ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
もう、何に対して謝っているのか、自分でも分からない。
暗い、辛い、苦しい……後どれだけ、私は私でいられるのだろう。
「ルビカンテ……バルバリシア……カイナッツォ……スカルミリョーネ……もう、みんないない」
こんな私を見捨てることができず、ゴルベーザに付き従った彼らは、もういない。
私なんかに出会ったから、私と関わったから……きっと、彼らは道を外れてしまった。
もう、消えたい。そう思ったことが何度もある。
でも駄目だ、まだ消えるな。
私が抵抗しなかったせいで起きた、あの悲劇を……ダムシアンで起きたことを忘れるな。
その結果、賢者が魔人を殺すために、禁忌の力を利用して、その命を落とした。
「まだ……何も償えてない」
それでも、あれが傷ついたおかげなのか、私はほんの少しだけ表に出ることができた。
だから、そのわずかな時間を使って、セシルたちをできる限り手助けした。
こっそりセシルに地底への道を教えた。
「……私、地底まで続くって言われる井戸を知ってるよ」
私の姿を見ても、何も思い出してくれなかったのは……少し悲しかったけど。
それでも、怪しまれることなく伝えられたと思う。
死にかけて、面倒な奴に引き込まれそうになっていたお兄ちゃんは、何とか呼び止めることができた。
「そっちはダメ」
久しぶりに、話せてうれしかった。
ギースのこと、うまく伝わっただろうか。
モンク僧のときは、できる限りぎりぎりまで待って助けた。
巨大砲が放たれる前に飛ばしてしまえば、ドワーフたちは全滅していた。
だから、巨大砲が爆発する、その瞬間まで待つしかなかった。
大穴へ落ちていった機械技師を助けるのは、比較的簡単だった。
ただ、爆弾と彼を引き離せばよかったから。
そのままドワーフの城まで飛ばした。
そして──ギースはゴルベーザがとどめを刺す前に、幻界へ飛ばした。
できたのはただそれだけだった。
元々想定はされてただろうけど、ギースの件で気づかれた。
メテオの傷も、ドワーフの城でセシルに倒された傷ももう癒える。
多分、これ以上は難しいかもしれない。
「………………」
ゴルベーザが何を考えているのか、手に取るように分かる。
だって、あれも自分なのだから。
たとえ、いいように誘導されているのだとしても、それを選んでいるのは自分自身だ。
封印の洞窟……破ろうと思えば破れたはず……トロイアの時と同じだ。それをしなかったのはただ面倒だっただけ。
自分以外の人間が取ってくるなら、それを利用しない手はない。
後はそのクリスタルをどういう風に手に入れるかだけど……ゴルベーザならやらせるだろう。
どこまでも、自分を苦しませようとするなら。
今の、限られた意識でやれることは一つだけ。
これは助けでもなんでもない、ただの誘惑。
悪魔から解放する、もう一つの悪魔の言葉。
(その声ではなく、私と取引をしないか?)
(っ……お前は!?)
ゴルベーザの思念に囚われていた竜騎士へ、私は取引を持ち掛けた。
◇ ◇ ◇
闇のクリスタルを手に入れ、襲いかかってきた壁の魔物も倒した。
最後まで警戒していたゴルベーザの妨害もなく、セシルたちはようやく封印の洞窟の出口までたどり着く。
長かった洞窟を抜けられる。そう思った、その時だった。
「……なんだ?」
不意に、周囲の空気が変わった。
冷たい気配が一行を包み込み、どこからともなく声が響く。
──カイン……帰ってこい、カイン……
──そのクリスタルを持ち、私の元へ……
「ゴルベーザ!」
洞窟内に響いた声に、セシルは息を呑んだ。
聞き間違えるはずがない。
あの低く冷たい声は、これまで何度も自分たちの前に立ちはだかってきた魔人のものだった。
「カイン!」
「しっかりして!」
セシルとローザは必死にカインへ呼びかける。
カインはしばらく俯いたまま動かなかった。
やがて、ゆっくりと顔を上げる。
「大丈夫だ……俺は、正気に戻った!」
カインの言葉に、セシルは思わず息を吐いた。
先ほどまで感じていた不穏な気配が消えたように思えた。
ローザも胸を撫で下ろし、仲間たちは互いに顔を見合わせる。
「うっ!」
しかし、次の瞬間、カインがセシルの手から闇のクリスタルを奪い取った。
「てめー!」
「カイン!何を!?」
クリスタルを手にしたカインは、答えることなく背を向ける。
その先に、黒い影が姿を現した。
「私の術を侮ってもらっては困る」
「ゴルベーザ!!」
現れたゴルベーザへ、カインは無言で闇のクリスタルを差し出す。
ゴルベーザはそれを受け取ると、満足そうにクリスタルを掲げた。
「この時を待っていたのだ!これでバブイルの塔は完成する!」
ゴルベーザの声が、洞窟の中に不気味に響き渡る。
「カイン!目を覚ませ!」
「………………」
「カイン!」
セシルとローザの呼びかけにも、カインは振り返らない。
そのままゴルベーザの元へ向かおうとしたが、魔力を帯びた剣が、セシルたちの目の前へ突き刺さる。
「魔法剣!?」
エッジが驚きの声を上げる。
剣から迸る魔力が、セシルたちとカインの間を完全に遮った。
「これですべてのクリスタルが揃った!月への道が開かれる!」
「待ちやがれ!」
エッジが叫ぶ。しかし、ゴルベーザとカインの身体はすでに魔力に包まれ、二人は瞬く間にその場から消え去った。
「カイン……!」
「なんてこった……」
残された一行は、ただ呆然と立ち尽くす。
その時、地底の奥から凄まじい轟音が響き渡った。
「な、なんだ!?」
遠くに見えるバブイルの塔が、光を放ち始める。
いくつもの光が塔全体を駆け巡り、闇の中に巨大な姿が浮かび上がっていく。
クリスタルが揃ったことで、バブイルの塔がついに完成したのだ。
「…………」
セシルたちは、光り輝く塔を見つめることしかできなかった。