歩と相手の死角へ滑り込み、音もなく刀を鞘へ納めた。

 

「今、だいぶ体が軽く感じてな」

 

 口元に笑みが浮かぶ。

 

「父さんほどではないが、それなりに様にはなるだろう。居合──『疾風』!」

 

 鍔を押し出す。

 次の瞬間、白銀の閃光が走った。

 抜き放たれた刃は一瞬でダークドラゴンの腹を薙ぎ払い、そのままギースはダークドラゴンの背後へ抜ける。

 一拍遅れて、黒い鱗が弾け飛び、鮮血が舞った。

 

「グオオオオオッ!!」

「エルフ状態の方が厄介だったぜ!」

 

 巨大な身体となったことで、その動きは明らかに鈍っていた。

 魔法で近寄らせなかったダークエルフとは違い、今のダークドラゴンではギースの速さを捉えられない。

 

「今だ、セシル!!」

「これで終わりだ!」

 

 セシルは剣を握り締め、ひるんだダークドラゴンへ一気に駆け込む。

 

「はああああっ!!」

 

 渾身の一撃が、黒い巨体を深々と斬り裂いた。

 

「グオオオオオオッ!!」

 

 聖なる光が傷口から溢れ、ダークドラゴンの身体を包み込む。

 巨体は苦しげに身をよじり、やがて力なく崩れ落ちた。

 

「ナゼ……アノオトガ……ココマデ……」

 

 黒い身体が徐々に崩れ、瘴気となって消えていく。

 

「クリスタルサエ……アレバ……エイエンノ……イノチガ……」

 

 その言葉を最後に、ダークドラゴンは完全に消滅した。

 静寂が洞窟を包む。

 戦いの終わりを確かめるように、セシルは手にしたひそひ草を見つめた。

 

「やったぞ、ギルバート!君のおかげだ!」

 

 セシルはひそひ草へ向かって、真っ先に勝利を報告した。

 

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