ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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ドワーフ城②

 

 六体の人形が、セシルたちへ襲い掛かる。

 

「“プロテス”!」

 

 ローザの魔法で淡い光が仲間たちを包んだ。

 薄い光の膜が身体を覆い、仲間たちは迫り来る人形たちを迎え撃つ。

 

「随分と気味の悪い人形だな、こいつら」

「えー!ひどい!こんなかわいい人形に!」

 

 ギースの言葉に腹を立てたのか、人形たちは一斉にギースへ向き直った。

 

「ひどいこと言う人は、こうしてやるー!」

「みんなー!かかれー!」

 

 人形たちは楽しそうな笑い声を上げながら、ギースへ一斉に襲い掛かった。

 

「ちっ!」

「残念!」

 

 最初に飛び掛かってきた人形を躱し、ギースは刀を振り抜く。

 しかし、人形はまるで踊るように身体をひねり、刃を紙一重でかわした。

 

「だっ!」

「無念!」

 

 続けて迫る人形へ斬りかかる。

 だが、その人形はギースを嘲笑うようにくるりと方向を変え、そのまま別の場所へ飛び去った。

 

 

「でっ!」

「また来週!」

 

 人形たちは笑い声を上げながら、からかうように身をひるがえし、攻撃をかわしていく。

 

「こんの……チビ人形たちが!ちょこまかと!!」

 

 自分の攻撃を避けられていることよりも、遊ばれているような人形たちの態度に、ギースの苛立ちは次第に募っていった。

 

「一体ずつでは埒が明かん!まとめて倒す!」

 

 ヤンが静かに息を整える。

 

「はああっ!!」

 

 鋭い蹴りが放たれ、迫っていた人形たちをまとめて吹き飛ばした。

 

「いったーい!」

「キンニクムキムキ何をするー!」

 

 カルコブリーナたちは体勢を立て直すと、一斉にヤンを睨みつけた。

 次の瞬間、人形たちの瞳が妖しく光る。

 

「なんと!」

 

 放たれた光線を、ヤンはとっさに身をひねってかわした。

 光線は背後の壁へ突き刺さり、激しい火花を散らした。

 

「キャーホッホッホッ!こんなかわいい人形を痛めつける悪い奴は、ゴルベーザ様に代わってお仕置きだ!」

「それで、かわいい人形は無理ないか!?」

「魔物にそれは愚問だろう」

「そうだけど」

 

 人形たちの理屈に思わずツッコミを入れるギース。

 しかしカインは、魔物相手に理屈を求めても仕方ないと、あっさり切り捨てる。

 

「みな、下がれ──“ファイガ”!!」

 

 セオドールの言葉に、前にいた者は下がる。

 みながカルコブリーナから離れたのと同時にセオドールが魔法を放つ。

 いつもの炎ではない、ゴルベーザが放っていた魔法剣が幾つも生まれ、カルコブリーナたちへ襲い掛かった。

 

「!?」

「ゴルベーザの技!?」

「試しに真似してみたが、すさまじく精神力を消費するな」

 

 魔法剣は、ただ魔力を放つ魔法とは違う。

 形のない魔力へ形を与え、剣として維持し続けなければならない。

 わずか一度放っただけで、セオドールの精神力は大きく削られていた。

 それを苦もなく操っていたゴルベーザの力に、改めて驚かされる。

 

「あつーい!燃える燃える!」

「うわー!大変大変!」

 

 飛来する魔法剣を素早くかわす人形もいた。

 しかし、避けきれなかった数体には炎の剣が深々と突き刺さる。

 刃に宿る灼熱の炎が人形たちを包み、その小さな身体を焼いていく。

 

「あちちちち!」

「熱いよぉ!」

「こんなかわいい人形に何をする!」

「こうなったら奥の手!」

「みんなー!集まれー!」

「合体だー!」

 

 人形たちは一斉に動き出す。

 バラバラだった六体の身体が、まるで見えない力に引き寄せられるように集まっていく。

 手足が絡み合い、身体が重なり、異様な音を立てながら一つの形へと変わっていく。

 

 

 

 やがてそこに現れたのは──六体の人形が合体した、巨大な一体の人形だった。

 

「やっぱかわいくないって!!」

 

 先ほどまで以上に異様な姿となった人形を見て、ギースは思わず叫ぶ。

 しかし、巨大なカルコブリーナは気にした様子もなく、不気味な笑い声を響かせた。

 

「さあ、いっけー!」

 

 カルコブリーナは右手を大きく前へ突き出す。

 次の瞬間、巨大な腕が本体から切り離され、勢いよくセシルへ向かって飛んでいく。

 

「ぐっ!」

「セシル!」

 

 セシルはとっさに剣を構え、飛来した巨大な拳を受け止めた。

 

「重い……!」

 

 ただの人形の拳とは思えない衝撃に、セシルの足元が大きく後ろへ滑った。

 

「大丈夫!?」

 

 ローザがすぐさま駆け寄る。

 セシルの傷を確認すると、迷うことなく魔法を唱えた。

 

「“ケアルラ”!」

 

 淡い光がセシルの身体を包み込み、受けた衝撃で痛む身体を癒していく。

 しかし、カルコブリーナはその様子を見て、嬉しそうに笑った。

 

「まだまだ遊べるねー!キャーホッホッホッ!正義の使者!カルコブリーナ様のおとーりだ!!覚悟しろー!」

 

 カルコブリーナは楽しげに笑いながら、巨大な身体を揺らして迫ってくる。

 その巨体が一歩踏み出すたび、大きな足音がクリスタルルームに響いた。

 

「つぶれちゃえー!」

 

 カルコブリーナが巨大な腕を振り下ろす。

 

「散れ!」

 

 カインの声に合わせ、全員が左右へ飛び退く。

 直後、床が大きく砕けた。

 その隙を逃さず、ギースは巨大な腕を駆け上がっていく。

 

「見えた!!」

「ギース!?」

 

 そのまま勢いを止めず、カルコブリーナの顔へと迫る。

 

「ぶっちゃけ、人形相手に効くかどうかわからないが……」

 

 ギースは刀を構えた。

 

「秘儀! 目つぶし!!」

「うわああ!?」

 

 刀が人形の目へ深く突き刺さる。

 もちろん、人形相手にどれほど効果があるかなど分からない。

 それでも、突然の攻撃にカルコブリーナは大きくのけぞった。

 

「うぅ!こいつぅ!!」

「おっと!」

 

 怒ったカルコブリーナが、逆の手でギースをはたこうとする。

 しかし、ギースはすぐに刀を抜き、その勢いのまま飛び上がった。

 カルコブリーナの手はギースを捉えることなく、そのまま自分の顔へ叩きつけられる。

 

「いったぁーい!?」

 

 ギースは着地すると、巨大な人形を見上げた。

 

「的がデカい分、さっきよりはやりやすい!」

「く……このぉ、僕のかわいい目を!!」

「まだいうか!だからかわいくないって言ってるだろ!」

 

 カインは槍を構えたまま、ぼそりと呟く。

 

「……どちらもな」

「なんか言ったかカイン!」

 

 ギースが振り返るが、カインはすでにカルコブリーナへ狙いを定めていた。

 そのまま大きく跳躍する。

 

「あ、言い逃げ!」

「僕らも行くぞ!」

「承知!」

 

 カインの跳躍に合わせ、セシル、ギース、ヤンも一斉に動く。

 巨大な人形へ向かって、それぞれの攻撃が迫った。

 

「“バイオ”!」

「!!」

 

 セオドールは仲間たちの攻撃に合わせ、魔法を放つ。

 毒の魔力がカルコブリーナの巨体を包み込み、その身体を内側から蝕んでいく。

 

「“ブリンク”!」

 

 ローザもまた、仲間たちを支えるために魔法を唱えた。

 仲間たちの姿が一瞬揺らめき、幾重もの幻影が重なっていく。

 迫り来る攻撃を惑わせる、幻影の守りだった。

 

「はあああっ!!」

 

 剣が、刀が、拳が、槍が、それぞれの技でカルコブリーナへ叩き込まれる。

 巨大な人形の身体に次々と傷が刻まれ、カルコブリーナは大きくよろめいた。

 

「うぅ……まだ……まだ負けない……!」

 

 しかし、受けきれないほどの攻撃を受けた身体は限界を迎える。

 巨大な身体が揺らぎ、絡み合っていた人形たちは次第に離れていく。

 やがてカルコブリーナは、元の六体の人形へと分離した。

 

「よくもやったな!」

「痛いよー!」

「でも、この場所は報告済み!」

「仇は討ってもらうよ!」

「ゴルベーザ様ー!」

 

 口々に叫びながら、人形たちはその場で崩れ落ちる。

 最後まで騒がしい声を残し、カルコブリーナの姿は静かに消えていった。

 

 

 そして、先ほどまで響いていた人形たちの声が消え、あたりを冷たい空気が支配した。

 

「なに!?」

 

 セシルたちは一斉に警戒する。

 

「この気配は……!」

 

 ギースの表情が強張る。

 空間が歪み、黒い魔力が渦を巻く。

 地底の空気を震わせながら、そこに一人の魔人が姿を現した。

 

「ゾットの塔ぶりだな……」

 

 漆黒の鎧をまとった魔人は、静かにセシルたちを見下ろす。

 

「ゴルベーザ……!」

 

 ゴルベーザが、再び彼らの前に立ちはだかった。

 

「ゾットの塔では世話になった。だが、あのメテオの使い手ももう、いまい」

「……………………」

 

 誰も言葉を返さなかった。

 テラの最期を知る者たちの胸に、その言葉が重く響く。

 ギースは静かに拳を握りしめた。

 

「あの時の礼に、私がなぜクリスタルを集めるか教えてやろう」

「なんだと?」

 

 セシルは警戒しながら、ゴルベーザの言葉に耳を傾ける。

 

「光と闇、合わせて八つのクリスタル……それは、封印されし月への道。バブイルの塔を復活させる鍵なのだ」

「月だと!」

「何をふざけたことを!」

 

 あまりにも突拍子もない話に、セシルたちは言葉を失う。

 月とクリスタルが結びついているなど、誰も考えたことすらなかった。

 しかし、ゴルベーザの声には迷いも冗談めいた様子もなかった。

 

「月には我々の人知を超えた力があるという」

「それが欲しいってか……」

「しかり」

 

 ゴルベーザは淡々と答える。

 

「このクリスタルで七つ目……残すところ、あと一つとなったわけだ」

「もう盗った気かよ。気が早いな」

 

 ギースはゴルベーザを睨みつける。

 その声には、わずかな苛立ちが滲んでいた。

 ゴルベーザは、ギースにわずかに視線を向けた。

 

「以前、似たようなことを言って、ファブールで無様に敗れたのは……どこの侍だったか?」

「……っ」

 

 ゴルベーザの言葉に、ギースの表情が強張る。

 

「まあ、こうしてクリスタルを前にできたのも、お前たちのおかげだ。この礼もしなければ失礼だな」

 

 ゴルベーザは静かに告げる。

 その口調には、強者としての余裕があった。

 まるで、目の前の者たちが自分の計画をここまで運ぶための一部だったと言わんばかりに。

 

「受け取れ、これが私からの最後の贈り物だ!」

 

 その瞬間、ゴルベーザの周囲に黒い魔力が渦巻く。

 地底の空気が震え、圧倒的な力の気配が部屋全体を包み込んだ。

 

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