ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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バブイルの塔②~エブラーナ城

 

 ドワーフたちを守るため、巨大砲の発動を阻止しようと、セシルたちは急いでいた。

 やがて一行は、巨大砲を操作する部屋へとたどり着く。

 

「ワハハ、死ねドワーフどもめ!」

 

 部屋の奥では、魔物が巨大砲を操作していた。

 その砲口は外へ向けられ、ドワーフの戦車隊へ砲撃を放っている。

 

「そこまでだ!」

「貴様ら!」

「どうしてここへ!?」

「かかれ!」

 

 セシルたちの姿に気づいた魔物たちが、一斉に襲い掛かってくる。

 先頭の魔物が斧を振り上げ、セシルへと叩きつける。

 セシルは剣を横に構えて受け止め、そのまま力任せに押し返した。

 

「そこをどけ!」

 

 弾き飛ばされた魔物へ、カインが槍を突き出す。

 鋭い一撃がその身体を捉え、魔物は床を転がった。

 

「邪魔だ!」

 

 横から迫った別の魔物へ、ギースが踏み込む。

 腰の刀を抜き放ち、すれ違いざまに一閃。

 斬りつけられた魔物が、その場に崩れ落ちる。

 

「おりゃあっ!」

 

 ヤンはさらに迫ってきた魔物へ拳を叩き込む。

 重い一撃で怯んだところへ、続けざまに蹴りを放った。

 

「“ファイラ”!」

 

 リディアの炎が敵の群れを包み込む。

 炎を振り払おうともがく魔物へ、ローザが素早く弓を引き絞った。

 

「そこよ!」

 

 放たれた矢が一直線に飛び、魔物の肩を射抜く。

 動きを止めたところへ、セシルの剣が振り下ろされた。

 

「はああ!」

 

 魔物たちは次々と倒れ、やがて最後の一体だけが残った。

 しかし、その魔物は倒れた仲間たちを見向きもせず、巨大砲の操縦席へと駆け出した。

 

「くそ……こうなったら!」

 

 最後に残った一体が、操縦席を壊そうとする。

 

「やめろ!」

「もう遅い!!」

 

 魔物が操縦席へ武器を叩きつけ、破壊する。

 操縦席が破壊された瞬間、室内に異変が起こった。

 壁や床に組み込まれていた機械が一斉に明滅し、青白い電気が走り始める。

 低く不気味な駆動音が響き、機械の奥から嫌な音が次第に大きくなっていく。

 

「フハハ……これで誰にも巨大砲は止められんぞ!」

「しまった!」

「なんてことを!」

 

 巨大砲を制御していたはずの機械が、逆に不規則な音を立て始める。

 その様子を見て、ヤンが一歩前へ出た。

 

「ヤン?」

「危ないわ!」

 ローザが叫ぶ。

 

「ここは私が引き受ける! そなたらは早く脱出を!」

「何を言ってるの!」

「馬鹿な真似はよせ、ヤン!」

 

 ヤンは振り返り、セシルたちを見る。

 

「……ごめん!」

「えっ──」

 

 次の瞬間、ヤンが大きく踏み込み、セシルたち全員をまとめて蹴り飛ばした。

 

「うわあっ!」

「きゃあっ!」

 

 不意を突かれた一行は抵抗する間もなく、部屋の外へと吹き飛ばされる。

 一行が部屋の外へ転がり出た瞬間、扉が勢いよく閉じる。

 

「ヤン!」

 

 セシルが扉へ駆け寄り、何度も叩く。

 しかし、扉はびくともしない。

 

「妻に会うことがあれば伝えてく……私の分も、生きろと!」

「馬鹿を言うな!」

「ここを開けろ、ヤン!」

「ヤン!」

「お願い! 馬鹿な真似はやめて!」

 

 扉の向こうから、ヤンの声が響く。

 

「楽しい……旅であった!」

「開けるんだ、ヤン!」

 

 セシルが拳を扉へ叩きつける。

 

「うおおおおおおー!」

 

 ヤンの雄叫びが、閉ざされた扉の向こうから響き渡る。

 次の瞬間──轟音が弾けた。

 塔そのものが揺さぶられるほどの凄まじい衝撃が走り、床が大きく震える。

 扉の向こうから伝わってくる振動に、セシルたちは思わず身をよろめかせた。

 

「っ……!」

 

 壁や天井から細かな瓦礫が落ちてくる。

 やがて轟音が遠ざかり、塔内には耳が痛くなるほどの静寂が戻った。

 

「ヤン──!」

 

 セシルは叫びながら、閉ざされた扉を何度も叩きつける。

 しかし、扉は何度叩いても、もう開くことはなかった。

 

「………………」

 

 しばらく、誰も何も喋らなかった。

 扉は固く閉ざされ、ヤンの安否は分からない。

 誰も、その場から動こうとはしなかった。

 重苦しい沈黙の中、口火を切ったのはカインだった。

 

「……クリスタルが地上にあるなら、計画を立て直す必要がある。一度、塔を出てジオット王の元へ行くぞ」

「……ヤンを置いていくのか?」

 

 セシルは閉ざされた扉から目を離さない。

 

「……そうするしかない。今は、ヤンが命を懸けて作ってくれた時間を無駄にするわけにはいかん」

 

 カインの言葉に、セシルはしばらく黙り込む。

 やがて拳を握り締め、重い足取りで扉から離れた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 セシルたちは、バブイルの塔の外へ通じる場所まで戻ってきていた。

 

「なかなか楽しませてくれる……」

 

 どこからともなく、低く響く声が塔内に響き渡った。

 

「ゴルベーザ!」

 

 セシルが振り返る。

 

「鬼の居ぬ間に命の洗濯か?だが、遊びはこれまで……そろそろ、お別れを言おう」

 

 ゴルベーザの声には、余裕すら感じられた。

 

「さらばだ……」

「!!」

 

 ゴルベーザの言葉を最後に、足元から凄まじい音が響いた。

 橋が大きく揺れ、足場が崩れ落ちていく。

 

「急げ!!」

 

 セシルたちは必死に駆け出すが、間に合わない。

 橋の一部が完全に崩れ、全員の身体が宙へ投げ出された。

 

「うわああっ!」

「きゃあっ!」

 

 その瞬間、下方から飛空艇が猛スピードで駆け上がってくる。

 間一髪、セシルたちは飛空艇へと回収された。

 

「ギリギリ、セーフじゃったの!」

 

 操縦席のシドが、額の汗を拭いながら笑った。

 

「シド!」

「?ヤンとセオドールはどうした?」

 

 飛空艇に乗り込んだ一行を見渡したシドは、二人の姿がないことに気づく。

 

「……セオドールはドワーフの城で治療中」

「ヤンは……」

「巨大砲を……止めるために……」

 

 セシルたちは、ヤンが巨大砲を破壊するために残り、その爆発に巻き込まれたことをシドへ伝えた。

 

「そうか……」

 

 シドはそれだけ呟くと、しばらく黙り込んだ。

 

「グスッ……」

 

 その横で、リディアが小さく鼻をすすった。

 

「その姉ちゃんは?」

「ミストの生き残り……リディアだ」

 

 セシルが静かに答える。

 ようやく一息つけると思った、その時だった。

 背後から、轟音が響く。

 振り返ると、バブイルの塔から飛び立った一隻の飛空艇が、こちらへ向かって猛追してきていた。

 

「チッ、追ってきおった!」

 

 シドが操縦桿を握り直す。

 

「振り切れんのか!?」

「こっちの方が性能は上のはずじゃが……」

 

 シドは背後から迫る飛空艇を睨む。

 

「ヤツらも赤い翼を改造したらしいの!」

「くそっ……!」

 

 セシルたちは、息をつく間もなく新たな危機に巻き込まれていた。

 

「追いつかれちゃう!」

「ふんばれ、エンタープライズ!」

 

 背後から迫る赤い翼の飛空艇が、少しずつ距離を縮めてくる。

 その時、エンタープライズの機体が大きく揺れた。

 

「このままじゃエンジンが持たん!代われいセシル!」

「シド!」

 

 シドは操縦桿を放すと、操縦席から離れて手すりへ向かう。

 

「どこへ!」

 

 慌ててセシルが操縦を引き継ぐ。

 シドは腰に下げていた爆弾を手に取った。

 

「エンタープライズが地上に出たところで、この爆弾で穴を塞ぎ食い止める!」

「ヤンに続いて、あなたまで犠牲になるつもり!?」

 

 ローザが叫ぶ。

 ついさっき、ヤンが巨大砲を止めるために命を懸けたばかりだった。

 シドは振り返り、静かに笑った。

 

「フフ……お前たちの子が見たかったが……ヤンが寂しがるといかん」

「飛空艇はどうすんだよ!シドの船だろうが!それを俺たちに押しつけて、自分まで死ぬつもりかよ!」

 

 ギースが声を荒げる。

 

「この船に何かあったら、バロン城のワシの弟子たちに頼め!」

 

 シドは豪快に笑う。

 

「後は任せた!」

 

 そう言い残すと、シドは爆弾を手にしたまま手すりへ向かった。

 

「シド!」

「おじいちゃん!」

「せめて、おじちゃんと呼べ!」

 

 最後までいつもの調子で言い返す。

 そして、シドはためらうことなく、爆弾を抱えたまま飛空艇から飛び降りた。

 

「ゴルベーザ!この飛空艇技師シド、一世一代の見せ場じゃあ!」

 

 落下していくシドの姿が、大穴の闇へと消えていく。

 次の瞬間、地底を揺るがすほどの大爆発が起こった。

 エンタープライズは大穴を抜け、地上へと飛び出す。

 その直後、大穴の周囲が大きく崩れ落ち、巨大な岩盤が次々と落下していく。

 やがて、地底へと続いていた大穴は、完全に塞がれた。

 セシルたちは、ただ呆然とその光景を見つめていた。

 

「シド……」

「どうして、みんな……」

「どいつも死に急ぎやがって!」

 

 飛空艇の中に、重苦しい沈黙が落ちる。

 誰も、すぐには言葉を続けられなかった。

 

「これから……どうすれば……」

 

 ローザが小さく呟く。

 行く先も、奪われたクリスタルの行方も分からない。

 それでも、立ち止まっているわけにはいかなかった。

 その時、ギースが口を開いた。

 

「なあ、頼みがある」

 

 一行の視線が、ギースへ集まる。

 

「エブラーナに、向かってくれないか」

「ギース」

「こんな状況で、俺の都合を優先するのは申し訳ない。ただ、確かめたい……」

「………………」

 

 ルゲイエが口にした、エブラーナはルビカンテによって滅ぼされたという言葉。

 故郷が本当に滅んだのか。

 そして、自分たちがかつて見上げていたあの塔が、バブイルの塔だったという話も。

 確かめなければならないことは、いくつもあった。

 

「頼む……」

「ああ、分かった。エブラーナに行こう」

 

 セシルが静かに答える。

 飛空艇はゆっくりと進路を変える。

 目指す先は、エブラーナ。

 悲しみを胸に抱えたまま、一行はギースの故郷へ向けて飛空艇を進めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 エブラーナ──

 かつてギースが暮らしていた城は、見る影もなく崩れ果てていた。

 城壁には大きな亀裂が走り、崩れた石材があちこちに散らばっている。

 かつて人の行き交っていたはずの城内にも、兵士の姿はおろか、人の気配すらない。

 ギースは、壊された城を前に立ち尽くしていた。

 

「……ギース」

 

 セシルが、いたわるように声をかける。

 

「……大丈夫だ。悪いが、確認したいことがある。奥まで行くぞ」

 

 ギースは仲間の気遣いを振り払うようにそう言うと、城の中へと足を踏み入れた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ギースの案内で、セシルたちは荒れ果てたエブラーナ城を進んでいく。

 廊下には倒れた柱や砕けた石が転がり、壁には戦闘の痕跡が生々しく残っていた。

 それでもギースは迷うことなく、かつて自分が知っていた城の道を進んでいく。

 やがて、一行は人目につかない廊下の一角へ差しかかった。

 ギースは壁へ手を伸ばし、いくつかの仕掛けを順番に動かす。

 すると、重い音を立てて壁の一部が動き、その奥から隠された通路が姿を現した。

 

「こんなところに……」

「エブラーナ自慢の隠し通路だ」

 

 セシルたちは驚きながらも、ギースに続いて通路へ入っていく。

 

 狭く暗い通路をしばらく進んでいく。

 しかし、やがて足元に瓦礫が増え始めた。

 先へ進むほど通路は荒れ果て、壁や天井の一部も崩れ落ちている。

 

「……これは……」

 

 ギースが足を止める。

 その先には、大量の瓦礫が積み重なり、通路を完全に塞いでいた。

 崩れた壁の向こうには、かつて続いていたはずの道がわずかに覗いていたが、とても人が通れる状態ではない。

 ギースは瓦礫に手を触れ、崩れた跡をじっと見つめる。

 石の崩れ方や壁に残った傷を確かめるように、しばらく黙り込んだ。

 

「……向こう側から、崩されたのか?」

「どういうこと?」

 

 リディアが不思議そうに尋ねる。

 

「この道は、有事の際……外の洞窟に逃げ込むための道だ……そして、敵が追ってこれないように、通った後は道を崩す……」

 

 ギースは崩れた瓦礫を見つめたまま答える。

 

「この道を使った後に壊した可能性がある」

「じゃあ、生きてる人がいるんだね!」

「……可能性は、ある」

 

 リディアの声に、ギースはわずかに表情を緩める。

 だが、すぐに険しい顔へ戻った。

 

「ただ、困ったことに、この道につながっている洞窟は外からだと浅瀬の先にあってな」

 

 ギースは塞がれた通路の先を見つめる。

 

「俺は、この道以外でそこへ行く方法を知らない」

「浅瀬……ホバー船はなら通れる!」

「……ホバー船ならいけるだろうが、あれはホブス山に置いてきてるだろ」

 

 ホバー船があれば洞窟へ向かえる。

 だが、それを取りに戻れば、今度はエブラーナへ戻ってくる必要がある。

 

「ホブス山からここまでどうやって持ってくる?」

「……うーん、飛空艇に乗せるとか!」

「乗るのか、あれ」

「……シドの弟子に相談しよう。何か手があるかもしれない」

 

 そうと決まれば、ここで立ち止まっている理由はない。

 一行は一度エブラーナ城を出ることにし、ホバー船を運ぶ方法を探すため、飛空艇へと戻っていった。

 

 城を離れる直前、ギースはふと足を止める。

 振り返ったその先──荒れ果てたエブラーナの城の向こうに、バブイルの塔がそびえ立っていた。

 かつて故郷を見下ろしていたその巨大な塔は、今も何事もなかったかのように空へと伸びている。

 ギースはしばらく無言で塔を見つめていた。

 やがて視線を逸らすと、仲間たちの後を追って歩き出した。

 

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