ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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バブイルの塔

 

 ドワーフの戦車隊が敵を引きつけてくれたおかげで、バブイルの塔への潜入は容易に成功した。

 一行は周囲を警戒しながら塔内を進み、奪われたクリスタルを探していく。

 内部には、ゾットの塔でも目にした見慣れない機械がいくつも設置されていた。

 何のためにあるのかも分からない装置が壁や床に組み込まれ、時折、低い駆動音を響かせている。

 

「……いったい、何だんだこの塔は……」

「元々、ゴルベーザの塔ではないはず、こんなものすぐに建てれるわけがない」

「カインは、何か聞いてないのか?」

「知らん、そもそも俺はゾットの塔が本拠地だと思っていた」

 

 誰もこの塔について詳しいことを知らない。

 ただ、内部に並ぶ機械や異様な構造は、ゾットの塔とは比べものにならないほど大規模だった。

 この塔がいったい何のために存在し、誰によって造られたものなのか──その疑問を抱えたまま、一行はさらに上階へと進んでいく。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「待て。誰かいるぞ」

「気づかれると厄介だ。隠れて様子を見るぞ」

 

 警戒しながら進んでいた一行は、前方に人影を見つけて足を止めた。

 白衣を着た男と、赤いマントを身にまとった男。

 二人は、見慣れない大きな装置の前で何かを話している。

 潜入が知られるわけにはいかず、一行はすぐさま近くの物陰へ身を隠した。

 息を潜めながら、二人の会話に耳を澄ませる。

 

「ルビカンテ様、お気をつけて……」

「案ずるな。忍術とやらを使うエブラーナの城は、すでに落ちた」

「!!?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ギースの表情が変わった。

 血の気が引くと同時に、物陰から飛び出そうと身体を動かす。

 

「押さえろギース。ヤツはルビカンテ、四天王のリーダーだ。他の四天王とは格が違う」

 

 カインがすぐさまギースを押し留める。

 ギースはルビカンテを睨みつけながらも、必死にその場に踏みとどまった。

 

「留守は預けたぞ」

 

 ルビカンテが装置を操作すると、淡い光がその身体を包み込む。

 次の瞬間、その姿が光の中へと消えていった。

 

「ヒャヒャヒャ!ゴルベーザ様もルビカンテもおらん!ワシが最高責任者だ!」

 

 白衣の男が突然、小躍りしながらはしゃぎ始める。

 

「変なおじいさん」

「しぃ!」

 

 リディアの呟きを、ローザが慌てて制した。

 

「そこにおるのは誰だあ?」

 

 ルゲイエは声のした方へ振り返る。

 その視線の先に、物陰から姿を現したセシルたちを見つけた。

 

「しまった!」

「貴様、セシル!いつの間に!」

「フッ、ルビカンテはいまい!お前に俺たちが倒せるかな?」

「キーッ、馬鹿にするではないわ!」

 

 ルゲイエは顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げる。

 

「四天王には加われなかったとはいえ、ゴルベーザ様のブレインと言われるこのルゲイエ!このバブイルの塔はワシのメンツにかけて守るわ!」

「お前のメンツはどうでもいいんだよ。それより、さっきの赤マントが言ってたことはどういうことだ!!」

 

 ギースの剣幕に、ルゲイエはしばし目を細める。

 そして、その身なりに改めて目を向けると、何かに気づいたように声を上げた。

 

「んん~?おぬし、その恰好、エブラーナの侍か。どうしたもこうしたもエブラーナはルビカンテが滅ぼしたんじゃ」

「なっ嘘をつくな!!」

 

 ギースの拳が強く握り締められる。

 その目には、怒りと動揺が入り混じっていた。

 

「嘘じゃないわい!憎たらしいがルビカンテの強さはゴルベーザ様のお墨付きじゃぞ!!」

 

 ギースの怒りを面白がるように、ルゲイエは口元を歪める。

 だが、次の瞬間には懐へ手を入れ、何かを取り出した。

 

「貴様も奴らと同じところに送ってやろう!このルゲイエの生み出した最愛の息子が、貴様らの首をいただいてやるわあ!」

 

 ルゲイエが取り出したのは、小さなリモコンだった。

 スイッチを押すと、頭上から巨大な機械人形が落下してくる。

 

「いけ、バルナバ! コテンパンにするのだ!」

「ウガー!」

 

 バルナバは敵味方の区別もつかないまま、地面を叩くように暴れ回る。

 

「いてっ!ワシも殴ってどうする!あっちだ、あっち!分かったな!」

「ウガー!」

「お前のパワーを見せてやれ!」

 

 ルゲイエの言葉に従い、バルナバはようやく狙いをセシルたちへと定める。

 

「とんだポンコツ機械だな。悪いがお前を相手するほど暇じゃねえんだよ俺は」

 

 その様子を見ていたギースが、苛立ったように呟く。

 懐から札を取り出し、バルナバへ向けた。

 

「……潰れろよポンコツ──“グラビデ”」

 

 次の瞬間、バルナバの身体に強烈な重力がかかる。

 

「ウガ……!?」

 

 巨体が地面へと押しつけられ、金属の身体が軋む。

 そのままバルナバは、まるで見えない巨大な手に押し潰されるように地面へ沈み込んでいった。

 

「よくもかわいいバルナバを!こうなればワシが自ら、バルナバを操縦じゃ!」

 

 ルゲイエは慌ててリモコンを操作する。

 

「重力無効装置、起動!」

 

 ルゲイエがリモコンを操作すると、バルナバを押し潰していた重力が消えた。

 巨体を押さえつけていた力から解放され、バルナバがゆっくりと身体を起こす。

 

「!」

 

 ギースが目を見開く。

 

「まだじゃ!」

 

 ルゲイエがさらにリモコンを操作すると、今度はバルナバの頭が外れ、その内部から操縦席がせり出してきた。

 せり出した操縦席へ、ルゲイエが素早く乗り込む。

 

「見よ!これがワシのかわいい最高傑作!!バルナバじゃ!!グラビデはもう効かんぞ!!」

「“雷撃”」

 

 ギースは淡々と札を掲げる。

 次の瞬間、札から凄まじい雷撃が迸った。

 それはかつてバルバリシアが放ち、ギースが吸収したものと同じ雷の力だった。

 

「うぎゃあああああ!!」

 

 雷撃をまともに受けたルゲイエの身体が黒焦げになる。

 同時に、バルナバの巨体にも雷が走り、内部から火花を散らしながら大きく爆ぜた。

 轟音が収まると、そこには黒煙を上げるルゲイエと、無残に砕け散ったバルナバが残されていた。

 

「今、お前らの相手をするつもりはないんだよ。クリスタルはどこにある?」

 

 ギースは苛立ちを隠そうともせず、ルゲイエへ問い詰める。

 その声には、普段の余裕がほとんど残っていなかった。

 

「おちつけ、ギース」

「俺は、落ち着いてる」

 

 即座に返すギースだったが、その拳は固く握り締められていた。

 

「……おのれ、よくも!ワシの本当の怖さを思い知れえ!」

 

 黒焦げになったルゲイエが、ふらつきながらも怒りに任せて声を張り上げる。

 次の瞬間、その身体が大きく震えた。

 白衣が裂け、露わになった身体から機械の駆動音が響き始める。

 肉体の一部が機械へと置き換わり、顔の半分までもが金属へと変貌していく。

 

「これぞワシの真の姿!」

 

 異形へと変貌したルゲイエが、機械の身体を軋ませながら立ち上がる。

 

「さあ、思い知るがいい!」

 

 ルゲイエの身体から、黄色のガスが噴き出した。

 

「なんだ!?」

「妙な真似を!!」

 

 ギースは間髪入れずに踏み込み、ルゲイエの胴体を斬りつける。

 鋭い刃が装甲を切り裂き、深々と傷を刻んだ。

 

「なっ……!?」

 

 切り裂かれた傷口が、みるみるうちに塞がっていく。

 

「不死身!?」

「ヒャヒャヒャ!治療してやろう!!」

 

 ルゲイエが両手を掲げる。

 その手から、淡い癒しの光が放たれ、セシルたちを包み込んだ。

 

「ぐああああっ!!」

 

 光に包まれた瞬間、身体が焼けるような激痛に襲われる。

 

「くっ……!なんだ、この痛みは……!」

 

 癒しの光のはずなのに、傷ついた身体には耐え難い苦痛となって襲いかかっていた。

 

「っ……“サンダラ”!」

 

 リディアが放った雷撃が、ルゲイエの身体を激しく打ちつける。

 

「おおー、いい電気マッサージじゃのう」

 

 雷撃を浴びたルゲイエの身体から、傷ついていた部分がみるみるうちに修復されていく。

 

「そんな……!?」

 

 リディアが驚きの声を漏らす。

 先ほどまで傷ついていたルゲイエの身体は、雷撃を受けたことで完全に元の状態へ戻っていた。

 

「………………」

 

 ギースは黙ってルゲイエを見つめる。

 斬りつけた傷は、すぐに塞がった。癒しの光は、こちらを傷つけた。

 そして、リディアのサンダガを受けたルゲイエは、傷ひとつない状態まで回復した。

 ギースはそれらを頭の中で繋ぎ合わせる。

 

「……試してみる価値はあるか」

 

 ギースはポーションを取り出し、ルゲイエへ投げつけた。

 

「食らえ!!」

「なに?ぎゃあ!!」

 

 頭からポーションを被ったルゲイエが、悲鳴を上げる。

 その身体に、今度は明確なダメージが刻まれた。

 

「効いた!」

「アンデッドか!」

「いや、多分……」

 

 ギースは自分の腕へ視線を落とす。

 そして、確かめるように刀へ手を伸ばした。

 

「……刀はやめとこう」

 

 さすがに自分で斬るのは危険だと判断し、刀から手を離す。

 

「っが!!」

 

 代わりに、ギースは自分の腕を思い切り平手で叩きつけた。

「ギース殿、何を!?」

「えっ……」

 

 ヤンが突然の行動に目を丸くする。

 ローザもまた、ギースの腕を見つめて驚きの声を漏らした。

 

「傷が治ってる……」

 

 さっきまで赤く腫れていた場所が、みるみるうちに元へ戻っていく。

 

「原理は全く分からない。だが……逆転している」

「逆転?」

「攻撃は回復に、回復は攻撃に」

「まさか最初のガスのせいで?」

 

 ローザは、ルゲイエが戦闘の初めに放った黄色いガスを思い返す。

 

「心当たりはそれだな」

「うぐぐぐぐバレたか!!じゃがタネが分かったとて!」

 

 ルゲイエは悔しそうに歯噛みしながらも、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「こんなしょっぱい回復じゃ、ワシにダメージを与えても倒せん!」

 

 そう言って、ルゲイエは機械の身体を見せつけるように胸を張った。

 

「ああ、そうかよ」

「ギース、それは……」

 

 ギースが取り出した瓶を見て、セシルが目を見開く。

 

「俺のへそくり、共有のアイテムじゃない方だ」

 

 ギースは瓶を強く握り締めると、狙いを定める間もなく、力任せにルゲイエへ投げつけた。

 瓶は一直線に飛び、ルゲイエの身体へ激しく叩きつけられる。

 

「ぎゃああああああ!!!」

「よく効いたか?エリクサーは」

 

 本来ならば傷ついた身体を癒すための薬。

 だが、すべてが逆転している今のルゲイエにとって、それは最大の毒となる。

 ルゲイエは身体を痙攣させながら、床を転げ回る。

 

「き、さま……!」

「しぶといな。じゃあ、もう一本だ」

 

 ギースは懐から新たな瓶を取り出す。

 そして迷うことなく、ルゲイエへ向かって瓶を投げつけた。

 

「ま、待て!ううう、解除じゃ!!!」

 

 ルゲイエが慌てて装置を操作すると、再び黄色いガスが勢いよく噴き出した。

 

「これでエリクサーは!」

「それ、エリクサーとはまだ言ってないぜ」

「!」

 

 空中を飛んでいた瓶が、ルゲイエの目の前で砕け散る。

 次の瞬間、瓶の中に封じられていた『神々の怒り』が、その力を解き放った。

 凄まじい雷が迸り、ルゲイエの身体を容赦なく打ち据える。

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

 雷撃をまともに受けたルゲイエは、その場に崩れ落ちる。

 

「クリスタルは、どこにある」

 

 ギースが倒れたルゲイエを見下ろし、低い声で問いかける。

 

「ヒャヒャヒャ……このバブイルの塔は大地を貫き地上と地底を結んでおる」

「なら、エブラーナで見えたあの塔は!」

「そう!このバブイルの塔じゃ!」

 

 エブラーナで見上げていた、あの謎の塔。

 それが今、自分たちのいる塔と同じものだった。

 ルゲイエは笑い声を上げながら、さらに言葉を続ける。

 

「クリスタルは、すでにルビカンテが地上へ移した!」

「なんだと!」

「貴様らはただの無駄足!ドワーフはワシの作った巨大砲で全滅じゃ……ヒャヒャヒャーッ!」

 

 ルゲイエは最後まで嘲るような笑い声を上げる。

 そのまま、力尽きて動かなくなった。

 

「最後まで減らず口を!」

 

 ギースが吐き捨てる。

 

「ドワーフさんたちがやられちゃう!」

「巨大砲とやらを!」

「破壊せんと!」

 

 リディア、ヤン、カインがそれぞれ声を上げる。

 ルゲイエから得られた情報は、あまりにも衝撃的だった。

 ドワーフの戦車隊に砲撃が放たれる前に、一刻も早く巨大砲を止めなければならない。

 一行はすぐに顔を見合わせると、巨大砲を止めるために駆け出した。

 

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