ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
アスラとリヴァイアサンの力を得たセシルたちは、十分に準備を整え、いよいよ封印の洞窟へ向かおうとしていた。
「リディア!!!」
そこへ、一人の幻獣が慌てた様子で駆け込んでくる。
「どうしたの?」
「大怪我をした人間が、幻界の入り口で倒れてたんだ!」
「ええ!?」
「よくあることなのか?」
幻獣の言葉にリディアは驚き、セシルが尋ねる。
「ううんそんなことはない!ここは結界で守られてるから普通の人が入ってくるなんてありえない!」
「今、そいつを女王様が見てるんだけど、リディアを呼んで来いって言われたんだ!」
「どうして?」
「実はそいつ──」
◇ ◇ ◇
怪我人が運ばれた場所へ、一行は慌ただしく向かう。
部屋に入ったエッジは、ベッドに横たわる人物の姿を見た瞬間、血相を変えた。
身体中を包帯でぐるぐる巻きにされた、痛々しい姿だった。
「ギース!!」
「う……あ……」
かすかな声が、包帯の奥から漏れた。
「女王様、ギースは?」
「命だけは何とか……。あと少しでも手当てが遅かったら、危なかったでしょう」
アスラは静かに答える。
その言葉に、リディアたちは息を呑む。
辛うじて命を取り留めたものの、ギースの傷がどれほど深いものなのか、その言葉だけでも十分に伝わってきた。
「あのクリスタルルームで逸れた後……いったい何が……」
「何があったもくそもねえ!ゴルベーザに決まってんだろ!!くそ!!」
エッジは拳を強く握り締め、怒りを抑えきれないように吐き捨てる。
ギースがこんな姿になった原因を思えば、声を荒らげずにはいられなかった。
「………………」
「ギース!?」
ギースの瞼が、わずかに動いた。
やがて薄く目を開くが、その瞳にはまだ焦点が合っていない。
「……ご、めん……みん……な」
かすかな声が漏れる。
「……ごめん……カ……グヤ……」
ただひたすらに、ギースは謝り続ける。
その姿を前に、セシルたちは何も言うことができなかった。
「お…………こ……なぃ」
「!?」
ギースはさらに何かを呟いた。
そのかすかな声を聞き取れたのは、すぐそばにいたエッジだけだった。
「………………」
やがてギースの瞼が、ゆっくりと閉じていく。
「ギース!?」
「ギース!」
セシルたちは慌てて呼びかける。
しかし、ギースはそのまま深い眠りへと落ちていった。
「みな、落ち着きなさい……ただ眠っているだけです」
取り乱すセシルたちを、アスラが静かにたしなめる。
その言葉に、一行はようやく息をつき、眠るギースの姿を見つめた。
「リディア。ここ幻界は、現世と時間の流れが異なります。このまま彼をここに置いておくことはできません」
「はい、分かっています」
「私が持てる力はすべて施しました。ここから彼が戦えるかは彼自身の問題となります」
アスラの言葉に、リディアは眠るギースを見つめる。
命を救うことはできても、その先までアスラの力で導くことはできない。
ここから先は、ギース自身の生きる力に委ねるしかなかった。
「ここまでしかできないのは、心苦しいですが……」
「いいえ、女王様。仲間を……ギースを救っていただきありがとうございます」
リディアは深く頭を下げる。
傷ついたまま眠っているとはいえ、ギースは生きている。
その命を繋いでくれたアスラへの感謝を胸に、リディアは顔を上げた。
セシルたちは眠ったままのギースを慎重に運び出し、身体を揺らさないよう気をつけながら幻界の出口へ向かった。
ファルコンへ戻ると、一行はギースをドワーフの城へ預けることにした。
まだ重傷で、いつ目を覚ますかも分からない。
このままファルコンに寝かせておくよりも、シドと共に治療を受けさせたほうがいい。
ギースをドワーフたちに託した一行は、今度こそ寄り道することなく、最後のクリスタルを守るため封印の洞窟へ向かった。
◇ ◇ ◇
封印の洞窟へ辿り着くと、セシルは預かっていた首飾りを掲げる。
すると、固く閉ざされていた扉がゆっくりと開いていった。
「ここに、最後のクリスタルが……」
「行こう」
セシルたちは警戒しながら、洞窟の奥へと進んでいく。
封印の洞窟には、通常の魔物だけではなく、近づく者へ襲いかかる特殊な扉まで待ち構えていた。
次々と襲い来る扉を退けながら、一行は慎重に奥へと進んでいく。
「だ──!!!扉全部ニセモンかよ!!」
通ろうとする扉がことごとく襲いかかってくることに、エッジは苛立ちを隠せず声を荒らげた。
「地図はないのか!地図は!」
「そんなものはない」
カインは間髪入れず、きっぱりと言い切る。
そもそも、ここは最後のクリスタルを守るために封印された洞窟だ。
誰でも自由に出入りできる場所ではない以上、わざわざ地図を作る必要もなかったのだろう。
「あったとしても無駄だろう。通らねばならん扉が魔物化している以上、どちらにせよ相手にする必要がある」
「うぅ~~っさっさとクリスタル回収してこんなとこ出るぞ!」
エッジは苛立たしげに唸りながらも、気を取り直して先へ進む。
そんなエッジの様子を見ながら、セシルたちも後に続いた。
◇ ◇ ◇
長い道のりを越え、セシルたちはついに最後のクリスタルが安置されたクリスタルルームへと辿り着いた。
しかし、その入り口に立ちはだかっていた扉も、やはり魔物と化していた。
「結局、最後まで魔物だったな、扉」
エッジは最後の最後まで襲いかかってきた扉に、呆れたようにぼやく。
幸い、クリスタルルームの中にはこれ以上の妨害はなかった。
セシルは慎重にクリスタルへ近づくと、その手に取る。
「よし、ジオット王のところまで戻ろう」
「パーッとテレポで帰れねえのか?」
エッジは最後の最後まで襲いかかってきた扉に、呆れたようにぼやく。
幸い、クリスタルルームの中にはこれ以上の妨害はなかった。
セシルは慎重にクリスタルへ近づくと、その手に取る。
「よし、ジオット王のところまで戻ろう」
「パーッとテレポで帰れねえのか?」
「それが……」
ローザは困ったように首を横に振る。
「テレポが使えないの」
「元々クリスタルを守るための洞窟だ、そう言った術を意味をなさないようにしている場合がある」
「じゃあ、面倒だが歩きで戻るしかねえのか」
「そうなるな」
再び長い道のりを歩いて戻らなければならないことに、エッジはげんなりとした表情を浮かべる。
行きの道中で何度も襲いかかってきた扉の魔物を思い出し、ふと嫌な予感が頭をよぎった。
「あいつら復活してねえだろうな……」
「さすがに再生はしていないとは思うが」
そんなことを話しながらクリスタルルームを出て、数歩進んだその時だった。
突然、背後の壁から轟音が鳴り響く。
「壁が!」
「動き出してる!?」
振り返ると、壁がゆっくりと動き始めていた。
「さすが封印の洞窟、クリスタルを取った後も安心はできんというわけか!」
「なら、ぶっ壊すまでよ!!」
エッジの声と同時に、迫り来る壁の魔物が一行へ襲いかかる。
狭い通路を塞ぐように巨大な壁が迫り、その表面には醜悪な悪魔の顔が浮かび上がっていた。
歪んだ口元から唸り声のような音を響かせながら、壁そのものが生きているかのように一行へと迫ってくる。
セシルたちは咄嗟に散開し、それぞれ武器を構えた。
逃げ場を奪うように迫り来る異様な姿に、全員が警戒を強める。
「“スロウ”!」
ローザが魔法を放つ。
淡い魔力が壁の魔物へ絡みつき、その動きを鈍らせた。
「壁際まで追い込まれれば、不利なのはこちらだ!それまでに蹴りをつけるぞ!」
「言われなくとも!」
エッジは懐から手裏剣を取り出し、壁の魔物へ向けて投げつけた。
手裏剣が深々と突き刺さると、壁は悲鳴のような轟音を響かせる。
「どうやら、普通に攻撃は効くみたいだぜ!」
手応えを確かめるように、エッジは不敵な笑みを浮かべた。
「それは助かる!」
「壁相手なら、攻撃を外す心配もないな!」
セシルが剣を構え、カインも槍を握り直す。
二人は同時に駆け出し、迫り来る壁の魔物へと斬撃と突きを叩き込んだ。
剣と槍が壁へ食い込み、激しい衝撃音が洞窟内に響き渡る。
「いくぞ、リディア」
「ええ!」
セオドールとリディアは息を合わせ、同時に魔法を放つ。
「「“バイオ”!!」」
二人の魔法が壁の魔物へ直撃する。
しかし、壁の表面に浮かぶ悪魔の顔が不気味に歪んだ。
次の瞬間、その両目が怪しく光る。
「むっ?──っく!」
セオドールの腕に異変が起こる。
皮膚がみるみる灰色へと変わり、まるで石へと変わっていくように固まっていく。
「石化睨みかっ!」
「兄さん!」
「気にするな!すぐには石化はしない!」
セオドールは石化しかけた腕を庇いながらも、戦いを続けるために構え直した。
その後も一行は、迫り来る壁の魔物へ次々と攻撃を叩き込んでいく。
セシルとカインの斬撃と突きが壁を削り、エッジの手裏剣が次々と突き刺さる。
セオドールとリディアの魔法も悪魔の顔へ直撃し、その身体を覆う魔力を少しずつ消し去っていった。
やがて、壁の魔物の動きが目に見えて鈍くなる。
表面に浮かんでいた悪魔の顔も苦しげに歪み、その姿が徐々に薄れていった。
「はあああ!!」
最後の一撃を受けると、壁の魔物は力を失い、その場で崩れ落ちる。
巨大な身体を構成していた石が砕け、瓦礫となって床へ散らばっていった。
「やったー!」
「一昨日きやがれってんだ!」
壁の魔物を無事に倒したことに、リディアとエッジはそれぞれ喜びの声を上げた。