ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
ゾットの塔を登り始めたセシルたちは、行く手を阻む魔物を次々と退けながら、最上階を目指していた。
ローザの命は、一刻を争う。
立ち止まる暇などない。
襲いかかる魔物を斬り伏せ、魔法で吹き飛ばし、次の階へと駆け上がる。
だが、塔の奥へ進むほど、現れる魔物は強くなっていった。
それでも、一行の足が止まることはなかった。
「ようこそゾットの塔へ!」
「お初にお目にかかる!」
「私たちはこの塔を司る四天王──風のバルバリシア様の片腕!」
声とともに、三人の姉妹が、セシルたちの前に姿を現した。
大、中、小──。
三者三様の姿をした姉妹は、まるで最初からこの場所で待ち構えていたかのように並んでいた。
「メーガス三姉妹のドグ!」
「同じくマグ!」
「私はラグ!」
三姉妹は楽しげに名乗りを上げる。
「残念だがお前たちの行く末はここまで」
「クリスタルは我らがいただく」
「我ら姉妹のデルタアタックでローザとお別れさ!」
三人は不敵な笑みを浮かべ、互いに視線を交わした。
「姉者いくわよ!“リフレク”!!」
ドグが槍を掲げると、魔法の光がマグの身体を包み込む。
マグの周囲には、淡い光の膜が揺らめいていた。
「今よ、ラグ!私に魔法を!」
リフレクの魔法を受けたマグは、大鎌を構えたままセシルたちへ向かっていく。
「うん!マグ姉さん、跳ね返して!“ファイラ”!」
ラグが放った灼熱の炎は、一直線にマグへと迫る。
「「「デルタアターック!!」」」
炎はマグの身体へ触れた瞬間、周囲を覆う光の膜に弾かれた。
跳ね返された炎は軌道を変え、セシルたちへ襲いかかる。
「あっつ!!」
ギースは咄嗟に身をひねる。
完全には避けきれず、炎の余波が肩をかすめた。
焼けるような熱に、ギースは顔をしかめる。
「リフレクで跳ね返した魔法を、攻撃に転じさせたか!」
テラは三姉妹を睨みつける。
後方にいるドグとラグ。
その二人を守るように、マグは大鎌を構えて立ちはだかっていた。
「だったら、あの二人を先に倒せばいい!」
ギースが刀を構え、地を蹴る。
狙うのは、後方で魔法を操るドグとラグ。
マグをすり抜け、一気に二人へ迫ろうとした。
「行かせないよ!」
だが、マグは素早く身を滑らせ、ギースの進路へ割り込んだ。
振り下ろされた大鎌が、ギースの行く手を阻む。
「ちっ!」
ギースは足を止め、横へ跳び退いた。
「妹たちに手は出させないよ!」
マグは大鎌を構え直し、ドグとラグを背にかばうように立つ。
「武器と体型の割にはだいぶ俊敏だな!」
「女性に向かって体型のことを言ったね、お前!デリカシーってものがないのかい!」
「まだ太っちょとは言ってなかっただろ!太っちょとは!」
「言ったぞ、今」
魔物とはいえ女性なのだからと、ギースなりのわずかな良心で、最初は「太っちょ」と直接口にするのを避けていた。
しかし、売り言葉に買い言葉──結局、自分から「太っちょ」と口にしてしまった。
「フン、まあいい!このデルタアタック!貴様らに敗れるか!!」
マグは大鎌を構え直し、妹たちの前へ立ちはだかった。
「ドグ、頼むよ!」
「任せて!」
ドグは槍を構え、魔力を込める。
「“リフレク”!」
淡い光の膜がマグの身体を包み込む。
「ラグ!」
「うん、マグ姉さん!」
三女のラグが杖を掲げる。
「“ブリザラ”!」
鋭い冷気をまとった氷塊が、マグへ向かって飛ぶ。
だが、マグは一歩も動かない。
氷塊は身体を覆う光の膜に触れた瞬間、激しく弾き返された。
「「「デルタアターック!!」」」
反射された氷は軌道を変え、セシルたちへ襲いかかる。
「来るぞ!」
四方から迫る氷の刃。
「同じ手は二度も通じない!」
ギースが床を蹴った。
狙いはマグではない。
その背後にいる二人だ。
だが──。
「行かせないよ!」
マグが反応する。
巨体からは想像できない速度で身体を滑らせ、ギースの前へ割り込んだ。
「同じ手は二度も通じない……そう言っただろ!」
振り下ろされた大鎌を、ギースは紙一重でかわす。
「今だ!」
その瞬間、セシルが横から斬り込んだ。
「なっ!?」
マグは咄嗟に大鎌で受け止める。
妹たちを守ることに意識を向けていたマグは、セシルの一撃によってわずかに体勢を崩した。
「ギース!」
「任せろ!」
ギースはマグの横をすり抜け、後方にいるドグとラグへ迫る。
「しまった!」
マグが慌てて戻ろうとするが、すでに遅い。
連携を崩された三姉妹に、先ほどまでの余裕はなかった。
「“バイオ”!!」
距離を詰められた焦りから、ラグは咄嗟に魔法を放つ。
しかし──。
毒の魔法がギースの身体を包む直前、淡い光の膜が浮かび上がった。
「なっ!?」
ラグが息を呑む。
ギースにかけられていたリフレクが、バイオをそのまま跳ね返したのだ。
反射された毒の魔法は、ラグの意図とは裏腹に、ドグへ向かって飛んでいく。
「きゃああああ!」
まともに魔法を受けたドグは、顔を覆いながら苦しみに呻く。
「よくもドグ姉さんを!!」
ラグが怒りの声を上げ、ギースへ向かおうとした瞬間──。
「悪いが、隙だらけだ」
「ぐあっ!?」
ラグの動きが止まる。
怒りに任せて踏み込んだラグの懐へ、ギースの一撃が深く入った。
「ラグ!!」
妹が倒れる姿を見たドグの表情が歪む。
「貴様あああ!!」
怒りに震える声が、塔の中に響き渡った。
その瞬間、ドグの視界にはギースしか映っていなかった。
その怒りが、周囲への警戒を完全に奪っていた。
「「“ファイガ”!!」」
テラとセオドールの声が重なる。
放たれた炎は、逃げ道を塞ぐようにドグへ迫った。
「!?」
気づいた時には、もう遅い。
「きゃああああああああ!!」
灼熱の炎がドグの身体を包み込む。
「ドグ!ラグ!」
マグが悲痛な声を上げる。
三人が揃ってこそ完成するデルタアタック。
その要である二人を失い、メーガス三姉妹の連携は完全に崩れ去った。
「ドグ……ラグ……!」
妹たちの姿が消えたことで、マグの表情から余裕が消える。
三人で一つ。
三人が揃ってこそ、メーガス三姉妹のデルタアタックは完成する。
だが、その連携はもう戻らない。
「許さない……!」
マグは大鎌を握りしめ、怒りのままにセシルたちへ向かっていく。
大鎌が唸りを上げる。
先ほどまでのような余裕のある戦い方ではない。
妹たちを失った怒りだけを力に変えた、荒々しい攻撃だった。
「くっ!」
セシルは剣で大鎌を受け止める。
だが、見た目からは想像できないほどの重い一撃に、腕が痺れる。
「この力……!」
「まだ終わっておらんぞ!」
横からヤンが踏み込み、マグへ向けて拳を放つ。
「むっ!」
マグは素早く身を翻し、大鎌の柄でヤンの拳を受け流した。
「近接戦も、並の相手ではない……!」
セシルは息を整えながら、改めて目の前の敵を見る。
デルタアタックを失ってなお、マグの戦意は衰えていなかった。
「まだ、私たちは負けてない!!」
マグは再び大鎌を構える。
その姿には、妹たちを失った悲しみを押し殺し、それでも戦おうとする姉としての意地があった。
しかし、三人で完成するはずだった連携は、もう存在しない。
セシルとヤンは互いに視線を交わす。
「ヤン!」
「承知!」
二人は同時に駆け出した。
「うわあああああああ!!」
マグは雄叫びを上げ、大鎌を振り下ろす。
だが、その一撃をセシルが正面から受け止めた。
「ふん!!」
「なっ!?」
力比べの隙を突き、ヤンが横から踏み込む。
「はぁ!!」
鋭い蹴りがマグの体勢を崩す。
「まだ……!」
倒れまいと大鎌を支えに立ち上がろうとするマグ。
だが、そこへセシルが踏み込んだ。
「これで終わりだ!」
渾身の一撃が、大鎌ごとマグの構えを打ち崩す。
「デルタアタックは……」
マグは悔しげに呟く。
「三人が揃ってこそなのに……!」
その言葉には、敗北への悔しさだけではなく、妹たちと共に戦えなくなった悲しみが滲んでいた。
マグの身体は、やがて光の粒となって消えていく。
メーガス三姉妹──。
三人で一つの力を誇った姉妹は、ゾットの塔から完全に消え去った。