ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
地底の入り口を探す一行は、飛空艇を使い、世界各地を巡った。
そして、地底に関する古い伝承が残るアガルトの村へたどり着いた。
「ここが……アガルトの村か」
「ここに住んでる人は、ドワーフの子孫って話だっけ?」
ギースは村の様子を見渡す。
村には穏やかな空気が流れ、家々の間では子どもたちが楽しそうに遊んでいた。
これまで訪れた町や城とは違う、のどかな雰囲気に包まれている。
地底への入り口に関する手がかりを求め、一行はこの村を訪れていた。
「ああ。そして、ドワーフは地底に住んでいた種族だと、伝承にはある」
「地底について何か知っている人がいるかもしれないな」
セシルは仲間たちを見回す。
「手分けして、村の人たちに話を聞こう」
「了解!」
「分かった」
一行はそれぞれ、村の中へ散っていった。
◇ ◇ ◇
セシルは村人たちに、ドワーフや地底について話を聞いて回る。
しかし、伝承について知る者はいても、地底へ行く方法に繋がる情報は得られなかった。
手がかりが見つからないことに、セシルの表情には、わずかな焦りが浮かぶ。
「ねえ」
そんなセシルに、誰かが声をかけた。
「……君は?」
セシルが、声の方へ振り向く。
すると、いつからそこにいたのか、銀色の髪をした小さな少女が静かに立っていた。
「お兄ちゃん、地底を探してるの?」
突然の問いに、セシルは目を瞬かせる。
「……私、地底まで続くって言われる井戸を知ってるよ」
「本当かい!」
思いがけない言葉に、セシルの表情が明るくなる。
「うん、案内してあげる。こっち!」
少女はそう言うと、村の奥へ向かって歩き出した。
セシルは少女の後を追い、村外れにある古びた井戸へたどり着く。
「ここは……」
「アガルトの村で古くから伝わってる井戸」
長い年月を経た石造りの縁には、ところどころ苔が生えている。
中をのぞき込んでも、底は見えなかった。
「とってもふかーい井戸なんだって」
「確かに……底なしのように深そうだ……」
セシルは井戸の中をのぞき込む。
もし、ここが地底へ続く入り口なのだとしたら──
「……まさか、この中へ飛び込むのか?」
深い闇の底からは、何の音も聞こえなかった。
「何してるんだセシル」
「ギース!?」
井戸をのぞき込んでいたセシルは、不意に背後から聞こえた声に驚き、振り返った。
「僕は、この子に案内されて……あれ?」
「どうした?」
セシルはあたりを見渡すが、この井戸まで案内してくれた銀色の髪の少女の姿は、どこにもなかった。
「女の子を見なかったかい?」
「いや、見てないぞ」
ギースは不思議そうに首を傾げる。
「一体どこに……あれ?」
「どうした?」
セシルは懐に手を入れる。
すると、地底への鍵となる『マグマの石』が、明らかに熱を増していることに気づいた。
「『マグマの石』が急に熱く……」
「急にか?俺にも持たせてくれ」
ギースはセシルからマグマの石を受け取る。
「確かに……だんだん熱くなって──って、あっちゃ!?」
ギースは熱さに耐えきれず、反射的に石を放り投げた。
マグマの石は綺麗な放物線を描き、そのまま井戸の中へ落ちていく。
「あ」
「ああー!?」
ギースは慌てて井戸をのぞき込む。
しかし、井戸の中は暗く、石の行方は分からなかった。
「ちょ、ちょっと取ってくる!」
「ま、待つんだギース!装備も無しに飛び込むな!!」
身一つで飛び込もうとしたギースをセシルは慌てて止める。
そんな時──
「な、なんだ!?」
大地が大きく揺れた。地響きが村全体を震わせる。
そして──遠く北の山から、轟音とともに噴煙が上がった。
「噴火したー!!?」
「えぇ!?」
突然の出来事に、セシルとギースは呆然と山を見つめる。
「ここにおったか!セシル!ギース!」
「シド!」
駆けつけたシドは、二人のもとへ急いで近づく。
「飛空艇に乗り込め!北の山に大穴ができたぞ!」
「なんだって!?」
◇ ◇ ◇
「本当に大穴ができてる……」
ローザは北の山にぽっかりと開いた穴に、驚きを隠せなかった。
「しかしなぜ急に山が噴火をしたのか」
「………………」
「………………」
ヤンの疑問に、心当たりある二人は気まずそうに黙る。
「セシル、ギース。お前たち何か知っているな」
明らかに様子がおかしい二人を見て、カインは問いかける。
「そ、それが……」
「……お、俺の不注意で、『マグマの石』を井戸に落としまして……」
ギースは恐る恐る手を挙げ、先ほどの失態を告げる。
ある意味では幸運だったが、危うく地底への鍵を失うところだった。
「何やっとんじゃ、おぬし」
「いや、めっちゃ熱かったんだって!放り投げても仕方ないくらい熱かったんだって!」
必死に弁明するギースを、シドは呆れたように見つめた。
「ともかくあの大穴が、地底の入り口だろう」
セシルは北の山へ視線を向ける。
「シド、大穴の先へ向かってくれ」
「任せておけ! 行くぞ、エンタープライズ!」
シドの声に応えるように、飛空艇は大きく動き出した。
◇ ◇ ◇
大穴を抜けた先に広がっていたのは、見渡す限りのマグマの海だった。
煮えたぎるマグマから立ち上る熱気が、エンタープライズを包み込む。
「熱い……」
「ここが、地底……?」
地上とはまるで違う光景に、セシルたちは言葉を失う。
「くっ……船体が焼けてしまう!陸地を通っていくぞ!」
エンタープライズはマグマを避け、地底に続く陸地の上を進んでいく。
「……?」
「どうした、ギース」
「い、いや……なんでもない。気のせい、だよな」
ギースは遠くを見つめる。
地底の景色には不釣り合いなほど、天高くそびえる一つの塔。
その姿は、なぜかギースが何度も見たことのある塔によく似ていた。
「あれは!?」
「赤い翼!!」
地底の空で、赤い翼と戦車が激しい砲撃を交わしていた。
砲弾が飛び交い、爆発が地底の空を赤く染める。
「一足遅かったか!」
「戦っているのは……?」
セシルたちが状況を把握するより早く、砲撃の一つがエンタープライズのすぐそばで炸裂した。
激しい衝撃に、船体が大きく揺れる。
「ええい!強行突破する!しっかりと掴まっとれい!」
シドは操縦桿を強く握り、砲撃の飛び交う戦場へエンタープライズを突入させた。
セシルたちは船内の手すりや壁へ必死にしがみつく。
轟音とともに、砲弾がエンタープライズの船体を直撃した。
「痛いか?エンタープライズ!辛抱してくれい!」
シドは傷ついた船体へ叫びながら、必死に操縦を続ける。
だが、エンタープライズは大きく傾いた。
「落ちる!」
飛空艇は制御を失い、地上へ向かって急降下する。
そして、激しい衝撃とともに、エンタープライズは地底の大地へ墜落した。
「……みんな無事か?」
「何とか……」
セシルは周囲を見渡し、仲間たちの無事を確認する。
激しい衝撃を受けたものの、幸いにも大きな怪我を負った者はいなかった。
「……じゃが、エンタープライズがいかれてもうた……このまま飛ぶのは危険じゃな」
シドは傷ついた船体を確かめながら、険しい表情を浮かべる。
「仕方ない……降りてみよう」
セシルたちはエンタープライズを降り、地底の大地へ足を踏み入れた。
周囲を見渡すと、すぐ近くに大きな城がそびえ立っていた。
「……あれは?」
◇ ◇ ◇
「ゴルベーザ悪いやつー!でも、あんたらそうじゃないみたい!」
「王様呼んでるー!ジオット王に会うといいー!」
城へ近づくと、ドワーフの兵士たちが口々に歓迎した。
セシルたちは彼らに案内され、城の奥にある王の間へと向かう。
「いやはや、ご無事だったか」
「あなたは?」
「私は、この地底世界を治めるドワーフ王、ジオット」
ひげを蓄えた小柄な男性が、セシルたちを出迎えた。
「闇のクリスタルは!僕らはゴルベーザからクリスタルを守るために地底にきたんです」
「やはり、そのことできなすったか。ヤツらの仲間にしては砲撃を受けておったからの。我々も危うく撃ち落とすところじゃった」
ジオットは、エンタープライズが戦場へ現れた時のことを思い返す。
敵の飛空艇であれば、ドワーフの戦車隊も容赦なく攻撃していた。
しかし、赤い翼から砲撃を受けている姿を見て、ゴルベーザの仲間ではないと判断したのだ。
「地底のクリスタルは、まだ無事なのか?」
「残念じゃが、四つのうち二つはヤツらの手に渡ってしまった」
「間に合わなんだか……」
地上のクリスタルに続き、地底でもすでに二つを奪われていた。
「しかし、この城のクリスタルはまだ無事じゃ、ドワーフ戦車隊が何とか追い返した」
「さっき、飛空艇と戦っていた戦車ですね」
「ほう、あれは飛空艇と申すか。上の世界ではあのようなものがあるとは……自慢の戦車隊も、空から攻撃されてはちと苦しい」
ジオットは感心したように頷いた。
空を自在に飛び回り、上空から攻撃を仕掛ける飛空艇は、ドワーフたちにとって未知の兵器だった。
「そうじゃ、そなたたちの飛空艇とやらで援護してくれぬか?」
「それが、さっきの砲撃と不時着のせいで、ちいとばかりいかれちまったんですわい」
クリスタルを守るため、力を貸したい気持ちはあった。
しかし、エンタープライズは、戦闘による砲撃と墜落の衝撃で大きな損傷を受けており、今飛び立つことはできなかった。
「修理に必要なものなら用意させるが?」
「応急処置ぐらいはできるじゃろうが、地底の溶岩の熱には船体がもたん」
シドは腕を組み、しばらく考え込む。
「地上に戻り、ミスリルで装甲を施さんとな!よっしゃ、ひとっ走り行ってくるかの!」
「シド!」
「なーに、すぐ戻るわい!パワーアップして帰ってくるからいい子で待っとるんじゃぞ!」
「気を付けて……」
「ほっほ、ローザ!ワシに惚れるなよ!」
シドは豪快に笑いながら、王の間を後にした。
「ジオット王、この城のクリスタルはいったいどこに?」
シドを見送った後、セシルはジオット王へクリスタルの場所を尋ねる。
「何を隠そう、この玉座の裏の隠し部屋じゃ!これならば、私の目の黒いうちは安全というワケじゃ!」
「!」
ジオット王は、隠し場所に絶対の自信を持っているようだった。
しかし、その直後、ヤンは鋭い視線を周囲へ向ける。
「誰か盗み聞きしている!」
「なにやつ!?」
全員あたりを見渡すが、それらしき人物は見つけられなかった。
「誰もいないぞ?」
「この先に気配を感じた!」
「扉を開けい!」
「ラリ!」
ジオットの命を受け、兵士が玉座の裏にある隠し扉を開いた。
セシルたちは隠し部屋へ駆け込むが、中へ入った直後、背後で扉が閉じた。
「開かない!」
「閉じ込められたか!?」
カインが扉を叩くが、びくともしない。
扉の向こうからは、ドワーフたちが閉じた扉を開けようとする声が、かすかに聞こえていた。
「キャーホッホッホッ!」
「?」
「人形が!」
クリスタルルームの奥には、六体の人形が並んでいた。
人形たちは、まるで一斉に糸を引かれたかのように、軽快な足取りで踊り始める。
「僕らは陽気なカルコブリーナ!」
「怖くてかわいい人形さ!」
「ばーかめ!」
「のこのこやってくるからさ!」
「キミらを倒して、ゴルベーザ様の」
「手土産にさせてもらうよ!」
六体の人形は楽しげに踊りながら、セシルたちへ指を突きつけた。
「キャーホッホッホッ!」
「くるぞ!!」
不気味な笑い声とともに、人形たちは一斉に動き出す。
六体の人形が、セシルたちへ襲い掛かった。