ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
「リョウアン、席を……外してもらえる?この子だけに、伝えたいことがあるの」
「セフィ様?……分かりました」
セフィの言葉に、リョウアンは一瞬だけ迷うような表情を見せたが、すぐに頷いた。
「しかし、無理はいけません。何か異常があれば、すぐに呼んでください。私は扉の外にいます」
「ええ、ありがとう」
リョウアンは二人を残して静かに部屋を出ると、扉の向こうへ姿を消した。
「母さん……話ってなんだ?」
「何の話か……本当は、自分がよく分かっているんじゃない?」
「!!」
セフィの言葉に、ギースの顔から血の気が引く。
しばらく俯いたまま黙り込んでいると、セフィは小さく息を吐いた。
「………………」
「……ふぅ、別に……責めるつもりはないわ」
ギースは何も言えなかった。
セフィの言葉を待つように、ただ俯いたまま黙っている。
「……夢の中で、あの子に会ったわ」
「え……」
ギースが顔を上げる。
「『ごめんなさい、ギースは悪くない。悪いのは私』……そう、言われたわ」
「違う!あいつは悪くない!!俺が悪いんだ!俺があの時切れれば!!」
ギースの声が部屋に響く。
セフィはそんな息子を静かに見つめていた。
「……そうね」
その声には、責める色はなかった。
「二人とも、悪くないのよ」
「え……」
ギースは戸惑ったようにセフィを見つめた。
自分を責めることしか考えていなかった彼には、その言葉をすぐには受け入れられなかった。
「もちろん、あなたたちが悪い……そう言う人だっているでしょう」
それだけの結果を招いたのだから、そう思う者がいることも分かっている。
そもそも、彼らがお互いに、自分が悪いと思い続けている。
けれど、セフィはゆっくりと首を横に振った。
「でも、私は悪くないと思ってる。ただ……間が悪かっただけ」
「間が悪いって……そんな言葉で納得できるか!!」
ギースは拳を握り締める。
セフィの言葉を否定するように、激しく首を振った。
「みんな言うさ!俺は悪くない、悪いのはゴルベーザって!!ゴルベーザを……アイツを殺せなかった俺に!!」
声を荒らげた勢いも次第に失われ、最後の言葉は震えていた。
握り締めた拳が小さく震える。
「アイツは……カグヤは悪くないんだよ……悪いのは……覚悟を無駄にした俺なんだ」
ギースの脳裏に、カグヤの姿が浮かぶ。
笑っていた顔も、旅の途中で交わした何気ない言葉も、もう二度と戻ってこない。
自分の甘さが、この結果を招いた。
「アイツを止めるためにも、俺は……殺さなきゃいけない……殺すしか、ないんだ」
それがカグヤのためなのだと、そう思うことでしか、前へ進めない。
そんなギースを、セフィは静かに見つめていた。
「後悔をしないように。そんなのは無理よ。生きているんだもの……どうやったって、“もしこうしていれば”って思いは出てくるわ」
「…………」
「ただ、ね。それでも大事なのは、自分で決めること」
「決める……決めるって何を、俺はもう!」
「それは、あの子の希望でしょ?あなたは、それでいいの?」
「俺……は……」
ギースの言葉が途切れる。
セフィにそう問われても、すぐには答えが出てこなかった。
カグヤの望みは分かっている。それでも、自分がどうしたいのかと改めて問われると、胸の中で何かが引っかかる。
その答えを、ギースはまだ見つけられずにいた。
「私の“助言”は二つ“あなたの答えはあなたが決める”。そして……“あなただけじゃない”」
「俺だけじゃ……ない?」
「ええ」
セフィは穏やかに微笑んだ。
「ただ、そうね。私の希望を言わせてもらうなら……」
少しだけ間を置いて、セフィは優しく告げる。
「終わったら、またみんなで花見をしましょう」
セフィの言葉を聞き、ギースは小さく呟いた。
その声には、これまでとは違う戸惑いが滲んでいた。
「花見……」
「ええ、リョウアンに見てもらったけど、庭の桜は無事らしいわ。手入れをすれば、また来年も、再来年も綺麗に咲いてくれる」
セフィは穏やかに微笑んだ。
その表情には、先ほどまでギースを諭していたときとは違う、どこか懐かしむような色が浮かんでいる。
エブラーナが襲われ、家族や民が失われた今でも、庭の桜は残っている。
それは、これから先も季節が巡れば花を咲かせる。失われてしまったものが戻ることはなくても、残されたものはこれからも続いていく。
そして、いつかまた誰かと花を眺め、笑える日が来ることを願っている。
「もちろん、これは私の勝手な希望……あなたが無理に叶える必要はないの」
「母さんの……勝手」
「そう、私の……勝手よ……あなたが嫌なら、嫌でいいの」
けれど、その声は少しずつ弱くなっていた。
長く話したことで疲れが出たのか、セフィの呼吸がわずかに浅くなる。
「ごめん……なさいね、ちょっと、長く話して疲れちゃった……」
「母さん!」
「ちょっと寝るだけよ……私のことは、後はリョウアンに任せておきなさい。ギース、あなたはあなたがするべきこと……を」
最後まで言い切る前に、セフィの瞼がゆっくりと閉じる。
ギースは何も言えず、ただ母の顔を見つめていた。