ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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ゾットの塔②

 

 ゾットの塔を登り始めたセシルたちは、行く手を阻む魔物を次々と退けながら、最上階を目指していた。

 ローザの命は、一刻を争う。

 立ち止まる暇などない。

 襲いかかる魔物を斬り伏せ、魔法で吹き飛ばし、次の階へと駆け上がる。

 だが、塔の奥へ進むほど、現れる魔物は強くなっていった。

 それでも、一行の足が止まることはなかった。

 

「ようこそゾットの塔へ!」

「お初にお目にかかる!」

「私たちはこの塔を司る四天王──風のバルバリシア様の片腕!」

 

 声とともに、三人の姉妹が、セシルたちの前に姿を現した。

 

 大、中、小──。

 三者三様の姿をした姉妹は、まるで最初からこの場所で待ち構えていたかのように並んでいた。

 

「メーガス三姉妹のドグ!」

「同じくマグ!」

「私はラグ!」

 

 三姉妹は楽しげに名乗りを上げる。

 

「残念だがお前たちの行く末はここまで」

「クリスタルは我らがいただく」

「我ら姉妹のデルタアタックでローザとお別れさ!」

 

 三人は不敵な笑みを浮かべ、互いに視線を交わした。

 

「姉者いくわよ!“リフレク”!!」

 

 ドグが槍を掲げると、魔法の光がマグの身体を包み込む。

 マグの周囲には、淡い光の膜が揺らめいていた。

 

「今よ、ラグ!私に魔法を!」

 

 リフレクの魔法を受けたマグは、大鎌を構えたままセシルたちへ向かっていく。

 

「うん!マグ姉さん、跳ね返して!“ファイラ”!」

 

 ラグが放った灼熱の炎は、一直線にマグへと迫る。

 

「「「デルタアターック!!」」」

 

 炎はマグの身体へ触れた瞬間、周囲を覆う光の膜に弾かれた。

 跳ね返された炎は軌道を変え、セシルたちへ襲いかかる。

 

「あっつ!!」

 

 ギースは咄嗟に身をひねる。

 完全には避けきれず、炎の余波が肩をかすめた。

 焼けるような熱に、ギースは顔をしかめる。

 

「リフレクで跳ね返した魔法を、攻撃に転じさせたか!」

 

 テラは三姉妹を睨みつける。

 後方にいるドグとラグ。

 その二人を守るように、マグは大鎌を構えて立ちはだかっていた。

 

「だったら、あの二人を先に倒せばいい!」

 

 ギースが刀を構え、地を蹴る。

 狙うのは、後方で魔法を操るドグとラグ。

 マグをすり抜け、一気に二人へ迫ろうとした。

 

「行かせないよ!」

 

 だが、マグは素早く身を滑らせ、ギースの進路へ割り込んだ。

 振り下ろされた大鎌が、ギースの行く手を阻む。

 

「ちっ!」

 

 ギースは足を止め、横へ跳び退いた。

 

「妹たちに手は出させないよ!」

 

 マグは大鎌を構え直し、ドグとラグを背にかばうように立つ。

 

「武器と体型の割にはだいぶ俊敏だな!」

「女性に向かって体型のことを言ったね、お前!デリカシーってものがないのかい!」

「まだ太っちょとは言ってなかっただろ!太っちょとは!」

「言ったぞ、今」

 

 魔物とはいえ女性なのだからと、ギースなりのわずかな良心で、最初は「太っちょ」と直接口にするのを避けていた。

 しかし、売り言葉に買い言葉──結局、自分から「太っちょ」と口にしてしまった。

 

「フン、まあいい!このデルタアタック!貴様らに敗れるか!!」

 

 マグは大鎌を構え直し、妹たちの前へ立ちはだかった。

 

「ドグ、頼むよ!」

「任せて!」

 

 ドグは槍を構え、魔力を込める。

 

「“リフレク”!」

 

 淡い光の膜がマグの身体を包み込む。

 

「ラグ!」

「うん、マグ姉さん!」

 

 三女のラグが杖を掲げる。

 

「“ブリザラ”!」

 

 鋭い冷気をまとった氷塊が、マグへ向かって飛ぶ。

 だが、マグは一歩も動かない。

 氷塊は身体を覆う光の膜に触れた瞬間、激しく弾き返された。

 

「「「デルタアターック!!」」」

 

 反射された氷は軌道を変え、セシルたちへ襲いかかる。

 

「来るぞ!」

 

 四方から迫る氷の刃。

 

「同じ手は二度も通じない!」

 

 ギースが床を蹴った。

 狙いはマグではない。

 その背後にいる二人だ。

 

 だが──。

 

「行かせないよ!」

 

 マグが反応する。

 巨体からは想像できない速度で身体を滑らせ、ギースの前へ割り込んだ。

 

「同じ手は二度も通じない……そう言っただろ!」

 

 振り下ろされた大鎌を、ギースは紙一重でかわす。

 

「今だ!」

 

 その瞬間、セシルが横から斬り込んだ。

 

「なっ!?」

 

 マグは咄嗟に大鎌で受け止める。

 妹たちを守ることに意識を向けていたマグは、セシルの一撃によってわずかに体勢を崩した。

 

「ギース!」

「任せろ!」

 

 ギースはマグの横をすり抜け、後方にいるドグとラグへ迫る。

 

「しまった!」

 

 マグが慌てて戻ろうとするが、すでに遅い。

 連携を崩された三姉妹に、先ほどまでの余裕はなかった。

 

「“バイオ”!!」

 

 距離を詰められた焦りから、ラグは咄嗟に魔法を放つ。

 しかし──。

 毒の魔法がギースの身体を包む直前、淡い光の膜が浮かび上がった。

 

「なっ!?」

 

 ラグが息を呑む。

 ギースにかけられていたリフレクが、バイオをそのまま跳ね返したのだ。

 反射された毒の魔法は、ラグの意図とは裏腹に、ドグへ向かって飛んでいく。

 

「きゃああああ!」

 

 まともに魔法を受けたドグは、顔を覆いながら苦しみに呻く。

 

「よくもドグ姉さんを!!」

 

 ラグが怒りの声を上げ、ギースへ向かおうとした瞬間──。

 

「悪いが、隙だらけだ」

「ぐあっ!?」

 

 ラグの動きが止まる。

 怒りに任せて踏み込んだラグの懐へ、ギースの一撃が深く入った。

 

「ラグ!!」

 

 妹が倒れる姿を見たドグの表情が歪む。

 

「貴様あああ!!」

 

 怒りに震える声が、塔の中に響き渡った。

 その瞬間、ドグの視界にはギースしか映っていなかった。

 その怒りが、周囲への警戒を完全に奪っていた。

 

「「“ファイガ”!!」」

 

 テラとセオドールの声が重なる。

 放たれた炎は、逃げ道を塞ぐようにドグへ迫った。

 

「!?」

 

 気づいた時には、もう遅い。

 

「きゃああああああああ!!」

 

 灼熱の炎がドグの身体を包み込む。

 

「ドグ!ラグ!」

 

 マグが悲痛な声を上げる。

 三人が揃ってこそ完成するデルタアタック。

 その要である二人を失い、メーガス三姉妹の連携は完全に崩れ去った。

 

「ドグ……ラグ……!」

 

 妹たちの姿が消えたことで、マグの表情から余裕が消える。

 三人で一つ。

 三人が揃ってこそ、メーガス三姉妹のデルタアタックは完成する。

 だが、その連携はもう戻らない。

 

「許さない……!」

 

 マグは大鎌を握りしめ、怒りのままにセシルたちへ向かっていく。

 大鎌が唸りを上げる。

 先ほどまでのような余裕のある戦い方ではない。

 妹たちを失った怒りだけを力に変えた、荒々しい攻撃だった。

 

「くっ!」

 

 セシルは剣で大鎌を受け止める。

 だが、見た目からは想像できないほどの重い一撃に、腕が痺れる。

 

「この力……!」

「まだ終わっておらんぞ!」

 

 横からヤンが踏み込み、マグへ向けて拳を放つ。

 

「むっ!」

 

 マグは素早く身を翻し、大鎌の柄でヤンの拳を受け流した。

 

「近接戦も、並の相手ではない……!」

 

 セシルは息を整えながら、改めて目の前の敵を見る。

 デルタアタックを失ってなお、マグの戦意は衰えていなかった。

 

「まだ、私たちは負けてない!!」

 

 マグは再び大鎌を構える。

 その姿には、妹たちを失った悲しみを押し殺し、それでも戦おうとする姉としての意地があった。

 しかし、三人で完成するはずだった連携は、もう存在しない。

 セシルとヤンは互いに視線を交わす。

 

「ヤン!」

「承知!」

 

 二人は同時に駆け出した。

 

 

「うわあああああああ!!」

 

 マグは雄叫びを上げ、大鎌を振り下ろす。

 だが、その一撃をセシルが正面から受け止めた。

 

「ふん!!」

「なっ!?」

 

 力比べの隙を突き、ヤンが横から踏み込む。

 

「はぁ!!」

 

 鋭い蹴りがマグの体勢を崩す。

 

「まだ……!」

 

 倒れまいと大鎌を支えに立ち上がろうとするマグ。

 だが、そこへセシルが踏み込んだ。

 

「これで終わりだ!」

 

 渾身の一撃が、大鎌ごとマグの構えを打ち崩す。

 

「デルタアタックは……」

 

 マグは悔しげに呟く。

 

「三人が揃ってこそなのに……!」

 

 その言葉には、敗北への悔しさだけではなく、妹たちと共に戦えなくなった悲しみが滲んでいた。

 マグの身体は、やがて光の粒となって消えていく。

 メーガス三姉妹──。

 三人で一つの力を誇った姉妹は、ゾットの塔から完全に消え去った。

 

 

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